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第193回NMS研究会報告(2014年3月)

(3035号/2014年11月23日掲載)

日精樹脂工業(株) 常田聡

 2014年3月1日(土)、品質工学会会議室で、第193回NMS研究会が開催された。

1、2月の公開研究会の感想

 2月1日に開催された公開研究会の記事が、2月14日の産業紙に掲載された。「モノづくりの死角を懸念」と題して、CAEの普及によって“考えない技術者”が増えたことへの問題提起が論じられている。だが、この記事は当日の議論の一部しか伝えていない。それでも研究会主宰の矢野宏氏は、品質工学にもマスメディアを利用した発信力が必要で、どうしたら品質工学を伝えられるか考えなければならないと主張された。
 公開研究会の感想では、「自分史」をキーワードにした活発な議論が交わされた。「妥協しない品質工学の実践」という公開研究会のテーマは、品質工学とどう向き合ってきたかを自分に問いかけるようなテーマだ。品質工学を実践することは簡単ではなく、あるべき姿をめざして取り組んできたからこそ、妥協してきたこと、妥協しなかったことを振り返る機会につながったのではないか、といったことが議論された。
 ところで矢野氏は、最も多くのことに妥協してきたのは品質工学の創始者である田口玄一博士だと言う。1960年代から相当レベルの高いことをやっていたのに、いまだに理解している技術者は少ない。どれだけ田口博士が妥協してきたか計りしれないと矢野氏はその理由を語った。妥協とどうつきあっていくか、技術者の大きな課題であろう。

2、CAEによる構想設計の最適化(コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)、近藤芳昭)

 CAEを用いたコピー機の構想段階の評価方法の検討である。コピー機の機能である入力の濃度(デジタル信号)に対する出力の濃度(画像)を評価したいとのこと。濃度だけでなく位置も問題であるといった議論がおこなわれた。

3、ダンパモジュール応答性解析による自動車の乗り心地の安定化(KYB(株)、満嶋弘二)

 ダンパモジュールのエネルギー吸収性能の安定化を狙った研究で、CAEを用いた研究である。矢野氏より、外乱の大きさを変えて立ち上がり応答を解析した方がよいとアドバイスがあった。

4、デバイスの熱応力耐久評価の研究(コマツ(株)、細井光夫)

 温度制御用デバイスの耐久テストをやめるための、評価方法が検討された。直交表を用いて実験をおこなったところ、機能を乱す誤差因子である熱劣化によって半分が故障した。そこで見た目の点数付けで評価したところ、納得のいく結果が得られたとのことだった。

5、日本企業の業績の研究(キヤノン(株)、吉原均)

 100年以上続いている老舗企業106社を単位空間として、約2500社を対象に、2012年の決算短信より抽出した項目を用いてMTシステムで解析した。財務情報だけではよくわからないので、企業理念や家訓などの情報を入れたらどうかという意見があった。

6、歯みがきチューブ接着工程の最適化(ヱスケー石鹸(株)、安藤欣隆)

 歯みがきチューブのパンク問題に、設計や品証が一緒に取り組んで成果をあげた。品質をコストで評価する損失関数と、製造条件の最適化を目指したパラメータ設計により、不適合品をなくすことに成功した。
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