2000年9月3日(2367号)

■群馬県計量検定所課長を収賄容疑で逮捕

検査用大型分銅納入で28万円のパソコンを要求
〜分銅製造事業者部長も贈賄容疑で逮捕、群馬県警は余罪も追及し全容解明へ〜

 群馬県警捜査二課と前橋警察署は八月二十八日、群馬県計量検定所が大型基準分銅の購入に絡み、分銅製造事業者社員から賄賂を受け取ったとして収賄の疑いで、前橋市小相木町、同検定所企画課長、小平勲氏(五十六歳)を、贈賄の疑いで高松市元山町、分銅製造事業者である「日本秤錘(ひょうすい)_梶v(香川県牟礼町)営業担当部長、熊野佳孝氏(五十四歳)を逮捕した。賄賂として使われたのは実売価格二十八万円のノート型パソコンで、関係者の話によると、小平勲容疑者は個人的に使用することを隠し「検定所に欲しい」と偽り、熊野佳孝容疑者に要求していた。群馬県警はこの情報を入手しており、事件は小平勲容疑者の主導によるものとみて全容解明を急いでいる。

パソコンの授受認める

 小平勲容疑者は群馬県計量検定所検定二課長をしていた昨年十月下旬ごろ、同検定所が質量計の検定用として購入を計画していた大型基準分銅の機種選定に際し、日本秤錘製の一トンの大型分銅十個を選定したことに対する謝礼と、将来も同様な取り計らいを受けたいという趣旨を知りながら、熊野佳孝容疑者から二十八万円相当のノート型パソコン一台を受け取ったことが、収賄容疑となっている。熊野容疑者は容疑を認めており、また小平容疑者もパソコンを受け取った事実を認めている。
 関係者によると、小平容疑者は大型分銅の選定後、熊野容疑者に「検定所にほしい」と、パソコンを要求。会社の許可を得た熊野容疑者は「大型分銅とパソコンを一緒に検定所に送ります」と小平容疑者に伝えたが、送る直前になって「パソコンは別の所(会社)に送ってくれ」と、指定してきたと話している。群馬県警は小平容疑者が率先する形で収賄がなされたとして、小平および熊野容疑者を追及するとともに、小平容疑者のいう「別の会社」の存在から余罪を追及するしている。

容疑者の課長が選定書作成

 群馬県計量検定所は、検査に必要な大型分銅を整備するため、昨年度から三年間の予定で、各年度ごとに一トン分銅十個、三年間の合計で三十トンの大型分銅の購入計画を立てた。同検定所は二メーカーの大型分銅を所有しているが、幾つかの理由により日本秤錘の製品を購入することを決めていた。小平容疑者は検定二課長として、大型分銅の機種選定や選定理由書の作成などに従事していた。

県内二業者で入札、高崎市業者が落札

 群馬県計量検定所は日本秤錘_鰍フ一トン分銅十個を購入するに当たり、昨年八月九日に指名業者等審査委員会(課長以上六人で構成)を開き、県内の計量器製造ならびに販売の届出をしている二業者を指名を決定し、同月二十三日に入札した結果、高崎市の事業者が二百八十万円で落札していた。落札した事業者には八月二十二日に日本秤錘から「検定所にパソコンを寄贈した」という内容の連絡があったという。日本秤錘は大型分銅の製造事業者の最大手だが中京地区などに競争相手があり、入札となると落札価格は通常販売価格を大きく下回ることが多い。

女性問題から足が付く

 小平勲容疑者は七月三十日、以前から付き合っていた五十歳の女性に交際を断られたことから暴行を加えたため、傷害と強要の容疑で前橋警察署に逮捕され、取り調べられていた。前橋署では「小平勲容疑者と女性の交際は長年にわたっており、示談の行方を見極める必要がある」などとして、処分保留のまま八月十九日に釈放している。七月三十日の小平容疑者逮捕はテレビなどでも報道されていた。小平容疑者の収賄容疑は暴行を加えた女性の側から警察に通報されたものと見られ、交際費の出所等を追求される中で事実が明るみに出たもの。

容疑課長は前橋高校野球部監督も

 小平勲容疑者は群馬大工学部卒。一九六九年に技師として入庁し、研究員として工業試験場や繊維工業試験場に長く勤めた。九八年に県計量検定所検定第二課長、今年四月から同検定所企画課長を務めていた。通産省計量教習所は修了していない。小平容疑者は母校の前橋高校で野球部監督を数回務めていた。

県計量検定所七時間かけ家宅捜索

 前橋市下大島町の群馬県計量検定所では二十八日午前十時ごろ、捜査員十数人が家宅捜索に着手。開始から約七時間後の午後五時十五分、段ボール十一箱分の関係書類を押収した。
 職員の不祥事について、捜索に立ち会った青木正所長は報道陣に対して、「事実とすれば、上司として非常に残念だ。大型分銅の導入に当たっては、調査書を審査委員会で比べ、メーカーを決めているので問題があったとは思えない」と述べている。
 また、同市小相木町の小平容疑者宅では同日午前九時半ごろから午後零時半ごろまで、捜査員五人が捜索し、段ボール三箱分の書類とパソコン一台を運び出した。

群馬県が綱紀粛正指示

 群馬県は二十八日、各部局の主幹課長を集め、今回の贈収賄事件の経過を説明するとともに、綱紀粛正の徹底を指示した。さらに、高山副知事(知事職務代理)名で、同様の趣旨を文書で各課に通知した。高山昇副知事は同日の定例記者会見で、小平容疑者の逮捕について「疑惑を持たれないように、仕事の仕組みの改革、改善の徹底に努めてきただけに、残念で遺憾だと思っている」と語った。

検定所汚職を
全国紙が報道

 群馬県計量検定所課長の収賄容疑による逮捕事件は、地元上毛新聞ならびに全国紙地方版で贈収賄容疑で逮捕された二人の実名を載せて大きく報道された。全国版での扱いは大きくはなかったものの毎日新聞は「計量検定所業務で収賄容疑、群馬県課長を逮捕」の二段見出しで報道している。
 この事件報道で、計量検定所等への検定検査設備納入に関して贈収賄があるものとの印象が広く流布されることになり、検定所ならびに検査所業務に何らかの影響が出そうである。


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