第3WG大詰め、報告書案を審議
論点はNMIJの法的位置づけ、指定計量標準制度創設、MLAP改善策など
ユーザーフレンドリーな制度を目指して
計量制度検討小委員会第3ワーキンググループ(WG)第8回会合が3月10日午後、経済産業省別館10階第1028会議室で開かれた。計量標準や標準物質の供給、整備および計量証明事業について検討を行ってきた第3WGは、4月下旬に予定される審議事項取りまとめを前に、報告書案を審議した。ユーザーニーズに応えて創設した指定計量標準制度、データ改ざんで初の認定取り消し事例が生じたMLAP(特定計量証明事業者制度)の改善策などに意見が集中した。
前回議事録の承認につづき、先に提示された第3WGの骨子に、2月21日開催の計量制度検討小委員会で出た意見を含めた報告書案を審議した。
報告書案は基本的に骨子を踏襲しているが、骨子中の具体的方針について、選択肢とした箇所を1つに絞っている。また、誰でも理解できるよう、専門用語には脚注を付け、図や表を加えた。文言、文章表現も見直して再整理した。名称からイメージがつかみにくいとされた準国家計量標準制度は、指定計量標準制度(仮称)に改められた。
報告書案はA4判36ページにわたる。会合では、具体的方針の項目に絞って、その内容を説明した。また、これまでのWGでの講演者を対象にした標準物質整備や試験所認定などについてのアンケートと、都道府県を対象に、環境測定の入札方法やMLAP更新制の賛否をたずねたアンケート結果も合わせて報告された。
報告書案の主なポイントは以下の通り。
NMIJ((独)産業技術総合研究所計量標準総合センター)を単独の国家計量標準機関とする方針を変更し、NMIJが日本電気計器検定所および指定校正機関と連携して計量標準を開発・供給していく体制にする。その際、経済産業省(知的基盤課)は基本方針など企画面の責任を負い、NMIJは自ら供給を担うとともに、計量標準整備の総合調整など、実施面の責任を果たす。独立行政法人化以降明文化されていなかったNMIJの役割を、法的に位置づける。
指定計量標準制度で迅速な対応
多岐にわたり増え続ける計量標準や標準物質へのユーザーニーズに応えるため、指定計量標準制度を新設する。
対象は、海外の国家計量標準機関が供給する国際整合性が確保されたもの。また、国家計量標準レベルに達していない、もしくは国際整合性が確保されていないものの、業界、学会等で合意のもと使われているもの、また先端技術などの分野で暫定的に使用されているものについて、国家計量標準が確立されるまでの間代替となるもの。
これらは国家計量標準から直接校正されていないが、特定二次標準器と同等と見なすことを、経済産業大臣が指定する。
JCSSサーベイ義務化見送り
複数の量についてもワンストップで校正ができるようにするなど、ユーザーが使いやすいようにJCSSを拡充する。ISO/IEC17011に基づく校正事業者のサーベイランス義務化については、すべての事業者が国際基準対応を必要としているわけではないとして、義務化を見送る。
計量証明事業者の能力担保
計量証明事業者の能力担保として、立入検査や講習会の実施を支援する。データ改ざんなどの不正には、行政処分や罰則を科すことを検討する。今まで定められていなかった登録の取り消し、事業の停止についての基準を検討する。
MLAPは、認定後も技能試験の結果などを重視したチェック機能を強化する。認定が取り消された場合は都道府県における計量証明事業の登録も取り消されるようにする。基準が日本独自のもので汎用性に乏しいという事業者の意見や、国際整合性確保の必要から、認定基準にISO/IEC17025を導入することも検討する。
検討大詰め、新制度に意見集中
報告書案をまとめる段階となり、議論は表記上の細かい点にも及んだ。報告書案中の不確かさに付けられた注釈は正しい解釈なのか、という疑問には、そもそも不確かさの定義自体も曖昧であり、まったくわからない人に対してわかりやすく説明するという意義にはかなっているととらえる委員もいた。
新設の指定計量標準制度に対する意見や質問も集中した。計量標準へのニーズは増える一方であり、この制度は大きなウエイトを占めることが予想される。長く持続する制度と考えている、と事務局が見解を示した。
国際整合性が確保されていない物質のMRA(国際相互承認)については、ケースバイケースであり、とくに研究・開発がこれからの分野では、やったもの勝ちという面も事実としてある、と(独)製品評価技術基盤機構の瀬田勝男委員が実状を説明した。事務局は、医療、環境分野においては、国内での整合を図ることが先決である、と創設の意図を強調した。
ISO/IEC17025はSI(法定単位)トレーサブルを要求していることと、トレーサブルが必ずしも確立していない指定計量標準制度との矛盾は、ISO/IEC17025は「望ましい」という表現にとどまっており、絶対ではないと補足した。
(5面につづく)
(以上) |