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座談会出席者(敬称略) 小野田 元 (社)日本計量振興協会会長、(株)金門製作所最高顧問 宮 下 茂 (社)日本計量振興協会副会長、長野計器(株)代表取締役社長 渡 部 勉 (社)日本計量振興協会副会長、(株)渡部計器製作所代表取締役社長 奈良部 尤 (社)日本計量振興協会副会長、東京計量士会会長 佐 藤 克 哉 (社)日本計量振興協会専務理事 横 田 俊 英 (株)日本計量新報社代表取締役社長 |
横田俊英 社団法人日本計量協会、社団法人計量管理協会、社団法人日本計量士会の三団体が統合して新しい団体、社団法人日本計量振興協会を発足させました。その新団体の会長、副会長それから事務局の責任者である専務理事の皆さんに団体の主な事業と会運営の基本的な考え方を聞かせていただきたいと存じまして、この座談会を企画致しました。できるだけ早くということで日程を定めましたので都合がつかない方が出て参りましたことをあらかじめおことわりさせていただきます。
佐藤克哉 計量関係団体の統合の論議がずいぶん昔からあったことは日本計量新報の報道にあるとおりでございます。今回の統合は四年ほど前にその端緒となる動きがありまして、一年後の三年前には不定期の会合ではありましたが三団体統合のための話し合いが持たれるようになりました。そうした話し合いの経過を踏まえまして二年ほど前からは実際の統合のための具体的な話をする場が定期開催されるようになり、昨年、関係三団体の総会推進のための決議がなされ、それから一年弱の間ではありましたが、実際の統合のために詰めて話し合いをして参りました。三団体の副会長を中心にした合同の会合が定期的に開かれたのと平行して、三団体それぞれが独自に統合のための委員会を組織しまして慎重を期して準備してきたわけですが、会員の形態、地方組織や会費や財政の実情が異なるものですから、この違いを新団体組織にどのように調整して盛り込むかということが大きな懸案事項でありました。会員の形態につきましては日本計量士会は個人会員制ですし、計量管理協会は企業等の法人が主な会員であります。日本計量協会は地方計量協会ならびに中央の計量関係団体が会員でありますから、新団体はこうした会員の要素を会員規定や会費規定にうまく盛り込むことに大変な苦心を致しました。また役員構成をどのようにするかも苦労したことの一つです。それから各団体にはそれぞれに歴史があり、組織目的や事業の形態が同じ計量という言葉を用いておりますが、具体的な切り口は違いますから、統合の話しを実際に詰めて行くほどに、それを一つの団体の中にまとめるためには超えなければならない壁がありました。そのような経過がありましたが今年三月三十一日までには(社)日本計量士会と(社)計量管理協会が解散総会を開き、また(社)日本計量協会は定款変更総会を開くという手続きを踏まえまして、三団体統合に関係する必要な議決を含む一切の手続きを終えることができ、四月一日に社団法人日本計量振興協会が発足致しました。
宮下茂 (社)日本計量士会に関しましては統合までには会員の皆様のご理解を得るのに大変な時間をかけ、議論も重ねました。理事会の議題に統合のことが上りますと議論百出で、なぜ統合するのかという基本的なことから、会員組織のこと、計量士会本部と支部で実施している試験機をはじめ計量器の検査・校正事業はどのような扱いを受けるのかといったことが、行きつ戻りつ長い時間話し合われました。理事会は予定の時間を一時間は超過するといったことの連続でした。そういう議論はありましたが、国の行政組織も一府十二省庁に来年一月に変更されることなどを踏まえますと、三団体の統合は時の流れという基本認識では一致するところがありました。組織、事業、財政の細かなことにつきましては幾分かは調整が不十分なことがありましても統合はしなければならないだろう、ということで全体としては意見の一致を見ることになりました。そう申してみましても三つの団体はやはり個別に性格が異なることは事実です。統合後におきましても、言ってみましたら性質の違う木を接ぎ木しているようなものですから、しばらくの間は役員が中心になって懸命に活着のための努力をしなくてはなりません。その意味で私などは旧団体から関係してきた役員でもありますから使命は重大であると考えております。とくに新団体発足後の一年、二年が大事であると思っております。会員の皆様が「統合して良かった」という気持ちになるような魅力ある団体に成長しなければなりません。魅力ある団体になるための事業は何かということにつきましては、この後に機会があるたびにお話しさせていただきます。
渡部勉 私は三団体統合につきまして統合準備委員会に(社)日本計量協会からの委員として小野田元会長のご指名によりまして参画させていただきました。計量団体の統合につきましては、歴史をひもときますと古くて新しい問題でありますことを日本計量新報のこの問題をリポートした特集記事を読んで改めて認識いたしました。それはいわゆる大同団結論議であったわけですが、すでに大同団結の論議は昭和三十年代に登場しております。当時は中央の計量団体が会員の立場からは重複するように見えたようで、こうした団体は統合して一つになるべきだという議論がでておりました。工業会関係の団体統合、計量協会と工業関係団体の大同団結という議論でありました。大同団結すれば重複する事業を排除することができますし、会費の面でも都合がいいということがあります。この大同団結のための論議は結果的には組織の一本化・統合ということでは結実しませんでしたが、色々な意味でその後の計量の世界に影響を残しており、そうした遺産が今回の三団体統合に何らかの形でつながっているものと理解しております。三団体が統合して(社)日本計量振興協会という画期の新団体が誕生いたしましたが、会の目的や事業運営その他につきまして会員の皆様のコンセンサスが必要であり、会運営その他につきまして事務局任せということでは上手くいかないものと強く感じております。会員のコンセンサスを得るためには会員同士、あるいは会員と役員の間で積極的なコミュニケーションを図ることが必要であると思っております。
奈良部尤 私は日本計量士会の三団体統合に関する対策委員長を仰せつかってその任に当たりました。先ほどから日本計量士会関係のことでお話しが出ておりますように、こちらは個人が会員になっていることが他の二団体と異なります。当初の新団体の構想には個人会員制がなかったり、計量士会本部と支部で実施している試験機等の検査・校正事業に関する事業ができなくなるといったことが言われておりましたから、このことに警戒して統合を疑問視する会員が少なくありませんでした。また日本計量士会の全国の支部組織は、個別・具体的に見てまいりますと都道府県ごとに組織や財政規模の大小、地方計量協会との具体的な関係ということではかなりの違いがあることが改めて分かってまいりました。試験機等の検査・校正事業につきましては新団体の下でも実施できることがその後にはっきりしましたし、計量士等の個人が従来の支部組織を生かしながら、団体加入というかたちで会員になれる道が明確に開かれましたから、それであれば計量関係団体の大同団結に反対する理由はないということで、統合に向けてのレールが敷かれるようになったものと思っております。
小野田元 今お話しを伺って計量士会の皆様のご苦労がよく分かりました。計量士会が実施している検査・校正事業は非常に公益性の高い有益な事業でありますから、新団体の下におきましてもそれが継続されることは当然です。また計量士は地方の計量協会におきましても会運営に絶対に欠かせない重要な役割を担っております。
宮下 いま世の中は大きく変わりつつあります。政府機関も省庁統合で変わりますし、流通の世界を例にとりましても戦後はデパートからスーパーマーケットに売上げ高が移行しまして、今度はまた近くて便利であるということからコンビニエンスストアが売上げを大きく伸ばしております。このような変化の時代の世の中ですから、自分たちだけが旧来の枠を死守して生きて行こうということでは通用しないことは、計量士会関係の皆様もよくご存じのことであります。そういうことではありますが統合に向けて前進の道を大きく開いたのは、検査事業の継続、計量士個人が会員になれるということの組織体制で合意ができたことにあると思います。
小野田 宮下副会長、奈良部副会長のお話しを伺いまして、計量士会関係の皆様のご苦労が本当によく分かりました。
宮下 計量士制度の活用ということでは、計量法が計量士制度を定めているのですから、今以上にそれを実行に移して行くような配慮があって良いと思います。計量士資格そのものも社会的な地位や権威や信用を高めて行くための政策を計量士を中心にして行政の皆様にもご支援いただきまして強力に推進して行くべきです。また新団体は三団体が統合したということによって発生するスケールメリットを活かす努力を大いにすべきでしょう。そういうことでは地方計量協会は計量士による各種の検査事業を協会事業として積極的に位置付けていただくべきですし、そのような事業を通じて財政基盤を築くことを考えてもらいたいと思います。加えまして検査事業の内容の拡大につきましても大いに知恵を絞ることが今後は必要になると思います。計量士関係のことでは、技術進歩の著しい時代ですから、計量士自身がそれに対応できるよう新団体は資質向上を支援する事業をぜひとも企画しなければなりません。このことは関係の皆さんのご理解をいただいて必ず実施したいと思います。
小野田 今の世の中は自己認証、自己管理という時代になりましたが、計量法は一九九三年十一月一日施行の新計量法で計量士制度のなかにこれを取り入れました。国際的な品質保証等の取り決めに基づいて、これが規定する内容を実施していることの自己認証により、その行為が公に認められるという制度であります。これはISO九〇〇〇シリーズ等の国際規格でありますが、こうした制度が日本で受け入れられるようになりました。計量法の仕組みに自己認証制度を取り入れているのですから、地方の計量協会は事業運営の中でこのことを強く意識して行くべきでしょう。
宮下 小野田会長のいわれたことと関連しますが、計量法が定めた指定製造事業者制度は自己認証制度、指定定期検査機関制度などは第三者認証制度の具体化の一例であります。また計量標準の供給制度であります計量法トレーサビリティ制度は第三者認証制度であります。自己認証制度と第三者認証制度の広範な普及と施行は、計量士にとりましては仕事を増やすチャンスでもありますので、制度をさまざまな角度から検討して新時代に見合った新しい仕事の体系を築き上げて行くようにしたいと考えております。その意味では計量士は広く産業界を見渡して、計量士であるからこそできる社会的に有意義な仕事を創出する努力を大いにすべきです。先ほどもお話しいたしましたが、計量士が新時代の技術・社会環境に順応できるような支援システムを新団体として築きたいと強く念願しています。今の時代は産業経済の進行速度は速いですから、計量士に必要な技術と知識の支援システムを築いて行かなくてはなりません。具体的には講習会、研修会のような教育関係の事業ということになるかも知れません。
小野田 宮下副会長の話しにヒントを受けまして、私がここ数年あちこちで折に触れてお話しさせていただいていることを述べたいと思います。それは日本で計量大学をつくるということでございます。ドイツには計量アカデミーという、日本語に直しますと計量大学がありまして世の中で大きな役割を果たしております。日本にもそのような学校組織をつくりたいというのが私の念願です。この構想は渡辺恒三さんが通産大臣のときに話したことがあり、聞いてはいただきましたが残念なことに実現に至ってはおりません。
宮下 新団体の社団法人日本計量振興協会が行政や社会に対して影響力をもつ政策提言ができれば嬉しいですね。通産省、来年からは経済産業省に対して計量に関係した行政を含む様々なことで積極的に政策提言して行きたいものです。
横田 小野田会長がお話しなさいました計量大学構想は大変興味あるもので中国にも計量に関する大学があるように聞いております。日本においては東京大学その他に計測工学などの学部や学科がありまして、計測に関係した大学教育はされております。そのような大学教育と「計量大学」構想はどのような関係をもつのでしょうか。大学という名称を使うということになりますと、そうした事情をはっきりと区分けして説明していただけるとありがたいですね。大学という名称を一部に入れている例では自治大学校などがありますから、そうした概念の大学構想なのかどうかということで。
渡部 小野田会長の計量大学構想はよくお話を伺いまして実現可能な方向で様々な角度から研究して行くことが必要かと存じます。そのこととは別ですが、アメリカの計量に関する民間団体の組織と事業を見ましたら、団体事業の中に会員の資質向上を重要なものとして組み入れております。日本においても統合新団体では自らの会員の資質向上を実現する事業をしっかりとうち立てることが大事だと思います。
横田 計量大学構想は文部省の規定にしたがった大学なのかそうでないかは、やはり重要なことだと思います。それと会員などの計量に関する技術・知識に関する能力向上に関する支援システムは一種の学校制度、あるいは教育システムの形式をとるのか、構想がはっきりして実行に移されたら素晴らしいですね。
佐藤 日本の計量制度の中での教育機関ということになりますと通産省の計量教習所がございます。計量行政に関連しまして検定や検査の実務を担当する計量公務員が必要な知識と技術を修得するために設けられた制度で、この教育制度の中のある課程を終了することが計量士国家資格取得の要件にもなっております。計量教習所には民間の人々も入所できるようになっておりまして、ここを修了して計量士資格をとった方は大勢おります。計量公務員OBで計量士資格を取得している方々はほとんどが計量教習所の必要な課程を修了した方々です。計量教習に関係する規定が二〇〇〇年四月一日施行の改正計量法で変わりまして、地方公共団体の計量公務員は、計量教習所での教育課程を修了しなくてもいいことになりました。計量教習所での教習という必置規制がなくなったのです。日本計量振興協会では計量の世界で仕事をするのに必要な知識習得のための教育システムを考えることの延長線上に旧来の計量教習所が果たしてきた教育機能を対象にできればと思います。
渡部 運輸省の所轄の気象大学校というのがありまして、気象関係の専門家、技術者を養成しております。ここを修了した人々の多くは気象庁に奉職するようでございますが、これなどはあるいは日本における計量大学構想の具体的・実際的な参考になるのではないでしょうか。
宮下 文部省の規定を満たした大学であれば私立大学としても創設できます。私立大学の計量大学というのもあり得ることでございます。
小野田 計量大学の卒業生を企業が喜んで採用するようなカリキュラムを組んだらいいと思います。選択する課程によって技術に強い人あるいは経営に強い人ということがあっていいと思います。
奈良部 三団体が統合したことにより様々な知識と技術をもった人材をプールしている人材センター機能を備えたことにもなります。そうした豊富な人材を活用するシステムを新団体は作り上げる必要がありますね。
佐藤 新団体の教育および研修システムの中には、ISOの審査員の研修登録のように資格として認められるというようなものを組み入れたいと念願しております。また、会員の資質向上を支援するための教育システムを重要な事業として築き上げたいと思います。
宮下 計量器の国際的な技術基準への対応ということでは日本はどうしても遅れがちなのが現状だと思います。国際規格制定とその採用に関して日本がイニシアチブを取れるような国内の対応システムを構築する必要があります。そのための人材の養成も大事です。また統合新団体は国際規格への対応に積極的であるべきだと思います。
奈良部 計量管理協会関係の仕事ということでは、適正計量管理事業所に対しての指導といいますか、計量管理が適正に実施されているか、また適正に実施するための指導等につきまして、流通業ならびに製造業の計量管理に詳しい専門家を役所などの依頼があれば講師に派遣するという事業を実施できたらいいと思います。こうしたことは計量検定所に依頼を受けて講師を派遣するという実例が幾つかあり、あながち夢の話しではありません。また地方分権の時代になりましたが、適正計量管理事業所の指定促進に地方庁はもっと積極的になるべきだと思います。せっかく計量士制度があり適正計量管理事業所制度があるのですから、わざわざこの制度を避けて行政運営をすることはないと強く思います。
佐藤 これまでも適正計量管理事業所を増やそうと関係の皆様とともに努力して参りましたが、制度面から指定のメリットが薄いということがありますので、ここに何らかの工夫が要るように思っております。しかし、時代は地方分権ですし地方の計量行政機関としましても計量士を含めて計量関係団体を活用しなければならない状況になっているのではないでしょうか。地方の計量団体に、地方庁の計量行政の実務の一部を委託していただけるような受け皿をソフトとハードの両面で作り上げたいと考えております。
佐藤 計量行政を中心に計量に関して新しい時代のあり方を様々な角度から総合的に検討する時期であると思います。これまで日本計量士会が実施してきた計量器の試験・校正事業は新団体がそのまま受け継ぎますから、新団体としてはその方面の知識と技術は高いレベルのものを保有していることになります。こうした知識技術を地方分権化・規制緩和・自己認証の計量新時代に生かして行きたいと考えております。
宮下 地方計量行政は地方公共団体の財政が逼迫しているので様々な形で影響を受けることになるでしょうね。地方の計量検定所や計量検査所の中には名称を変えたり組織を縮小している所がありますね。
佐藤 地方計量行政機関が組織を縮小しましても計量法で定められた計量器の検定や定期検査その他の計量行政事務は減らないですから、そうした必要な業務を誰かが実施しなくてはならないわけです。地方の場合には地域の計量協会を中心にして関係する計量士などがその業務に当たるという方法は採れないものでしょうか。
渡部 地方の計量行政機関である計量検定所の仕事の一部を計量協会などの組織に委託するということは以前から行われてきましたが、指定定期検査機関制度ができてからはそれがさらに拡大する傾向にあります。計量協会はそうした行政機関の業務の民間委託のための重要な受け皿となっておりますから、今後とも社会的使命は大きいものと考えます。
奈良部 新団体はメトロロジー・プロモーションという語句が英訳の中に含まれているのですから、その名のとおりに計量を通じて社会の振興・発展のために組織として持てる知恵と力を最大限に発揮すべく頑張らなくてはなりません。それは計量関係者の共通の使命といっていいかも知れません。
小野田 英国の計量行政機関の代表は私との懇談の中で、規制が緩和されればされるほど民間関係の団体が積極的に仕事をしなければならない、と話しておりました。日本ではまさにそうしたことがこれから広く推進されるものと思います。
横田 計量のこの世界で起きていることの一つは、地方の計量協会の組織と財政が年々苦しくなっていることです。販売事業の登録制から届出制への変更、血圧計と体温計の販売事業届出制の廃止が直接的な原因になって組織財政運営が困窮するようになりました。先ほど計量協会等計量関係の団体の社会的使命が重要になっているというお話しがございましたが、社会的使命を全うするに足る組織内容になっていただけると有り難いですが方策はどんなでしょうか。一口に地方計量協会といいましても地方ごとの組織規模には大きな格差がございますので、東京、大阪、兵庫、神奈川等大きなところと、そうでないところを一つにして議論することはできないと思います。全国の計量協会が今後社会的使命を果たすことと、会員が喜んで会費を納め、会の運営や行事に参加するようになるよう役員の皆さんを中心に方策を打ち出して下さい。
小野田 地方の計量協会には組織・財政規模が小さいため、会活動に必要な情報活動なども思うにまかせない所があります。
渡部 都道府県をいくつかの単位として、ブロックごとに情報を交換したりする考え方が新団体の組織運営のなかの新しい試みとして採用することになっておりますが、これなどはとてもよい考え方であると思います。ブロック内では相互に補完し協力し合う態勢ができることが望ましいと思います。
奈良部 そうですね、地区協議会という組織機構を新しく発足させていくことになっておりますから、こうした組織を大いに活用すべきです。
小野田 県ごとの格差というと語弊がありますが、この解消のための一方策が地区協議会の活動になると思います。
奈良部 先ほども宮下副会長が話しておりましたように、何となく統合したということでは駄目なんですよ。せっかく苦労をして新しい時代に対応すべく統合したのですから、その中の政策の目玉の一つでもあります地区協議会の大いなる活用をはかるために、その運営には十分に心配りをする必要がありますね。そうした場でお互いの持てる知識・情報その他さまざまな案件等を、協会はじめ会員事業者に有益になるよう協議したら宜しいと思いますね。
宮下 魅力ある協会にするためには有益な事業と適切な会運営が不可欠ですから、事務局を中心にしてできるだけ早く五年後あるいは十年後の会事業の青写真を作るべく大いに奮闘してもらいたいと思います。立案した政策や事業の計画は会員のコンセンサスを得るとともに、役員の皆さんの大きな力によってそれを実行できるようにできるだけ早く体勢を築くべきですね。せっかく三団体が統合して日本計量振興協会という新しい形態の組織をつくったのですから、できるだけ早期に統合効果を発揮することが会員の期待に応えることにつながるものと思います。
渡部 地区協議会の運営も大事ですし、それから新団体は委員会活動を活発に実施するという方向性を打ち出しておりますから、この委員会活動につきましてもよく練ったものにしたいですね。
横田 活発な委員会活動を通じて国の計量行政などへも政策提言ができる団体に育っていただきますと、日本の計量の世界はいま以上に厚みをもつようになると思います。政治の世界におきましては英国流に影の内閣という考え方がもたれるようになっていますから、それに倣いまして国の行政機関に対応する民間の対応組織ということで力のある団体に育っていただきたいと存じます。経団連などは政府施策に対して具体的な政策提言をしておりますので、計量行政に関しまして民間レベルで政策提言するくらいの意気込みはあっていいと思います。その中の作業のひとつとして、必要に応じて統合団体立案の計量法案を作ってもいいと思います。そのようなことで計量行政の諸施策に関して政策提言できる実力を備えた団体になれば素晴らしいことです。経団連は議員立法をサポートするほどの強力な活動を旺盛に実施しています。
宮下 新団体は国と都道府県等の計量行政機関が一目も二目も置くような団体になり、具体的な政策提言も積極的にできるよう、一日も早く成長すべきであります。これまでも計量法の立案作業の中で、計量器ごとの個別の分野につきましては、関係団体等で組織した委員会あるいは政府機関・行政機関の委員会活動の場などで、関係分野に詳しい学者、技術者、メーカー関係者が協力してきているという実情がありますから、それをさらに推し進めて行ってもいいわけです。計量業界は様々な分野・業種に分かれており、そうした業種を個別に見て参りますと規模は小さいですから、計量法ならびに関係法令の立案作業をしようとしますと、政府関係機関の人員ではこなし切れないということが起きて参ります。ですから新団体としてはそのような事情を補えるような力をつけたいものと念願しております。
横田 今後は地方公共団体等の計量行政機関にはベテランといわれるような職員が減ってまいりますから、計量行政が適正に実施されるかどうか心細い思いが致します。それを誰かが補わなくてはならないように思います。政策提言をする実力をつけた日本計量振興協会は、国と地方の計量公務員を交えた委員会を通じて計量の実務に関するマニュアルを作ってもいいんではないかと思います。
宮下 そうです、そのようにあるべきです。皆様の発言の中から日本計量振興協会が今後なすべき事業や活動の方向が、かなり浮き彫りになってきたと思います。
小野田 統合した新団体は現場に明るい技術者、公務員経験者その他多彩な人材を集めているのですから国に頼らなくても、私が先ほどからお話ししていた計量大学はすぐ出来てしまいます。
奈良部 委員会活動を活発に行う、また会の中でのコミュニケーションを活発にするということからも、新しい団体の役員がどんな形ででもいいですから、より頻繁に顔を合わせる機会を作るようにしたらいいのではないでしょうか。
宮下 新団体が発足したばかりで、事務局の皆さんも会の事業運営をどのようにするか練れていない所もあるでしょうが、粗削りでいいですから年間の日程などを、早めに出していただきたいと思います。そうすれば役員のみなさんも、それに対応した予定を入れることができると思います。是非ともできるだけ早くにそうした年間の計画を作っていただきたいと思います。
佐藤 新団体は民間機関として、国の計量行政の仕事を強力にバックアップできる団体になるべく、最大の努力をしていかなければならないと考えております。別の言い方をいたしますと、計量行政の実務を請け負うことができる団体になりたいと考えております。そのための準備期間として五年間ほどを要するものと思っております。
奈良部 そういうことでしたら、五年後といわず委員会の組織の仕方等によりましては現在でも何とかできるのではないでしょうか。旧来の日本計量協会、日本計量士会、計量管理協会のメンバーの中には、大勢の優秀な人材がおりますから、必要な知識や技術を持った方々で構成する委員会をうまく運用すれば、今からでもそうした仕事はできると思います。
小野田 新団体の主要な事業にそうしたことが書かれておりますから、事業計画をもう少し具体化すれば宜しいのではないでしょうか。協会の構成員の資質向上、その中には計量士の資質向上も含まれておりますし、また計量士そのものを育成するということも含まれているものと思います。
宮下 現状としては県によっては計量士が不足している、というようなこともあるかも知れません。しかし計量士そのものを養成することや、あるいは企業の中にいる計量士を発掘する、協会に協力できる技術者や人材を発掘するという視点を持つことが必要ではないでしょうか。
渡部 統合新団体としては、三団体がそれぞれ事業としていたものを当面は基本的に踏襲するということですが、その上に新団体として特色ある新しい事業を追加して、強力な態勢で推進するということが求められます。その新しい事業の一つが地区協議会という組織です。このことは先に話しが出ていましたように地方計量協会が、組織的あるいは財政的に困窮してきた原因の一つであります計量器販売関係の事業規制の緩和、つまり登録制から届出制になったということ、そしてまた届出義務があった血圧計と体温計の販売事業者の届出義務が除外されたということが原因になっております。そのようなことで新団体結成によるメリットを創出するということにつきまして、強く意識しなくてはなりません。都道府県の計量組織は大同団結を実現しておりますので、そうした大同団結体としての地方組織を生かせるように計量士、適正計量管理事業者、計量器の製造・修理・販売の届出事業者、計量証明事業者などが共同して実施する事業や関係の事業者の仕事に資する様々な情報の提供などの事業をして行くことは有益なことと思います。
小野田 大同団結までにはなっていない地方組織はまだ全体の三分の一はあります。大同団結未達成の地方計量協会に対してご支援をして、都道府県ごとに計量関係の組織として一つに大きくまとまっていただくことが重要です。そうしませんと地方計量協会の組織は存続が非常に困難になってまいります。
奈良部 都道府県の計量協会における事業ということで特筆されることは、東京都計量協会が実施している計量管理受託業務ではないでしょうか。これは適正計量管理事業所あるいはそうでない事業所の計量管理を東京都計量協会として受託をして実施する、というものであります。東京都計量協会には五名の計量士がおりますので、流通あるいは製造など様々な方面の企業の計量管理の受託業務を実施することができるわけです。それから私が会長をしております東京計量士会では計量管理受託業務として、検査だけではなく計量管理関係全般について指導をし、適切な改善提案や社員の教育訓練や講習なども含めて行っています。
佐藤 情報が欲しいということを訴えられる方が多くいます。計量団体でも地方協会の事務局のところまでは届いているんですが、それから先になかなか伝わらないということを聞いております。そのへんの具合の悪さをいかに克服して行くか。計量新団体が必要な方に必要な情報をどのようにして的確に流していくかということは、課題のひとつです。
渡部 情報と申しましても必要な事項を会報に掲載して会員に届けましても、読まなかったということがよくあります。どうやって見ていただくようにするかということも課題にはなってくると思います。
奈良部 新団体の事業や会運営について少なくとも地方の協会役員の皆様の所くらいまでは情報や会報等がしっかり伝わるような仕組みを築くべきでしょうね。
宮下 会事業のために必要な計量関係の情報の把握に努め、必要な情報を関係の会員に速やかに伝えるということは、協会の事務局にとっては大事な仕事になると思います。
小野田 情報とは与えられるものではなくて、自らが行動して取得するものだと教わりました。
宮下 そのことはよく言われましたよ。情報が欲しければ手土産を持っていって取って来いという内容のことが諺になっています。
奈良部 協会としては情報を収集しただけでは意味がありませんで、それを必要な方に的確に流すという心掛けがなければなりません。
小野田 私ね、情報とは役に立つものだけを指して言うんだと思うのです。
佐藤 インターネットが普及しているわけですから、インターネットをどのように活用していくかということは、検討課題の一つであります。
横田 インターネットを通じて情報を取得するという考えを持てない人は完全に時代遅れです。私も情報がない、情報が欲しいという声をよく聞きますが、古いタイプの計量関係の人々は自分が必要とする計量法令の知識や技術のすべてを役所を介して入手するという考え方です。それもある面ではいいのでしょうが、自分で行動して自分が必要とする情報を収集し整理して、自分の事業やその他に役立てるという訓練が不十分であると思います。自分で分からなければ知っている人に聞けばいいんです。それをしないで情報がないというのはおかしなことです。情報というのは、人に知れ渡ってしまったものは自分にとっても大きな価値を持ち得ないことが多いんです。知識的性格の強い情報はこれとは扱いは別ですがね。ビジネスや事業の世界において、人より先に行動を起こすことは大事です。先んずれば人を征することができるんですから、有益な情報や知識に人より早く接して、人が行動を起こす前に行動をする。ビジネスのチャンスをつかんでいくということはそのようなスタンスであることが肝要でしょう。
渡部 同じ事実を伝えていても、人によっては必要のない意味のないことが多いですし、片やその事実が絶対的な意味をもつと判断する人もいます。そのような意味では協会のホームページにあらゆる種類の情報を盛り込んでおき、その中から利用者は自分に必要なものを拾い出して行くという利用のシステムを築き上げることが求められているように思います。
横田 新団体の財政運営ということに関しましては、会費収入のほかに財政に寄与する新しい事業を作り上げていくことが大事ではないでしょうか。
宮下 会の財政に寄与することということでは会員を増強することが直接的なものです。会員が魅力ある事業を実施すれば、計量士で会に入会していない人々が入ってくると思います。計量士国家試験では毎年かなりの人数が合格しているんですから、そのような人々を新団体の会員として迎え入れることができるはずです。
横田 その昔、計量士会は計量士登録をして仕事をする人は必ず計量士会に所属しなければならないといった、弁護士制度と同じ組織になるための検討をしたことがありました。残念ながら希望通りの結果にならなかったようですね。
奈良部 計量士法の制定をしようということで色々と動きがありました。
宮下 計量士であれば、あるいは計量士として仕事をしようとすれば絶対に入会しなければならない魅力ある団体に新団体がなるように関係の皆様とともに大いに努力したいと考えております。
奈良部 計量記念日行事を新団体としてどのように盛りあげるかという課題があります。計量士、計量管理協会関係の会員、日本計量協会関係の会員が従来に増して結束して、盛り上げて行くようにしたいと思います。適正計量管理事業所など企業の皆様には、広報窓口や関係部署などに働きかけて、計量記念日などに計量のことを国民・消費者に訴えかけて行くようにすればいいのではないでしょうか。いずれにしても新しい発想で、十一月一日の計量記念日行事を従来以上に大きな国民的行事として実施するようにしたいと強く念願しております。また計量記念日行事には、今まで直接的に行事に参加していなかった会員の皆様には、今年からは是非とも参加していただくことができるような仕組みを考えたら宜しいのではないでしょうか。
小野田 計量記念日行事に関係してポスターや標語等の募集をし、入賞者の表彰をしたこともありました。この時には全国から多く作品が寄せられてまいりました。是非ともこのような行事を実施できればいいと思います。これは計量百年記念行事のなかで実施しました。小学生、中学生、高校生、その他から作品を募集しました。子供のころの印象というのは後々まで残りますから。子供のころに計量に強い関心を持ってもらったら宜しいと思います。計量思想の普及に関しましては大事なことの一つが、小さい頃からの計量教育ではないでしょうか。標語やポスターの募集とそれへの応募は、広く見ましたら計量教育といえなくもありません。
奈良部 計量記念日のポスターなどの入賞作品をデパートの銀座松屋で展示したことがございます。子供さんだけではなく、お父さんお母さんもご一緒に入賞作品を見に来るということで、親子ともどもの計量教室あるいは計量教育の場として機能したのではないかと思います。
宮下 計量記念日のポスターや標語の優秀作品には、通産大臣もさることながら協会長の名で表彰するということは直ぐにでも出来ることではないでしょうか。是非ともやってもらいたいと思います。日本計量振興協会会長表彰あるいは地方ごとに計量協会の会長表彰を出すようなことで、計量記念日ポスターや標語その他計量記念日にちなんだ様々な啓発的な行事、表彰をしたらいいでしょうね。
奈良部 新団体の事業の中にも協会事業の目的の達成のために、顕彰事業の充実ということが入っております。従ってそのような取り組みは積極的に行うべきものと考えます。
渡部 話しが戻りますが日本計量振興協会は、できるだけ委員会活動を中心にして政策を立案すべきだと思います。
奈良部 委員会の場で議論されたことを事務局がうまく吸い上げて、事業や会の運営に生かしていくシステムを確立して行ければ宜しいですね。
渡部 そうですね。委員会等であまり議論されないままに政策や事業が決定されるということは避けるべきでしょう。
小野田 委員会制度を大幅に取り入れて活発に動いて行くということで、新団体の運営方法のコンセンサスができあがりつつあることは確かです。できるだけその趣旨に従って動いて行くべきだと考えます。
奈良部 統合団体で一番大事なことは、会員から会長、副会長、役員などの顔がよく見えることです。それから役員同士の交流を積極的に図ることです。そうすればお互いの心が知れて、会の運営や事業推進に大きな効果を発揮するでしょう。役員同士でお互いに顔も知らない、交流もないということでは全くお話しになりませんから。
宮下 日本計量士会の場合には、役員同士の交流を非常に活発に積極的に実施してまいりました。そのようなことが様々な形で会の結束の強化ならびに事業や会運営の活性化につながっているものと強く感じております。
奈良部 その通りです。私も計量士会での経験を通じてそのことを強く感じています。
宮下 私としても日本計量士会の会長として役員、会員の皆様との交流に随分と時間を割いて参りました。
奈良部 やはり会議だけでは不十分だということは言えますね。
宮下 そうなんです。会議の後のアルコールによって交流が非常に促進されます。
渡部 潤滑油を入れて会議後の話し合いを継続いたしますと意外なほどに様々な意見が出て参ります。
奈良部 そういう場所ではよく本音がでます。
渡部 理事会など大勢が集まっての会議では、一人当たりの発言の時間が物理的にも非常に制限されてしまいます。意見を持っていても、時間のことを考えたら発言しにくいという事情があります。
小野田 そうです。畳の上に座ってアルコールが入りますと、非常に率直になりますし本音でものを言うようになります。
宮下 統合新団体の立ち上がりにおいては、それぞれ旧団体の関係者の意思の疎通が非常に大事かもしれません。
佐藤 新団体の事務局は、三団体別々になっていたものを一まとめにしたということですから事務局として話し合いを綿密に行って、事業部ごとにも全体としても意志の疎通を十分に図らなくてはならないと思っております。
(終わり)
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