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日本計量新報 2008年01月01日 (2705号第1部 4、5面)

新年トップインタビュー 長野計器(株)  宮下 茂社長 インタビュー
一芸を極めて世界に挑戦する」

 

 

自由な発想でコア技術拡充

−長野計器の事業についてご説明ください。

創業は明治29年

長野計器は1896(明治29)年に創業し、圧力計類の製作を開始しました。この(株)東京計器製作所が前身です。軍需工場であったが為に1948(昭和23)年に財閥解体で会社は解体されました。そして長野県へ疎開していた工場が、新しく(株)長野計器製作所として、同年に設立されました。
 1976(昭和51)年に本社を長野県上田市から東京に移転しました。1997(平成9)年に長野計器(株)に社名を変更しています。2008年には長野計器設立60周年を迎えます。

あらゆるニーズに対応する製品群  

経営理念である「一芸を極めて世界に挑戦」を標榜しており、圧力計測における専業メーカーとして、新しい技術の創造を進め、自由な発想でコア技術拡充に努めています。
 10パスカルから1500メガパスカルまで、あらゆるニーズに対応し幅広いレンジをカバーする製品群を揃えているのは長野計器だけです。
 機械式圧力計のマザー工場である上田計測機器工場と、月産250万個の生産能力を誇る丸子電子機器工場の自動化設備で生産される圧力計や圧力センサは、品質と性能がユーザー各社より高く評価されています。特に圧力センサについては、産業界のインテリジェント化に対応しており、ユーザーニーズに即した新製品開発など積極的な事業展開をしていきます。
 長野計器単体の事業構成では、圧力計が約半分、圧力センサが半分です。

高圧力領域では他社の追随許さず

長野計器の圧力センサは、使用される業界の範囲が広範囲で、多岐にわたっています。特に、高圧領域において、その性能は他社の追従を許しません。長野計器独自の発想と関連技術の融合によって実現しました。

自動車用圧力センサが活躍

 現在の車は電子機器や電子部品の固まりです。エンジンからブレーキ、車体の姿勢、室内環境などまで幅広く電子制御されています。ということは、そのためのセンサが非常に重要な役割を果たしているのです。

 車に搭載される圧力センサは、エンジン、ブレーキ、トランスミッションなど、電子化が著しい車の重要部品となっています。主な用途として、燃料噴射圧制御、CVT(無段変速トランスミッション)、カーエアコン、DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルタ、ブレーキ制御(ESC〔エレクトロニック・スタビリティー・コントロール〕、EHB〔エレクトロニック・ハイドロリック・ブレーキ〕)など、あらゆるところに使われています。

CO2削減や燃費改善にも貢献

 21世紀は環境の世紀といわれておりますが、その中で、車から排出されるCO2は地球の温暖化の原因といわれております。近年ディーゼル車が地球環境にやさしいエンジンとして注目されており、長野計器の圧力センサは安定した測定能力を発揮し、圧力制御用としてCO2の削減や燃費の改善に大きく貢献しています。

 研究開発が進められている燃料電池車用高圧水素タンク等の圧力センサも開発しました。

 また、自動車の安全性を高める新システムとして、車の横滑り防止装置(ESC)が注目されております。安全志向の高まる中、同システムに使用される圧力センサも大きな市場が見込まれます。

金属ガラスを用いた圧力センサ開発

 長野計器は多様化するユーザーニーズに対応するため、積極的な研究開発の中から、ニッケルやジルコニウムなどを原料とする金属ガラス合金の素子を使った画期的な小型高感度圧力センサを開発実用化しました。金属ガラスを用いた直径2・5<CODE NUMTYPE=SG NUM=4E9C>の産業用小型センサ素子は2006年に産学官連携功労者賞「内閣総理大臣賞」を受賞しました。また、昨年9月には日本金属学会において、第30回技術開発賞を受賞致しました。本賞は創意あふれる開発研究を推奨する目的で、金属工業ならびにこれに関連する新技術・新製品などの独創的な技術開発を表彰するものです。

信頼が要求されるところには機械式圧力計の需要

 圧力計そのものは成熟したマーケットですが、危険度が高い原子力発電や新幹線など鉄道車輌のブレーキ圧監視用、危険度が高いガスや宇宙ロケット用の圧力計などはすべて機械式です。電気エネルギーを必要としていない物理量の計測が可能であるため、信頼性が要求される場所にはまだまだ機械式圧力計が使われています。

第1号のJCSS認定事業者に

 1998(平成10)年、上田計測機器工場は、圧力分野でわが国第1号のJCSS認定事業者の認定を受けました。認定番号は「0080」です。国家標準にもとづく校正システムを確立し、重錘型圧力計、デジタル圧力計、機械式圧力計の分野でJCSS校正業務を実施しています。ILAC−MRAの認定も受けていますので、当社のJCSS校正証明書は国際的にも認められます。

品質管理の国際認証を取得

 品質マネジメント規格のISO9000:2000を、上田計測機器工場、丸子電子機器工場で取得しています。丸子電子機器工場は自動車業界の品質管理規格であるISO/TS16949:2002の認証を取得しています。また環境管理の国際規格ISO14001:2004を上田計測機器工場、丸子電子機器工場で認証取得しています。

圧力計では世界ナンバーワン

米名門のアッシュクロフト社を買収

 長野計器は、2006(平成18)年、アメリカの名門大手圧力計測機器メーカーのアッシュクロフト社(Ashcroft holdings,Inc.,現Ashcroft-Nagano Keiki Holdings,Inc.)を買収しました。圧力計の世界市場で、売上高でシェア2位の長野計器と、同シェアで3位のAshcroft holdings,lncを子会社としたことで、世界シェア首位の座を確保しました。これにより圧力計の分野においては世界シェアの約4分の1を占めています。

 同社は米国をはじめブラジル、ドイツなど世界9カ国に製造販売拠点があり、これらの拠点とグローバルネットワークを構築する長野計器にとって、米国市場で自動車、建設機械、産業機械分野への販売拠点が拡大した他、多くのエリアで製品の補完と技術サポート体制がより一層充実したものになりました。

 販売と生産、技術開発などグローバル化に伴いAshcroft-Naganokeiki HoldlngS,lncと長野計器間で人事交流を行い、圧力計、圧力センサなど既存製品はもとより、新製品の開発から生産、販売、アフターサービスまで相互にメリットがある管理体制を構築し、ブランド施策を進めながらシナジー効果を求めていきます。

 計測制御用圧力センサ分野では、シュナイダーが世界ナンバーワン、長野計器が第2位です。自動車用センサにおいても第2位ということになります。

北米マーケットを開拓

−アッシュクロフト社との関係はいつ頃から。

 約20年ほどの関係があります。アッシュクロフト社は、ドッレッサー・インダストリーズ社の計器事業部です。同社の歴史は古く、圧力計の名門企業です。1988(昭和63)年には私どもの開発した圧力センサの技術販売契約を結びました。

 アッシュクロフト社の売上構成は、圧力計が85%、圧力センサが15%ほどです。アッシュクロフト社は世界的にブランド力があるメーカーですが、圧力センサではまだまだだったのです。

 したがって先ほども申しましたが、買収により、北米の圧力センサマーケットを開拓していくシナジー効果があります。

東証一部に上場

−東京証券取引所市場第一部に上場されましたね。

 長野計器は平成17年2月に東京証券取引所市場第二部に上場し、さらに本年4月には同証券取引所市場第一部銘柄に指定されました。第一部上場企業としての社会的責任(CSR)を一層強く認識し、成長性と安定性を併せ持つ長野計器の事業展開を、今後も積極的に推進していきます。

409億円の売上見込む

−売上高はどのくらいですか。

 今期は連結売上高約409億円を見込んでいます。先頃中間決算を発表しましたが、中間連結会計期間の売上高は204億500万円(前年同期比66億円、47・8%増)となりました。

 企業収益の改善や設備投資の増加などを背景に、引き続き回復基調が継続するものと予想されますが、原材料価格の高騰や金利上昇動向、更には、アメリカ経済の減速や為替動向など、予断を許さない状況が続くものと思われます。そのなかで計測機器市場における圧力計、圧力センサの受注は、依然堅調に推移するものと見込んでいます。

 買収した会社の売上高は総売上高の約3分の1に相当します。Ashcroft-Nagano Keiki Holdings,Inc.の中間決算での連結売上高は76億1900万円(前年同期比63億6500万円、507・7%増)ですから、年間では約140億円ぐらいになります。そうしますと為替相場の変動でかなり左右されることになります。

 このような状況を踏まえ、今期の業績見通しは、連結売上高409億4800万円、連結営業利益16億9400万円、連結経常利益14億8200万円、連結当期純利益9億2000万円を見込んでいます。

中期計画で連結売上高500億円をめざす

 また、今年を初年度として、中期3カ年計画がスタートしました。この新中期事業計画「GO−500」の諸施策を確実に実行し、世界市場を視野に入れた事業展開を図っていきます。最終年度の2010年3月決算では連結売上高500億円を目指しています。

−どのような事業展開をされますか。

 先ほども少し述べましたが、圧力計はほぼ成熟した市場です。したがって、北米を中心にした圧力センサの需要開拓を進めていきます。長野計器の事業の圧力計と圧力センサの国内の比率が50%、50%ですから、アメリカでも同じような比率まで持っていけると考えています。アッシュクロフト社の売上のうち、115億円ぐらいが圧力計の売り上げです。圧力センサはまだ25億円ぐらいです。この比率を50%、50%にもっていければ、単純計算でいけば90億円増やせることになります。

中国に圧力スイッチ工場

 経済成長が著しい中国や東南アジアでの電力・化学プラントの需要拡大に備えるために、中国江蘇省の呉江市に圧力スイッチ工場の現地法人、Ashcroft Instruments(Suzhou)Co.,Ltd.を設立しました。

用途開発製品で新市場開拓

−圧力計と圧力センサ以外に力を入れられるところは。

 圧力計、圧力センサに続く第三の事業として、圧力、温度、流量を基本技術とした用途開発製品の新市場開拓と新製品開発を進めています。

 圧力計、圧力センサは当社の主力製品ですが、これらは「部品」です。そこで今後、これらを使った用途開発、アプリケーションの部門を充実させていきたいと考えています。この部門を発展させて当社の3つの中心事業にしていきたいと思っています。

 先発企業の製品はいろいろありますから、これらを後追いするのではなくて、大手企業がやらない、これまでにないものを手がけていきます。4年ほど前に有力企業を買収して、製品の充実をはかってきています。

 この結果、計測制御機器部門の今期の中間連結会計期間における売上高は16億3500万円となり、前年同期比800万円(0・5%)の増収になっています。

技術提携、積極的に

 今後の展開としては、M&Aや、大学、共有できる技術を持っている企業などと積極的に技術提携をしていきたいと考えており、更に製品化ができるベンチャー企業と提携していきます。産学官の連携を積極的に進めていくということです。

 経営資源の集中化を図り、新市場の開拓と同時に、積極的に常に固有の技術レベルのアップをはかっていかなければなりません。

 自動車用センサのところで述べましたが、CO2の削減や燃費の改善など環境問題の解決に圧力センサへの期待が大きいですね。

公的責務も積極的に果たす

上田商工会議所会頭にも就任

−計工連会長や政府関係の委員なども引き受けておいでですね。

 計量計測機器の製造メーカーの団体である(社)日本計量機器工業連合会の会長をお引き受けしています。計量行政審議会関連の委員も拝命しています。また、2007年11月からは長野県上田市の商工会議所会頭になりました。

 現在は、経済環境が不透明で予測が大変難しい時代です。一寸先は闇といっても過言ではありません。そのなかでの舵取りは大変です。皆様のご協力をいただいて、いったん引き受けたからには、微力ですが責務を全うしていきたいと考えています。

世界に認知される日本発の規格を

 現在、ISO9000など工業に関係する各種の規格がありますが、そのほとんどがヨーロッパなどの主導で制定されたものです。日本は後追いになっています。

 私は、今後は規格などの制定でも、日本が「対応する」のではなく、日本が「主導する」ようにしていかなければ、と考えています。日本発の規格を世界に通用するものにしたいですね。

−ありがとうございました。


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