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日本計量新報 2008年01月01日 (2705号4、5面)

新年トップインタビュー (株)イシダ 石田隆一社長に聞く
「21世紀は人間関係力強化が大切になる
〜双方が「育てよう」「学び取ろう」という意識を持ってその力を合わせよう」

 

 

国際情勢について

2007年は世界全体としては平穏だったといっても良いのではないでしょうか。アメリカは混迷の中でも底力を見せ、EUはフランス、ドイツ、イギリスなど主要国で政権が交代したものの各国とも世界の動向に合わせて舵を切りなおすなどして堅調で、中国もオリンピック開催をひかえ押さえるべきところは押さえて大きな問題は起こしていません。

20世紀はアメリカの時代、戦争の時代、イデオロギーの時代でしたが、これからは今までのようなアメリカ一辺倒の時代からグローバルな時代に向けて変りつつあり、全体に底力がついてきています。

現在、世界の三大混乱が三つの「M」で象徴的に取り沙汰されています。

「メイド・イン・チャイナ(中国製品の品質問題)」

「モーゲージ・ローン(欧米におけるローン問題)」

「マネジメント・ディフェクト(日本のマネジメント力の欠落)」

中国製品の食の安心安全の問題や、サブプライムローンから波及し世界に与えた影響は深刻なものでありますが、最も深刻なのは日本の政治や行政の『ネジレ』の問題です。

 

日本の政治の「ネジレ」

日本人は、贅沢、平和が続いて甘え主義に陥ってしまい、地球軸や時間軸でなく、目先の事のみ、足許の事のみに捉われ感情的に決断をしてしまいがちです。小泉政権の時には郵政問題で、安倍政権の時には年金問題が選挙の争点となり、国民の感情がそれぞれ大きく振れ過ぎた結果、政局を劇的に変えてしまうことになりました。

政治だけの問題ではありませんが、テロ特措法延長(インド洋給油活動)問題にしても、混乱を極めるばかりです。

インド洋給油活動問題やイラク問題への対処など、アメリカの立場からすれば、日本は本当に頼りになる同盟国なのかが気になるところでしょう。

日米がバラバラになれば、日本は周辺国に対して丸裸になってしまうのです。さらにアメリカ以外の二十数カ国からの継続要請を足蹴にするような決断を良しとするのが、本当の我々の思いなのでしょうか。

目先の事のみ、足許の事のみに捕われ、感情的、感傷的に、国内だけの事情で揉めるのではなく、地球軸や時間軸で物事を捉えるようにしなくてはなりません。

  

国際標準と選挙目当ての「ネジレ」

国内では財政悪化、少子高齢化、上流インフレ下流デフレの三重苦がますます顕著になってきております。

財政悪化は深刻で、830兆円ともいわれる莫大な借金を抱え、現在の税収(過去最大で年70兆円)で返済していくのは到底難しい状況です。好業績企業の多くは国際展開している企業であり、その利益の多くは海外で稼いだものですから、国内の状況自体は良いわけではありません。少子高齢化によりあらゆる消費が減り経済がシュリンクしています。

原油を始めとしたレアメタルや穀物類などのあらゆる原材料の価格の高騰はとまらず、「上流インフレ、下流デフレ」の傾向はますます強まる中で、生産者・供給者は消費者の要望に応える為に、依然厳しい状況への対応が迫られています。

国際標準で世界との厳しい競争に立ち向かわねばならぬ企業と内向き中心の選挙目当ての施策を実施する行政との「ネジレ」(特に税制面で顕著)等が近い将来、我が国に大きな禍根を残す事にならないかと危惧しております。

税制の改革 小さくて清潔な政府に

日本では、(目先の)消費税の値上げのことになると賛否両論で大変な騒ぎになります。ところが、世界各国を見渡しても、日本のように消費税5%という国はありません。直接税を主体にしている国はむしろ少ないのです。

日本の場合には企業の七割ぐらいが赤字であり、法人税を納めておりません。税を免除されている組織団体もあるくらいですから財政赤字はすぐには改善されないのです。そんな中で三割ほどの黒字会社と勤労所得のある人が税を納めており、この税によって国の経費が賄われているという状況です。頑張って黒字を出している企業からは、これでもかというくらい沢山の税を出させる。頑張っても頑張らなくても同じということになっている国は日本以外にどこもありません。日本の相続税は世界的に見ても非常に厳しい内容です。世界を見ると相続税を廃止している国が増えているなかでの日本の現状ですから、これは悪平等です。例えば、スウェーデンは付加価値税が25%ながら、法人税や所得税は引き下げられ、相続税は課されません。

不要な支出を減らして小さくて清潔な政府にして、国民みなが納得するような形で消費税を上げるのがよいでしょう。

日本は「格差解消」の議論が盛んなのですが、企業と働く人が元気になることが一番大事なことではないでしょうか。

 

小さなマスコミに

日本のマスコミはテレビでも新聞でも、本質に触れず、分析もしません。国際ニュースもほとんど報じられません。センセーショナルなことばかりで、ヒステリックに面白そうな部分だけ極大にして報道しているのが大いに問題です。

新聞社は記事内容の特色が無くなってしまっているようです。外国の新聞は多くても100万部ほどの発行部数なのに、日本の大新聞社は1社で1000万部のところもあるくらいですから、誰にでも受け入れられるような記事しか掲載しないのです。

テレビの場合には視聴率競争だけになっており、チャンネルをひねってもお笑い番組ばかりで、こうしたことになるのは国民も悪いからでしょう。

マスコミは巨大化しすぎているので、もう一度小さなマスコミになったつもりで、物事を冷静に分析して、本質に斬りこんで策を提示するなど独特の切り口を示せるようになってもらいたいものです。

 

21世紀は人間関係力強化が大切になる

これまでも申し上げてきましたように、お客様第一主義、現場第一主義を基本として、「情報化」「システム化」「国際化」に加え「人間関係力強化」の4点を重要ポイントとして取り組んで参ります。『軸』を変えるつもりはありません。

とりわけ、21世紀は「人間関係力強化」が重要になってきます。

世の中のテンポはますます速くなり厳しい対応が求められるのは当然でありますが、情報化・国際化だけでは、人間関係もある意味ドライなものになってしまいがちです。お互いが主張し合い、カタいもの同士がぶつかりあうとややこしいことになってしまうものです。反面、不安な時代だけに、お互いがどこかで「ひとに頼りたい」といった気持ちも起こってきます。人間的な絆や温かさといった「ウエット」なもの、人間の絆(ヒューマンネットワーク)がより一層重要視される時代になるでしょう。

感情に立脚した人と人との付き合い、ウエットウェア、すなわち「絆」がベースになければ時代に取り残されることになります。

柔らかい心をもって、相手を立て、自分も立つことを考えた長い付き合い、人間対人間の関係がますます重要になってくるものと考えております。

いつでも相手の立場や気持ちに立って誠実に対応すること、そして人間関係を長く保つ努力を惜しまず地道に信頼を積み上げていくことでより良い人間関係やビジネス関係が生まれるものと信じて、常に誠実で熱意を持って、迅速にきめ細かく行動して参りたいと思います。

 

後進へのメッセージ

「目標は高く」、「姿勢は低く」で、しっかりとした目標を立て、理念を持ち、一歩一歩着実に努力を重ね、常に自分自身の人格を磨いていく姿勢が大切です。

人間以外の動物が「遺伝」(血統)で能力がほとんど決まってしまうのに対し、人間は常に「遺伝」、「努力」、「環境」の三角形で成り立っています。学校の成績など関係なくて、人間は「努力」を怠ってはならないということです。「環境」も大事で、澱んでしまった「環境」では本人がいくら努力しようとしても能力開発難しいということですし、どんな環境下にあっても随所に主となる気持ちで環境を活かしていく考え方が大切です。

ただし忘れてはならないのは、職場で部下を育成するときは、リーダーや部下の一方だけが頑張るのでありません。双方が「育てよう」「学び取ろう」という意識を持ってその力を合わせる状態、禅宗でいう『そっ啄一致(そったくいっち)』が大切です。(「そっ啄」とは鶏の卵が孵る時、親鳥が卵の殻を外からつつくと同時に雛も内側から啄くということで、つまり師弟の働きが一致しなければ物事は成功しないとの意味)

常に、志は高く、姿勢は低く、素直に謙虚に人の言うことを聞いて事にあたり、一日一日進歩するという気持ちを忘れずにやって行くことです。

イシダでは、あらゆる社員に無理やり能力開発を強いることは考えておりませんが、学びたい、向上したいという志のあるものには大切にしたいと常に思っています。教育への投資も惜しまないつもりです。希望する社員には会社として全面的に応援して、最近では、MBA(経営学修士)取得のため同志社大学や京都大学で学ぶ機会も与えています。業務の延長上で弁護士資格を目指しロースクール(法科大学院)に行く社員も出てきたりしています。

 

イシダの業績について

昨年を振り返りますと、上半期は売上げ・利益とも順調に推移してきました。現時点で、対前年比で売上げは7%増、利益は20%増となっており、出来すぎといえるくらいです。国内市場は厳しいのですが、当社も海外(輸出)での売上げが利益に大きく貢献しています。

まだまだ四半期が残っておりますので、気を引き締めて、仕上げに向かって着実に努力していきたいと思っております。

 

イシダの事業分野について

今後伸長が期待できる分野としては、ESL(電子棚札などの表示システム)があります。現在多くのスーパーマーケット様に納入していただいているシステムをさらに発展改良してより多くの幅広い業界分野でのお客様に利用いただけるよう、様々なメッセージが表示できる仕組みを開発しているところです。

システム化においては、はかる、運ぶ、包む、検査するまでを自社製品として開発し、「一気通貫」のトータルシステムとしてご提供できることがイシダの強みです。データを様々な形で連携活用することも出来るようにしたり、トータルとして稼働率を上げることでコストメリットを出すなど、お客様の戦略的なパートナーとしてお役に立てるようにしてまいる所存です。

 

イシダの今後の目標

当面の目標として、イシダ単体で「757計画」(売上700億円以上、経常利益50億円以上、自己資本比率70%以上と損益分岐比率70%以下)を掲げています。

さらに「計量包装業界における世界NO.1」を将来の目標として掲げており、あらゆる意味において『ベストカンパニー』を目指していきます。

米国マサチューセッツ工科大学(MIT)に留学していた長男の石田隆英常務もMBA(経営学修士)を取得し、昨年の9月に無事帰ってきてくれましたので、次の目標の実現に向けて力になってくれると期待しております。

いつも申し上げるとおり、我々としては、決めた目標を実現するために、明るく前向きに日々怠らず努力を続けて前進すること、常に同じ姿勢で淡々とまず今日になすべきことをきちんと行なっていきたいと考えております。

 


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