第1WGの方向性(骨子)(2)
〜検定・検査制度を中心とした安心・安全な社会の構築のための計量の在り方の基本的方向〜
(2620号のつづき)
I.規制方法
1.現行規制の現状と問題点
(1)行財政改革への対応の必要性(再掲)
行財政改革の流れの中で、平成11年の改正により、検査・検定業務は国からの機関委任事務から自治事務化されたが、自治事務化以降、計量行政に関わる人員や予算が削減される地方公共団体が多く発生し、計量行政を実施する上での体力格差が地方公共団体間で拡大しているのが現状である。従って、民間人・民間機関の能力を最大限活用することを可能とすることを含め、地方公共団体の執行方法に関する選択肢の拡大や地方計量行政を支える人材の育成が必要となっている。
(2)効果的で合理的な規制の必要性
これまで比較的ハードウェアの規制に重点が置かれてきたが、ハードウェアの性能が向上してきている中で、むしろ重要となってきている計量器の使用者の不正を抑制することについては必ずしも十分に対応ができていない。
(3)国際整合化の必要性
平成7年に発効したWTO/TBT協定により、加盟国は強制規格を必要とする場合において、関連する国際規格が存在するときは、当該国際規格を強制規格の基礎として用いることが求められているが、計量法については、必ずしも国際整合化していない基準がある。
2.規制の新たな方向
(1)基本的考え方
上記の問題点を踏まえ、計量器に対する規制方法について、民間能力を活用した技術基準への適合性評価に基づく規制や自治体の執行の選択肢の幅を広げた透明性のある事後規制に重点を置いたものに移行していくべきである。
ただし、その際以下の点に留意する必要がある。
1)計量制度は、度量衡法以来100年以上定着した制度であり、新たな制度の導入に当たっては、急激な変化により、関係者(消費者、ユーザー、製造事業者、検定機関等)に混乱が生じたり、消責者・ユーザーの計量制度に対する信頼を損なわないようにする必要があること。
2)製造、品質管理能力については、製造事業者間に格差がある現状に照らし、これらの能力格差に十分対応した制度とすること。
3)検査・検定業務は平成11年の改正により自治事務化されており、地方公共団体の自主性が尊重されるべきであり、地方公共団体は、それぞれの実情を踏まえつつ、検査・検定の実施方法、執行体制の確保につき検討し、一定水準の計量行政の執行体制を維持する必要があること。
(2)具体的方針
1)検査・検定における第三者認証制度の活用
製造事業者や地方公共団体の執行方法に関する選択肢が増えるよう信頼性確保に留意しつつ、第三者機関による認証制度を検定の選択肢の一つに加えることについて検討する。なお、その際、新たに制度を作るのではなく、JISマーク表示制度等、既存の制度を利用することが適当と考えられる。(ただし、JISマーク表示制度については、JISマーク表示と検定証印が混在するとユーザーに混乱が生じる可能性があること等の問題点があるとの指摘あり。)
国際的にも適正な計量がなされていることを担保する観点から、検定を行っている各都道府県の検定所等についてもISO/IEC17025等の基準への適合を目指すことを検討する。
2)指定検査・指定検定機関制度の更なる活用
民間能力を更に活用し計量法執行の選択肢を拡大する観点から、指定検定機関制度、指定定期検査機関制度を民間機関が参入しやすい制度とすることを検討する。その際、信頼性確保についての条件として、ISO/IEC17025など適切な指定の基準の設定を検討する。
3)検査等による事後規制の充実
市場において使用者が正確な計量器を使用しているかどうかについて、指定検定機関、指定定期検査機関の能力や計量士を活用しつつ、都道府県による抜き打ち検査等の事後のサーベイランスを充実することについて検討する。なお、都道府県は、事後のサーベイランスを充実するためには、立入検査技術について、職員の研修(実習も含め)を積極的に行うことが必要である。
不正事業者が恐れるのは、行政指導ではなく、消費者等の信頼を失うことであることから、都道府県は、不正事業者名の公表などの手続きを整備するガイドラインを策定し、ガイドラインの内容(立入検査で用いる相手への指示書、相手からの確認書及び改善報告書に関する様式を整備する他、指導の手順のマニュアル化等)を立入検査要綱・要領等に規定することにより、不正事例の発生を抑止することを検討する。なお、立入検査で指摘する事項は、ほとんどが不注意等によるものであり、指導等をすることで改善されていることも留意する必要がある。
4)製品の多様化、新技術に対応した規制基準等
計量器の国際的流通の促進、技術革新の推進の観点から、OIMLの勧告等諸外国の基準との整合性を図りつつ、運用条件の国ごとの違いに留意しつつ、技術基準・規定について適切な内容にすることを検討する。
5)民間の技術開発の促進
検定の有効期間や定期検査の期間、検定・使用公差の設定について、より民間の技術開発を促進する可能性という観点から検討する。
6)基準器制度とJCSS
検査・検定の現場で活用されている基準器について、構造要件があることを踏まえつつ、器差検査については質量等の分野でJCSSによる校正が一定程度普及してきたことから、JCSSの普及していない分野の立ち上げ、階層化の推進など、JCSSの更なる活用の拡大について検討する。
7)関係各府省との連携
他の関係法令の執行体制との協力関係の構築について検討する。
8)検査・検定手数料
都道府県等においては実費に比べて安価な検査・検定手数料が設定されていることが、民間の参入等の妨げとなっており、都道府県等は、適正な手数料の設定について検討する。
9)型式承認制度における外国試験機関データの受入
OIMLの枠組みである、参加国の型式承認試験機関が測定した試験データを相互に受入る「型式評価国際相互受入取り決めの枠組み」(MAA:Mutual Acceptance Arrangement)が今年から開始される予定であることから、当該枠組みにおける試験データを受入れられるよう計量法の規定の所要の見直しの検討を行う。
10)指定外国製造事業者へのサーベイランスの実施
11)その他
初回検定品に適用が限られている指定製造等事業者制度を再検定品・修理品まで適用できるように拡充等することにより更なる民間能力の活用を検討する。その際、信頼性を確保するために、ISO9001など適切な基準の設定を検討する。(なお、電気計器については、家庭用の場合、10年間にわたり多額の電気料金を支払うために使用されるが、基本的には計量器が選択できず、またその正確性を確認できないことから、修理品の検定不合格率が新品に比べて高い等の現状に鑑み、消責者に対する透明性や中立性の観点などから、修理品の自主検査については適当でないとの指摘あり。)
特定計量器の適合性評価の仕組みとして、地方公共団体等の検査・検定を受ける必要性は低下しているものの、現時点で、消責者保護等の観点から規制対象外とすることが不適当と考えられる計量器については、計量法の下で事業者による技術基準への適合義務を課す制度を創設することについて検討する。
今後の計量制度を維持していくうえで、地方自治体が行っている現在の検査・検定制度はすべて民間が担い、地方自治体は市場監視的役割(立入検査、啓発、検査機関等の指導・監督)に特化することで、必要最小限の計量行政が行えることが理想ではないかとの指摘もあり、中長期的に検討していく必要がある。
(次号以下に順次各WG骨子を掲載します)
(以上)
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