参考資料9
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(1)今日、推計で5万から10万種類の化学物質が取り引きされており、我が国だけでも毎年約300物質の新たな化学物質が開発され、市場に投入されている。これらの化学物質の様々な有害性を科学的に評価するために必要となるデータは、ほとんど得られていないのが現状。このような化学物質の有害性データを包括的、かつ、体系的に収集するための安全性点検の実施が急務。
(2)1991年のOECD理事会において、加盟国間で分担して高生産量化学物質の初期リスク評価を行うために必要と考えられるデータ(SIDS:Screening
Information Data Set)を収集し、初期評価を行うことを理事会決定。我が国はその1/4をGDP見合いで分担。
(3)1992年の国連環境会議(UNCED:地球環境サミット)で採択されたアジェンダ21第19章において、HPVに関して「政府は、国連機関及び企業と協力し、ハザード評価を優先的に実施する」旨が規定。そのフォローアップ会合として1994年に開催されたIFCS(化学物質安全に係る政府間フォーラム)の第1回会合において、HPVの当面の点検スケジュールとして1997年末までに200物質、2000年末までにさらに300物質のリスク評価を実施することが国際目標として合意。
(4)HPVの点検の進め方については、SIDSをもとにOECD全加盟国による初期評価会合(SIAM:SIDS Initial Assessment Meeting)で評価を行い、その結果を評価レポート(SIAR:
SIDS Initial Assessment Report)にとりまとめUNEP(国連環境計画)の国際有害化学物質登録制度(IRPTC:
International Registry of Potentially Toxic Chemicals)の一環として出版・公表。
<米国>
(1)1998年10月にゴア副大統領とCMA(米国化学工業会)、EDF(地球防衛基金:環境NGO)が、米国の高生産量既存化学物質(年間の生産/輸入が100万ポンド(453t)以上ある化学物質)2,879物質について、基本的な有害性データセット(OECD−SIDSデータ)の収集を2004年までに実施することを合意。
(2)一方、98年11月には米国ゴア副大統領から高村外務大臣あてに、「@OECD−HPVプログラムの加速に係る米国の提案に賛意表明、A産業界と協力しながらHPV点検作業を加速し、かつデータの公表」を要請する書簡が送付。我が国に対しHPVプログラム加速への対応要請。
<EU>
1998年4月にイギリスで開催されたEUの非公式環境担当相理事会で、EUの既存化学物質政策の見直しが主要な議題の一つとして取り上げられた。同理事会において、100物質を越える優先リストが作成されているにもかかわらず、未だに評価が完了したものは一物質もないことが指摘され、今後これらの化学物質の点検を加速するための対応策の検討が進行。
<世界の化学業界における自主的取組>
(1)HPV点検の加速化に寄与するため、現在ICCA(International Council of Chemical Association:国際化学工業協会協議会)において、世界の化学業界として2004年までに約1,000物質を対象にHPV点検プログラムの加速化に取り組むための分担が話し合われている。
(2)点検の進め方は、対象となる物質ごとに国際コンソーシアムを組んで、その中でリードカンパニーを定め(原則として生産量が最も高い企業)、加盟企業の役割分担を決めて実施。具体的にはまだ決まっていないものの、我が国企業においても約40物質の取りまとめ(リードカンパニー)と約300物質の協力(外国企業がリードカンパニーになったものについて、我が国企業も試験を分担)を行うべく調整が行われている。
(1)我が国では政府がSIDSデータ及び関連の情報を収集し、これらの情報を基に安全性評価結果レポート(OECD−SIAR)を作成し、OECDに提出。
(2)2000年までに担当予定の125物質については点検がほぼ終了する見込み。我が国が現在の分担比率どおりにHPV物質(4,103物質)を分担することとなれば、1,025物質を担当することとなり、残り900物質の点検を行うことが必要となってくる。また、前述の米国からの要請を受け入れるとすると、当該900物質の点検実施スケジュールを加速することが必要。
(3)一方、日本の産業界においては、少なくとも2.に示した40物質及び海外のリードカンパニーにデタを提供する300物質については、SIDSデータを取得・収集について応分の責任を果たすことについて大筋了解しているが、それ以外の物質について産業界がどこまで対応できるかは現状では不明であり、加速化についての米国の提案に対する方針も決まっていない。
なお、ICCAでの活動をもとに我が国の分担分としてOECDに報告できる化学物質数は、現在のところ我が国企業がリードカンパニーを表明している40物質程度だけとなる見込み。
(1)化学物質問題に対する国民の関心が最近急速な高まりをみせるなか、HPVに係るOECD理事会決定、欧米の取組状況、HPV点検の加速化に係る米国からの要請等を踏まえれば、我が国としてもHPV点検に関する国際的責務を着実かつ早急に果たすよう取り組む必要がある。
(2)このため、我が国としても政府や産業界における役割分担等についての考え方を明らかにするとともに、HPV点検スケジュールを確立することが不可欠。
(3)欧米においては、化学物質の規制体系が整備された時点から既存化学物質の安全性点検は基本的に産業界の責務。一方、我が国においては、昭和48年の化審法制定以降、既存化学物質の安全性点検は化審法の体系のもとで国が実施してきたが(急性毒性、生態毒性等を除く)、点検の加速化の必要性、要点検項目の拡大、点検の取組状況に関する欧米と日本との対比等を踏まえれば、今後の点検に関する役割分担の見直しについて検討を行うことが必要。