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日本計量新報 2010年10月24日 (2843号)

10月7日開催の第59次東北六県北海道計量協会連合会総会
山形県と秋田県が計量器検定実施を報告

 
第59次東北六県北海道計量協会連合会総会
 

協会による検定実施拡大が予測

2010年10月7日、宮城県仙台市のホテル佐勘で開かれた「第59次東北六県北海道計量協会連合会総会」で、地方計量協会がハカリなど計量器の検定を実施していることが議題として取り上げられ、山形県と秋田県から、知事から委託されて計量器の検定と基準器検査を実施している事実が報告された。今後、計量器の検定が計量協会などへの業務の委託方式で全国に広がっていくものと推定される。ただし、計量器の検定に関する全ての業務を協会などに委託することは、計量法の規定に違反する。


民間団体によるハカリ検定実施の法的適合性

全国では10ほどの府県が、同様に計量器の検定と基準器検査を知事から業務委託などのかたちで受けて、事業として実施している。指定定期検査機関として定期検査業務を実施している計量協会などに検定の業務を委託する傾向が、今後広がっていくことが予測される。

計量器の検定を計量協会などが実施するという計量法の規定に反する事例が、前年度につづいて今年度の総会でも明らかにされたことにより、法令解釈とあわせて計量器の検定業務を計量協会が実施することの是非が公の場で問われることになる。

以下に、関連する諸事情を取り上げて、是非の判断材料を示す。

指定定期検査機関制度を利用する地方公共団体は5割超

1999(平成11)年の計量法の改正により、検定と検査の業務は機関委任事務から自治事務に移行した。これらの法的職務権限が国から地方公共団体に移し替えられている。

また、1993(平成5)年に、指定定期検査機関制度が創設されている。この制度は、都道府県および特定市が地方計量協会あるいは民間企業などを指定定期検査機関に指定することによって、定期検査の実務を指定した団体や企業に実施させることができるというもの。

この制度を利用してハカリの定期検査を実施している地方公共団体は5割を超えている状況であり、同制度を利用することが地方計量行政の方向性としておおかた決定づけられている。

計量法の一般解釈では検定を民間は実施できない

指定定期検査機関制度と並列的に規定されている指定検定機関制度では、地方公共団体(都道府県知事)がハカリ(質量計)ほか特定計量器の検定の実施をハカリの定期検査と同じような様式で地方計量協会あるいは民間企業などを指定してできるようにはなっていない。

ハカリ、タクシーメーター、ガソリン計量器などの検定の実施の責任(検定の主体)は、計量行政の自治事務方式という新しい計量法の体系のもとでは地方公共団体(都道府県知事)にある。その実施の方法として、ハカリの定期検査と似たような形で、地方計量協会あるいは民間企業などを指定して検定を実施する方法は定められていない。計量法の解釈の一般論としては、ハカリなどの検定を地方計量協会あるいは民間企業などに実施させることは、計量法の規定に違反することになる。

多くの地方公共団体は協会による検定実施を避けてきた

計量法上の特定計量器であるハカリやタクシーメーターやガソリン計量器などの検定を実質的に地方計量協会あるいは民間企業などに実施させている事例があれば、それは計量法に違反する行為であると解釈されるから、多くの地方公共団体(都道府県知事)はこうした行為を避けてきている。

ハカリなどの検定の主体(責任と権限)は都道府県知事にあるという規定から、知事の権限で検定の実務を地方計量協会あるいは民間企業などに実施させることができると解釈することは、計量法の諸規定を無視した拡大解釈であるというのが一般判断である。しかし、10ほどの都道府県では、そうした拡大解釈によって地方計量協会などの団体に検定を実施させている。

拡大解釈の決め台詞(ぜりふ)は、「計量器の検定の主体は都道府県知事であり、その職務と権限と責任は知事にあるのだから、計量検定所など計量行政機関は検定を民間団体に実施させることを知事が判断したならばそれに従え」ということになっている。「計量法に違反するかそうでないかは検定の実施の責任者である知事が判断するものである」ということであり、「知事の部下に相当する計量検定所などの部署や職員はそうした知事の判断に従え」という状況が現実におきている。

合否判定は行政職員のみ、経産省が技術的助言で歯止め

地方公共団体は、計量行政に要する費用を削減する、検定所などの職員数を減らしてその費用以下のまかないでハカリの定期検査や計量器の検定を実施するという発想によって、一般解釈では計量法違反となる計量器の検定を計量協会に実施させているのである。

このような事態の進行に対して、経済産業省は、計量器の検定の合否の判定の肝心部分は計量検定所職員が行い、その前の補助的実務は、協会などの員外の者が行っても良もよい旨の、地方自治法に基づく技術的助言(2009年5月28日付)を大臣名で発している。

この助言は難解な書き方だったため、経済産業省は同年6月8日付で補足説明をしている。補足説明では次のように記している。「検定・検査における合否の判定は、行政による処分行為にあたり、法律の特例がない限り、職員が自ら実施すべき業務であり、アウトソーシングできません」「これ以外の関連業務の一部、例えば合否判定に用いる検査や、判定後に行う刻印打刻等の事実行為については外部委託をすることも可能ですが、この場合にも都道府県職員が業務処理を視認できる態様で常駐するなど、都道府県の適切な管理の下に行うことが求められます」。

日本計量新報 2010年10月24日 (2843号)

計行審計量標準部会開く
特定標準器の指定、校正開始など

計量行政審議会計量標準部会(今井秀孝部会長)が、10月13日、経済産業省で開かれ、産業界からの要望が高い高周波インピーダンスの特定標準器の指定と校正の実施など5項目を審議決定した。経済産業大臣に答申され経産省は答申に基づき告示する。

(詳細次号以下)

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