|野鳥歳時記|

ヒガラ

カラスウリ 赤き梢に ヒガラ舞う   虚心

 雁(がん)の雛を飼育するなかで、すり込み現象を発見したノーベル賞の動物行動学者であるオーストリア生まれのコンラート・ローレンツ氏は「家の中を楽しく生き生きとしたいのなら、小鳥を一つがい飼うのがよい」と述べ、つづいて「もし君が孤独な人間で、住まいの中に誰かがいて帰りを待っていて欲しく、そのものと心かよう接触をしたいと望むのなら、犬を飼いたまえ」と述べています。この後でローレンツは人と馴染む鳥の名前をあげています。
 日本の季節によく符合した野鳥を取り上げようとしているのが本稿ですが、秋の野鳥を探しに野に出ますと目につくのはすでに取り上げたものばかりです。道志川が津久井湖に注ぐ付近では鮎釣りの人々がいなくなりましたらカワセミが姿を見せるようになりました。魚道の護岸に留まっていたカワセミは浅瀬に飛び込んで小さな魚をくわえました。このカワセミに気付いたのは私だけです。家の前の電線にモズがしきりに姿を見せるようになりました。秋の間違いない到来を宣告しているように思えます。
 お定まりの行動のようですが、標高1897mの大菩薩峠に出かけてきました。頂上の大菩薩嶺は2057mですが、介山荘のある峠で一服して帰るのです。
 介山荘にはヒガラが餌付けされたかのようによく現れて、登山者に挨拶します。ヒガラは数羽から10羽ほどで行動しており、山小屋の主人は登山者の質問に「あれはヒガラです」と誇らしげに答えています。ヒガラはシジュウカラ、コガラとあわせて「3羽ガラ」を構成します。このカラ仲間を見分け、区別 できるようになるためには経験がいります。
 ヒガラはスズメよりずっと小さくコガラよりも小さな身体で体長11ほどですが、日本の自然によく調和している野鳥であると思います。背は灰色、頭と喉は黒で、後頭部には冠羽があり、また白い毛が刺します。ちょっと見た目にはシジュウカラと間違えますが、見慣れてくるとその小ささが分かりますし、体重も身のこなしも軽い鳥だとも思えるようになります。カラの仲間は留鳥ですから年中見ることができますが、コガラは暑さが去って木の葉が色づきだしてから見ると、人間にはしみじみとした想いを抱かせるものです。それはシジュウカラのようにな華やかさはないものの、ツー・ピー、ツー・ピーと単純になく、その声はまた哀愁にも満ちております。ヒガラの声を人はツピン・ツピンであるともいいます。ツッ・チィー、ツッ・チィーが地啼きです。雌雄同色です。
 落葉したカラ松の林で聞くヒガラなどカラの仲間の啼き声は秋の風情でもあります。

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since 7/7/2002