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計量新報 2005年 9月11日発行/2599号 6面


資料◇2005年度(平成17年度)第1回計量行政審議会配付資料(3)
7月26日開催、経済産業省本館17階第1共用会議室

新しい計量行政の方向について(2)

IV 検討に当たっての視点・配慮点

1.効果的で合理的な規制の在り方を目指す

 今日までの検査・検定に関しては、比較的ハードウェアの規制に重点が置かれてきている。しかし、上述のように、ハードウェアの性能が向上してきているなかで、むしろ計量器の使用者の不正を抑制することの重要性が高まっているのではないか。また、公正な取引・証明の確保のためには、同様の行政コストの投入に対する効果が高いのではないか。

 また、不正事業者が怖れるのは、行政指導ではなく、消費者等の信頼を失うことであることに鑑みれば、これまでほとんど実績のない不正事業者名の公表などの手続きを整備し、透明性をもって取締り等を行う方が、同じく投入行政コストに対する効果が高いのではないか。

 さらに、商品量目規制(注:包装商品の内容量が正しく表示されるための規制)に関しては、地方公共団体の担当官が、陳列後の商品のサンプル調査等により、実施してきているが、むしろ商品の包装段階の品質管理を促進する仕組みの導入等により、さらなる効果を期待することができるのではないか。

 いずれにせよ、行財政改革が求められていることから、従前の規制方法に囚われず、投入行政コストに対し、より効果の高い、合理的な方法を模索すべきである。

2.全ての自治体が適切な計量行政を行える選択肢の拡大

 地方公共団体ごとに事情は異なるが、全国的に一定水準の計量行政の実施は必要。民間能力の活用を含め、自治体ごとの実情を踏まえつつ、適切な行政手法を採用できるような選択肢が必要ではないか。

3.持続可能な制度設計

 技術革新の加速化、取引のグローバル化の進展(FTAなど)、地方分権の進展、行財政改革の継続など、今後我が国において予想される社会経済情勢の中長期的な変化にも対応した持続可能(サスティナブル)な制度とすることが必要ではないか。

4.技術革新の促進

 規制行政によって技術の進歩を阻害するようなことは極力排除すべきであり、むしろ民間の技術開発を促進する制度とすることが必要ではないか。

5.国民(地域住民)の積極的参画の促進

 消費者を中心とした国民(地域住民)が適正計量に関する関心と知識を持つことが公正な計量を実現するための最も重要な要件であることに鑑み、国も地方公共団体も積極的に計量に関する情報提供や啓発活動を行うべきではないか。

 その上で、規制行政にあっても投入コストとその効果を念頭に置かざるを得ないことを示しつつ、例えば規制の重点をどこに置くべきかなどにつき、住民の考え方を反映するべきではないか。

 さらに、既に一部では実施されていることではあるが、住民(消費者)の不正計量に関する不満・不信を受け付ける制度など、住民(消費者)の主体的・積極的参画を促す仕組みを考えるべきではないか。

6.関係各府省との連携

 正確な計量は、様々な規制法による安全・安心に関わる広範な信頼の基盤。計量標準等の供給に関するニーズの吸収、他の関係法令(各種事業法等)の執行体制との協力関係の模索等について関係府省と積極的に連携することが必要ではないか。

V 制度の見直しの方向性(1)

1.特定計量器の検査・検定

 (a)規制対象を削減する方向で、見直しを行うべきではないか。その際は、消費者保護に重点を置くべきではないか。

 (b)他方、商品量目規制を合理化するために、例えば主要国では日本のみが規制していない自動はかりを規制の対象にすることなども検討するべきではないか(自動はかりは、食品をはじめとする大層の包装商品の計量において利用されている)。

 (c)計量士(難易度の高い国家試験に合格した専門家)に関する制度を見直すなどにより、一定以上の能力を有する民間人が、権限をもって諸般の検査において活躍することができる制度を整備するほか、国際ルールに則って民間機関が認証する「JISマーク制度」を活用するなど、民間人・民間機関の能力を最大限活用することを可能とすることにより、地方公共団体の執行方法に関する選択肢を拡大するべきではないか。

 注:JISマーク制度については、国際的なルールへの整合化を図るべく、これまでの国自身による工場の認定から、国際的な基準(ISO/IECガイド65)に基づいて国の登録を受けた民間の第三者認証機関が認証を行うという仕組みに変更されており、2005(平成17)年10月1日から運用が開始されることになっている。

 (d)計量器の不正使用の摘発を強化するべく、抜き打ち検査などの事後検査を強化するべきではないか。また不正摘発後の処置に関して透明性を持たせるべく手続きを整備するべきではないか。さらに、官民の実践的検査能力を維持、向上するべく研修体制の充実を行うべきではないか。

 (e)検査・検定に当たっては、WTOのルールに則り、手続きについて、国際標準との整合化を図るべきではないか。

 (f)検査・検定の現場で活用されている基準器(計量器が法律が要求する公差に収まっているかどうかを検査する一種の「ものさし」であり、NMIJが供給)制度については、日本独自の制度であること、JCSSが一定程度普及してきたこと、更なるJCSSの普及が長期的には我が国産業の発展に重要であることなどに鑑み、見直すべきではないか。その際は、JCSSへの一本化も含め、規制制度を執行する上で必要な精度を念頭に、計量標準の現実的な供給のあり方についても検討するべきではないか。

2.商品量目制度

 (a)商品量目規制については、全ての主要国において実施されていることから、継続するべきではないか。

 (b)ただし、現行の商品陳列後のサンプル調査主体の規制方法から、事業者による品質管理を促す制度に重点を移行するべきではないか。

 (c)その際は、中小企業(商店街、事業組合等)も参画することにより、大手流通事業者のみではなく、我が国企業全体の適正計量を促す仕組みとするべきではないか。

 (d)例えば、現在の「適正計量管理事業所制度」(認定されれば、2年に一回のはかりの定期検査に計量士を用いることにより自己検査に任される)を改革し、品質管理に関する能力を有する人材(例えば、新しい計量士制度にそうした人材像を含めることも可能か)を中心に、適正計量管理を一定の指針に沿って実行できる能力を認められた場合は、「新適正計量管理事業所(仮称)」として認定され、商品量目についても、適正に執行されていると推定する制度などが考えられるのではないか。

 (e)この場合、管理の中核となる人材に責任を負わせること(例えば、行政当局が計量士から事情聴取を行うなど)により、中小商店等による商店街なども認定にチャレンジすることが可能になるのではないか。

 (f)さらに、商品の密封段階における適正計量・品質管理を確保するため、(自動はかりの規制の適否とともに)適正計量に必要な要件が満たされていることを示す一種のマーク制度の導入を検討してはどうか。なお、その際は欧州のeマーク制度を研究するべきではないか。

(次号以下につづく)

 
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