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日本計量新報 2010年3月21日 (2814号)

産総研 ナノ粒子の計測・校正に積極的取り組み
計量標準への新たなニーズに応える

粒径が10nmよりも小さなエアロゾルナノ粒子を容易にリアルタイムで測定する計測技術が、開発されている。エアロゾルナノ粒子の計測器は研究用の特殊なものであり、これまで、校正も大きな誤差を含んでいた。(独)産業技術総合研究所(産総研)は、誤差要因を洗い出し、不確かさの小さい校正サービスを確立した。

 

大気中に浮遊するナノ粒子の計測のための標準(1)

産総研計測標準研究部門物性統計科応用統計研究室 櫻井博

知られていないエアロゾルナノ粒子計測技術

空気中には数多くの粒子が浮かんでおり、それらの由来、大きさ、形、成分はさまざまです。このような“エアロゾル”粒子の多くは汚染物質で、体内に入れば健康に影響を及ぼす可能性があり、また各種製造分野では製品の品質を低下させます。エアロゾル粒子の計測は、こうした汚染の度合いを調べるために広く行われています。粒子に対する特性評価の第一歩は大きさ(粒径)と量(濃度)の測定であり、図1に示すような電気移動度分析技術や個数計数技術を用いることで、粒径が10nmよりも小さなエアロゾルナノ粒子を容易にリアルタイムで測定することができます。しかし、このようなきわめて高感度な計測技術があることは、あまり知られていません。

測定精度などの性能を証明する仕組みの必要性

このように高度な計測技術があまり広く認知されていないのは、計測器が研究用途に限定された特殊なものであることが理由の1つでしょう。研究用であるために高価で、また、使いこなすのは容易ではありません。よく耳にするのが、どうやって性能の確認をしたらよいのですか?という質問です。方法はありますが、周辺設備の整備や難解なデータ解析法の習得が必要です。そもそも高価な装置に加え、使いこなすのにさらなる費用と労力が必要となると、導入に二の足を踏むのも無理はありません。エアロゾル計測技術のレベルの高さを知っている研究者の1人として、計測器の普及が進まない状況をはがゆく残念に思っていました。そして、性能評価技術が整備されれば、エアロゾル計測技術は世の中でもっと活躍できるはずだと考えていました。

ヨーロッパで2000年頃から、エアロゾルナノ粒子計測技術を利用し、排ガス中に含まれる粒子の個数を測定する自動車排ガス規制が検討され始めました。フィルター捕集した排ガス粒子を天秤で測定する従来法では正確に粒子量を測れないほど、排ガス清浄化技術が進んだからです。規制で使われる計測技術には、測定精度を保証する仕組みが不可欠です。規制の議論をきっかけに、計量標準の整備や校正法確立の必要性がエアロゾルナノ粒子計測に対して急速に高まりました。

そして、私がその開発の一部を担うことになりました。

(次号以下につづく)

日本計量新報 2010年3月21日 (2814)

第10回 国際計量標準シンポジウム
「イノベーションを生み出す計量標準」
5月26日、秋葉原コンベンションホールで

(独)産業技術総合研究所計量標準総合センター主催の第10回国際計量標準シンポジウムが、5月26日(水)、秋葉原コンベンションホールで開かれる。今回のテーマは、「イノベーションを生み出す計量標準」。

【日時】2010年5月26日(水)13時〜17時30分

【場所】秋葉原コンベンションホール(秋葉原ダイビル2F、JR秋葉原駅より徒歩1分)

【協賛】(社)日本計量機器工業連合会

【後援】経済産業省、(社)応用物理学会、(社)日本化学会、(社)日本分析化学会(予定を含む)

【講演(日英同時通訳あり)】

(1)「次世代質量標準」Richard Davis(国際度量衡局博士)

(2)「ナノ材料の規制と計量標準」Hendrik Emons(欧州標準物質・測定研究所教授)

(3)「ナノ材料開発と標準化・計量標準」高辻利之((独)産業技術総合研究所)

(4)「食品化学のための分析技術イノベーション」杉本直樹(国立医薬品食品衛研究所室長)

(5)「気候変動モニタリングの技術革新と正確計量」日置昭治((独)産業技術総合研究所)

(6)「産総研の第3期中期計画における計量標準への取り組み」中村安宏((独)産業技術総合研究所)

【参加費】事前登録3000円(5月19日まで)、当日5000円

【申し込み方法】WEBサイトの専用フォーム(http://intermet.jp/IMS/IMS2010.html)に記入して送信

【問い合わせ先】(独)産業技術総合研究所計量標準総合センター国際計量室、電話029−861−4149、Eメールims10@intermet.jp

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