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計量士の法で定められた職務権限と計量管理の本来の在り方への対応


 計量制度は根幹的な社会基盤であり、日本の計量制度の骨格は計量法によって形づくられている。計量の基準を定めることは計量制度の前提になることであり、計量法でも第一条の法目的のなかで@計量の基準を定めること、A適正な計量の実施を確保すること、の二つをうたっている。

 計量法令の諸規定の過半は、商取引および証明分野における適正な計量の実施を確保するための規制的要項によって構成されている。適正な計量の実施とは、時代・社会の事情に適合した度合いの内容のものであり、その時代・社会にとって望ましいと思われる内容に落ち着くのが常である。

 計量士制度は計量法の「適正な計量の実施の確保」、言い換えると計量の安全を確保と結びついて構築されている。計量の安全の確保のため、取引・証明分野で使用される計量器は、計量法の諸規定に基づいて製造・供給され、使用段階でも様々な管理等の義務を負わされている。計量法に規定された計量士の職務の大半は計量器の検査に係わるものであり、とりわけ「定期検査」が中心になる。定期検査の実施主体は自治体(都道府県計量検定所および計量検査所等)であり、計量士はこの業務を代行する法的資格を与えられているという形態をとる。計量士による定期検査の代検査、適正計量管理事業所における定期検査の免除(免除の実態は定期検査に代わるに足る検査、管理が実施されていることの承認)が、計量法上の計量士の職務権限に関する内容となっている。別の表現をすると「計量士の職務は、自主的に計量管理を行おうとする事業所、店舗等での計量器の整備、計量の正確保持、計量法方法の改善など適正な計量の実施を確保するための措置を講ずること、あるいは濃度、騒音、振動について計量証明を行うこと」となる。

 計量法上における計量士の法的職務権限の実際は帰結するところ、役所が実施する計量器の「定期検査」の代行若しくは同等の検査の承認の域を出ない。指定製造事業者等に関連して計量士の資格を活用する規定があるが、これは計量士の資格登録要件の「知識」に依拠してのものである。

 以上、計量士の計量法上の職務を再度まとめると「計量士の職務は役所が行う定期検査業務の代行者」ということになる。これはあくまでも計量法の規定に基ずく職務であって、計量士および計量管理の担当者の多面的な計量管理活動の実際とは別のことである。

 計量士制度の創設に至るまでの歴史とその後の計量士の計量管理業務の実績と計量管理理論の発展は、計量法上の計量士の職務の範囲をはるかに超えた広範囲なもので、生産分野においてはる品質の確保とコスト低減、ブランド力向上に寄与することによる経営への貢献、また流通分野においては適正計量の実施を中心とする顧客の信頼確保を通じての経営への貢献等、素晴らしい業績が蓄積されてきている。

 計量と計測の神髄の一つは計量管理にあり、計量管理は何時の時代でもその革新が望まれる。計量・計測の限りない利用と活用の理論体系の一つが計量管理理論といえ、各事業場で働く計量士あるいは計量管理担当者の業績内容の向上を期待したい。計量士が社会か求められる職務は計量法上の職務権限を超えた分野であり、それは本来的な意味の計量管理であり、平たくいえば計量と計測の限りない活用であり、それは人類の英知の活用でもある。

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