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基盤技術もとに新たなアプリを開発

(株)エー・アンド・デイ 古川陽社長に聞く

聞き手は横田俊英論説員

vol.2

日本計量新報 2015年1月1日 (3039号)第2部4-5面掲載

標準化と製造移管でコスト低減

4年かけて実施

車関係の仕事は数は出ますが、標準化をして製造移管をしないとコストを下げることができません。そこで標準化と製造移管を4年かけてやり、その目処がだいたいついてきました。
 当社のアメリカの子会社もこれまでは一品料理で製造していました。そこで、2014年〜2015年にかけて、エー・アンド・デイが企画した標準品をアメリカへ持っていきます。なぜそういうことをするかというと、製品の納期とコストを下げるためです。システムですから標準化してユニットに分離すると輸送費が低減できます。システムをそのまま輸送すると輸送費がバカ高くなってしまいます。ユニットを日本で生産して、最終組み立てをアメリカでやる方式に改めました。
 また、システムは顧客からカスタマイズを要求されます。したがってアメリカで最終組み立てとカスタマイズができるしくみをつくりました。
 これが成功すると、韓国、中国、ヨーロッパも同じ体制にできます。

ベトナムに製造拠点を新設

まずは家庭用血圧計等の製造から

現在当社は、中国では部品の製造から最終アッセンブリまでをやっていますが、中国では人件費が上がってきていますので生産コストも高くなっています。そこで、部品の製造部隊だけを中国に残して、最終アッセンブリはベトナムへ移します。
 そのためにエー・アンド・デイは、2月にベトナムに100%出資の子会社(A&D VIETNAM LIMITED)を設立します。12月から稼働する予定です。

ーー中国では人件費はどのくらい上がっていますか。

当社が中国へ進出した頃と比べて3〜4倍ほどになっています。ただ、中国から完全に撤退するということではなくて、最終アッセンブリの工程を移すということです。部品は機械がつくりますから、その生産性を上げればよいのです。
 ベトナムではまずは家庭用血圧計等の製造から始めます。あとは、「はかり」の最終アッセンブリをやっていくことになります。

基盤技術とアプリケーション

リーマンショク以降、エー・アンド・デイも業績の停滞がありましたが、これまで述べたような新しい局面がいろいろ出てきていますので、それが起爆剤になると思っています。
 基盤技術とアプリケーションを分けて、基盤技術を磨きながら、それをまとめて利用できるアプリケーションを身につけてやっていくということが、メーカーとしてのベストなやり方だと考えています。基盤技術を深く掘り下げて性能を上げてナンバーワンになり、それを使ったアプリケーションをいろいろ考えていくということです。これはいくらでもあります。

海外60%、日本40%になっていく

生産、販売とも約50%は海外

ーー貴社における海外の比重はどのくらいですか。

売上、生産とも約50%は海外になっています。この流れはどんどん進んでいきます。
 売上でいうと、2014年3月期の総売上高378億円のうち、海外比率は56%です。アメリカ61億円(16%)、ヨーロッパ92億円(24%)、アジア・オセアニア32億円(9%)です。日本は、193億円(51%)(その内、日本からの直輸出金額は27億円〔7%〕)です。

ハイテク製品は日本で生産

ただすべての製造が海外に移転するわけではありません。日本に残るものもあります。たとえば、生産においても技術力が要求されるもの、いわゆるハイテク製品は日本で生産していくことになります。
 生産、販売ともに、40%が日本で、60%が海外でという構成になっていくと思います。

自動車関連の先端技術でも優位性

ーー貴社の他の事業についてはいかがでしょうか。

航空・宇宙関係も継続強化

航空・宇宙関係は、売上はまだ多くありませんが継続して強化していきます。国には、次世代のロケット計画がありますが、それに当社も関わっていきたいと考えています。なかなか継続的な商売にならないところが頭が痛いところです。
 国は、航空・宇宙関係にはもっともっと力を入れるべきです。そこで培った技術が一般産業に普及してきますから。

バッテリーやモーター関係で引き合い

cidVMS燃料電池車や電気自動車などの自動車関連の先端技術に関しても、エー・アンド・デイは優位性を持っていると思います。エンジン技術のなかには、ヨーロッパやアメリカの航空・宇宙産業で培われたものがあります。この面では、日本は10年ぐらいの遅れがありましたが、先端分野ではスタートが海外メーカーと同一ですから非常にやりやすいですね。バッテリーやモーター関係の引き合いがきています。

−−自動車の将来はどうなりますか。

私は従来のレシプロエンジンは残っていくと思います。少なくともここ10年ではなくならないですね。もともと自動車の駆動に関しては、誕生時点からエンジンとモーターの戦いでした。それで現在はエンジンの方が効率がよいので主流になっています。
 モーターに関しては、駆動源であるバッテリーの性能が技術革新でもう一皮剥けないと、本格的な普及は難しいと思います。
 電気自動車はまだまだエネルギー密度が低いです。
 たとえば東京〜大阪間を1回の充電で走れるくらいにならないと、いつバッテリー切れを起こすか心配で、安心して乗ることはできません。そこまでバッテリーの性能が進化しないと内燃機関の優位性は変わらないですね。

メディカル関係にも力入れる

メディカル関係にも力を入れています。現在は血圧計を中心になっていますが、まだまだ不十分ですので、医療関係の分野はぜひ広げていきたいと考えています。
 医療関係向けの血圧計他、身長体重計、体重計、車いすスケールなどはけっこう売れています。
 ベッドスケールやストレッチャースケールなどのME計量器は、シェアも高く大変売上に貢献しています。

技術を活かす

ーー経済の現状をどのように見られていますか。

産業構造の転換期

われわれを取り巻く市場の景気はなかなかよくなりません。さらにそれに輪をかけて、日本企業の家電や通信が、世界との競争で後れを取りましたね。しかし、逆に、これまで逆境にあった重厚長大といわれた分野はよみがえってきています。重厚長大はコピーしようとしても難しいのですよ。わたしは、現在は日本の産業構造の転換期だと認識しています。
 したがって、われわれがそれに合わせたビジネスを展開できるかどうかにかかっています。日本にはしっかりとした技術がありますから、それをどううまく活かしていくかがカギです。

人材の確保

人材も重視しています。エー・アンド・デイは、苦しいときでも毎年かならず採用しています。創業以来、採用ゼロの年はありません。

病院や食品メーカーで粘度計の需要が

高齢化社会への適応も大事です。当社が医療用機器に力を入れているのもその一環ですが、技術を活かすということで1つ例をあげます。。
 当社は粘度計を売っていますが、これも医療に関係があります。高齢者は嚥下障害を起こしやすいですね。粘度が低い食品を飲み下すと気管に入りやすくなります。気管に異物がはいると肺炎等を引き起こします。そこで、病院や介護施設で適正な粘度の食品等を準備するために、また食品メーカーが嚥下障害を起こさないような食品を製造するためにも粘度計が使われます。これはよく売れています。

ーーエー・アンド・デイの売上目標をお聞かせください。

創立40周年には売上500億円めざす

エー・アンド・デイは2017年に創立40周年を迎えます。創立40周年には売上500億円を達成しようということでがんばっています。

−−ありがとうございました。

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