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日本計量新報 2010年2月7日 (2808号)

産総研
水素を指標に、定量技術実用化へ

(独)産業技術総合研究所(産総研)は、国立医薬品食品衛生研究所、日本電子(株)、和光純薬工業(株)と共同で、核磁気共鳴法(NMR)による定量技術を研究。水素を指標にあらゆる有機分子の量を測る技術を実用化した。この技術は、分析装置に物質ごとに別々の目盛付けをする必要がないという点で、これまでの一般的な定量技術の常識を覆すもの。


水素を指標にあらゆる有機分子の量を測る
核磁気共鳴法による定量技術の実用化

(独)産総研 計測標準研究部門計量標準システム科主任研究員 井原俊英

 
(図1)これまでの定量技術
分子構造が異なると物性の差から得られる信号強度が同じにならないため、定量分析では個々の物質で分析装置の目盛付けが必要
(図2)NMRによる定量技術
分子構造が異なる化学物質でも含まれる水素の量と得られる信号強度が比例するため、定量分析では個々の物質での分析装置の目盛付けが不要

定量技術の概要

今日、環境、食品、医療などあらゆる分野で化学物質の分析が行われていますが、これら化学物質の量を知るには、用いる分析装置に目盛付けをする必要があります。これまでの定量技術は、分子構造が異なると物性の差から同じ量(分子数)であっても得られる信号強度が厳密には異なります。

そのため、個々の物質ごとに別々の目盛付けをする必要があり、信頼性のある分析値を得るには多くの手間と費用がかかります(図1)。

核磁気共鳴法(NMR)は、特に有機分子の構造を調べるために用いられる代表的な分析法の一つです。 NMRでは、どのような原子団に結合している水素が含まれているかがわかり、分子の構造を決定することができます。また、得られる水素の信号強度は水素の数に比例することも知られていますが、10%を超えるばらつきがあるとされ、有機分子の定量分析法としては実用化されていませんでした。

私たちは NMRがほとんどの有機分子に含まれる水素を測れるという汎用性に着目し、定量性向上と実用化を目指して4機関(産総研、国立医薬品食品衛生研究所、日本電子(株)、和光純薬工業(株))で共同研究を行ってきました。

その結果、分子構造の決定を目的とした測定条件を全面的に定量用に見直すことで、ほかの定量分析法に匹敵する1%〜2%程度の精度で定量できる条件を見いだしました[1](A面)。水素の信号強度が結合状態に依存しないという NMRの特徴から、分子構造が異なっても同じ量であれば信号強度が同じになります。分析装置に物質ごとに別々の目盛付けをする必要がないという点で、これまでの一般的な定量技術の常識を覆すものといえます(図2)。

今後の展開

私たちの提案する NMRによる定量技術は、定量対象物質ごとの目盛付けは必要ありません。ただし、正確な定量値を得るためには 信号の基準となる標準物質が一つ必要であり、この標準物質を供給します。また、定量用の条件設定から測定データの解析までを行えるソフトウエアを提供することで、誰もがNMRで簡単に定量分析を行えるようにする予定です。さらには、試料の調製方法、測定条件および解析条件を標準化するなど、定量分析法としてのインフラ整備を進めていきたいと考えています。

研究成果の普及

2009年9月4日に幕張メッセ(千葉市)で行われた東京コンファレンス2009(主催:(社)日本分析化学会、(社)日本分析機器工業会)において、「NMRによる定量分析の可能性と実用性:基礎から応用まで」と題して、これまでの共同研究の成果を報告しました。150名を超える聴講者にご参加いただき、定量分析というNMRの新たな可能性について多くの方が注目していることを伺い知ることができました。

【共同研究者】千葉光一、前田恒昭、齋藤剛(産総研)、西村哲治、山崎壮、杉本直樹、多田敦子(国立医薬品食品衛生研究所)、有福和紀、末松孝子(日本電子(株))、三浦正寛、山田裕子、中尾慎治、吉田雄一、大野桂二(和光純薬工業(株))

【参考文献】[1] 井原俊英他:Synthesiology, 2(1), 12−22 (2009)

【初出】「産総研TODAY」 vol.9(2009)No.12

日本計量新報 2010年2月7日 (2808号)

メトラー・トレド
高品質のステンレス製枕型分銅

 
ステンレス製枕型分銅
 

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