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 計量計測データバンク「日本計量新報」特集記事寄稿・エッセー>横田貞一

日本計量新報 2011年10月2日 (2887号)掲載

「民は之に由らしむ可し之を知らしむ可からず」

平和衡機(株)代表取締役社長 横田貞一

下記のような記事が読売新聞に掲載されていた。
 東電福島第一原発から約6キロ離れた福島県浪江町で3月12日朝、核燃料が1000度以上の高温になったことを示す放射性物質が検出されていたことが分かった。経済産業省原子力安全・保安院が6月3日、発表した。

 検出された物質は「テルル132」で、大気中のちりに含まれていた。原発から約38キロ離れた同県川俣町では3月15日、雑草から1kg当たり123万ベクレルと高濃度の放射性ヨウ素131も検出されていた。

 事故発生から2か月以上たっての公表で、保安院の西山英彦審議官は「隠す意図はなかったが、国民に示すという発想がなかった。反省したい」と釈明した。
 しかも驚くべきことは、テルルの検出は、1号機から放射性物質を含む蒸気を放出する「ベント」の実施前だった。

 保安院の西山英彦審議官は官僚の中でもエリート官僚であるが、そのような教育訓練を受けてきているのであろうか。釈明もその場凌ぎであり、その後のTV放送などを見てもとても反省しているとは思えなかった。
 これがわが国高級官僚の真骨頂である。

 隠すつもりもなく、知らせることなど想定外の「情報および真実」が露呈しても、こうした時の釈明を官僚として訓練された通りに対応し、反省するつもりはないままについ口にした言葉なのか。または、こうした言葉しか思い浮かばなかったのか。信頼を得るにははなはだ程遠い釈明であった。
 この人は結局、同時期に進行していたらしい事情が「想定外に」露呈した結果、叱責を受け解任されたが……。

 この事情に関しては、他人がとやかく言うことはない浮世のことであるが、当然、家庭内でも同様の反省の弁を述べたのだろうが、家族からの信頼は今でも保たれているのだろうか。
 原発に関しては、今回の事故災害に関しても国、東電、原子力関係の学者などからは、情報の開示と透明化には程遠く、多くの国民が不安の中で、多くの真実と重要な告知情報が官僚たちに適当に操作され「国民への不安排除と安心安全」の名の下に隠されてきた事も明らかになってきている。

 東日本大震災以後の日本にとって最大の不幸なことは、「この高級官僚や、政治家に、国の安全安心を任せることは、大きな不安がある」という、荒涼たる思いである。
 一方で、多くの地方公務員および官公庁の職員や自衛隊、消防関係、若いボランティアの活躍もあることが救いとなっている。
 また、多くの国民が一人一人拠出した義捐金が寄せられていることもある。これからも長期にわたって、支援の輪を維持していくことになるだろう。

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