日本計量新報 2015年3月15日 (3049号)4面掲載
真の国際化をめざして
東京計量士会理事 高徳芳忠 |
1、本当の国際化
OIMLでは商取引、健康、安全、環境分野等で使用される計量器の国際勧告を作っています。加盟国は、可能な限り国内法規に取り入れる道義的責任があります。
わが国の計量も、OIMLをいつまでも国際的な社交場の窓口としているのではなく、実際の業務においてOIMLを取り入れ、自動はかりの使用・製作・輸出においても、OIMLの規格にしたがって進めるようにするべきだと考えます。それが本当の国際化というものでありましょう。明治の大先輩達が従来の尺貫法に見切りをつけ、メートル法を取り入れた先見性に見られるごとく、国の将来を考える熱意をもっと真剣に見習うべきではないでしょうか。
国際基準たるOIMLの採用を実務ベースで進めるべきだと考えるのです。これこそが諸外国への仲間入りをして、自動はかりを売ること、いや買っていただくための大前提だと考えます。この際ですから、量目規制もいつまでも計量法に依るのではなく、OIML R87を取り入れてもよいのではないでしょうか。
2、自動はかりにも国際規格を採用
わが国の現状では、非自動はかりはOIMLの規格が取り入れられていて、製造すること・海外に売ることには何の障害もなくおこなわれています。しかし、自動はかりは規格がないために、メーカーはその場その場で客先要求やOIMLを使い分けて、あるいは自社の規格を持ち出して、設計・製作を進めていると聞いています。
煩雑さに加えて、技術目標・製造のコスト目標等すら立て難いのではないかと心配でなりません。さらに、技術の発展を阻害しているのではないかとも案じています。
したがってここにOIMLの規格が採用されると、上述の無駄が省けて、設計・製作技術の標準化が進み、諸目標も立てやすく、諸々の無駄が省けるのではないでしょうか。
基準・規格の働きはそのようなものであります。さらに付け加えると、管理・メンテナンスの面でもメリットは大きいでしょう。したがって自動はかりにもOIMLの規格が採用されると、一段と技術レベルが上がると考えます。
わが国のある方面の方々は、消費者中心の行政のみを考えておられるような気もしますが、何の資源もなく、貿易によって食料や油を買わねばならないわが国であってみれば、もっと生産者ベースの行政がおこなわれてもよいのではないかと考えます。
3、自動はかりは取引用のみに非ず
ホッパースケールやコンベヤースケールは取引にも使われますが、それを遥かに上回る数量が工場での生産性(生産原単位)の把握や品質管理のために用いられています。したがってここでの精度・安定性の向上は、工場経営の根幹を揺るがすものとなっているのが実状です。先にも述べたように資源なしの貿易立国日本であってみれば、プラント輸出にはこれらの自動はかりは、必須のように付いて廻り、手足となって働いているのです。
これら自動はかりがOIMLやJISに基づいて設計・製作されるのならば、国の計量法もこれを認めまた推奨していただくことになり、各メーカーはそのことを表記するだけで客先に安心してもらえましょう。これは大きなメリットです。しかしさらに大きな効果は、それらをベースにして改善・改良を加えた場合に、それをハッキリ明記することができることです。
ここに技術の進歩が起こり、わが国の技術が他国を凌ぎ優れていることも実証できるのも、OIMLの実使用の効果といえましょう。工業立国の面目が躍如として輝く日も遠くはありません。改善のアイデアを出すメーカーとそれをフィールドで実証するユーザーの共同開発も起こり得るというものです。 |