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日本計量新報 2012年1月15日 (2900号)

計量法の規定とそれを守れない地方公共団体の現状

2000年の地方分権一括施行により計量行政における国と地方公共団体の役割分担ということで、国は計量行政を機関委任事務から自治事務に変換し、責任のほとんどを地方に委ねた。
 地方公共団体は、地方自治法に基づく自治事務であるいうことで、自らの判断と責任で計量法に定められたハカリの検定や定期検査やタクシーメーター、燃料油メーターなど特定計量器の検定を実施する責任を負っている。
 実際には、財力・人材不足などの事情で、計量協会を指定定期検査機関に指定して、ハカリの定期検査を委託している場合が多い。最近の傾向として、ハカリの検定、タクシーメーターの検定、燃料油メーターの検定も外部の民間機関に実質上は委託する自治体が増えている。
 
 以前は計量法の規定に従って、ハカリの検定や定期検査やその他の計量行政が実施されてきたのに、計量行政が自治事務に変更になって以降は、計量行政機関が計量法の規定を無視し、計量法に違反する状態が出現している。
 特定計量器の検定や定期検査は、地方公共団体の都合で任意の判断で実施されていい制度ではない。計量法は特定計量器についての取り扱いの方法を規定しているので、その規定に厳密に従って実施されなければならない。
 にもかかわらず、地方公共団体の計量行政機関に勤務してきた人々の間からは、行政の側に計量法をしっかり実施するという意識が薄らいでいるという感想が多く聞かれる。
 計量法の改正に伴って、計量記念日を6月7日から11月1日に変更した時期を境に地方公共団体が実施する計量行政が大きく後退し、その後に計量行政が機関委任事務から自治事務に変更されてから、さらに進行したという。それがそのまま計量行政の実態を現していることは関係者の一致した見方でもある。

 厚生労働省関連の諸行政を委譲された地方公共団体が住民の安全や安心の実現を掲げて、迷いや惑いなど微塵が状態で行政を実施しているのと対比して計量行政の実態を観察すると、その差は歴然としている。日本の国に計量法とその規定は生きていて、実際に機能しているのか、情けなくなってしまう。

 
 ひとくくりに地方公共団体といっても、人口や経済規模などはそれぞれ状況は異なる。都道府県別の人口でみても、一番人口が少ない鳥取県が59万人なのに対して、最も多い東京都は131万人(2010年度の国勢調査による統計)といった具合である。当然計量行政に当てられる経費には差がある。
 しかし、住んでいる地域によって受けられる行政サービスに差があってはならない。
人口の大きな地方公共団体でも小さなところでも、計量行政は計量法の規定にしたがって、特定計量器の検定・検査が一律に実施されるべきである。かつて福島県のある市では、特定市であったにもかかわらず定期検査が十分には実施されてなかったということがあった。
 都道府県や特定になど地方公共団体が計量法の規定に基づいて実施しなければならない計量行政のうち、ハカリの定期検査の実施率は把握できないハカリが増えている現状では、実質5割前後ではないかということを代検計量士などが感想として述べている。この感想は実際の状態に近いと思われる。
 いまの日本は、全国どこに住んでいてもしっかりとした計量行政の下で安心して暮らせるという、本来あるべき姿から大きくかけ離れた憂うべき状況にあるのである。

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