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日本計量新報 2009年10月4日 (2792号)

国際計測連合(IMEKO)第19回世界大会に出席して  

(社)日本計量振興協会会長 飯塚幸三

世界各国の計量計測関係学会の連合組織である国際計測連合(IMEKO)の第19回総会が2009年9月7日から11日まで、ポルトガルの首都リスボンの国際会議場で開催された。

筆者は縁あって1967年にワルシャワで開催された第4回世界大会から参加し、今回は10回目。大会は原則3年ごとと決められているので、2003年のクロアチア・ドブロブニク大会以来6年ぶりの参加である。我が国からの参加団体である<CODE NUMTYPE=SG NUM=82B1>計測自動制御学会は変則的に1999年に第15回世界大会を大阪で開催したが、本年はそれから丁度10年の節目にも当たっている。

今回の大会は当初フランスが開催国となるはずだったところ、国内事情で返上し、急遽ポルトガルの参加団体である認定試験所協会が引き受けることになったという経緯がある。

会場は1998年の世界博覧会跡地の会議場であり、会期の5日間に551件の研究発表、5件の招待講演、4テーマのワークショップおよび4テーマの円卓会議が休み無く行われた。

わが国からの発表は約40件であり、参加者数は50名に達したと思われる。会期前々日に諮問委員会、前日に理事会、さらに会期中に多くの技術委員会が開催され、我が国からは元大阪府立大学教授の小野敏郎氏らがそれぞれの役目で出席された。また恒例の計測器企業の製品展示も欧米の数社だけであったが併催された。

今回の全体テーマは「基礎および応用計測(metrology)」という広い範囲を包括したもので、従来からのテーマに加えて、大阪大会の後に発足した環境計測、測定のための数学ツール、振動測定、食料・栄養計測、化学測定などの技術委員会に対応したセッションも設定された。

5室での発表が平行して行われたため、筆者が聴けた講演はごく一部であったが、力・質量測定、圧力測定、形状測定、硬さ測定などの伝統的な分野で着実な進歩が見られたほか、光計測分野で先端的な研究成果が発表されていたことが印象に残った。興味ある報告は枚挙に暇が無いが、「キログラムの再定義」と「国際計量用語(VIM)」をテーマとするワークショップが関心を集めていたことを特記しておきたい。参加者総数は約560人と報告されたが、今回は、前回2006年の大会がブラジルで開催された効果としてブラジルからの発表と参加が目立った。

最終日9月11日夕刻の閉会式では恒例により新役員と次期開催地の紹介ならびに表彰式が行われた。3年間の任期を終えたIMEKO会長ポルトガル工科大学院アントニオ<CODE NUM=00A5>クルス・セラ教授は、その職を韓国標準研究所(KRISS)次長のダエーイム・カン博士に引継ぎ、新旧会長として挨拶された。なお次期会長はイタリアのパスカーレ・ダポンテ教授である。我が国からは産総研研究顧問の今井秀孝氏が渉外担当副会長、小野敏郎氏が諮問委員会委員を継続する。また技術委員会では慶応大学舘タ教授がTC17(ロボット計測)の議長を継続するほか、東工大小池康晴教授が伊藤宏司教授に代わってTC18(人間機能計測)の議長に就任した。

IMEKO大会での表彰の一つはIMEKOの活動に対する功績賞で、元会長で今回まで諮問委員会委員長を務めたベルギーのファン・ビーゼン教授ほか5名に贈賞された。もう一つは35歳以下の研究者に対する「ゲオルグ・シュトリカー若手論文賞」で、初代事務局長G・Striker教授を記念し、同氏夫人からの寄付金で運営されている。大会ごとに最も優秀な成果を発表した35歳以下の若手研究者が一人だけ選ばれる大変名誉なもので、今回は東京大学大学院の精密機械工学専攻博士課程在学中の工藤良太氏がその論文「定在波照明シフトによる二次元超解像光学式半導体微小欠陥検査法の基礎検証」により受賞した。日本から3人目の快挙であった。

次回大会は韓国釜山で2012年9月に開催されることとなっており、閉会式の最後に釜山の紹介ビデオが上映された。地の利を得て次回にも日本からの多くの発表と参加を期待したい。

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