資料
(2630号6面のつづき)
第3WGの報告書(案)(4) 4月14日開催、経済産業省別館1120会議室
(vi)国家計量標準の国際整合性確保
国際整合性を確保するために、国家計量標準の供給機関はCIPM/MRAに参加し、国際整合性を確保する。(前掲)
また、(v)の場において、国際整合性の確保をすべき計量標準の調査を行い、その結果を踏まえ、知的基盤整備計画に反映する。
なお、NMIJは各機関の国際相互承認への参加に引き続き積極的に貢献する。
JCSS(計量標準供給制度)
計量標準の供給に当たっては、登録された校正事業者が、国家計量標準により校正等をされた計量標準を用いて計量器の校正等を行うサービス制度を平成4年に創設し、平成5年から施行している。この制度をJCSS(Japan Calibration Service System:以下「JCSS」という。)。(第5図)と呼んでいる。JCSSは、産業界が使用する実用計量標準と国家計量標準との科学的なつながりを証明するとともに、国家計量標準の国際整合性が確保されれば、国際的に信頼性を保証することができる。
また、昨今では大企業の経営合理化等の観点から取引関係が変化し、部品等の世界からの最適調達の浸透や、系列関係の見直しが進められている。そのため、これまで親会社により行われていた品質管理を、部品等を供給する会社自らが行い証明しなければならなくなる等、科学的・客観的に信頼性を保証するJCSSの需要が高まっている。また、大企業が社内校正業務について選択と集中を図り、自社にとって重要性が低いものは社外校正に切り替えたりする動きも見られることも、JCSSへの需要を増大させる要因となっている。
JCSS制度においては、計量器の校正等の事業を行う者は、経済産業省令で定める事業の区分に従い経済産業大臣に申請し、登録を受けることができるとされている。校正事業者の登録は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(以下「NITE」という。)が、ISO/IEC17025(試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項)に適合しているかどうか審査した上で行っている。登録を受けた校正事業者は、自社の事業所又は顧客先の事業所において校正を実施し、標章を付した校正証明書を発行することができる。
(1)現行制度の問題点
JCSSは、平成4年創設以降、一定程度の普及がみられる。しかし、校正できる項目が少ない、校正料金が高い等の指摘がユーザーからある。更なる普及のためには産業界への的確な情報の提供や計量標準の種類を社会的要請に応じて、適切に整備する等の対策が必要である。
(ア)計量標準の拡充とJCSSの利便性向上の必要性
JCSSの普及には、トレーサビリティの起点となる計量標準を、社会の要請に応じて柔軟に拡充を可能とする整備体制が必要である。現在はNMIJを中心として整備を進めているが、環境規制や食品の安全性の確保、臨床検査分野の信頼性の向上など、急速に需要が拡大している分野については、現在の体制では対応が困難である。
また、例えば、企業の品質管理部門で使用される排出ガスの温度や濃度といった複数の量を一度に計測する計量器の校正が難しいといった指摘がある。
(イ)標準物質の供給体制を見直す必要性
知的基盤整備特別委員会標準物質の供給体制のあり方に関するワーキンググループ(以下「標準物質WG」という。)において、計量標準のうち標準物質については、物理標準と異なる様々な問題点が挙げられているため、標準物質WGにおける議論を踏まえて、供給体制を見直す必要性が指摘されている。
(問題点の例)
(i)ある標準物質について、ユーザーに対する供給を担う登録事業者が年間の取引量が少ない等、企業としての採算性の確保が困難であるため存在せず、供給できない標準物質が存在する。
(ii)標準物質を製造する指定校正機関については、国際的に基準文書となっているISOガイド34が我が国の指定における基準となっておらず、国際整合性の確保が不十分である。
(ウ)登録事業者の国際基準対応に関する必要性
ISO/IEC17011(適合性評価−適合性評価機関の認定を行う機関に対する一般要求事項)に基づき、登録事業者がすべからく国際基準対応(国際MRA対応)とすることを義務付けるべきとの指摘がある。
国際基準対応のベースとなるISO/IEC17011においては、少なくとも5年ごとの再審査とサーベイランスとを組み合わせること、又は 再審査だけの場合はその間隔は2年を超えないことが義務付けられる。一 方、JCSSにおいては、ISO/IEC17011における再審査と同 じ役割を果たすものとして、登録に係る更新制が平成15年6月の計量法 改正により導入され、その期間は4年となっている。
そのため、JCSS登録事業者が国際基準対応の対象となるためには、 再審査(登録の更新)とサーベイランスとを組み合わせてサーベイランスを義務付けるか、又は再審査の期間(JCSSの登録更新期間)を2年と する必要があるが、すべてのJCSS登録事業者が国際基準対応を必要としている状況にないとの意見もある。
(2)新たな方向性
(ア)基本的考え方
(i)計量標準の柔軟な整備によるJCSSの拡充
国民の安全・安心の確保、産業競争力の強化のための先端技術開発等 に資するため、指定計量標準(仮称)を活用し、柔軟な計量標準の供給 体制の構築を図る。(前掲)
(ii)JCSSの利用の促進
ユーザーのJCSSの利用を促進するため、校正証明書の交付方法の 改善や登録事業者に関する情報提供等により、利便性を図り、JCSSの利用を促進する。
(iii)標準物質の供給方法
標準物質の供給方法については、平成17年1月の第9回知的基盤整備特別委員会に報告された標準物質WGの審議結果に基づき検討を行う。
(審議結果(抜粋))
・国際度量衡総会で決められた単位系(国際単位系:SI)にトレーサブルな標準物質の開発・維持・供給を行うため、我が国の中核的な国家計量標準機関であるNMIJが基準物質を開発し、指定校正機関へ供給することにより国際整合化を図る。
・経済社会情勢の変化等に鑑み、新しい標準物質の緊急的な整備・供給、より不確かさが小さな標準物質の供給等、社会的要請に対応した柔軟な供給体制を検討。 登録事業者がいない場合に、指定校正機関からユーザーへ直接、特定標準物質の供給を開始する。
・分析機関等のユーザーの需要が高い、複数成分含有の混合標準物質については、「化学的安定性」、「保存安定性」等の技術的知見が蓄積してきたことに鑑み、速やかに供給を開始する。
(イ)具体的方針
(i)指定計量標準(仮称)の活用によるJCSSの拡充
指定計量標準(仮称)の活用については、指定計量標準(仮称)をJCSSの特定二次標準器と同等に扱い供給することを検討する。(第5'図)
(ii)JCSSの利用の促進
複数の量について校正を必要とする計量器について、
a)複数の登録事業者に校正を依頼するのではなく、一つの登録事業者に計量器を持ち込み、登録を有していない量については下請けの登録事業者が校正をすることにより、ワンストップで校正証明書を交付することが可能とすること
b)登録事業者の情報をデータベースにより一元的に管理し、ユーザ ーにとって情報の収集を容易にすること
等の利用促進に係る方策を検討する。
また、ユーザーの需要を把握し、 制度の改善に努める必要がある。需要の把握には、必要に応じ2.(2)(2)(v)の場(編集部注:ユーザーの需要の把握及び優先順位付けを行う場の設置、本紙5月21日付2630号6面掲載)を活用する。
(次号以下につづく)
(以上) |