日本計量新報 2011年10月9日 (2889号)掲載
QES2011レポート
KYB(株)環境安全部 生駒亮久 |
6月22〜23日にJR大井町駅前の「きゅりあん」で開催された、第19回品質工学研究発表大会に参加した。3月に発生した東日本大震災の影響もあり参加者は少なかったものの、いつものように会場のいたるところで活発な情報交換が行われていた。壇上、ポスターを含めた108テーマ(発表取り下げ含む)の発表、中西経済産業省大臣官房審議官、田中日本規格協会理事長の来賓挨拶、伊藤品質工学会会長の講演、さらには今回特別に企画された「東日本大震災緊急報告会」など、日頃の雑事から離れ自身を振り返る貴重な時間を持つことができた。
今回の参加では、最近取り組んでいる研究に活かしたいという理由で、主にMT法に関するテーマを聴講した。具体的には、加工機の故障診断や寿命予知システム、ガスタービンの異常予知、受配電機器絶縁物の劣化診断などである。中でも大会実行委員長賞を受賞した「ガスタービンプラントの異常予兆検知」や、「受配電機器絶縁物の劣化診断」については、実用的なシステムとして既に市場で実績を積み重ね、大きな経済効果に結びついている報告であった。MT法の高度な実用性を思い知ることができたと同時に、今後の着実な広がりを予感することができた。
また、業務と直接かかわりの深い地震対応という面から、「東日本大震災緊急報告会」にも出席した。会場には多くの人が詰めかけ、関心の高さを物語っていた。被災地の近くに事業所を持つアルプス電気などの企業をはじめ、教育機関としての宮城教育大学から、震災発生当時の状況、その後の復旧などについて写真を交え詳しく報告された。1978年の宮城県沖地震などの教訓から地道に取り組んできた各種の対策が有効であったこと、生産再開に向けた代替部品の採否判断が機能性評価によりスピードアップが図れた事、「いざ鎌倉」の時は自分ひとりの判断と責任で危険から逃げるしかないことなど、従来から言われている地震への対応方法と比較しながら興味深く聴くことができた。
今回のテーマ、「技術者の思考力を強化する品質工学」は、谷本大会実行委員長の言葉にもあるように、未曾有の大災害から復興する日本社会に品質工学がどう貢献できるか、という重い課題を提起していた。敗戦後の何もない状態から経済大国に成長してきた過程には、多くの人たちのあらゆる知恵が注ぎ込まれている。今回の東日本大震災から福島第一原発爆発事故に至る大災害は、繁栄に胡坐をかき考えることが少なくなった技術者達が否が応でも奮起し、多くの知恵を発揮せざるを得ない状況を生んでいる。現実を直視し、新たな価値を付加した社会を構築するために、一連の品質工学の考え方は大きく貢献できるはずである。世界から注目される新しいアイデンティティ醸成に、日本オリジナルな考え方はなくてはならないと強く確信した。また、自身へのカンフル剤にもなった大会であった。
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