資料
(2631号6面のつづき)
第3WGの報告書(案)(5) 4月14日開催、経済産業省別館1120会議室
(iii)標準物質の供給
標準物質については、標準物質WGでの審議結果に加えて、国際整合性を確保する観点から、特定標準物質を製造する指定校正機関の指定基準としてISO/IEC17025及びISOガイド34を標準物質の国家計量標準機関の要件とする。(前掲)
(iv)国際基準対応のためのサーベイランスの義務化
ISO/IEC17011に基づくサーベイランスの義務化(更新制を前提とした場合)については、全ての事業者が国際基準対応とすることを必要としているわけではないという現状から、規制強化になること等を踏まえ、サーベイランスの義務化については見送る方向で検討する。
計量証明の事業
(1)計量証明事業の改善
1)現行制度の問題点
○計量証明事業の概要
計量に係る「証明」については、当該「証明」を必要とする者が、第三者に証明行為を依頼することがある。計量法はこの第三者が行う「計量証明の事業」について、その適性を担保するために、計量法第6章第1節において規制を行っている。
その中で、計量証明事業者は、経済産業省令で定める事業の区分に従い、その事業所ごとに、その所在地を管轄する都道府県知事の登録を受けなければならないとされている。(第6図)
計量証明事業は、運送、寄託又は売買の目的たる貨物の積卸し又は入出庫に際して行うその貨物の長さ、質量、面積、体積又は熱量の計量証明事業を行ういわゆる「一般計量証明事業」と、大気、水又は土壌中の濃度、音圧レベル、振動加速度レベルの計量証明事業を行ういわゆる「環境計量証明事業」とに分かれる。
また、事業の区分に応じて計量士又は計量証明に必要な知識を有する者が従事していることが必要である。
(ア)計量証明事業者の能力・品質の担保
計量証明事業は、貨物の長さ、質量、面積、熱量及び大気中の微粒子の計測や水中及び土壌中の有害物質の濃度等の計測を行う事業である。
計量証明事業には、国民生活の安全・安心を確保する観点から、正確な計測・計量が求められている。
地方公共団体が、例えば、濃度、音圧レベル等の環境測定を行う場合、計量証明事業者である民間企業に発注することが多い。この場合、発注者である地方公共団体には発注先の能力・結果を管理する責任がある。しかし、地方公共団体の入札が価格偏重で選定が行われ、能力や信頼性による選別が不十分な結果、適正な計量証明が行われなかったり、地方公共団体が質の悪い計量証明事業者の指導に忙殺されるといった問題が発生している。
そのため、一部の地方公共団体からは、計量証明事業者の能力や信頼性を担保する手段が必要であるとの指摘がある。
(イ)不正行為の防止と罰則の適用
計量証明事業が国民の日常生活における適正な取引、環境の安全や人間の健康上の安心に貢献するためには、計量証明事業者の技術的能力、業務に携わる従事者(技術者・管理者)の適正な判断力に加え、道徳的基盤が必要である。これらの必要性は、社会的理念として常に考慮されるべき内容であり、国際基準文書等にも明記されている。
現行法では、計量証明事業における不正に対する制裁手段としては、都道府県知事は、事業者の登録の取消し又は一年以内の期間を定めて事業の停止を命ずることができることとされている。
しかし、計量証明に係る不正は、例えば、計量値の誤りにより商取引において損害が発生したり、有毒物質の濃度測定の誤りが生命・健康被害につながるなど、国民の安全・安心を損ねるおそれがあり、行政処分の強化や罰則を科すこと等により、不正防止を一層強く担保する必要がある。
(ウ)計量士等の技能の維持・向上
計量証明事業は、計量士又は計量証明に必要な知識を有する者が従事することが要件となっており、当事業において非常に大きな役割を果たしている。しかし、計量士の登録が更新制ではないこと等から、技能が維持されているかを第三者から確認・評価する手段がなく、能力の維持・向上は個人の資質に任されている。このような現状に対し、改善の必要性が指摘されている。
2)新たな方向性
(ア)基本的考え方
(i)地方公共団体が発注する計量証明事業者の能力・品質の担保
計量証明事業は申請を行い、登録の基準を満たせば行える事業である。したがって、地方公共団体の計量法担当部署は、個々の計量証明事業者が登録の基準を満たしているか以外に、その能力・品質を審査することは求められていない。
他方、地方公共団体の環境担当部署等が、大気、水、土壌等の計量を計量証明事業者に発注する等の場合は、地方公共団体は、登録の基準を満たしているかだけではなく、発注者の管理責任として発注先の能力・品質が必要なレベルに達しているかを審査する必要がある。
(ii)罰則等の適用
地方公共団体による計量証明事業者による不正行為防止情報の共有化や、法第113条の登録の取消し等に係る基準の策定等により、登録の取消しや、事業の停止などの措置を積極的に行い、悪質な計量証明事業者を排除していく。
(iii)計量士等の技能の維持・向上
計量証明の正確な計測・計量を担保するためには、計量証明事業に従事する計量士を始めとする従事者の役割が大きい。このため、計量士等の技能の維持・向上を図る。
(イ)具体的方針
(i)計量証明事業者の能力・品質の担保
濃度、音圧レベル等の計量証明事業者の能力を担保する手段として、都道府県に対して行ったアンケートによると、立入検査の実施や講習会等の実施が効果的とする意見が多かった。
立入検査及び講習会等の実施は都道府県のみならず、NITEによる立入検査や業界団体による講習会が実施されており、能力・品質を向上する観点を踏まえて、これらの施策を支援していく。
また、地方公共団体の環境部署等が、能力・品質が劣る計量証明事業者に発注すること避けるため、地方公共団体間による情報共有化を進める。具体的には、能力不足やずさんな計量等が判明した場合は、地方公共団体から経済産業省に通報し、内容を審査の上、その結果を経済産業省から地方公共団体に通知することで情報を共有することとする。
地方公共団体の環境部署等は、自ら発注者の管理責任として発注先の能力・品質が必要なレベルに達しているかを審査するとともに、これらの情報も活用し、能力・品質が劣る計量証明事業者に発注すること避けるべきである。
(ii)罰則等の適用
計量証明事業における不正に対する制裁手段として、測定値の改ざんや、計量証明発注者等による改ざん指示等の不正行為について行政処分の強化や罰則を科すこと等を検討する。
計量法第113条において規定されている登録の取消し及び事業の停止は自治事務であるが、これらの行政処分を行うか否かの基準が定められていないため、実際の適用がされにくい面がある。実際に、都道府県に対して行ったアンケートによると、これまで計量証明事業について、取消し又は事業の停止を命じた事例はなかった。
そのため、審議会で一定の基準を検討・審議し、経済産業省から地方公共団体に判断の参考として通知することについて検討する。
具体的には、計量証明事業者が不正の行為をしたときの取消し及び事業の停止の基準等を検討する。
(iii)登録した事項に変更があったときの変更・廃止届出の徹底
計量法において、登録事業者には登録した事項に変更があったときや事業を廃止したときに届出する義務がある。しかしながら、定常的に事業を実施していない事業者が届出を失念する例や、倒産・廃業した事業者が廃止届出を出さない例があり、都道府県がこれらの事業者に対して督促したり、所在不明の事業者を探したりしている。
このような状況に対して、平成4年の計量法改正により、計量証明事業に係る都道府県への登録更新制が廃止されたことが、計量証明事業者の管理をやりにくくしたのではないかという指摘がある。
このため、登録の管理を徹底するべく、登録の更新制の再導入、又は、変更・廃止届出の徹底及び所在不明の事業者について登録の取消し・失効の積極的な活用などの方策を検討する。
(iii)計量証明事業の従事者に対する研修
計量証明事業の能力・品質の確保のため、計量士を始めとする従事者の技術や適正な判断力、道徳的基盤の維持・向上を図る。このため、民間団体等による講習会を支援する。
(2)特定計量証明事業の改善
1)現行制度の問題点
○特定計量証明事業の概要
特定計量証明事業者認定制度(MLAP;Specified Measurement Laboratory Accreditation Program)とは、大気、水又は土壌中のダイオキシン類、クロルデン、DDT又はヘプタクロル(以下「ダイオキシン類等」という。)の極めて微量なものの濃度の計量証明を行うために設けられた制度である。本制度は、高度の技術を必要とする計量証明事業(以下「特定計量証明事業」という。)の信頼性向上を図るため、特定計量証明事業を行う者が必要な技術的能力等を有することについて経済産業大臣(NITEに事務委任)又は特定計量証明認定機関の認定を受けることができるものである。
(次号以下につづく)
(以上) |