|野鳥歳時記|
ハシブトガラス |
ツバメがいなくなったのに気づいたのは10月初めのことです。相模湖駅の軒下や駅の近くのパン屋の名物になっていたツバメが知らぬ 間に姿を消していました。ツバメがいればまだ渡りはしていないのですが、渡るといなくなるのです。この変化は劇的に起こっているのですが、人はそれに気づかないのです。
朝晩の気温が下がりますと、日の出のころには窓は開いていません。ですから小鳥の声が耳に届きにくくなります。10月中旬のある日、日の出の少し前に戸外に出ましたら小鳥たちがにぎやかに歌っておりました。その声は夏までの間と同じかといいますとやはりどこか違います。カラの仲間の声が一番大きく、アカハラもまだ頑張っています。ホオジロの声も聞こえますが、ウグイスはさえずりを止めてしまいました。朝のシンフォニーに冬鳥や山から降りてきた留鳥が混じるのを気にするようになりました。自然への聞き耳といったらいいでしょうか。
秋は夕焼けの美しい季節です。というより感傷的になる季節でもあります。八王子の奥の陣馬山に近い恩方は、唱歌「赤とんぼ」の作詞の舞台になった里です。その赤トンボはとっくに山から降りてきて、刈り取られた田圃で虚ろですし、蛙の泣き声が虫の音に変わっています。
とりとめなく過ごした日曜の夕暮れに、赤く色づいた空を幾組かカラスが山に向かって飛んでいくのを目にします。高尾山や陣馬山の方面 に向かって飛んでいくのです。カラスは街からも帰ってくるのです。一日悪さをわんさとしてきたのでしょうか。
カラスは私の家の周りにいる鳥の代表格でもあります。電線に留まり、木の上でもゆうゆうとしております。私たちが目にするのはほとんどがハシブトガラスと思っていいでしょう。ハシブトガラスは都市部でゴミ箱を激しく漁るようになりました。この対策に税金が使われるのですから、銭食い鳥です。
ハシブトガラスは高山にも都市部にも棲みます。おでこの毛が盛り上がり、くちばしの端まで太いのがハシブトガラスです。ハシボソガラスはくちばしがカラの仲間のようにスッと素直に伸びています。そうはいいますが見慣れないと区別 はつきません。カー・カーと澄んだ啼き声をするのがハシブトガラスで、ガー・ガーと濁るのがハシボソガラスで、なおかつ身体が大きいのがハシブトガラスだということになると、声は姿とは逆ですから混乱が生じてしまいます。ハシブトガラスもハシボソガラスも留鳥ですが、冬鳥としてくちばしの付け根が白っぽいミヤマガラスや体が大きく喉の毛を立てていることが多いワタリガラスがいます。
夕焼けにカラスは風情があったものですが、現代ではカラスとカワラバトは害鳥にされてしまいました。|野鳥歳時記|
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