新年にあたり謹んで新春のご挨拶を申し上げます。
昨今のわが国の経済が近隣諸国の経済成長に支えられて順調に推移しておりますことはご同慶の至りであります。しかしながら原油を含めた資源の減耗や異常気象に象徴される気候変動など、現代の文明社会の基盤に関わる不安は年々高まっていくように感じられます。一方、国内的には少子化と並んで、約60年を経過した戦後の教育システムの欠陥が大きな社会問題となっています。子供たちの理科離れは以前から問題視されていましたが、最近では大学でも工学部の人気が著しく凋落しており、わが国の生命線とも言える「ものづくり」技術の将来が憂慮されています。
平成7年に科学技術基本法が制定されて以来、科学技術の振興は国の基本政策の一つとなっていますが、研究開発資金がいかに供給されても、それを有効に活用する人材が育たなければ振興の成果は期待できません。したがって初等教育から大学までの理科系教育の充実は喫緊の課題と考えられます。
実は「計量」は理科教育の素材として広く取り上げられてきています。それはいうまでもなく計量が科学の実験においても、また理論の検証においても不可欠な基礎であり、技術の開発と成果の活用にも大きな役割を果たしているためであります。またわれわれの日常生活においても、商取引はもとより、生活環境や交通・運転の制御、運動や健康状態の評価など身近なところで無数の活用事例が見出されます。その意味で計量の知識と技術は理科教育の場でもっと多く活用されてしかるべきものと思われます。 皆様にもご案内のとおり、私どもの日本計量振興協会では、一昨年から計量記念日行事の一つとして小学生を対象とした「何でも計ってみようコンテスト」を実施しています。これは草の根的な活動ですが、理科教育の一助にもなると考え、今後も一層の充実を図ってまいります。
設立以来、私どもの協会は、国および地方自治体の計量関係部局・計量標準研究機関・試験所認定機関など多方面からのご支援を頂きつつ、一貫して計量・計測の意義の理解と啓発、計量標準とそのトレーサビリティならびに計量法に関わる技術の研修と情報交流などについての事業を進めてきましたが、今後は健康管理など身近な計量についても注意を払い、新たな課題にも積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
かねてから実施しております郵政公社からの受託による計量管理業務と、JCSSに基づく力計、一軸試験機ならびにガラス製温度計などの校正業務を含めて、本年も役職員一同、一層充実した活動を進めるべく努力してまいる所存でございます。引き続きご指導・ご鞭撻のほどお願い申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。
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