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特集・ストップ過積載2010  〜事故のない輸送で安全な社会を (1)

特集記事  

安全への取り組みが強化
交通事故のさらなる減少へ

 トラックによる貨物輸送トン数は、国内貨物総輸送量における輸送機関分担率で91・7%(2008年度)と大半を占め、日常生活はもとより産業経済の発展に欠くことのできない重要な役割を果たしている。
 国土交通省や(社)全日本トラック協会は、交通事故の減少に積極的に取り組んできた。事故の件数は着実に減少しているが、さらなる目標として(社)全日本トラック協会は、2018年までに営業用トラックの交通事故死者数を220人以下、人身事故件数を1万5千件以下にする数値目標を掲げている。
 同協会は、重点的に取り組む対策として、「安全体質の確立」(運輸安全マネジメントの普及・浸透など)、「コンプライアンスの徹底」(スピードリミッターに特化した不正改造排除活動や点検整備実施率向上策など)、「飲酒運転の根絶」、「IT・新技術の活用」(ドライブレコーダーや衝突被害軽減ブレーキシステム、後方視野確認支援装置の導入助成など)、「道路交通環境の改善」(事故多発地点マップの作成など)を挙げている。
 安全を脅かす要因の一つとして考えられるのが、「過積載」である。

過積載の危険性

トラックによる過積載運行は、制動距離の伸長、ハンドルの操作性悪化など、重大事故誘発の原因にもなりかねない。
 また、路面に過大な荷重を加えるので、舗装や橋梁の傷みを早め、耐用年数を短縮させてしまう。
 さらに、エンジンや車体に過大な負担をかけることから、騒音、振動、排気ガスを増大させ、沿道の環境悪化にもつながる。

過積載に対する処分

過積載運行には、厳しい行政処分が課せられる。
 過積載運行は道路交通法で罰せられることとなっているが、貨物自動車運送事業法においても過積載運行の禁止規定を設け、過積載運行を行った事業者に対しては、同法の規定により自動車の使用停止等を命じるなどの処分を課している。
 さらに、ハード面における対策として、ダンプカーへ積載重量の自重計の取り付け義務を課している。
 2009年4月,(社)全日本トラック協会は、規制改革に関する要望としてこの自重計の取り付け義務廃止を要望として提出した。しかしハード面における過積載防止対策として有効であり、自車に積まれた土砂等の質量を把握し運行管理を行う上でも必要不可欠として、取り付け義務規定を廃止することは困難であるとされた。
 過積載を防止するためには、事業者のみならず、荷主に対しても啓発活動等を積極的に推進する必要がある。荷主が運転者に対して過積載運行を要求することは道路交通法で禁止されている。違反行為を反復する恐れがある場合は、その荷主に対して「警察署長の過積載再発防止命令」が発せられ、これに従わなかった場合は罰金が科せられる。
 貨物自動車運動事業法でも、過積載運行を余儀なくさせた荷主に対して国土交通大臣が勧告できることになっている。

過積載は減少傾向に

こうした取り組みの結果、悪質な過積載運行は大幅に減少してきている(表参照)。2009年度の過積載6120件で、前年を16・0%も下回った。
 とはいえ、過積載運行はなおゼロではない。10%以上の過積載も、1000件以上発生している。運輸業関係者は、日常的に過積載予防体制をとることが望ましい。

トラック業界を取り巻く厳しい環境

■競争激化と不況の波
 トラックによる輸送トンキロ数は、ここ10数年増加傾向にあった。しかし、1990年の規制緩和後、事業者数が約5割増加するなど、競争が激化すると共に、運賃が低下。加えて、近年の世界同時不況の影響などで、2008年度は営業用・自家用共に、輸送トンキロ数も減少に転じている。
 安全の確保や環境規制への対応、原油価格の高騰など、事業者を取り巻く経営環境は厳しいものである。
 全日本トラック協会によれば、トラック運送事業の売り上げに当たる2008年度の営業収益は1社平均2億200万5千円で、前年度に比べて2・4%減少し、3年連続の減収となった。営業利益率はマイナス1・3%で2年連続赤字に、経常利益率は、マイナス0・8%となった。
 こうした状況から、効率向上や経費削減を目的に、過積載や過労運転など、違反運転が増加する危険もあり、一層の注意が必要である。

■高速道路問題も
 政府による高速道路料金の見直しが進んでいる。
 適正な料金引き下げは輸送業界にとっても望ましいものだが、2009年以降の引き下げでは交通の混乱や、中距離輸送車の不利益が生じた例もあり、慎重な改革が必要とされている。
 2010年度税制改正にあたり、全日本トラック協会では、通行料金の大幅値下げと営業用トラックに対する特別割引制度の導入などを政府に要望している。
 国土交通省は、2010年6月から高速道路の無料化社会実験を実施する予定だが、与党内でも意見の統一が図られておらず、4月末現在、まだ決着点が見えていない。

計って事故防止 〜安全支える新たな試みも

過積載防止の決め手は、まず絶対に過積載を許さないという姿勢を社会全体で徹底することである。いかに罰則が強化されても、荷主や運行事業者の意識が変わらないことには過積載防止の成果をあげることは難しい。
 運輸業関係者は過積載防止のための具体策として、はかりを購入して対応している。
 トラックスケールや軸重計、輪重計等のはかりで計量し、積み荷の質量がオーバーしないようコントロールするのである。

積み荷の計り方

 積み荷の総質量(めかた)を計るには様々な方法がある。
(1)積む前に個々の積み荷の質量を計っておき、規定量におさめる方法、(2)積みながら質量(目方)を計る方法、(3)適当に積んでからオーバーしていないか計ってみる方法など。
 はかりの各メーカーはこれらの方法に対応した各種はかりをラインナップし、運輸関係業者に対して積極的に働きかけている。

ETC対応の軸重計も登場

 高速道路の料金所入口には、古くから軸重計が設置され、軸重違反者には警告書が発行されてきた。
 以前は料金所で全ての車輌が一時停止していたため、精度プラスマイナス1tに対する速度は20km/h以下だったが、ETCの普及により、40km/hまでの対応が求められるようになった。
 また、一般道においても、60km/hでプラスマイナス30〜20%の精度の軸重計が要求されつつある。
 こうした要求を踏まえたウエイトバーセンサー型軸重計を商品化しているメーカーもある。

偏荷重測定、重心測定も

 最近注目されているのが、貨物の左右の偏りを計測する偏荷重測定、さらに、前後上下左右の重心を3Dで測定する重心測定である。
 たとえ積載量が規定より少なくとも、重心が高い位置にあれば、カーブを曲がる際など、事故につながりやすい。これをあらかじめ計測することで、ドライバーの注意を喚起し、事故防止につなげられる(詳細は2822号に掲載予定)。

はかりメーカーの対応次第

過積載防止に関連する運輸業関係者の関心は非常に高いが、はかりと計量に関する知識は十分ではない。

 

 

 

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