日本計量新報 2011年1月16日 (2853号)掲載
一計量士の意気込み
計量士 柳澤初男 |
新年明けましておめでとうございます。
山積みしている「計量」の世界の問題点、新たな気持ちで、新しい年を迎えました。今年も何卒宜しくお願い申し上げます。
ちょっと古い話になりますが、1952(昭和27)年4月(度量衡法から計量法に改正された翌年)、当時通商産業省計量教習所の第一期生として入所した私は、同省重工業局計量課の初代課長高田忠成から「計量」とは「森羅万象」(辞書によると宇宙にあるいっさいのもの)の物象の状態の量を計ること、という第一声を拝聴いたしました。約60年を経過した現在、私の脳裏にはこの言葉が鮮明に残っております。それからの私の人生は、あらゆる物象の状態の量を計ることに取り組んでいく意を固めた次第でした。
皆様よくご存知の通り、計量法第2条には、これら「計量」とは……が定義されております。即ち人間個人の感想ではかる「味」(あまい、からい、すっぱい、にがいなど)とか、「匂い」を除いた、89にも及ぶすべての計量単位が決められています。
計量士である私はそのうちどれだけの知識があるのか、自問してみました。一般消費者経済に一番密着しているのが計量法の目的でもある「質量」の計量です。もちろん消費経済に欠かすことのできない大変重要な部分であり、それだけに「質量」に関してハード、ソフト共々知識豊富な方はたくさんおられます。しかしその他にも、製造業界ではものづくりに必要な計量が数多く使われております。即ち「長さ」の計量から始まって、温度、湿度、時間、各種電気量(電圧、電流、周波数など)、はたまた金属加工に必要な金属のかたさ(ブリネル、ビッカース、ロックウェル、ショアなど)、引っ張り強さ(ショッパー)、圧縮強さ、その他、圧力、面積、体積、粘度、熱量、照度、光度、光束、屈折度、耐火度などなど。残念ながら私には、このうちの極々一部の知識しかありません。
かつては「計量士国家試験」の試験科目の中にそれぞれ専門分野を確認し明確にする13科目の「専門器種別科目」がありました(私は大変結構な制度と思っておりましたので、自身の専門分野の範囲拡大に努力をした時代がありました)。
これからの計量士の職務範囲は。そして計量士の目指すところは。いうまでもなく計量士に関するエキスパートとして、世の人から期待され、信頼される職位になるため、さらに努力と研鑽を積み重ねる必要を感じております。一部の計量に秀でることも大変重要であり、必要なことはいうまでもありません。しかし「それだけ」では、計量士としての権位がどうでしょうか。浅く、幅広くも必要ではないでしょうか。計量士個人の要研鑽を自分に云い聞かせて、今年の抱負とさせていただきます。
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