日本計量新報 2011年4月24日 (2867号) |
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動かぬハカリ、漁港の機能停止を象徴
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八戸港漁協近くに設置されたトラックスケール
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種市漁港に水揚げされたヒラメ |
東日本大震災によって、東北の多くの漁港は大きな被害を受けた。岩手県にある111の漁港のうち被害を受けなかったのはわずか6つ。ほとんどの漁港では、魚市場が稼働するために必要な製氷設備、貯蔵設備、加工業者の設備などが壊滅している。津波にさらわれた物が海岸に浮いていたり沈没していたりして、船が接岸できない状態にある。
八戸市の魚市場は、建物の躯体は残っていても設備が破壊されていて、4月16日時点でまだ活動を再開していなかった。魚市場に隣接して設置されている2台のトラックスケールは津波で建物が流されたため、防水構造になっていない指示部がむき出しになっており、機械式構造のハカリ部も破損していた。
八戸漁港には大きな製紙工場があり、港湾周辺には精錬所など多くの産業設備が立地している。こうした工場設備を取り巻くように植えられていた松並木は津波によって倒されたり根こそぎ流されたりしていて、外壁の剥がれた工場内部に壊れた設備が見えていた。八戸市には八戸市計量管理協会があり、活発な活動をしてきた。そのことがこの地の工業の活発さを物語っている。八戸市の津波被害は、死者1人、160人避難、住宅220棟全壊。こうした数字だけをみると被災は比較的軽いかのように思えるが、海沿いに立地する工場には大きな被害が出ているのである。港から離れた内陸部に立地する八戸市役所や中心商店街には津波被害が出ておらず、行政機能が保たれているために、港湾付近の破壊された建造物などの撤去は、4月16日にはおおむね済んでいた。一方、八戸漁協の活動が停止している姿は痛ましい。雨ざらしのトラックスケールは、八戸港の産業活動が停止してしまっている現状を象徴するものである。
八戸港とは対照的なのが、八戸市から南へ車で30分ほどの距離の洋野町にある種市漁港である。小さな港である種市漁協は、建物も外壁が津波で剥がれ、設備も破壊されたが、4月16日午前には延縄漁で穫ったヒラメなどを水揚げしていた。
の漁港も現在ハカリがないため、魚を買い付けた業者は宮古漁港に運んで競りにかける。宮古漁協は、震災から1カ月目の4月11日に初競りをしたが、種市漁港などに揚がった魚を運んで競りにかけていたのであった。
宮城県塩釜市の魚市場には、4月16日にマグロ700本、17トンほどが水揚げされた。これはマリアナ諸島東沖で操業していた大分県津久見市のマグロ漁船が、操業を早期に切り上げ、拠点にしている塩釜港に帰港したことによるもの。競り値の面で条件の悪い塩釜港への水揚げを決めたのは、漁業によって栄えてきた塩釜の、復興への強い思いに応えてのことだという。
YouTubeで関連動画公開中! http://youtu.be/hicA-56hCy0 (「東日本大震災」)
(独)産業技術総合研究所は4月18日、「放射線計測の信頼性」に関するwebサイト(http://www.aist.go.jp/aist_j/rad-accur/)を設置した。 (詳細次号以下)
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