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2020新春トップインタビュー
長野計器株式会社 佐藤正継社長に聞くグローバル市場で「地産地消」目指すー圧力センサで世界シェアを拡大ー聞き手は高松宏之編集部長 |
日本計量新報 2020年1月1日 (3270号)16〜17面掲載
グローバル市場で「地産地消」目指すー圧力センサで世界シェアを拡大ー
第2四半期は苦戦
――貴社の現況をお聞かせください。
■第2四半期は売上高237億円
長野計器の2020年3月期第2四半期決算が2019年11月に出ていますので、それを基に説明します。
2020年3月期第2四半期は、売上高が237億3100万円、対前年同期比11・1%減、営業利益は5億1300万円、同71・3%減、経常利益は4億6800万円、同73・8%減、親会社株主に帰属する四半期純利益は2億3200万円、同82・4%減、と売上、利益共に苦戦しています。
世界経済は、堅調な個人消費及び雇用・所得情勢を背景に緩やかな回復が続いているものの、米中貿易摩擦および英国のEU離脱問題などの動向について不確実性の懸念が高まっています。
米国では、良好な雇用環境が個人消費を下支えしているものの、設備投資は伸び悩み、製造業の景況感には弱さが見られ、欧州においても製造業の低迷が続き、回復に時間を要する見込みとなっています。中国においては、米中貿易摩擦の影響を受けて輸出の減少がみられ、景気は減速傾向となっています。
わが国経済においては、個人消費は堅調であり、非製造業は好調であるものの、製造業の生産活動は足踏みがみられ、不透明な状況となっています。
このような状況のもと、当社グループでは、前期において好調であった産業機械業界向、プロセス業界向、FA空圧機器業界向、空調業界向、半導体業界向の圧力計、圧力センサの需要が減少し、自動車業界を主要取引先としているダイカスト製品の需要も減少しました。
また、米国においても同様に、前期において好調であった産業機械業界向、プロセス業界向の売上が減少しました。
これをセグメントごとに見ていきます。
■圧力計事業
圧力計事業は、国内においては空調管材業界向の売上が増加しましたが、産業機械業界向、プロセス業界向、FA空圧機器業界向、半導体業界向の売上が減少しました。
米国子会社でも産業機械業界向、プロセス業界向の売上が減少しました。
この結果、圧力計事業の売上高は112億5100万円、前年同期比5・8%減となりました。
■圧力センサ事業
圧力センサ事業は、国内では産業機械業界向、空調業界向、半導体業界向の売上が減少し、量産品である建設機械用圧力センサ、自動車搭載用圧力センサの売上も減少しました。
米国子会社でも産業機械業界向、プロセス業界向の売上が減少しました。
この結果、圧力センサ事業の売上高は68億1100万円、前年同期比21・0%減となりました。
■計測制御機器事業
計測制御機器事業は、自動車・電子部品関連業界向のエアリークテスターは増加したものの、医療用機器、工場生産自動化設備用の空気圧機器の売上は減少しました。
この結果、計測制御機器事業の売上高は24億300万円、前年同期比13・1%減となりました。
■ダイカスト事業
ダイカスト事業は、自動車業界を主要取引先としているダイカスト製品の売上が減少しました。自動車用ヘッドライトのLED化にともなうダイカスト製品の立ち上げにより売上を伸ばしてきましたが、価格の見直しやモデルチェンジによる製品の入替などの影響がありました。
この結果、ダイカスト事業の売上高は20億6500万円、前年同期比6・2%減となりました。
■その他事業
その他事業では、自動車用電装品の売上が増加しました。
この結果、その他事業の売上高は11億9800万円、前年同期比4・1%増となりました。
■業種別
業種別では、半導体用圧力センサが前年同期比51・8%減となったのが、今期の苦戦の大きな要因です。
通期では大きく回復見込み
2020年3月期の業績予想は次のように見込んでいます。
売上高は491億5000万円、前年比5・6%減となります。営業利益は23億6000万円、同19・5%減です。経常利益は22億8000万円、同20・3%減と予想しています。
■設備投資は改善の兆し
設備投資関連の景況悪化についても改善の兆しが見え始めてきており、利益改善に向けた取り組みも販売価格の見直しやコスト削減をより一層進めることで、業績の回復を見込んでいます。
セグメント別では、次のように予想しています。
■圧力計事業
圧力計事業の売上高は227億6000万円、前年比3・7%減と予想しています。
■圧力センサ事業
圧力センサ事業の売上高は148億3100万円、前年比6・0%減としています。
■計測制御機器事業
計測制御機器事業の売上高は50億6300万円、前年比13・5%減としています。
■ダイカスト事業
ダイカスト事業の売上高は40億8100万円、前年比9・3%減となります。
■その他事業
その他事業の売上高は24億1200万円、前年比5・5%増と予想しています。
■半導体関連の圧力センサは大きく回復の見込み
上期は、半導体関連の落ち込みや米中貿易摩擦による世界経済の不透明感、また米国子会社のアッシュクロフトでも設備投資の低迷の影響を受けました。
しかし、下期に関しては半導体の需要が出てきていますし、5Gの立ち上げなどの明るい材料も出てきています。
業種別に見ると、先ほど述べた半導体関連圧力センサの売上が28億8400万円、前年比14・5%減ではあるものの上期に対して大きく回復すると予想しています。
設備投資もこれから回復する状況ですので、半導体関連を中心に営業利益に関しても、てこ入れができると見込んでいます。
センサ開発やAI、IoTへの対応強化
――今後の方針をお聞かせください。
これまで説明しましたように、第2四半期の結果は厳しいものでした。これを真摯に受け止めて対応しなくてはなりません。
■需要が復調傾向
アジア地区における半導体製造設備向け計測機器の需要が復調傾向にあり、注文数も逓増しつつあります。
まだまだ完全な回復状況ではありませんが、設備投資関連では底を打った感があります。ですから、今後はこれらに対応した高付加価値の製品づくりをしていくことが回復の条件になってきます。
■EJ95本質安全防爆構造圧カセンサ
長野計器は、2019年5月に半導体産業用の「EJ95」という本質安全防爆構造圧カセンサの発売を開始しました。
このセンサは、半導体製造現場に最適な、高耐久性・高精度の圧カセンサです。
日本(TIIS)、国際(IEC Ex)、欧州(ATEX)、台湾(TS)、中国(NEPSI)、韓国(KOSHA、申請中・取得見込み)など、世界各国の規格に対応しています。
この製品をワールドワイドに販売していきます。
■米国への展開強化
特に、米国においては半導体産業への展開を強化していきます。AI、5Gなど、技術革新が進む米国の半導体業界に対し、アジア地区で培ってきた30年に及ぶ実績を活かし、展開を強化します。
米国は半導体関連においては一番の本家本元ですから、特にアッシュクロフトブランドで米国の大手半導体メーカーの要求に対応していきたいと考えています。
■半導体業界における圧力計測の需要は大きい
半導体業界における圧力計測の裾野は広いと認識しています。「クリーンルーム(室圧)」「給排水・純水精製」「ガス供給」「空調」「薬液供給」「搬送(FA)」など、このように裾野が広い分野ですので、さらに取り組みを強めていきます。
■利益率向上に向けた取組
利益率向上に向けた取組を進めていきます。機種統合の推進や、工程改善・省人化設備の導入に取り組みます。
機種統合の推進では、部品の共通化を進め、新機種への移行を図っていきます。販売価格も見直します。
顧客の要望に応えながら、安全・安心の製品を製造していきます。これは2019年夏以降取り組みの強化を進めており、3月期に結果が出るものと期待しています。
工場における取組みでは、作業方法や工程を改善し、効率化を図っていきます。省人化推進のためにロボットの導入を進めています。IoT活用設備の拡大で、設置環境などの見える化を進めます。設計からの見直しを含めてコスト削減を進め、収益重視の体制を構築していきます。
■3機種の新製品を投入
2019年上期に3機種の新製品を投入しました。
1つは、FA産業機械向けの「EH15圧力センサ」です。既存機種にくらべ、精度を±0.25%F.S.と向上しました。
2つ目は、「EJ15/EJ95本質安全防爆構造圧力センサ」です。半導体・各種工業プロセス計測で、高精度な圧力計測が可能です。
3つ目は、「GV40/GV45φ60高圧水素用圧力計」で、水素ステーションで使用する高圧水素計測専用の圧力計です。
■燃料電池関連にも力注ぐ
燃料電池関連(FCV・水素ステーション)にも力を注いでいきます。
長野計器はTokyoスイソ推進チームに参加しており、2019年9月に羽田空港で開催された「Tokyo ミエル スイソ」に出展しました。
トヨタ自動車のFCV車である「ミライ」や、燃料電池フォークリフト、水素充填装置関連にも、当社圧力センサが搭載されています。
2019年度で国内水素ステーションは21件が新設される計画です。当社は先行して、生産設備を増強しております。
長野計器は、今後もさまざまな領域で活用が期待される燃料電池関連機器に製品提案をしていきます。
■AI、IoTの動きへの対応強化―生産現場の無線化
IoT社会に向けたセンサ需要の増加が見込まれます。IoT社会の到来で省人化が進み、圧カセンサの需要は今後、ますます増加していきます。
長野計器はこれに向けて、3種類のワイヤレス圧力計測の取組を提案しました。いずれも生産現場に適した無線方式を採用しており、工場における圧力計測の無線化を容易に実現するものです。
■Bluetooth搭載のワイヤレス圧力計
1つ目は、「Bluetooth搭載の機械式ワイヤレス圧力計」です。2019年11月に発売しました。特長は次のとおりです。
▽機械式圧力計に圧カセンサ、Bluetooth通信モジュール、ボタン電池を内蔵▽計装工事が不要(置換が容易)▽圧力値をiPad等で監視▽データを保存でき、統計的な設備の管理が可能となります。
■LPWA搭載のワイヤレス微差圧計
「LPWA搭載のワイヤレス微差圧計」は、障害物に強い無線方式により、広範囲の多点監視が可能です。電池駆動ですので、配線不要で設置も簡単です。圧力値、電池残量警告などの情報も定期的に取得できます。
■RFID搭載のバッテリレス圧力センサ
「RFID搭載のバッテリレス圧力センサ」は、RFID搭載スマートフォンを使って簡単に圧力測定が可能です。配線、電池が不要で設置が簡単です。巡回点検作業の効率アップが図れます。機械式圧力計から置換可能です。これら3種類の製品は、無線技術を利用することで、これまで人による読み取りが中心であった製造現場における稼働状況、工程の監視がおこなえ、省人化に貢献できます。また、これらの機器の導入で設備の確認時間の短縮、記録やエビデンスの正確性、時間的変化の把握、設備のメンテナンス時期の予測、生産工程の正常性などが実現できます。
新中期経営計画
■2020年春を目途に新中期経営計画
2020年春を目途に、新中期経営計画を発表予定です。できれば5年くらい先を見すえた計画にしたいと思っています。
■新中期経営計画の基本指針
新中期経営計画の基本指針はグループの総合力を発揮すべく、@既存事業の競争力を強化Aグローバル戦略の強化B新たな事業領域の拡大C経営基盤の強化の4つの成長戦略を考えています。
■グローバル供給体制を構築
グローバル供給体制を構築します。今後、需要拡大が見込まれる「圧カセンサ」に関して、グローバル市場における「地産地消」体制を確立すべく、グループー丸となって対応を進めていきます。
これまでは圧力センサはすべて日本で生産し製品として世界の各市場に供給していました。これを「圧力センサ素子」は日本で生産しますが、このセンサ素子を世界に供給して、現地で、その市場に適した製品を生産して販売する体制にします。いわゆる「地産地消」の推進です。
現状、グループ全体で日本では圧力センサと圧力計の売上比率は5:5くらいですが、米国では2:8くらいです。
今後は圧力センサの比率を増やしていき、世界市場でのシェアの拡大を目指していきます。
■アッシュクロフトを中心に
グローバルな展開としては、特に米国の子会社であるアッシュクロフトを中心に、圧力センサの生産から販売をワールドワイドに展開していきます。
2019年の6月にアッシュクロフトのグローバル会議が開催されましたが、ここではブラジル、ヨーロッパ、中国などで圧力センサの需要があると報告されています。
先ほども申しあげたとおり、圧力センサのグローバル展開を掲げて事業拡大を推進していきます。
■グローバルネットワークで世界に挑戦
長野計器は、製品開発と販路拡大などグローバル戦略を積極的に進めています。米国、メキシコ、ブラジル、ドイツなどに新たな販売拠点を確保しており、よりグローバルなネットワーク・技術サービスを展開していきます。
■さまざまな産業を支えている
長野計器グループが提供する製品は、さまざまな産業を支えています。工業計器・プロセス計装、FA・産業機械、建築・空調・クリーンルーム、半導体製造設備、食品・医薬品・医療、船舶・鉄道・航空、建設機械、自動車など。
■圧力計測はなくならない
このように、圧力計測はどこでも、いつでも必要なものであり、絶対になくなりません。
日本だけでも5万を超える顧客がおり、最先端の技術に関わる貴重な情報も多数頂いており、グループ全体で、このすべてに対応していく必要があります。
既存事業でもまだまだ売上高を増やせる余地があります。
■第3の柱となる製品、事業を
製品開発では、第3の柱となる製品、事業を見極めていきたいと考えています。個々の部品としてだけではなく、システムとしての製品の提供が必要です。今後は装置関連にも力を注いでいきます。
――ありがとうございました。
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