国際度量衡総会でSI4単位の定義改定
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キログラムを含む基本4単位(キログラム、アンペア、ケルビン、モル)の定義が改定され新定義になった。2018年11月13日〜16日にフランスのベルサイユ国際会議場で第26回国際度量衡総会(CGPM)が開催され、16日に4つのSI単位の定義が改定された。これにより全ての計量単位が原器という器物から解放される、歴史的節目となった。新定義となったことでナノ分野などでの計測技術の発展が期待される。新定義は2019日5月20日から適用される。この定義改定には日本の産業技術総合研究所(産総研)の研究が大きな貢献をした。定義改定による日常社会生活等への影響はない。
図は「今回採択された国際単位系(SI)における定義改定の概要」(産業技術総合研究所リリースから)
▽質量の単位(kg〔キログラム〕)=キログラムは、プランク定数hを正確に6.626 070 15×10-34Jsと定めることによって設定される。
▽電流の単位(A〔アンペア〕)=アンペアは、電気素量eを正確に1.602 176 634×10-19Cと定めることによって設定される。
▽熱力学温度(K〔ケルビン〕)=ケルビンは、ボルツマン定数kを正確に1.380 649×10-23J/Kと定めることによって設定される。
▽物質量の単位(mol〔モル〕)=1モルは正確に6.022 140 76×1023の要素粒子を含む。
キログラムの定義は国際キログラム原器からプランク定数に、アンペアの定義は2本の直線状導体間の力から電気素量に、ケルビンの定義は水の3重点からボルツマン定数に、モルの定義は炭素12グラム中の原子の数からアボガドロ数に基づく定義に改定された。つまり、これらの量の定義が普遍的な基礎物理定数に基づく定義に置き換わった。
たとえば、キログラムの改定は、国際キログラム原器という唯一の原器によって単位が実現されているものが、基礎物理定数によって定義されることにより、すべての単位の定義が原器から切り離され、どこでも実現可能な普遍的な定義となった。
白金イリジウム合金でつくられた「原器」という「もの」は、常に破損等の危険性があったほか、長期的に状態が変化する可能性があり、国際キログラム原器も副原器との比較で最大50μgの変化が認められた。つまり原器の比較精度は5×10-8ということになる。
そのため、基礎物理定数に基づく定義に変更することは決議されていたが、この物理定数による定義が、この5×10-8よりもよい精度が実現できることと、異なる方法でこの精度以上で1キログラムが現示できることなどが必要だった。
そのため、電磁気力によって発生させた力を用いて現示する方法(キッブルバランス法、アメリカ、カナダなど)と、プランク定数とアボガドロ定数が厳密な比例関係にあることから、シリコン球を使ってアボガドロ定数を厳密に測定するX線結晶密度法(アボガドロ国際プロジェクトで推進)(日本、ドイツなど)の研究が推進され、この2つの方法で、5×10-8よりもよい精度が実現できたため、今回の定義改定が実現した。
アボガドロ定数の8つの測定のうち、産総研は4つの測定に関わって成果をあげるという大きな貢献をした。
日本国キログラム原器は「原器」としての役割を終えるが、まだまだ現役として標準供給の役割を果たす。質量の標準供給においては分銅を媒介として下位の分銅に値付けする方法は優れており、この面からも日常生活や産業界等への影響はない。
同様に、アンペアやケルビンも微小な変化はあるが、産業界等への影響はない。
新定義によって、たとえばキログラムは、これまで微小になるほど不確かさが悪化していた微小な質量測定を必要とする創薬やバイオテクノロジー技術の発展への寄与が期待される。
キログラムの単位の定義が改定されれば、JCSSの特定標準器の見直しが必要になることから、阿部一貴経済産業省計量行政室長は、改定が適用される2019年5月20日までに、規定の見直しをするとした。