計量制度検討小委員会第3WG開く
(2664号3面のつづき、関連記事4、5面)
クロスチェック者として特定計量証明事業を位置づけては
第1の対策は、別事業者に二重に計量させて、結果を比較することで計量証明事業者の計量の品質を確認すること(サンプリングによるクロスチェック)の導入を前提として「計量証明事業者が行った結果についてクロスチェックを行う者として特定計量証明事業を位置づけ、すべての計量証明事業の区分(貨物の長さ、質量、面積、体積、熱量、大気、水又は土壌中の物質の濃度、音圧レベル(聴感補正に係るものに限る。)、及び、振動加速度レベル(感覚補正に係るものに限る。))について(中略)制度を拡張してはどうか」というもの。
現行の特定計量証明事業は「極めて微量のものの計量証明を行うために高度の技術を必要とするもの」(計量法第百二十一条の二)とされている。
この特定計量証明事業に、クロスチェックする役割を追加し、(1)「極めて微量のものの計量証明を行うために高度の技術を必要とするもの」、(2)「他の計量証明事業者が適正な計量証明を行ったかを確認するために高度の技術及び品質管理体制を必要とするもの」(これが追加分)といった事業内容に拡張してはどうか、というものである。
自治体が予算を確保できるかなど問題点も
問題点として、(1)地方自治体がクロスチェックの予算を確保できるか、(2)クロスチェックの結果が元データと開きがあった場合に、争いになる可能性がある、(3)処罰的な目的を持たせないというISO/IEC17025の性質上、特定計量証明事業者の技能試験の結果(技術能力)を地方公共団体に情報提供することは難しい、などがあげられている。
現行制度で改善する方法
現行制度の中で計量証明事業の信頼性を担保する方策としていくつか例示された。
入札条件にISO9000取得などの価格外基準を設ける方法
一つは、入札条件にISO9000取得などの価格外基準(要件)を設ける方法である。この方法の問題点として、
落札価格が高くなる(負担増)可能性や、ISO9000取得などが不正をしないという保証にはならないこと、
未取得事業者にも技術力が高く良心的な事業者が多く存在することなどが指摘されている。
契約前の立入検査
第2は立入検査。発注者が、契約前に、入札で受注した者の事業所を立入検査することにより、
計量証明事業を行える能力があるか確認する方法である。立入検査を実施する者が技術能力を持っていることが前提
になるので、自治体に適任者がいない場合は、外部の計量士、特定計量証明事業者、ISO/IEC17025等
を有する計量証明事業者を活用することが考えられている。
特定計量証明事業者にクロスチェックを依頼する方法
第3は、特定計量証明事業者にクロスチェックを依頼する方法である。
また、質量の計量証明などでは、ISO9001認証又はISO/IEC17025認定を受けた事業者にクロスチェック
を依頼する方法がある。
現行制度では、特定計量証明事業者の認定区分はダイオキシン類等に限られるが、特定計量証明事業者はISO/IEC17025認定と同等
の能力を有するので「極微量物質であるダイオキシン類等を測定する事業者は、他の物質の濃度測定についてもクロスチェックする能力を有すると考えられる」としている。
ここでも問題点は、規格の認定取得者が、不正をしないという保証はないということである。
クロスチェック、3方法とも利点と欠点が
クロスチェックは不正是正の有力な方法と考えられており、(1)特定計量証明事業を拡張した認定制度の活用、(2)ISO/IEC17025試験所認定制度を活用、
(3)ISO9001品質マネジメントシステムの活用、の3つの方法が考えられている。
それぞれに利点と欠点があり「各々を比較すると、(1)業務遂行のマネジメントの確認についてはすべて可、(2)技術力に注目するのであれば、ISO/IEC17025を使った又は拡張された特定計量証明事業が妥当、
(3)計量証明事業の区分に対応するには拡張された特定計量証明事業が妥当、と考えられる」としている。ただし、特定計量証明事業を拡張した認定制度の活用は、事業範囲を拡張する必要があるので法改正が必要である。
JQAが意見書
「計量証明事業の信頼性の担保」に関して、(財)日本品質保証機構(JQA)が意見を提出しており、杉山喬理事が説明した。
JQAは、環境計量全般に関して「価格の低下による採算割れでも落札せざるを得ない状況があり、精度管理等に十分に対応していられない事態が起こっている」と指摘し、解決策として「登録(又は認定)制度の運用等の充実が必要」であるとする。
具体策に関しては、(1)サンプリングによるクロスチェックに関して「どこまで許容差を持たせるか、クロスチェックの試料の均質性はどうするのか、比較試験機関を計量証明事業者だけの基準で選ぶのがよいのか(レベルの問題)、等の検討をする場が必要」であると指摘した。
(2)立入検査での専門家の確保に関し「環境省が環境Gメーンのような制度を作り、対応している事例があ」るとし、「専門家を登録し、活用できるように考えてはどう」か、と提案した。
(3)提案資料が、委託先に信頼に足る計量を行わせることは、基本的には発注者の義務であると述べていることに関し、計量証明事業者制度が完全であれば「レベルや、モラルの低下は許されない」とし、「制度が完全に運用されていないということも原因の一つかも知れません」とする。
また、提案資料が、技能試験に処罰的な意味を持たせると、技能試験で不正をはたらくインセンティブが生じ、正確な能力確認ができなくなる恐れがあると指摘したことに関連し「即、処罰ではなく教育指導的な手段の後に、再発が見られる場合には処罰をするというような段階を踏んでみてはどうでしょうか」と提案した。
経済産業省は、これらの方法や、問題点など、地方自治体からの意見を求めて、検討を進めたいとしている。
(おわり) |