「夏・信州 上高地だ」  
穂高連峰と青い空、そして河童橋と梓川

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 日本の夏、一番気持ちいい所はどこでしょう。旅行会社のパンフレットを見ておりますとどうやら、信州の上高地のようです。ここは滞在型の保養地ではないので、その醍醐味は絶景と清冽なる空気のようです。芥川龍之介の『河童』を引く必要がないほどに梓川に架かる河童橋は有名になっておりますし、夏には河童橋付近のにぎわいがそのまま上高地を象徴します。朝の陽が焼岳の頂上を焦がすころに到着するバスは幸せを運びます。この地に降り立つとまず冷涼な空気にびっくりします。一昨年は地震が群発して登山道が荒れたため槍ヶ岳、穂高連峰の登山者はうんと減りました。一般の上高地散策者には下流部は大正池、上流部は明神池までの行程が無難でしょう。どちらかを半日かけてぐるっと回って、上高地のバスターミナルに戻るのがお定まりのコースです。東京への帰途は中央高速の渋滞にうんざりさせられますから、列車を利用するのがよいでしょう。上高地周辺には夏でもマガモがおります。夏の写真に冬鳥の姿が入り込んで欲しくないのですが、マガモを面白がってカメラに納める人は多いのです。上高地には仕事仲間のS氏、T氏とともに出かけました。前夜は松本の宿で書生ぽい議論を酒の勢いで交わし、後味の悪さが残っておりました。S氏はロマンチックな上高地の紀行文を記し、T氏はターミナルの食堂で割り箸の包紙を短冊に俳句を読みました。「夏穂高 ただ懐かしく 目が潤む」。何と評価すべきでしょうか。

(写真と文は論説員横田俊英)



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