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2015年 計量関係団体 年頭所感

計測・制御・システム技術による社会への貢献

(公社)計測自動制御学会会長 仲田隆一

仲田隆一 新年明けましておめでとうございます。今年が、皆様にとってよりよい年になるようにお祈りいたします。
 計測自動制御学会が対象とする計測・制御・システム技術は基盤技術であり、多くの機器や産業システムで使われています。具体的には、これらの技術は、電力網や鉄道網などの社会インフラ設備、鉄鋼プラントや化学プラントなどで使われています。また、家庭においてもエアコン、冷蔵庫、電気炊飯器から自動車にいたるまで多くの機器で使われています。
 これらの計測・制御・システム技術は、各機器や装置に埋め込まれた基盤技術であるため、最終需要者の方々にはその進歩を実感しにくい面があります。一方、共通の基盤技術であるため、その進歩による社会への貢献は広範囲に渡ります。たとえば、今注目を浴びている手術ロボットなどによる医療の高度化や自動車の衝突防止や自動運転などにおいても、これらの技術が重要な役割をはたしています。その他、欧州で話題となっているIndustry4.0と呼ばれている製造プロセスの高度化を始め、ロボット、航空・宇宙、農林水産業などの分野においてもこれらの技術の進歩が期待されています。当学会は、これらの期待に応えるべく計測・制御・システムの基盤技術をしっかりと発展させていくことで社会に貢献したいと思っています。
 これらの活動に加え、本学会の社会への貢献をより明確にするために、安全・安心社会の実現、日本の国際化や国際社会への貢献、次世代を担う人々への教育・啓蒙などの活動を、学会単独ではもちろん、学会間や産官学連携のもとで展開しています。
 安全・安心社会の実現に関しては、東日本大震災直後に「社会的課題抽出・展開専門委員会」を設立し、複雑な構造を持つ社会システムの設計方法の検討をおこなってきました。その検討結果をふまえて、南海トラフへの備えを主題として高知市で開催された「四国巨大災害危機管理会議」で、津波避難誘導制御シスム設計などの具体例とともに今後の活動予定等を紹介しました。大規模プラントや社会インフラ設備の安全に焦点を絞った活動としては「安全のための計測・制御・システムを考える会」 を設置し、具体的な成果を追求するプロジェクトの活動」、「俯瞰的に安全を検討する活動」、「長期的な視野からの安全に関する研究活動」 をおこなっています。復旧・復興のための取り組みとしては、学会というよりも産業技術総合研究所が中心となり気仙沼市の仮設住宅で実施した取り組みですが、避難者の仮設住宅での暮らしにおいて、コミュニティーを活性化するためのシステム(エネルギーマネジメント、見守り、健康増進)の導入をおこないました。これは技術を社会に導入する具体的取り組みとして推進したものです。また、より広範な社会リスクを低減する取り組みとして、制御システムのセキュリティ対策を実施している制御システムセキュリティセンターの活動を支援しています。ここでは、「制御システムのセキュリティを高める技術の研究開発」、「制御機器の安全性の検証」、「模擬プラントを使った人材育成・普及啓発」 をおこなっています。さらに自動車などの消費者機械の安全性確保のための取組として、国際標準化委員会を設立し、JEMIMA、IPA他とともに消費者機械の機能安全に関する国際標準化を推進しています。
 国際化に関しても多くの活動をおこなっており、Annual Conferenceと呼ばれる年次大会を2002年に国際化していますが、毎年、アジアを中心とした海外から多くの参加者を得ています。特に、今年は本学会が関与する国際会議が数多くあり、新たな国際化の飛躍に向けて踏み出す年だと考えています。具体的には、本学会の年次大会を7月に中国で開催します。今までにも、韓国および台湾で開催してきましたが、今回の中国での開催は本学会のもつ計測・制御・システム技術を中国やアジア各国に向けて発信する絶好の機会と考えています。その他、主要な国際会議としては、5月末からマレーシアで開催のアジア制御会議(ASCC2015)、11月末から京都で開催の世界工学会議(WECC2015)、 11月に横浜で開催のIEEE IECONおよび12月に大阪で開催のIEEE CDCなどがあります。このような国際会議の場を通じて、国際社会への貢献とともに日本の国際化に貢献していきたいと考えています。
 次世代を担う人々への教育・啓蒙活動としては、ロボット・トライアスロン競技や小学生向けロボット工作教室、システム制御情報学会と共同での高校生向けの学会活動の紹介などをおこなっています。日本学術会議が作成した「理学・工学分野における科学・夢ロードマップ2014」に計測・制御・システム技術の立場から参加するとともに、この科学・夢ロードマップを中高生に機会を捉えて紹介しています(計測・制御・システム技術に関する科学・夢ロードマップは本学会のホームページ:http://www.sice.jp/に掲載しています)。さらに、将来を担う計測制御エンジニアの育成を目的として、計測制御エンジニア試験の実施とともに、続々プロセス塾を開催しています。この続々プロセス塾は日本工学会のECE(Engineering Capacity Enhancement)プログラムの認定を受けています。
 学究面の活動とともに、これら社会に直接貢献する活動にも注力してまいりますので、皆様の引き続きのご支援とご協力をお願い申し上げます。末筆になりますが、皆様の一層のご発展とご健勝を祈念して、新年のごあいさつにさせていただきます。

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