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キセキレイ

キセキレイ 岩魚と遊ぶ 夏河原  虚心

キセキレイ

 キセキレイは目立つ野鳥です。キセキレイと特定しなくてもセキレイの仲間の、ハクセキレイもセグロセキレイも人をあまり恐れないため、姿をしっかりと見ることができるから印象にのこるのです。セキレイの仲間は、長い尾を独特の調子で振り、波形に上下して飛びますし、体色の白と黒のコントラストがまことに鮮やかです。キセキレイの場合には腹部の黄色が鮮烈です。  啼き声はツツン、ツツンあるいはチチン、チチンと聞こえます。メスの体色はオスに比べて腹部の黄がうすく、喉部の黒い大きな斑がありません。キセキレイは留鳥ですから冬も春も見られます。ハクセキレイの一部のものは渡りをしますし、夏と冬で体色を変化させますが、ハクセキレイは年中同じ体色で通 します。日本全国の河川周りに生息し、セキレイの仲間では一番標高の高いところにまで生息します。
 岩魚を釣ろうとある川に出かけて釣り糸を垂らしておりましたとき、上空の電線にキセキレイのツガイが遊んでいました。夏の日差しが水の流れにきらきら反射する長閑(のどか)な風景でした。岩魚は流れに何匹も何匹も泳いでおり、そのうちの何匹かは水面 を飛び跳ねて虫を捕食していました。同じ場所で2年ほど岩魚を釣ろうと試みましたが、岩魚は釣りバリを無視したままです。見える岩魚は気になるもので、何としても釣り上げようとむきになって糸を送りましたが、岩魚はハリに掛からずじまいです。
 その釣り場はせせらぎの音だけが聞こえる景色がいいところなのですが、岩魚と格闘している上空で、キセキレイの番(つがい)は、つど見事な黄色の体色を翻して遊んでいたのです。あたりを見渡せば釣りをするよりくつろいでいた方が幸せな絶景です。キセキレイが夏の陽光に命を輝かせているのに見ほれてカメラを取り出したのでした。

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