新光電子(株)岡崎稔社長インタビュー
「安全・安心・信頼が目に見えるはかりをつくる
−一般計量器で新JIS第1号認証取得−」(3)
型式試験データが使える
試験データは、全部新たにテストしなくても、信頼できる試験データがあればそれを採用してくれます。たとえば、ヨーロッパなどへ輸出している商品は、そのための型式試験データがありますので、それを使うことができました。型式試験データの相互承認の成果です。もちろん、これまでに無いデータは、新しくテストして取得しました。
これを別の観点で見ますと、やはり良い製品をつくらなければならないということです。きちんとした品質管理で良い製品を製造すれば、世界中どこででも通用します。
新JISマーク表示制度も、世界に冠たる制度に育って欲しいと願っています。
JQAから第1号認証取得
こうして新光電子は、2007(平成19)年6月18日付けで新JISマーク表示制度の登録機関である(財)日本品質保証機構(JQA)から、新JISマーク表示制度のJIS規格B7611−1に基づき「非自動はかり:一般計量器」における国内第一号の認証を取得しました。新JIS認証番号はJQ0307010です。これはJQAが新JISマーク表示制度の登録認証機関としておこなう、一般計量器における第一号の認証でもありました。
10月1日、新JISマーク付はかりを発売
2007年10月1日に、新JISマーク表示制度に基づくJIS1級、2級の5機種の電子はかりを発売しました。一般計量器としての非自動はかりで、個々の製品にJISマークが表示されています。
購買者は品質情報を客観的に得られる
繰り返しになりますが、JISマーク付はかりのメリットとして3点あげることができます。
1)JISB761−1に規定された技術要件に完全適合していますので、製品品質が保証されています。
2)ISO9001に基づく品質管理体制で製造しており、生産品質が保証されています。生産品質が保証されているということです。
3)工業標準(JIS規格)を満足した製品ですので、安全・安心・信頼のJISマーク付きはかりであるということです。
つまり、JISの性能要件及び試験方法によって製造することで、メーカーはその製品の品質を保証できます。購買者は、JISマークが表示されていることで製品の品質に関する情報が客観的に得られ、迷うことなく安心して、必要な品質性能を有する安全な製品を入手できるということです。
「計量のマネジメントをきちんとやるために」
−−計量のトレーサビリティについてのお考えを聞かせてください。
計量のマネジメントに大切な3つのこと
われわれは計量器のハードウェアメーカーですが、私は計量のマネジメントは、ハードをつくったらそれで終わりではないと思います。適正な計量をするためには、計量のトレーサビリティが大事です。
私は、計量のマネジメントをきちんとやっていくためには、次の3つが大事だと思います。第1は、トレーサビリティを確保するための方法です。第2は、データを生み出すハードウェア。第3は、管理プロセスです。
法定計量には、型式承認というハードウェアに関する担保があります。そして、2年に1度の定期検査があります。従来から実施されている計量管理という管理プロセスがあります。そしてトレーサビリティ体系図があれば、要求される範囲での計量のマネジメントができます。
管理プロセスはISO10012で
これに対して、一般計量器での計量のマネジメントはどうでしょうか。ハードウェアに関しては第3者認証によるJIS規格の計量器ができました。計量のトレーサビリティに関しては、まだまだ不十分ですが、JCSS校正事業者登録制度があります。
ところが管理プロセスについては問題です。現在はないといってよいでしょう。
しかし、私はこれに関してはISO10012「計測マネジメントシステム−測定プロセス及び測定機器の要求事項」という規格が使えると思っています。これは品質システムの国際規格であるISO9000ファミリーのアシスト規格です。計測機器の管理システムのISO10012−1と測定プロセスの管理のISO10012−2の二つに分かれていましたが、2003年版で統合されています。
ISO9000の計測の要求事項は弱い
ISO9000シリーズの要求事項を維持するための計測に関してはきちんとやられていないといってよいでしょう。計測器の管理や測定プロセスをどのようにすべきかは、ISO9000の中には十分に書かれていません。したがって審査員の判断の幅が大きいと思います。計測がきちんと位置づけられているとはいえないのです。
ここのところをISO10012でやるべきです。ISO10012には、測定器の管理と測定プロセス(測定手順、要員)の保証に関する要求事項が書かれています。たとえば生産工場で、求められる品質にもとづいて要求される計測精度があります。その場合に、ISO10012にもとづいて、その要求を満たす不確かさの計測器を使わなくてはならないということです。
ISO10012は、実際に計測器が使われる場面で、できるだけ頻度を上げて、品質管理のために使われる個々の計測器の不確かさを定点観測で見続けなさいという校正システムについての指針、こういうことがベースになっています。そしてそれを記録に残しなさいということです。
JIS規格の計量器、JCSS制度、そしてISO10012。これで一般計量器による計量のマネジメントもきちんとやれると思います。工場の計量管理者がこれにもとづいて計量のマネジメントをやれば、システム的にきちんとやれるのです。世界中で通用します。
今、(社)日本計量振興協会でISO10012に関する勉強会が開かれています。トヨタなどの大企業もISO10012には関心を寄せています。
中国では計量管理は10012で
注目すべきは中国で、計量管理はISO10012でやりなさいといわれていることです。政府からのトップダウンです。
「日・韓・中計量測定協力セミナー」が毎年開かれていますが、それに参加した日本側関係者が一番驚いたのがこのことです。エネルギー計量大系と測定管理大系ということで報告されています。まずエネルギー関係の大企業に対して測定管理大系の構築を義務づけています。ここでISO10012にもとづくことを求めているわけです。中小企業はこれからですが。
新光電子では、このISO10012を取り込んだ計量管理をどう実現していくかということを研究しています。
「JCSS校正事業者登録取得を支援」
−−JCSS校正事業者登録取得の支援をされていますね。
また計量のトレーサビリティは絶対に大事なことですから、これがきちんととれていますよということを宣言できるような事業者、機関をすこしでも増やしていかなければならないと考えています。
すでに1社がJCSS取得
当社のはかりを扱っていただいている企業をベースに、VFC(ビブラ・ファミリー・クラブ)を組織していますが、このなかで少しでも多くの企業がJCSS校正事業者登録をできるように支援しています。会員のなかからJCSS登録を希望する東日本、西日本各5社参加で「JCSS取得会」を開催してきました。1年間やってきまして、すでにJCSS校正登録事業者になられた企業がでています。今年度も事業の一環として「第2回JCSS取得会」を開催しています。
講習会は10カ月の間に14日の座学講習、ここではJISQ17025など基礎知識の拾得をします。またJAB技能試験などの実習を実施し、各社校正室での現地指導も実施します。その後、各社はそれぞれのスケジュールでJCSS申請をすることになります。
ISO10012での計量管理を常識にしたい
先ほど述べたISO10012もVFCを中心に普及していきたいと考えています。4〜5年もたてば、ISO10012による計量管理が常識になってくる、そういうふうにしたいですね。
私は「この活動をわれわれのミッションにしよう」ということを社員に言っています。計量のトレーサビリティの普及やISO10012による計量管理を産業界に広く普及させることを、われわれの生涯をかけた天職として実施し、そして自己責任による計量管理を実現させていきたいと考えています。
−−ありがとうございました。
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