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新しい技術で新しい需要を

(株)チノー 苅谷嵩夫社長に聞く

聞き手は高松宏之編集部長

vol.3

日本計量新報 2015年5月17日(3056号)2面掲載

チノーマインドで海外展開(2)

中国での事業を再編

これを機に、組織的な改革をしました。従来は2社とも同じような業務内容でしたが、上海の会社は完全に販売会社にしました。そして、昆山の会社は完全に生産会社に切り替えました。この2社を一体のものとして運営していくことになります。
 千野測控設備(昆山)有限公司に関しては数年かけて製造に関する支援をしました。その結果、現在、群馬で生産している主要機器は、昆山の会社で生産できるようになりました。かつては日本で生産するための部品を製造する会社としてスタートしたのですが、もはや、そういう時代ではありません。
 今後も中国には大きな内在する需要がありますから、そこにフィットする製品を現地で開発し、生産も現地でやっていけば、効率もよいし、中国市場の需要にこたえることができます。
 上海の販売会社では、営業に関する人員も再配置し、新規採用の社員を日本で教育して、日本的なマインドを徹底的に身につけてもらいました。マネジメントにおいても、従来は日本人は総経理1人だけでしたが、日本人の常駐者3人体制に強化しました。
 一時は再編の影響も出ましたが、今年からよくなってきました。待ちの営業から攻めの営業に変わってきました。当社が進めていくのはソリューションですので、お客様と信頼関係を築いて、提案を理解していただく必要がありますから。
 また、これまでは中国の合弁先との関係もあり、現地の企業を営業のターゲットにしていましたが、現在、上海などには日系企業が数多く進出してきています。逆に今後は、日系企業も重要なお客様として大いに攻めていきます。
 アメリカも一時は大変でしたがよくなってきました。きっかけはシェールガスです。ガスのパイプラインには当社の記録計が沢山使われています。

−−人材の育成も重要ですね。

外国人社員も採用

これらの経営もいずれは現地の人に任せていく必要があります。しかし、その場合でも、チノーマインドで進めていくことが重要ですから、日本で外国の人を採用してチノーマインドを会得してもらうことにも力を入れています。
 現在、東京の本社に中国出身の社員が4人います。2014年度は3人のインド人の社員が誕生しました。日本人が彼らをきちっと受け入れて育てることができるのかが、今試されています。これらの社員がうまくチノーの遺伝子を受け継いでくれればと期待しています。
 韓国のチノーは、かなり前から現地主義です。社長以下全員が韓国の人で、これは大成功しています。日本のチノーと韓国のチノーは一心同体で活動しています。

−−海外の生産拠点も増えていますね。

インドで温度センサの生産開始

これまで海外の生産基地を韓国、中国、インドで整備してきました。日本でものづくりをしたり、商品開発をしたりして、製造技術が確立したものを、海外で製造するようにしています。現地向けのアレンジメントと校正サービスなどは現地で取り組んでいます。
 インドでも、現在、記録計を生産していますが、4月からは温度センサや放射温度計の一部の生産も開始しました。

計測のトレーサビリティを重視

−−チノーは計量標準の開発もされていますね。

大切なのは「測った結果は正しい」こと

われわれにとって一番大切なことは、「測った結果は正しい」ということです。ですから、チノーの販売した製品に対するサービスとして、校正(キャリブレーション)サービスが大事です。計測した結果が信頼できることが、お客様にとって最も大切なことだと考えています。当社の製品は長く使われるものが多いですから。

校正サービスを重視

このように、校正サービスというフォローアップが必ず必要ですから、これを各拠点に構築していきます。そして、この校正値は、その国の国家計量標準機関(NMI)と計測のトレーサビリティがとれている必要があります。

計測の信頼性確保はチノーの使命

日本の国家計量標準機関(NMI)である産総研計量標準総合センター(NMIJ)は、各国のNMIと密接に連携しています。そのNMIJの温度に関する国家計量標準になるようなものには、NMIJのご指導のもと当社が共同開発したものがたくさんあります。
 これを商品にして当社は世界のNMIに販売しています。これは商売というよりも、計測の信頼性を確保するための当社の使命のようなものだと考えています。
 私自身が世界10カ国ほどのNMIを訪問しましたが、どこでも当社が開発した標準温度センサを採用していただいていて、大変光栄に思っています。
 われわれは、生産拠点となる国のNMIとの計測のトレーサビリティを構築した校正サービスを確立していくことを基本の方針にしています。

働く人たちの環境整備にも力

女性の活躍を引き出す

働く人たちの環境整備にも力を入れています。チノーは40年前にタイムカードをなくして申告制にしてきました。モチベーションを高めるにはどうしたらよいかということを考えています。
 私は、たとえば1カ月間という長い期間での生産性だけで見ていてはダメだと思っています。これでだけは残業時間問題を解決できないし、本当に効率がよい生産ができているかどうかもわからないのです。
 さらに細かく業務内容を分解して目標を設定して、内容を把握し、目標に向けた合理的な活動を構築していく必要があります。
 女性の活用に取り組んでいきます。パフォーマンスではなく、実質的なしくみをつくる必要があります。スーパーウーマンを登用するだけではダメなのです。それでは後が続きません。置かれている環境を前提にして、男性中心に考えていた働き方を変えていかなくてはなりません。
 そのためには仕事の中身や仕事のプロセスをオープンにし、その人でなければできない仕事、他の人が代われない仕事を少なくして、必要があれば他の人がその人の代わりが務まるシステムにする必要があります。マネジメントの問題です。同時に、さまざまな環境のなかで、それに合わせたいろいろな能力を発揮できる人を育てるという育成の問題でもあります。

環境活動に取り組む

ビオトープを整備

チノーは環境活動にも力を入れています。その1つが「チノービオトープフォレスト」と名付けたビオトープの整備です。2011年3月に、藤岡事業所の緑化対策として、面積が約1万m2のビオトープをつくりました。
 ビオトープというのは、地域の生態系や野生動植物を保全することを目的に、人工的に復元した場所のことですが、生物環境の保全に配慮し、地域に失われつつある自然を復元し、昔ながらの自然豊かな関東平野の里山を取り戻そうと活動を進めています。外来種の少ない土壌を選び、高崎観音山丘陵周辺から在来の樹木や土壌を移植・再配置しています。
 ヤリタナゴという絶滅危惧種を池で飼っています。同時に、水温などの環境を測らなければなりませんが、それはわれわれの得意とするところです。ワイヤレスでデータを送信して、インターネットで見られるようになっています。
 子供たちの見学も受け入れており環境学習をしていただいています。昼休みには社員が昼食をとったり、散策をしたりしています。近隣の人たちとの交流・連携にも役立っています。
 いろいろお話ししましたがまとめますと、この間進めてきた設備環境の整備や業務の再編成ができましたので、チノーはこれを踏まえて新たにもう一段の飛躍をめざしていきます。

−−ありがとうございました。

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