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計量計測データバンク「日本計量新報」特集記事寄稿・エッセー(2015年一覧)>【横田貞一】急激な変化に適応する能力

日本計量新報 2015年3月8日 (3048号)4面掲載

急激な変化に適応する能力

平和衡機(株)代表取締役 横田貞一

【編集部注】「企業トップに聞く!経済と経営観測アンケート2015新年」にお寄せいただいたご意見を掲載します。

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昨年の衆議院総選挙の結果は、アベノミクスの続行と憲法改正論議が巻き起こることになります。良くも悪くも、これからの日本の立ち位置の選択に繋がる提議がなされるかもしれません。厳しい現実を突きつけることになるかと考えます。財政問題、規制緩和と制度改革にしても先送りしてきた「つけ」がいつ噴出し、吹き出すのかという不安もあります。
 特に、さまざまな地域間格差が顕著になり、露わになる過程で是正されることもなく、さらに広がることへの懸念もおおいにあります。格差是正、財政再建、基盤整備等だけでなく、議員定数是正・低減等に自身の身を切る覚悟のない政治家と取り巻く官僚群の連結。いつの間にか従来にも増して強固な組織が復活しているようです。約束を守らない政治家。また、不祥事にもつごうの良い理屈で煙に巻いてしまう政治屋。また、家業として継続する意思だけは、堅固ではある政治屋一族。何事も『禊』が済んだと勘違いしている政治屋とご都合主義のマスコミ報道(評論家)も垣間見られた争点をぼかした狂騒劇だったのかもしれません。
 さて、円安基調のなか、原材料の高騰が始まっておりますが、さまざまな仕入れ価格を販売価格に転嫁できない状態で、利益なき繁忙となっている事業所、繁忙もなく取り残されそうになっている事業所が出始めております。過保護な政策がいいとは思いませんが、いよいよ、環境適者が生き残る淘汰の時代が始まったのでしょうか。
 ますます、海外で大きな収益を上げるグローバル企業(日本企業?)もあるが、国内産業の担い手である下請け構造下のサプライチェーンの末端に位置する国内の中小・零細企業の生き残りは。
 また、育成強化は果たして可能なのでしょうか。
 サプライチェーンの崩壊と見直し等もありますが、サプライの頂点の大手企業の海外移転等を期に産業集積および技術基盤を誇ってきた地域および企業も廃れはじめ、一気に産業空洞化も進んできてしまった地域もあります。主力企業の海外流出でぽっかりと穴の開いた多くの企業城下町では、顕著な過疎化と疲弊を域内の産業構造にもたらしております。やむを得ない選択とはいえ、グローバル化した企業の生き残りをかけた選択次第で、さらに顕著になるかと思います。
 組織は事業活動を遂行するプロセスが顧客に対して競争相手より優位に立つには、優れた価値を提供できるようなコア・ケイパビリティを持つことであるとする考えがあります。確かに、組織が独自の資源を結合し、調整するコア・ケイパビリティが高ければ高いほど、企業の競争優位性は高いといえるかもしれません。新しい技術等の資源の開発を期に企業が優位な競争に立っているケースが多くあります。しかし、半面、競争に敗れ市場から撤退を余儀なくされた組織も存在します。また、伝統的な料亭、旅館、織物、工芸等はじめさまざまな分野でも優れたコア・ケイパビリティを持つ企業が優位な競争で存続しております。「現状の組織を効率的に維持できる力が高ければ、継続した優位性を保てるのかもしれない」と考えている組織もあるかもしれません。こうした基点の経営はいま多くの企業がおこなっていることですが、オーディナリーケイパビリティ(現状効率的維持能力)、つまり、組織の権威的存在にもとづく経営であり、それは、利益最大化原理にしたがって、一方でコストを削減し、他方で今少しでも売れている製品に集中して収益を伸ばす。まさに資源ベース経営であり、その本質は利益(収益−費用)の最大化経営であるといえるのかもしれません。
 しかし、一方、企業が独自のコア・ケイパビリティを構築して競争優位を獲得しても、ある時点で優位なコア・ケイパビリティが環境変化によってかえって、有効性が阻害され、そうでなくなることも昨今の議論で明らかにされております。地域には特色あるコア・ケイパビリティを持った優位な事業態においては、急激な環境の変化にある新たな展開を模索し、大変身を遂げている組織も垣間見られます。この組織の分析では、ある意味、組織の環境適応力に注目され、評価が集まったようです。
 これからの日本は産業構造だけでなく、社会構造も、生活住環境もさまざまな規制および維持制度・基盤構造の大きな変革と急激な環境変化を余儀なくされる時代になってきているように感じております。
 わが社においても、既存の知識、既存の資産、既存のノウハウを徹底的に再点検し、分析し、応用可能性はないか、再構成できないか、別の業界で新しく育てることはできないかと考えることがあります。
 一方、組織の優位性を担保しているコア・ケイパビリティを強化するとかえって、組織は優位性を喪失するという逆機能現象が起きるといったことも指摘されており、優位となるコア・ケイパビリティを持つ組織がかえって、頑なな組織となり、新製品や製法の開発を妨げる逆機能的なコア・リジディティとなることも指摘されていることも考慮しなければなりません。コア・ケイパビリティが新製品や製法の開発を妨げる逆機能的な要素となるとも考えられています。
 なんらかの新規プロジェクトの遂行を通じて、コア・ケイパビリティの変革をはかる必要があると考えられています。こうして出てきたのがダイナミック・ケイパビリティといわれている観点であり、環境変化を踏まえ、急激に変化する環境に対処するために、組織の適応力として、利用できる内外の資源を統合・構築・再構成する能力について、さまざまに述べられております。
 慶応大学の菊澤教授が最近、さかんに発信している考えですが、そこに、ダイナミック・ケイパビリティの論点があるようです。今関心を持って注目している考え方です。
 不安がある世のなかですが、新たな目標を設定し、希望を持って進んでいくこととし、まず、組織のコア・ケイパビリティを分析し、組織の適応力を高め、逆機能現象が起こりやすい組織の弊害を取り除き、オーディナリーケイパビリティに頼らない事業体を整え、勇気をもって目標へ邁進が始まる年となります。


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