メジロ |
目を白く 隈取っている マジロかな 虚心
房総半島に足を運ぶたびに山の木々が内陸部と大きく違うことに気付いていました。常緑樹に覆われた山は南方熊楠が植物研究をした紀伊半島と同じであるように思われます。気候温暖、海洋性気候といった共通性があるのでしょう。杉や檜といった商業的目的をもった樹木はあまり植えられていません。こうした林にどのような野鳥が棲息するのか大いに興味があるのです。
5月の下旬に房総への行楽に出て内房線の鋸南町保田駅近くの宿に入りました。
仲間がいる旅行のときには朝の早いうちだけが一人で使える自由な時間です。早起きして鳥と遊ぶことになります。
朝一番に部屋に届いたのがカラスのカー・カーという声です。4時でした。元気ですねカラスは。外はもう明るくなっています。夕刻、宿にはいったときにはウグイスが他を押し退けて気勢を上げていました。時間が進むにしたがって空の雲がとれていくのがわかります。五月晴れの快晴になるでしょう。聞こえてくるのはウグイスの声です。ウグイスは昨日にもまして誰でもが知っているあの啼き声をこっちの小山、あっちの小山から発して張り合っています。「ずいぶんいるものだなー、ウグイスの縄張りの範囲はどの程度だろう」という素朴な問いが生まれます。
小高い丘があるので、そこに登って周囲を眺めることにしました。保田の小さな平地は保田川がつくったことが直ぐわかりました。保田川にはゴイサギとコサギがいました。丘の上で確認した野鳥はトビ、ヒヨドリ、ホオジロ、ハクセキレイ、ツバメでした。これとは違う啼き声をするものがいるのですが何だかわかりません。
私はこの日この場所の主役の野鳥を探していたのです。4時45分、旅客機が成田空港に向かって飛んでいきます。地上には陽光がきておりませんが、天空には陽が差しているので機体がキラキラ光っております。その時です、10羽ほどのメジロの群れがやってきてチィー・チィー・チュ・チィー・チィーと啼き交わしながらしばらく遊んでいきました。小さな啼き声ですがよく通る嫌みのない声です。
メジロの名は目の周囲の白い丸い縁取りからきています。体色は緑色です。正確には暗緑色と言ったほうがいいでしょう。きれいな色です。うぐいす餅と同じ色といえばよくわかると思います。スズメより二回りも小さな体格で、雌雄同色ですから啼き声で区別します。オスのさえずりが楽しみの対象になるのです。メジロは留鳥ですから年中姿を見ることができます。果物が大好きでイチジクや柿などは大好物です。イチジクを食べるときは小さな穴を開けて、そこから中身を全部くりぬいてしまいます。実ったイチジクを食べるときなど多くのメジロが集まってきて、一つの枝に押し合い圧し合い群がるところから、目白押しという言葉がうまれたようです。繁殖期は5月ごろです。
メジロは身近な野鳥ですから、冬場の野鳥が少ないシーズンでも都心の街路樹でも見かけることができます。ですからメジロは冬の野鳥として取り上げる積もりでおりましたが、房総半島の保田海岸に面した林で印象的だったのがメジロです。したがってメジロを初夏の時期の野鳥として取り扱うことにしました。
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