第3章 2010年に向けた知的基盤整備の目標及び方向 |
(1)必要性の背景
@経済のグローバル化を背景とした国際市場におけるルールの共通化
国際的な自由市場の拡大[例えば、APECにおいて1994年のボゴール宣言で2010年に域内先進国の自由貿易化(途上国は2020年)が目指されている。]の中で経済取引の効率化、公正性の確保の観点から市場におけるルールの共通化が求められている。これについて技術的観点からは、適合性評価において国際的な共通ルールを用いることにより、輸出国側で実施された製品等に係る試験(テスト)の結果を重複試験を実施することなくそのまま受け入れるというワンストップ・テスティング(one stop testing)を推進することが重要である。
適合性評価(※2)結果の信頼性確保については、試験等における国家計量標準にトレーサブルな計測がその基礎を成す。国家計量標準に対する計測機器のトレーサビリティは、計測の信頼性の証拠を示す(第三者が客観的・科学的に検証可能という意味で)普遍的なルールとして国際的に受け入れられている。これは多様な文化の存在する国際競争社会において相互の信頼性を継続的に担保するためには、このような普遍的なルール、言い換えればシステムが必要不可欠だからである。
この国際的なトレーサビリティに基づくワールドワイドな計量システムは、各国(各地域)ごとの国家計量標準の整備、国家計量標準の国際比較による品質(同等性)の確保と品質の継続(品質保証システムの確立)を主要な構成要素としている。このような共通ルールの下でいわゆる国際コミュニティーが形成され、その中で初めて自由で公正かつ効率的な競争に参加することができる。
このような背景を受け、本年10月、日米欧を始めとする38ヶ国により、国家計量標準機関(NMI:Nationa1 Measurement Institute)が維持する国家計量標準の同等性の確立とNMIが発行する校正証明書の相互承認に関する協定(グローバルMRA)が締結された。
A計測という基盤的技術力の維持・向上
このような計量システムの国際コミュニティーに参加していくためには、主導的役割を果たすに耐え得る国家計量標準を整備し、国際又は地域レベルでの国際比較(基幹比較)に参加していかなければならない。この結果は、計量標準の海外依存による追加コストの防止に止まらず、計測という広く産業に重要な基盤技術を国際水準に保ち、技術的体力を維持・向上させるものである。具体的には、お互い信頼できる共通の計量標準の基盤に立脚することで、公正な経済取引やより信頼性のある生産管理、品質管理が可能になり製品の信頼性を向上させ市場での競争力をつける。さらに、高精度の計量標準・標準物質の開発は、例えばLSIの高度集積化の実現や品質管理に超微細計測及びその標準が必要であるように、今後の超微細、超精密、超真空といった極限環境技術等の先端技術の開発に不可欠な存在である。
(2)2010年に向かっての目標と方向
我が国の計量標準の開発・供給等の現状は、米国に大きく遅れ、欧州にも遅れていることから、計量システムの国際コミュニティーにおける3極(日米欧)の1つとしてのプレゼンス確保の観点から、2000年までに欧州並み水準を目指しているところである。
さらにその先の展望としては、国際経済、研究開発におけるフロントランナーとして、創造的な技術革新を生み出し、経済活動、研究開発の最先端における過酷な国際競争に勝ち抜くことのできる事業環境と技術力を確保するため海外に頼らない知的基盤の確保が重要であり、2010年頃までに世界のトップレベルの規模及び質を目指す必要がある。
世界のトップレベルの規模として現在の米国並み水準を目指し[物理系の計量標準およそ250種類程度(2005年にはおよそ180種類程度)、標準物質およそ250種類程度(2005年にはおよそ180種類程度)]、整備していく標準は、先端技術開発(超微細、超精密、超真空、超高温、高機能等)及び環境保全(pptレベルの環境中の極微量物質等)、安全等社会的課題への対応に必要なものに重点化していく必要がある。
(3)目標達成のための体制整備
国際的に整合した計量システムは、@国立研究所による国家計量標準の開発・維持、A国家計量標準の国際比較による国際整合性の確保、B国家計量標準のトレーサビリティを通じた供給から構成されており、目標達成のためには、これらが高いレベルで円滑に行われていく必要がある。
@国立研究所による国家計量標準の開発・維持
(1)で述べた国際的な計量システムにおいては、国内のトレーサビリティの頂点としてNMIが重要な位置を占めており、一次標準は中立性、唯一性を有する公共財的な性格から国立研究所が開発・維持することが基本となる。ただし、標準物質については、現状の開発、供給の実態、民間の能力の活用の観点から以下のとおり官民分担することが適切である。すなわち、計量法校正事業者認定制度(JCSS)に基づく純物質系の標準物質は、共通的、基盤的性格が強いことから国立研究所が開発する。純物質系標準物質の維持・管理については製品評価技術センター(※3)、校正事業者への直接の供給については(財)化学物質評価研究機構[旧(財)化学品検査協会]の能力を活用することが適切である。組成標準物質については、国(国立研究所)は、半導体、液晶等先端産業での品質確認に不可欠で技術的、経済的に民間で対応が困難な多層膜、薄膜、高性能高分子、高純度金属等、更には、より公共性・中立性が重視される重金属系、内分泌撹乱物質系等の環境分析用組成標準物質を中心に開発する。それ以外の組成標準については、その種類が多岐にわたることから、既に材料系について中立的な民間産業団体等から相当数供給されており、これらの民間能力を活用し国家的な信頼性を付与していくことが重要である。
国における計量標準、標準物質の開発体制については、計量研究所、電子技術総合研究所、物質工学工業技術研究所に分散していた我が国のNMIを2001年4月に設置予定の独立行政法人産業技術総合研究所の一部として統合される予定である。ここにおいて人員・設備・予算面を拡充し、総合的・集中的に取り組んでいく必要がある。国立研究所の体制整備に当たっては、標準の開発、供給の業務に欠かせない技術者等の不足に対応するためには、外部の人材を活用していくことも検討する必要がある。
研究者、技術者の評価については、標準供給業務が必ずしも論文につながるものではない点を考慮し、研究者、技術者のインセンティブが確保され得る多面的な評価が必要である。
A国家計量標準の国際比較による国際整合性の確保
国家計量標準の国際比較は、国際度量衡委員会(CIPM)において全世界レベルで基本的な標準に対する基幹的な比較と、アジア、米州、欧州といった地域レベルで実用に近い標準も含めた比較の組み合わせにより行われている。
アジア地域においては日系企業も多数進出しており、これらの企業の競争条件の整備の観点及び国際貢献の観点から、我が国はアジア地域の標準供給の中核的役割を果たすべきであり、アジアの計量標準の地域組織であるアジア太平洋計量計画(APMP)の活動において主導的な役割を果たす必要がある。アジア地域の中核として、また、国際的なルールメーキングヘ関与し我が国の利益を確保すること及び国際貢献の観点からも、アジアの代表としてCIPMの国際比較の活動に積極的に参画し、主導的役割を果たす必要がある。
B国家計量標準のトレーサビリティを通じた円滑な供給
国立研究所で開発し、国際比較した国家計量標準を適切なトレーサビリティを通じて生産や取引の現場等の末端まで供給していくには、どのような計量標準を供給していくかという問題に加え、実際の現場への供給を如何に円滑に行うかという制度面の問題があり、この点では校正事業者の能力の認定制度が十分に機能するということが重要である。今後、JCSSの対象範囲が拡大していく中で、アジア太平洋試験所認定協力機構(APLAC)へのMRA調印を行った製品評価技術センターは、認定機関としての能力を一層充実・向上していく必要がある。その際、国立研究所は技術審査・技能試験面で協力・連携していく必要がある。
また、計量標準センター、2000年9月に完成予定の国際計量標準センター及び2001年3月完成予定の標準物質センターを標準の開発、供給の中核として位置づけ活用していくことが必要である。すなわち、計量標準センターにおいては、校正業務、認定業務に係る技術指導及び技能試験等を中心に実施し、国際計量標準センターにおいては、国際比較、相互承認等を中心に実施し、標準物質センターにおいては、標準物質の開発を中心に実施する。
C民間の能力の活用
先にも述べたように、材料系の標準物質については、既に中立的な民間産業団体等から相当数供給されており、これらの民間の能力を活用していくことが重要である。その際、民間団体から供給される標準物質について、計測の基礎となるものとして高品質かつ安定的に供給する必要があるもの、又は国際的に整合した計量システムの構築に必要であるものについては、国家計量標準に相当するものとして位置づけることが有効である。この場合、ISO/IECガイドに基づく国際的に整合した認定スキームに沿った形で、標準物質供給のための認定システムを構築すべきである。
計量標準を産業活動等の現場まで供給するのは校正事業者である。また、2001年4月には、認定事業者が行う計量器の校正の対象を生産等の現場の計量器まで広げる計量法改正が施行予定である。当該制度の十分な活用等により校正サービス事業の活性化に努め、国家計量標準の供給体制のすそ野を広げることが必要である。
Dトレーサビリティ制度の重要性の普及啓発
(1)で述べたように国際経済の要請からトレーサビリティの確保が重要であるにもかかわらず、我が国産業界において重要性の認識が不足していると思われる。国際的な品質保証の思想としてトレーサビリティが世界で重要視されつつあることの理解を深めることがまず必要であり、そのため国際計量シンポジウム等を開催して普及啓発に努める必要がある。更には、標準物質関連情報の一元的な受発信のために、現在、製品評価技術センターが主体となって構築中である標準物質情報システムを活用して、トレーサビリティの重要性の普及啓発に努める必要がある。
また、計測の信頼性を体系的に担保するためには、今後、試験評価方法に係る日本工業規格(JIS)においてトレーサビリティの要求をできる限り盛り込むことが有効である。
なお、トレーサビリティ制度の普及に当たっては、様々な形態の現場に応じて、トレーサビリティの厳密性を品質確保上の必要性に照らしてどの程度要求することが適切かを考慮することが重要である。
E関係省庁等との連携
近年、サイエンスとテクノロジーの境界が益々近くなる状況にあって、最も近い関係にあるテクノロジーのひとつが計測技術である。特に、量子標準に関してはこの傾向が著しく、ここ四半世紀を概観しても、レーザ(長さ標準)、ジョセフソン効果(電圧標準)など一次標準技術として確立したものをはじめ、レーザクーリング効果(次世代高精度時間・周波数標準技術)、超伝導効果(次世代質量標準技術)など多くの例があげられる。このように先端科学技術と計量標準の歩みは同調していると言える。すなわち、計量標準の高度化、次世代標準の開発は、学術的に高度で先端的なものであり、基礎研究を担う他の機関、大学などとの連携・協力が重要である。また、今後電子商取引などの進展に伴い、標準時間の円滑な供給が各方面で要求されると思われるが、時間標準と周波数標準の近接性にかんがみ、周波数標準の開発・供給を行っている郵政省通信総合研究所との連携・協力が重要である。
(1)必要性の背景
世界の経済社会において高度に工業化が進む中で、様々な工業製品等が我々の日常生活を豊かにし利便性を高めている。このように様々な形で生活に利便性を与えてくれる工業製品等の発展には、その基礎素材としての化学物質について、応用範囲を広め、また、機能の高度化を進めた技術開発の成果が大きいと言える。しかしながら、機能が高度化する一方で我々の生活の安全や健康に与える影響として化学物質の固有の有害性が懸念されるようになった。これら化学物質の取り扱いや管理の方法如何によっては、環境汚染や人の健康に悪影響をもたらす危険性を有する。
化学物質の管理は、当該物質の性質等に関する正確で科学的な知見に基づいて初めて適切に行われ得るものである。このような工業製品等を通して社会に提供される産業活動に関わる化学物質は、今日では5万〜10万種類という膨大な量が取引されており、これら多数の化学物質に対して、有害性・危険性に係る科学的知見(ハザードデータ及びそれを得るための試験評価方法)を加速的に取得・蓄積していく必要がある。また、このような化学物質を取り扱う事業者は、化学物質そのものの製造事業者に止まらず、その他の素材産業、加工組立て産業等幅広い産業分野で存在するため、取得・蓄積された化学物質の有害性・危険性に係る科学的知見を広く知的基盤として事業者に提供することが、化学物質を適切に管理し、活用する社会システムを迅速かつ効率的に構築するために必要である。このような化学物質安全管理のための知的基盤は、現在の我々自身の安全確保のためのみならず、将来の世代に健康で安全な社会を引き継いでいくためにも重要である。
(2)2010年に向かっての目標と方向
化学物質の安全管理については、従来から経済協力開発機構(OECD)等の場においても重要課題として国際的な検討が推進されているように、産業活動の活性化と地球環境や人の健康の保持を両立し、かつ、人類の永続的な発展に資する観点から、適正管理に基づく社会システムを今後の国際競争市場にも組み込むことが必要となると考えられる。また、我が国の環境を保全し国民の健康を保持するとともに、我が国産業活動に係る魅力ある環境を整備する上で国際的にも先進的な地位を占めるべく努力すべきである。
したがって、現在、製品評価技術センターで構築している化学物質ハザードデータベースについては、当面2005年までに約3000物質に相当する規模を、さらに、2010年には米国に比しても遜色のない世界最高水準として、約4000物質に相当する規模の詳細な情報(具体的には、物理的化学的性状・環境中運命のほか、生態毒性・急性毒性・変異原性毒性・生殖毒性等の毒性に関する詳細データが必要。)のデータベース整備を目指す必要がある。米国のデータベースの登録物質数は約8000であるが、単に登録物質数を増やすのではなく、むしろデータの内容を重視した精度の良い詳細データを4000物質程度整備することによって、量と質の総合的な観点から世界最高水準を目指すことが適当である。
試験評価方法については、光分解性等の化学物質の環境・生体内での新たな挙動評価試験法等の開発・改良を行い、OECD等へ積極的に提案し標準化を図るとともに、構造活性相関を活用した新たな有害性評価手法の開発を実施する必要がある。
また、内分泌攪乱物質問題の解決に向けて、当面は、簡易スクリーニング試験法及び関連する分析手法(環境中及び血中ホルモン濃度分析法等)の確立を行い、長期的には生殖毒性・多世代繁殖試験等の高次確認試験の開発・標準化を目指す必要がある。
さらに、環境中の微量化学物質の分析・計測技術の開発(センサーの開発)、化学物質の環境中の挙動や分布予測システムの開発を行い標準化を図るとともに、円滑なリスクコミュニケーションの導入に向けて有効な有害性評価と曝露可能性の評価に基づくリスク評価や判定手法の開発・標準化を図る必要がある。
(3)目標達成のための体制整備
@官民の役割分担
化学物質の有害性・危険性に係る科学的知見を社会全体として蓄積していく上で留意すべき点は、提供されるデータを信頼性のあるものとすることであり、このため有害性・危険性の試験評価方法を国が確立し民間に提示すること、民間で得られたデータの信頼性を国が確認することが重要である。
化学物質の適正管理は一義的には事業者の責任において行われるべきもの(平成11年7月化学物質管理促進法成立)であるが、民間の事業活動が円滑に行い得るように、試験評価法の開発、広範かつ大量に使用されている物質や緊急にハザードデータの収集が必要な物質のハザードデータの取得等の化学物質に関する科学的知見の充実や、それを広く事業者に提供するハザードデータベースの整備は国が中心に行う(化学物質管理促進法第17条)ことを基本とする必要がある。一方で民間の能力を活用することが国際的にも議論されており、OECDで行われているHPV(高生産量化学物質)に係る有害性点検プログラムにおいて、ICCA(国際化学工業協会)における取り組みの中で民間もデータの取得を進める必要がある。ただし、このような場合でも有害性評価については国が実施する必要がある。
整備を進めていく主な体制については、データベース整備は製品評価技術センターを中核とし、化学物質評価管理に関する調査研究、試験実施、評価等は(財)化学物質評価研究機構[旧(財)化学品検査協会]を中核として進め、さらに、化学物質評価管理に関する頭脳集団として工業技術院の研究所の活用を図ることが適当である。
また、2010年に向けた目標を達成するためには、民間の能力を活用することが重要であり、化学物質の性状・取扱いに関する情報の流通を促進する等の観点から、国の整備するデータベースに加え、民間団体によりMSDSデータベースや製品データベースを構築し、積極的に公開していく必要がある。その際、企業秘密に該当する項目については非公開として取り扱うことや、データ提出に伴う不公平感解消のための制度設計を実施する等、民間データ活用のための障害を除去する方策を検討することが必要である。
A関係省庁との連携
これらの目標を達成していくためには、関係省庁と密接な連携を図る必要がある。具体的には、通商産業省は主として化学物質安全管理を産業活動にビルトインする観点から、環境庁は環境保全の観点から、厚生省は人への健康保護の観点から化学物質の新たな試験法の開発、性状等のデータ取得、モニタリング調査、免疫学的調査等を実施することが適当である。
(1)必要性の背景
生活の質的向上、ゆとりと豊かさ重視へと国民のニーズは一層強まってきている。一方、このような要求に対応するための機器の高度化により、高齢化の急速な進展の下では、かえって誤使用・誤操作の増大を招いている(※4)。このような背景を踏まえ、身体機能の低下した高齢者を含め、より多くの人が安全・安心・快適な生活ができるよう、より一層人間及び生活環境の特性に合致した製品作りが必要である。欧米市場では既にこのような点が重視されており、こういった面での製品の高付加価値化を通じて、企業の国際競争力の向上を図ることが重要である。このため、人間特性データ、製品事故・安全データの収集・解析・提供、関係する評価・解析方法の開発・確立が必要である。
この分野は人間と機械(技術)とのインターフェイスに係るものであり、生活に密接に関連する身近な分野において、年齢や身体機能の状態によらず人に優しい、使い勝手のよい、安全・安心な技術体系の確立のために不可欠なものである。このような知的基盤を国が提供していくことが、新世紀における技術開発を望まれる方向に導き促進していくための政策上の重要なツールとなるものである。
また、このような知的基盤は、国内における技術開発を上記のような方向に促進していくのみならず、国際標準への提案能力の確保に重要な役割を持つ。すなわち、WTO/TBT協定により国際規格への整合が要求されている中、現在、ISOの場では、人間生活に係る規格原案は、欧州各国から多数提案されており、このままでは日本人の特性に合わない製品規格が制定される恐れがある(1999年現在、ISOでの人間工学に係る規格を担当するTC159及び関連リエゾンTCにおけるTC/SCの幹事国引受数を国別で比較した場合、ドイツ26、米国20、フランス15、イギリス14等であるのに比べ、日本は3であり、圧倒的に数が少ない。また、幹事国別国際規格数を比較すると、ドイツ2、イギリス34に比べ、日本1であり、これも圧倒的に少ない)。このような国際規格制定の動向に対して、我が国が一定のステイタスを持って発言し、欧州の人間生活に偏らない規格を制定していくことが重要であるが、日本人の人体特性、生活環境等に適合した規格を提案し、それが国際標準化の場で受け入れられるには、科学的根拠が必要であり、この科学的根拠となるのが人間生活・福祉関連の知的基盤である。
(2)2010年に向けた目標と方向
先進諸国と我が国の高齢化率7%(高齢化社会)から14%(高齢社会)に至る所要年数は、フランス114年、イギリス46年、ドイツ42年等に対して、我が国は24年であり、我が国の高齢化は世界に類を見ないスピードで進行している。一方、高齢化率については、2000年には17.2%となりスウェーデンに次いで世界第2位。その後2005年には確実に世界第1位となり、2010年には、21%(高齢化社会の3倍)を超えて、22.0%になると予測されている(平成10年度高齢社会白書より)。
そのため、このような高齢化の進展に対応すべき人間特性データの収集に関しては、2005年と2010年を目標とすべき期限として考え、具体的には、2005年までに現在の米国レベルに追いつくこと(寸法・形態:1万人程度、動態、視・聴覚:2千人程度)を目指し、2010年までに世界の最高水準を目指す(寸法・形態:2万人、動態、視・聴覚:4千人)ことが必要である。また、これらのデータ取得に必要な試験評価方法を開発していくことが必要である。
また、寸法・形態、動態、視・聴覚を中心にしながらも、必ずしも数値化することができないような、日々の生活における人間の日常的な行動やその中での快適さ、使いやすさといった感覚に係るものも重要である。
これらを進めるに当たっては、急速な高齢化の進展、安全・安心の確保といった社会的要請、ユーザニーズに応じた質の確保、更には新規市場の創出につながる計測技術の先端性等に基づくものに重点化を図ることが適当である。
(3)目標達成のための体制整備
@官民の役割分担
人間特性に関するデータ収集に当たっての官民役割分担の基本的考え方としては、イ)国においては、計測が困難であって大量にデータ収集を要する産業横断的・基礎的な知的基盤を中心に整備し、ロ)民間企業においては、個別分野における製品の高付加価値化のための知的基盤を整備することが重要である。
具体的には、国においては、製品評価技術センター、(社)人間生活工学研究センターを中核的組織として、上記イ)の整備を進めると同時に、公共試験研究機関、国立研究所、大学、一般企業等が知的基盤を整備するに際しての一定の方向性・条件等を示すことが求められる。
一方、我が国全体の知的基盤の効率的整備の観点から、人間特性データの収集を行っている公共試験研究機関、国立研究所、大学と国との間で、有機的な連携体制を築くことが重要である。
また、人間特性データの収集を行っている公共試験研究機関、国立研究所、大学の中には、一般企業と連携している機関もあり、上記ロ)の整備に当たっては、今後、その有効活用について、検討することが重要である(※6)。
世界のトップレベルという目標を達成するためには、民間における知的基盤整備の能力を有効に活用することが重要である。民間が自らの収集する個別商品差別化のためのデータの中でも広範な産業に共通に活用できるデータも含まれるものと考えられる。例えば、官民共同プロジェクトに民間も一定の負担の下に参加する等、国が広く提供する知的基盤の整備にも民間が自らの事業活動の一環として参加していけるような方策を検討する必要がある。
A関係省庁との連携
人間及び生活環境の特性に係る知的基盤の整備は、各省庁に横断的に関係する(例えば、道路、標識、輸送機器の建設・製造等)ため、連携を強化することが求められる。そのため、平成9年5月に閣議決定された「経済構造の変革と創造のための行動計画」新規・成長15分野「生活文化関連分野」に係る関係省庁連絡会議、また平成12年予算要求中の「高齢者特性データベース構築等」に係る各省庁連携の仕組の中において、人間特性データの収集・活用に当たっての課題・役割分担を検討し、知的基盤の整備事業に反映させることが重要である。
(1)必要性の背景
バイオテクノロジーは、人類が直面している様々な課題の解決に貢献することが期待される画期的な技術であるとともに、幅広い産業分野に波及する横断的な技術である。例えば、化学分野においては、化学物質のヒトヘの安全性や新素材の開発、食品分野においては、食を通じて健康を増進させる機能性を有する食品、医薬・医療分野においては、副作用の少ない医薬品や遺伝子治療、環境分野においては、生物の高感度な反応機能を活用したモニタリング技術、エネルギー分野においては、微生物を利用した燃料生産、等枚挙に暇がない。つまり、バイオテクノロジーの生物資源基盤を整備することは、広範な産業の基盤となるものである。
バイオテクノロジーは、未だ開発途上であり、目的を持ってはじめからその成果物を設計できるといった方法論が確立した分野ではない。したがって、依然として基礎的な研究が必要であり、その成果を研究者に提供できるように知的基盤として整備し、大いなる知の泉を形成することが必要である。
生物機能を人工的に利用するバイオテクノロジーの具体的に必要な知的基盤としては、まず、(a)多用な機能を提供する生物資源、(b)その生物の機能の根本であるゲノムの解析情報、(C)遺伝子により生成され生物機能を直接左右するタンパク質の解析情報であり、これらが継続性を持って常に最新に更新され広く研究者等に提供され得る形(データベース等)として整備される必要がある。これらの知的基盤が揃って初めて、産業化に向けた高度な研究開発を加速的に行うことが可能となる。
米国では、90年代始めにバイオテクノロジー産業を戦略的に重要な産業としての位置づけを明確化しており、ゲノムの塩基配列解析からタンパク質の機能解析に至るまで幅広い分野で大規模に知的基盤の整備が行われてきた。
一方、我が国においては、知的基盤整備はまだ十分とは言えず、バイオテクノロジー産業は、米国に大きく差を開けられた形となっているのが現状である。
(2)2010年に向けた目標と方向
短期的には我が国の得意な技術の活用を中心としつつ、急速な知的基盤整備の立ち上げに努め、長期的には、基礎研究と実用が近接しているバイオテクノロジー分野において、世界のトップレベルに伍して創造的な研究開発を継続的に繰り広げていくために、研究開発の言わば土台を形成するゲノム解析及び生物資源提供について現在の米国並み水準を目指すことが必要である。
現在、ヒトゲノムの塩基配列の確定目標年次が2003年に前倒しされているように、ゲノムの塩基配列解析が世界中で猛烈なスピードで行われている。我が国は、かかる塩基配列情報に付加価値を与える完全長cDNAやSNPsの解析を集中的に実施することにより、ゲノム情報の活用の基礎を確立することを当面の目標とすることが適当である。具体的には、機能解析に重要な遺伝子領域に着目した完全長cDNAについて、我が国が技術的に先行している取得技術を活用しつつ、2001年までに3万個を目標に解析することが必要である。また、日本人の標準SNPsを10〜15万個程度確定することにより、疾患や薬剤反応性の原因解明・診断のための知的基盤を整備することが必要である。さらに、広範な産業活用に利用されており、ヒトの機能解析にも応用される微生物ゲノム解析についても、引き続き実施していくことが重要である。
2010年までの長期的な観点からも、生物機能解明の前提となるゲノム解析が大規模に実施できる体制を構築することがますます重要となると考えられる。10年度補正予算により製品評価技術センターに30Mbps/年という世界にも見劣りしない解析体制を整備したところであるが、ゲノム解析に対するニーズの増大にあわせて、2010年までには、現在の米国最大解析機関(JGIやMIT)並の数百Mbps/年程度の解析体制を整備することを目指す必要がある。また、かかる機能を活用しつつ基礎的なゲノムの塩基配列解析を行い、大量のゲノム情報を知的基盤として提供していくことが重要である。
しかしながら、大量のゲノム情報を産業に活用するためには、遺伝子がコードするタンパク質について、その性質を知ることが必要不可欠である。例えば創薬の開発に際しても、関連するタンパク質を特定し、そのタンパク質が他の分子と反応し、その結果生体内で果たす役割を特定することができなければ、目的とする効用をもたらす創薬開発が不可能となる。よって、ゲノム情報を基に、対応するタンパク質の発現系開発や発現頻度解析をはじめとする機能の解明を行うことが、ゲノム情報とともに産業化のための知的基盤の整備となるものである。
また、上記のゲノム解析やタンパク質解析で得られた情報の提供に当たっては、統一的なコンセプトの下に、国内外の各機関の有するデータベースに蓄積された情報と合わせて高度にネットワーク化された統合データベースを構築し、そのデータベースを広く研究・産業化の用に提供していくことが重要である。
バイオテクノロジーを研究するにも産業に応用するにも、まず目的とする遺伝的特性を持つ生物を入手することから始まり、生物遺伝資源の収集、保存、提供は、バイオテクノロジーの基礎を成すものであるが、生物多様性条約の発効により、生物遺伝資源の入手が困難になってきている。よって、2005年までに生物遺伝資源の取得、分類・同定、保存、分譲などを行う中核機関を整備し、生物資源の供給を本格化させるとともに、さらに2010年までに微生物10万株程度の生物資源の提供体制を確立することを目指す必要がある。また、かかる個々の生物資源の生物学的性質、生産する物質に関する情報などをデータベースに蓄積し、生物資源を利用する際に利用者に情報提供を行う。
(3)目標達成のための体制整備
@官民の役割分担
ア)国の役割
生物機能の解明は未だ開発途上であり、目的を持ってはじめからその成果物を設計できるといった方法論が確立しておらず、基礎的な研究を質、量ともに拡充することが必要である。このため、ゲノム解析やタンパク質の機能解析を集中的に行い生物機能に関する知の泉の拡大が不可欠である。
なお、バイオテクノロジーは基礎的な研究と産業化が近接した分野であるが、ゲノムの全塩基配列の解析に象徴されるように、必ずしもゲノム解析やタンパク質解析で得られた成果が即利益に繋がるわけではないが、生物機能の解明を進める上で極めて重要な情報である。また、これらの解析には、多くの経費と人手が必要で採算が採れにくい状況にある。
また、企業が独自に解析した情報については、当該企業で秘匿される場合が多いと考えられる。このようなことから重複投資を軽減するため、汎用性が高く有用なゲノム情報やタンパク質機能情報については、知的基盤として広く研究者に提供することが、企業や大学などの枠を超えて全体としての効率が高まるものと考えられる。
このような民間のリスク軽減、効率的な技術開発を促進、知的基盤として広く研究者に提供する観点から、我が国のバイオテクノロジーの底上げを進める段階では、汎用性が高く有用なゲノム情報やタンパク質機能情報については、国が主体的に供給体制を整備することが不可欠である。
なお、タンパク質解析等はゲノム解析プロジェクトの次世代のものとして、世界的にも大量に系統的に解析する体制と手法について模索の状況にあり、我が国においても早急に組織的に解析する体制を確立する必要がある。今後、世界の状況を睨みながら官民分担をより一層明確化していく必要がある。
さらには、生物多様性条約の発効により、生物遺伝資源の入手が困難となってきているため、諸外国では、既に生物資源機関の供給体制を強化してきている。英国では、従来、多数の機関に分散していたカルチャーコレクションをUKNCCとして整理統合を行い、いくつかの機関に中心的な役割を担わせている。世界最大の生物資源機関である米国ATCCは、近年、規模を拡大し、生物資源の囲い込みの傾向を強めてきている。さらに、台湾や韓国においても既に50名を超える規模の体制を整えている。
一方、我が国の生物遺伝資源は、多数の機関に分散して保存されており、必ずしも企業等に提供される状況にない。大学が保有しているコレクションは学術研究の興味から収集しており、必ずしも分譲ニーズの高いものではなく、また、人材も4名程度で管理しており、分譲の希望があっても十分応えることができないのが実状である。
このように、我が国の生物遺伝資源の供給体制は脆弱であり、かつ、生物遺伝資源の収集、保存、提供は、民間の事業としては採算が採りにくく、諸外国においても国が主体的に取り組んでいる。ゲノム解析が進展し、新しい遺伝子の発見とその利用が拡大していく中で、生物資源の供給が今後のバイオテクノロジーの発展のボトルネックとなる可能性がある。特に、微生物は地球上に182万種が生息していると言われているが、現在までに知られているものはその9%に過ぎないと推定されている。新しい微生物を発見し、それを解析していくことがバイオテクノロジーのフロンティア拡大のキーとなる。
したがって、生物遺伝資源については、国が主体的に供給体制を整備することが不可欠である。
こうした知的基盤を整備することにより、企業はその情報を活用して、独創的な新薬の開発や機能性食品、新素材などの産業化のための技術開発に専念することが可能となり、イノベーションが加速される。
イ)民間の役割
知的基盤整備の急速な立ち上げを行うためには、国のイニシアティブの下、知的基盤整備事業を民間企業等コンソーシアム等へ委託することによって、民間が有する知見を具体化させることが重要である。これらによって民間企業は整備された知的基盤を活用し、実用化に近い分野に研究開発を集中することができ、国際競争に備えると同時に、医療分野等における社会的要請に早急に応えることが期待される。
しかしながら、2010年に世界のトップレベルである米国並み水準の目標を達成するためには、引き続き国が大きな役割を果たしながらも、民間独自の研究開発活動の成果として得られる生物資源情報についても可能な限り有効に活用していくことが必要であり、民間企業等が登録・公開しやすいよう受け皿となる機関・データベース等の整備、国からの研究開発費助成の条件としてデータや素材の寄託を条件とする制度、民間中心のコンソーシアムによる国際共同プロジェクト、産学べースの生物資源情報基盤サービスの開拓、公開インセンティブの付与等について引き続き検討することが必要である。
A関係省庁との連携
バイオテクノロジーは、幅広い分野にまたがる技術であり、そのシーズは民間企業のみならず、大学や研究機関等にも広く存在するものである。また、医薬・医療や食品、農業、環境など幅広い産業に影響を与えるため、現在、科学技術庁、文部省、厚生省、農林水産省及び通商産業省の5省庁の緊密な連携の下に実施されている。今後とも、バイオテクノロジーの持つ上記の横断性により、関係省庁との連携の下に着実な施策の実施を図っていく必要がある。
(1)必要性の背景
材料は、機械、自動車、航空宇宙、電気・電子、情報、エネルギー、土木・建築等広範な産業分野に応用される。例えば、半導体の開発が電子産業を、光ファイバーが通信産業を大きく進展させたように、これらの産業分野においてそのフロンティアを切り開くのは、多くの場合、新しい材料の開発が大きな鍵を握っている。
材料は金属、セラミックス、ガラス、繊維、高分子等種類が多く、それぞれの中でも物質の組み合わせは数限りない。さらにそれらの複合化、薄膜化等の形態上の工夫も多様である。新しい材料を開発するにも、製品開発のための優れた材料の選択をするにしても、このように多種多様な材料の中から目的達成のために最適な選択を効率よく行うには、必要な科学的知識を集約・体系化した知的基盤が必要となる。すなわち知的基盤は、新材料の開発を促進するとともに、新材料を広い分野で迅速に応用可能とするために必要である。
今後の材料開発の方向は、主に機能性が重視され、高純度化、複合化、原子層レベルでの表面制御等原子レベルでの材料創製、コンピュータ計算による分子・原子レベルでの材料設計等が主要な技術開発の方向と考えられる。
これらの技術開発においては、例えば、高純度化や原子層レベルでの表面制御には、高度な濃度・組成の管理が必要であり、そのため標準物質の重要性が増し、多種多様の材料の組み合わせの可能性を探って複合化したり、コンピュータ計算による分子・原子レベルでの材料設計を可能とするためには、材料の物性データが必要である。また、研究開発と並行して、試験評価方法を確立しつつ物性データを蓄積していくことが研究開発の効率を上げ加速することとなる。
機能の高度化の方向は、機械的特性、熱的特性、電磁気的特性、光学的特性、化学的特性、生体親和性等といった適用分野が本来的に要求する機能に加え、社会的要請として環境保全に資する機能向上が強く求められている。その中心となるものとしては、リサイクル性、有害物質対策、省資源・省エネルギーが挙げられる。材料の原料調達から、製造、輸送、使用、再生、廃棄に至るまでのライフサイクル全体にわたって、その環境負荷特性も把握し、データ整備することが、環境保全に資する製品設計に必要である。
(2)2010年に向けた目標と方向
我が国の技術力を論文の引用回数の技術分野別のシェアで見ると材料が最も高く(13.5%:平均は7.8%)、米国(38.1%)に劣るものの、我が国の他の技術分野に比較すると強い技術力を持っていると言え、今後の過酷な国際競争の中で我が国として得意分野を更に伸ばす形で臨んでいくことは1つの適切な姿である。しかし、この技術力の強さは、研究開発のキャッチアップの中で海外の知的基盤に依存して得られたものであり、今後世界のフロントランナーとしてたゆまぬ創造的な技術革新を推し進めていくには、我が国として知的基盤を整備していくことが必要である。
上記のように材料分野では世界の先端で革新的な研究開発を進めていくために、2010年までに世界とトップレベルである米国並み水準を目指すべきである。材料物性データベースの規模で言えば、現在我が国は20〜30万件、米国の2割程度ともいわれており、これを現在の米国並みの100万件程度とすることを目指すことが必要である。また、そのために必要な試験評価方法及び標準物質を開発する必要がある。
(3)目標達成のための体制整備
@官民の役割分担
材料に関する知的基盤は、広範な産業分野における研究開発、事業活動等の共通の技術知識として用いられ、産業競争力の源泉となるものであるが、我が国の材料分野は一定の技術力を持っていること、他の知的基盤との関係では相対的に事業活動に近いことから、基本的には産業界が中心となってその整備に当たることが望ましい。
しかし、知的基盤として収集されるデータの整合性の確保や、研究開発・品質管理の基準として必要となる試験評価方法については、民間が主体的に開発しつつも、新材料については国が補完することが必要である。同じく標準物質については、計量標準・標準物質の項でも述べたとおり、国立研究所は半導体、液晶等先端産業での品質確認に不可欠で技術的、経済的に民間で対応が困難な多層膜、薄膜、高性能高分子、高純度金属等を中心として開発し、それ以外は民間が主体的に開発しつつも新材料については国が補完する。それと同時に、民間団体等が供給する標準物質について、国家標準としての位置づけを与えるべく、当該団体を認定するスキームを確立し、民間の能力を活用することが必要である。また、物性データベース整備については、我が国の整備状況が米国の2割程度と大きく遅れており、急速に立ち上げる必要があることから、その立ち上げの段階では国が中心となって加速的な取組みを行い、その後は民間の自主的な取組みが期待されるところである。
その際、国が整備を行うものについては、新材料・先端材料の基礎的物性、従来材料も含め、ライフサイクル・アセスメント(LCA)に必要なライフサイクルを通しての環境負荷特性等社会的要請に基づくものに重点化することが必要である。また、材料種ごとのデータベースを統一的なコンセプトの下にネット上において統合化を進めることも必要である。
また、民間の自主的な活動によりデータベース整備が円滑に進められるような枠組みやインセンティブ付与等を検討することが必要である。
物性データベースについては、材料種すべてにわたって包括的に1つのデータベースとして整備することは現実的ではなく、それぞれの種類ごとに整備されることが一般的である。その際、材料種ごとの中核的機関(業界団体等)において整備を進めることが適当であるが、できる限り中核的機関の大括り化を図り、集約的に整備することが必要である。
A関係省庁との連携
これらの目標を達成していくためには、これまでも材料関連の研究開発を進める科学技術庁との連携を積極的に図ることが必要である。これまでも科学技術庁においては、鉄鋼関係を中心にその整備が進められている[材料強度データシート(クリープデータシート・疲労データシート)]ことから、充分に整合性を図ったうえで協力してその整備にあたることが重要である。