目次へ戻る


はじめに

 知的基盤は、科学技術の成果を体系化し、広く社会に提供することにより、経済活動や研究開発活動を円滑化・促進するものである。我が国経済社会の構造改革が求められる中、市場における競争原理の徹底するための前提としての環境整備の観点、また、市場のグローバル化における魅力ある事業環境の整備の観点から、知的基盤の重要性が再認識されるようになった。
 このような背景から、平成8年7月に閣議決定された「科学技術基本計画」及び平成9年5月に閣議決定された「経済構造の変革と創造のための行動計画」において、知的基盤という言葉が新たに使われ、その整備の充実の重要性が唱われた。
 さらに、知的基盤整備の加速的取組みの具体化については、平成10年6月に産業技術審議会・日本工業標準調査会合同会議知的基盤整備特別委員会が「我が国の知的基盤の充実に向けて」と題して報告書を取りまとめた。この前報告書は、我が国として初めて知的基盤の概念を整理し、整備の基本方向と具体的計画を明らかにしたものである。
 その後も「産業再生計画(平成11年1月閣議決定)」、「緊急雇用対策及び産業競争力強化対策について(平成11年6月産業構造転換・雇用対策本部決定)」、「経済のあるべき姿と経済新生の政策方針(平成11年7月閣議決定)」等において知的基盤整備の重要性が明記され、知的基盤という概念は社会的にも徐々に受け入れられ確立される過程にある。しかしながら、本委員会による前報告書の取りまとめは、政府において知的基盤という概念と具体的計画の下にその整備に係る施策を展開した初めての経験であり、また、当該計画は全体としては概ね2000年頃を念頭に置いて策定されたものである。
 以上にかんがみ、本報告書は、知的基盤の概念を再整理・再確認しつつ、前報告書を受けた取り組み状況を踏まえ、新世紀を迎えての初めの10年すなわち2010年を1つの区切りとして、知的基盤の整備目標とその方向性を示すことを目的として取りまとめたものである。知的基盤整備の充実のためには、前報告書において指摘した事項に併せ、本報告書に沿って施策を進めていく必要がある。


上へ↑  目次へ戻る