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日本計量新報 2007年12月2日 (2702号7面)

第15回品質工学研究発表大会報告

セイコーインスツル(株)竹内和雄

第15回品質工学研究発表大会が7月3日、4日の両日、品川区立総合区民会館「きゅりあん」にて行われた。記念すべき設立15周年を迎えた品質工学会の提案として、「モノ・コトの見極めに革命を―リコールゼロに挑戦する品質工学」を大会タイトルに、過去最高の151件の研究事例発表と各企業、研究機関などから1300名を超える過去最高の参加者が集まり、盛大に催された。

今大会の特徴

学校における品質工学の教育普及が課題とされているが、一部の大学などで研究された事例を「学校における研究とQE」という新セッションにまとめ、8件が発表された。その中で「耐フレッティング疲労皮膜のパラメータ設計」、富山商船高等専門学校、水谷淳之介氏の事例は研究内容が評価され、みごと銀賞を受賞した。

昨年3件と少なかった射出成形事例は13件に急増し、シミュレーションと組合せた研究など適用の広がりが示された。また、昨年0件であったソフトウエアのバグ検出事例が4件発表され、様々なバグ検出のための工夫が紹介された。MTシステムの適用事例は27件であった。医療、食品、音楽、不動産、計測など徐々にではあるが適用分野の範囲が拡大されてきている。

昨年から開始されたカタログ展示は3小間増えて13小間、カタログだけでなく品質工学実験器具の展示、実演などもあり盛況であった。

品質工学を企業の全体活動としていかに有機的に適用させるかも大きな課題とされているが、新製品開発から出荷まで幅広く適用し、試作レス、試験レス、検査レスを達成した事例「品質工学をベースとした“一発完動”の新製品開発」アルプス電気(株)、新沼 明氏の発表は、模範となるとされ銀賞を受賞した。

また、「品質工学を当たり前にする」を掛け声に全社的な品質工学適用を進めているアルパインプレシジョン(株)、吉田ゆき子氏発表の「品質工学で企業文化の変化を探る研究」は、全社的な取組みと、その成果の定量化が評価され、大会実行委員長賞を受賞した。「設計品質向上活動」と題してプリンターの機能性評価の総合的な取組み事例を機能毎に分解し、1つの会場にまとめて7件を発表したセイコーエプソン(株)の発表には多くの参加者が集まり、非常に盛況であった。このような全社的、総合的な品質工学の適用がさらに広まることが期待される。

受賞記念講演

3日の午後は精密測定技術振興財団品質工学論文賞、ASI賞の表彰式と記念講演が行われた。記念講演はいずれもブラッシュアップした形で発表され、模範となる事例をじっくりと聞ける絶好の場面であった。

特別講演、矢野 宏副会長

田口玄一名誉会長に代わって矢野 宏副会長が「戦略的技術者の行動プログラム」と題して講演された。田口玄一氏が説かれる品質工学と我々の実践には、まだまだ開きがあると力説され、何がギャップなのか、何がギャップを生んでいるのか、諸々の社会統計データなどを交えて具体的に解説された。品質工学がめざす社会損失の低減を真に理解し、戦略的技術者(自分の知識を武器として課題に立ち向かう技術者)として革命(パラダイムシフト)に挑むべきであるとのお話は、品質工学を学ぶ技術者、さらに経営者にとって目を覚まされる内容であった。

表彰式

審査委員会により選出され、金賞1件、銀賞(今回は特別に)4件、大会実行委員長賞1件が表彰された。「今大会の特徴」で紹介した表彰事例のほか、金賞「プレス部品の初物外観品質向上への取り組み」、マツダ(株)、酒井 明氏発表。銀賞として「高能率フェイスミル加工技術の開発」、マツダ(株)、中山亨氏発表。「新製品開発段階での管理方法最適化―仮想モデルでのオンラインQE―」、アルプス電機(株)上杉一夫氏発表が表彰された。

次回は、2008年6月25日(水)、26日(木)に同会場で実施される。


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