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計量新報 2006年 10月22日発行 /2649号 6面


計量制度見直し説明会詳説(1)

10月12日、さいたま新都心合同庁舎1号館
見直し案のポイント、主な質疑応答

 経済産業省が主催する計量制度見直しに関する関東ブロックの説明会が10月12日午後、埼玉県さいたま市のさいたま新都心合同庁舎1号館で開かれた。計量法の動向を見守ろうと、会場には関係者が多数詰めかけた。
 同省の吉田雅彦知的基盤課長と、計量行政室から担当者が出席した。参加者に、今年5月にまとめられた計量制度検討小委員会報告書案が配布された。吉田課長は、報告書案に沿って適宜補足をしながら、見直しのポイントを説明した。項目ごとに区切って質疑応答を受け付けた。

計量単位は従来通り

 法定計量単位は、国際単位系(SI)への切り替えを進めている。1999年の国際度量衡総会で、SIに採択された触媒活性の単位(カタール)が今も計量法の法定計量単位として取り入れられていないことを踏まえ、SIを速やかに反映させる仕組みに見直す。そこで、改正手続きに時間のかかる法律ではなく、政令または省令レベルで追加することも検討にのぼっている。
 非法定計量単位の使用禁止は従来どおり。メートル法を維持する。しかし、文化的、民俗学的見地から、非法定計量単位である尺貫法の使用を求める声も根強い。計量法の範囲外となる尺貫法の使用について、ガイドラインを整備し、判断基準を公表する。

ニーズ第一の計量標準

 計量標準においては、国と旧計量研究所(現(独)産業技術総合研究所計量標準総合センター:NMIJ)が役割を分担してきたが、その役割を再整理し、効果的な業務を実現する。また、幅広い国家計量標準を整備するために、NMIJが日本電気計器検定所や指定校正機関などと連携して進めていく。国家計量標準機関が単独で標準整備を行う方式から、イギリスやドイツで行われている、複数機関による方式へと方向転換する。
 計量標準整備は2010年までの10年に500種類を目標に行われており、現在やや前倒し気味で進行している。しかし、臨床検査や食品、バイオサイエンスと、計量標準の需要が急速に広がっており、これらをどうやって整備するかが大きな課題となっている。そこで、需要を把握する場を設ける。具体的には、産総研に置かれ、他府省や関連研究機関が参加している国際計量研究連絡委員会(国計連)を利用する。すでに実績もあり、国計連の臨床分野分科会では、メタボリック症候群検査に使う標準物質が開発・選定されている。
 指定計量標準制度を導入する。他国の計量標準や、SIトレーサブルではないが、国内の学界、業界内でもっともすぐれた物質を暫定的に計量標準とみなす。その際は、指定の基準を明らかにすること、指定計量標準を指定した後も、国家計量標準の開発は着実に進めることを念頭に置く、と報告書案の文面から、小委員会での委員の発言部分を強調した。

監視に回る計量行政

 計量器の規制に言及すると吉田課長は、閣議決定の「規制改革・民間開放推進3カ年計画」を持ち出した。行政の関与を必要最小限とし、事業者の自己確認・自主保安を基本とする、政府全体の方針であり、計量法もこの流れに沿って見直しを進めているとした。人手のかかる事前規制から事後規制に変え、抜き打ち検査などを強化する。
 昨年、MLAP認定事業者がデータ改ざんを行い、経産省はこの事業者の認定を取り消した。また、地方自治体が計量証明業務を発注する際、委託先の業者が適正な計量証明を行わないといった問題もある。そこで、罰則の強化や、以前廃止した計量証明事業者の登録更新制度を復活させる。事業者の実態を把握するため、国のMLAP認定と都道府県の計量証明事業者登録を連動させることも検討する。

今後の動き

 全体を通しての質問で、今年6月に受付を締め切ったパブリックコメントの結果がまだ公表されていないことへの問いが挙がった。これに対し、計量法は多くの人が関わる制度であると考え、見直し説明会で受けた意見や質問もパブリックコメントと同じようにとらえている、と答えた。
 法改正の具体的スケジュールについては、国会に提案はするが、他法案との兼ね合いもあり、審議の時期は国会との相談による、とした。
 これから先もご意見をうかがう機会がある。現場に近い方の声を聴きながら議論を進めていきたい、とまとめ、説明会は終了した。


主な意見、質疑応答

 主な意見、質問とそれに対する回答は、以下のとおり。
【計量標準】
問:標準物質は5万種類といわれるが、新たな指定計量標準制度でカバーできる標準物質はどれくらいの割合を占めるか。
答:他国の国家計量機関で供給される標準については問題ないが、産業界などで使われる、暫定的な最高位標準物質を指定するには、時間がかかる。すべての標準物質をカバーするのは無理であることから、ニーズの差し迫ったものから順にとりかかる。需要を第一に考え、前述の国計連など、ニーズを探るための方策を整備する。
問:空気流量計のJCSS校正を依頼したら金額が高く断念した。コストパフォーマンスは普及の上で重要な問題であるが、経産省のスタンスは。
答:JCSSは国が金を出さない制度になっており、民間の努力に負いたい。校正の需要増と、登録事業者が増えることで、事業者間の競争によるコストダウンを狙いたい。そのためにはJCSSを使いやすい制度に改革することが必要だと考える。また、報告書案には掲載されていないが、JCSS登録機関をNITE認定センターのほかにも増やすことも検討に上っている。
【検定・検査】
問:検討中の事項であると聞いているが、規制対象から除外する計量器の例に挙がっている手動天びん、等比皿手動はかり、分銅は、今も使用実態がある。デジタルが対象でアナログが対象外というのであれば、使用者負担に影響が出る。検討の際は綿密なアンケートや実態調査を願いたい。
答:報告書案に掲載の計量器はすべて、あくまで例示であり、どの計量器を除外するかはまったく決まっていない。具体的段階になったら詳しい調査を行う。ここでの発言は、意見として承る。
問:ベックマン温度計及びボンベ型熱量計は、技術的知見を有しているもの同士が使うことから、除外の方向が示されているが、計量法の規制対象となっているからこそ、計量証明検査の制度が担保できていると考える。そのあたりも考慮されているのか。
答:意見として承る。
問:計量法の事務が国の機関委任事務から地方自治事務に移管されたが、交付税はあるのか。
答:地方自治事務は、自治体の裁量に任されており、全体予算からやりくりすることになっている。補助金は出さない。
問:定期検査手数料が安いといわれるが、義務を課しており、強制的に負担が生じるものである。報告書案は計量行政について、地方の裁量に任すとしておきながら、自治体間の手数料の格差、組織上の問題などに触れている。国が必要最小限の計量行政を謳うことは、裏返せば、頑張っている自治体が非常に迷惑を被ることにならないか。考えてほしい。
答:実費との差額は税金から出ていることを考えると、実費程度は取っていいのではないかという意見が、小委員会で一般的な議論として出てきている。義務であるから、受検者の手数料負担を増やしたくない気持ちはわかるが、安ければいいというものではない、という考え方もある。これが報告書案の趣意である。

(次号以下につづく)
 
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