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計量新報 2006年 1月1日発行 /2613号<第2部> 3面


資料◇第3WGの方向性(骨子案[抜粋])

(2005年12月2日)

【おことわり】第3WGの方向性(骨子案)のうち「視点・配慮点」「現状」、IからIIの各パート中「1.現行制度の問題点」は、紙面スペースの都合で掲載しておりません。(株)日本計量新報社ウェブサイト「2005年度計量法改正情報BOX」(http://www.keiryou-keisoku.co.jp/hou-kaisei2005/syouiinkai/wg/03wg07.htm)に全文および関連資料を掲載しておりますので、ご利用ください(PDF形式)。第1部5面に掲載の第1、第2各WGの方向性(骨子案)も、あわせてお読みください。(編集部)


【骨子案のポイント】

準国家計量標準制度(仮称)の創設

 国民の安全・安心の確保、産業競争力の強化のための先端技術開発等に資する計量標準を機動的に整備するため、国家計量標準とは別に、ユーザーのニーズを一早く取り入れ、海外の標準や民間標準等の最高位の標準を国家計量標準に準じる標準として採用するなど、迅速に標準を供給する新たなスキームを検討する。

準国家計量標準制度(仮称)の活用によるJCSSの拡充

 準国家計量標準(仮称)を活用し、柔軟な計量標準の供給体制の構築を検討する。

特定計量証明事業(MLAP)の認定基準の国際整合化

 MLAPの認定基準の国際整合性を確保する観点から、国際基準であるISO/IEC17025の採用を検討する。


 計量制度検討小委員会第3WGでは、計量法(以下「法」という。)を中心とした計量制度の中で、計量標準の供給とトレーサビリティの確保及び特定計量証明事業を含む環境計量証明事業について検討を行っている。

I 計量標準供給

2.新たな方向性

(1)基本的考え方

1)国家計量標準の開発・供給における役割分担

 我が国の国家計量標準の開発・供給をマネジメント・コーディネートする役割は法第134条に基づき経済産業大臣にある。この大臣の役割を効果的・効率的に実施する方策として、「企画」と「実施」の役割分担を明確化する。

2)国家計量標準を整備するマネジメント・コーディネート機能の充実

 新たな分野で整備すべき計量標準のニーズが急激に拡大し、必要な知見が多岐に渡って必要となっている。そのため、中長期的に整備を進める必要があり、国家計量標準整備に係るマネジメント・コーディネート機能を充実させる。

3)社会ニーズに対応できる供給制度の創設

 国家計量標準整備に関する社会的ニーズが急速に拡大している中、我が国全体として国家計量標準の整備・供給を効率的かつ迅速に行う供給制度を創設する。

4)ニーズを把握するメカニズムの設置

 校正事業者やユーザーのニーズに対応して、国家計量標準等の供給を適切に行うには、ニーズを十分に汲み取ることが前提となることから、経済産業大臣が様々な分野の情報やニーズを円滑に収集できる仕組みを創設する。

5)国家計量標準の国際整合性確保の必要性

 国際競争力の強化や国際的ワンストップ・テスティングを実現する観点から、グローバルな経済活動に必要不可欠な計量標準の先進国との整合性、アジアなど途上国への技術協力を含め、国際整合化を図る。

(2)具体的方針

1)国力を結集した国家計量標準の開発・供給体制の構築

 我が国の国家計量標準の開発・供給体制の中核であるNMIJは、例えば、米国の同様の機関と比べて人員・予算の規模が小さいとの指摘があるが、NMIJ単独で同等の機能を果たしていくことは今後とも困難であると考えられる。したがって、NMIJ及び指定校正機関等が連携し、我が国の関係機関が一体となって先進国の同様の機関と同等の機能を果たしていくことを目指すことが合理的であると考えられる。このためには、国内関係機関のマネジメント・コーディネート機能が重要であり、その在り方について検討を行う。

 また、NMIJ及び指定校正機関等に対しては、国家計量標準の供給機関として、国際相互承認協定(CIPM−MRA)の枠組みへの参加とISO/IEC17025(試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項)、ISOガイド34(標準物質生産者の能力に関する一般要求事項)等の要件を設定し、国家計量標準の開発・供給に当たってはNMIJと指定校正機関等とが緊密に連携を行った上で実施することを検討する。

2)国家計量標準の指定等におけるマネジメント・コーディネート機能の充実

 現行のスキームでは、第一に特定標準器等及び特定標準物質の製造装置等として指定することがふさわしいもの又はその取消しをすべきものがNMIJ、指定校正機関等から経済産業省に提案される。それを受けて、経済産業省は知見を有するNMIJに相談し、助言を受けた上で、適合性を判断し、計量行政審議会への諮問・審議を経た上で指定を行っている。

 このような現行のスキームをより合理化・明確化する観点から、必要な指定が円滑に行われるためのマネジメント・コーディネート機能の明確化について検討を行う。

3)「準国家計量標準制度(仮称)」の創設

 計量標準を機動的に整備するため、特定標準器等の指定に当たり、経済産業大臣が指定する法に基づく制度とは別に、ユーザーのニーズを一早く取り入れ、海外の標準を採用するなど、迅速に標準を供給するスキームの創設を検討する。

 具体的には、法に基づく国家計量標準ではないが、それに準ずる国家計量標準を指定する制度として「準国家計量標準制度(仮称)」の創設を検討する。

 準国家計量標準とは、現時点では、国家計量標準レベルの水準には至っていない、あるいは国際整合性が確保されていないが、国際競争力の強化や国民の安全・安心の確保のために早急に整備することが求められる等の場合に、1)NIST等、海外のNMIが供給する計量標準、2)業界、学会等の関係者間の合意の下で利用される計量標準、3)新たな分野として、国内における認定・認証、先端研究開発、技術的法規制等で暫定的に使用されている計量標準などについて、将来的に研究開発等を経て、国家計量標準レベルの水準に至るまでの期間、暫定的に国家計量標準の代替となる計量標準(主に標準物質)を指す。

 また、仮にこのような準国家計量標準制度(仮称)を設ける場合に、大臣の指定行為とするか、又は法の枠外でNMIJの独自の指定制度とするかについて検討を行う。指定する際には、対外的な透明性・信頼性の確保が求められることに留意する必要がある。

 選択肢1:指定の権限は法第143条に規定する。また、JCSSにおいて、準国家計量標準を国家計量標準に準ずるものとし、特定二次標準器と同等に扱う。

[特定二次標準器…特定標準器による校正等を行う計量器又は標準物質であり、一般的に特定二次標準器と呼ばれている。]

 選択肢2:NMIJ独自の指定制度としてこの事業を行うこととし、法の枠外である(独)産業技術総合研究所中期目標において、計量標準の供給に係る責務として規定する。

4)ユーザーニーズの把握及びプライオリティー付けを行う委員会の設置

 以上( 1)〜3) )が十分に機能するためには、ユーザーのニーズを十分に把握することが必要である。そのため、ニーズ全体を把握するメカニズムとして、「計量標準整備検討委員会(仮称)(以下「委員会」という。)」を新設することを検討する。

 また、本委員会においては、優先的に整備すべき計量標準のプライオリティー付けについても検討する。

5)国家計量標準の国際整合性確保

 国際整合性を確保するために、委員会において、国際整合性の確保をすべき計量標準の調査を行い、その結果を踏まえ、知的基盤整備計画に反映する。

 なお、NMIJは各機関の国際相互承認への参加に積極的に貢献することとする。

II JCSS(トレーサビリティ供給)

2.新たな方向性

(1)基本的考え方

1)計量標準の柔軟な整備によるJCSSの拡充

 国民の安全・安心の確保、産業競争力の強化のための先端技術開発等に資するため、準国家計量標準(仮称)を活用し、柔軟な計量標準の供給体制の構築を図る。(前掲)

2)標準物質の供給方法

 標準物質については、値付けという過程を重複する経路を踏まず、直接供給した方が精度のよい標準物質がユーザーに供給されるなど、その特性を生かして物理標準とは異なる供給方法の確立が必要である。

3)国際相互承認のためのサーベイランスの義務化

 国際相互承認のベースとなるISO/IEC17011においては、再審査又はサーベイランスの間隔は2年となっている。一方、JCSSにおいては、平成15年6月の法律改正により登録に係る更新制が導入され、その期間は4年となっているため、JCSS登録事業者が国際相互承認の対象となるためには、2年でサーベイランスを受ける必要があり、一律義務化の必要性について検討する。

(2)具体的方針

1)準国家計量標準の活用によるJCSSの拡充

 選択肢1:法第143条第2項第1号を準国家計量標準を含むように拡張し、JCSSの特定二次標準器と同等に扱い供給する。

 選択肢2:法第143条第2項第1号は変更せず、準国家計量標準を、NITE等が独自に運営しているISO/IEC17025認定制度を活用し供給する。

2)標準物質の供給

 国際整合性を確保する観点から、標準物質を製造する指定校正機関の指定基準としてISOガイド34を標準物質の国家計量標準機関の要件とする。(前掲)

III 環境計量証明事業

2.新たな方向性

(1)基本的考え方

1)環境計量証明事業者の能力・品質の担保

 例えば近隣の自治体で能力の見極め方のノウハウの交換や不正行為防止情報の共有化など対応策の必要性について検討する。

2)環境計量士等の技能の維持・向上

 環境計量証明の正確な計測・計量を担保する上では、環境計量証明事業に従事する環境計量士を始めとする従事者の役割が大きい。このため、環境計量士等の技能の維持・向上を図る方策について検討する。

(2)具体的方針

1)都道府県・市町村の関係部署と検討していく。

2)環境計量士を始めとする従事者の技術の維持・向上や環境計量証明事業の能力・品質の確保を図るため、民間団体による講習会を支援する等の施策を検討していく。

IV 特定計量証明事業(MLAP)

2.新たな方向性

(1)基本的考え方

1)MLAPの認定基準

 MLAPの認定を取得している事業者は、当該事業以外にも試験分析業務を実施しており、MLAPの認定とは別にISO/IEC17025の認定を取得する事業者が増加しつつあり、MLAP認定基準のISO/IEC17025整合化に対する期待が高まっている。また、今後、認定事業者の海外事業展開も予想されることから、ISO/IEC17025を当該認定基準として完全採用し、国際整合性を図るほか、付加要件は極力限定する。

(2)具体的方針

1)MLAPの認定基準へのISO/IEC17025の導入

 国際整合性を確保する観点から、認定基準をISO/IEC17025とし、法に規定することを検討する。また、計量管理者(環境計量士)の任命規定等ISO/IEC17025の規定に追加する要件についても法で規定することを検討する。

2)附帯決議への対応

 附帯決議については、次のとおり考える。(次表参照)

平成13年5月24日参議院・経済産業委員会

附帯決議 対応
一 技術進歩への対応に十分配慮するなど、制度の信頼性保持に努めること。 技術の進歩に対応して、ダイオキシン類の測定方法に関するJISの改正を行い、新しい技術の取り込みを行っている。また、事業実施状況について、フォローアップ調査を行い、信頼性の維持に努めるとともに、技術水準の確認の一環として技能試験を実施している。
二 計量管理や測定技術に関して、計量士等の研修制度を整備するなど、特定計量証明事業者の技術的能力の維持向上に努めること。 法第166条の規定に基づき、産業技術総合研究所においてダイオキシン類等計量証明事業者の管理者講習を実施している(講習を受講するとMLAPでの1年以上の経験条件が免除される)。さらに、技術水準の確認の一環として技能試験を実施している。
三 手数料の低廉化、認定手続きの効率化等により特定計量証明事業者の負担の軽減に配慮するとともに、計量証明の依頼者等による制度理解の促進を図ること。 特定計量証明事業者の認定機関は、経済産業大臣の事務委任を受けたNITEと経済産業大臣の指定を受けた日本化学試験所認定機構(以下「JCLA」という。)の2機関であるが、その手数料については、NITEの場合は政令において定め、またJCLAの場合は経済産業大臣の認可制となっており、実費等を勘案した適切な料金設定を行っている。また、認定事務に係る標準処理期間を定め、認定手続きの効率化に努めている。さらに、パンフレットの配布やホームページへの掲載を通じて、制度理解の促進に努めている。
四 国家標準物質の開発・供給、測定方法の国際標準化等に積極的に取り組むこと。 中小企業知的基盤整備事業によりダイオキシンの標準物質の整備を進めており、積極的に取り組んでいる。また、準国家計量標準制度の創設により、供給体制を拡充する。また、ダイオキシン類の測定方法を定めたJISを基に国際提案を行い、国際規格の制定に積極的に取り組んだ。

平成13年6月13日衆議院・経済産業委員会

附帯決議 対応
一 地方分権化推進の観点から、全面的に都道府県に委ねることがなお困難か否か。 都道府県知事に大臣の権限である認定機関の指定及びその更新の権限を移管することは、極めて有毒性の高い極微量物質の測定能力を統一的に認定する本制度の性格からして適当ではない。今般発生したダイオキシン測定数値の改ざん事案といった社会的影響の大きい事件が起きていることを勘案すると、国が内容を精査し、かつ事業を取り消す権限を維持することが妥当である。特定計量証明事業者に対する立入検査権限及び認定取消し権限は国にあり、国の監督責任を問われることもあり得る。また、仮に認定を受けた特定計量証明事業者が改ざんを行ったために、損害が発生した場合、国が損害賠償責任を問われることはあり得ることを明らかにするためにも、国が関与する現行制度を維持することが必要である。
二 国の指定する機関についても、民間能力の活用を促進する観点から、可能な限り民間業者も指定すること。 NITEの他にJCLAが指定されており、民間能力がすでに活用されている。
中小企業知的基盤整備事業によりダイオキシンの標準物質の整備を進めており、積極的に取り組んでいる。また、準国家計量標準制度の創設により、供給体制を拡充する。 中小企業知的基盤整備事業によりダイオキシンの標準物質の整備を進めており、積極的に取り組んでいる。また、準国家計量標準制度の創設により、供給体制を拡充する。
四 アジア地域を始めとした諸外国に対する技術協力、支援措置等計量標準に関する国際協力を積極的に推進すること。 中国における残留性有機汚染物質(POPs)管理システムの構築に係る研究協力として、ダイオキシン類測定分析に関する技術研修等により中国に適した精度管理及び測定手法の標準化を図るための協力をしている。

 
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