1.日時:平成17年9月28日(水) 13:30〜15:30
2.場所:経済産業省別館11階1120会議室
3.出席者:今井座長、伊藤委員、梶原委員、河村委員、齋藤委員、
芝田委員、杉山委員、瀬田委員、中野委員、畠山委員、
本多委員、松本委員、三浦委員
4.議題:
議題1 計量制度検討小委員会第3WG第1回会合議事録
について
議題2 関係者ヒアリング
○ 日本電気計器検定所標準部長 畠山 重明 委員
○ 指定校正機関関係
・(財)化学物質評価研究機構東京事業所化学標準部長
松本 保輔 委員
○ 業界関係
・ (社)日本試薬協会規格委員会委員 三浦 正寛 委員
・ (社)日本分析機器工業会環境技術委員会委員長
齋藤 壽 委員
議題3 その他
5.議事内容
○吉田知的基盤課長 計量制度検討小委員会第3ワーキンググループの第2回を開催させていただきます。
私、先日、知的基盤課長に着任をいたしました吉田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
まず、きょうの出欠でございますが、欠席の御返事をいただいておりますのが久保田委員、桑委員、田畑委員、望月委員、山領委員の5名の委員の方々でございます。
以降の議事進行は今井座長にお願いをいたします。
○今井座長 今井でございます。第2回目の会議、よろしくお願いいたします。座らせていただきます。
○今井座長 よろしくお願いいたします。
皆様、よく御存じのことでございますけれども、この第3ワーキンググループの役割は、計量証明事業者制度ですとか、計量標準のトレーサビリティ制度の運営と円滑な安全性の確保、さらには独立行政法人産業技術総合研究所の計量標準総合センター、NMIJと略称しておりますけれども、その一層の活躍のための環境を整備し、世界の計量標準へのつながりを明確にしていくということが検討課題になっております。
前回は9月1日に第1回目を開かせていただきまして、本日は第2回目ということになります。前回、御討議いただいた趣旨に従いまして本日は、委員でもいらっしゃいますけれども、各関係機関を代表する有識者の方々から御意見を伺うということで、4名の方にプレゼンテーションをしていただくことになっております。よろしくお願いいたします。
きょうの議事次第の中で、1が前回議事録の確認、そして議事2が関係者ヒアリングということで、4名の方々、いずれも委員でいらっしゃいますけれども、日本電気計器検定所標準部長の畠山委員、財団法人化学物質評価研究機構東京事業所化学標準部長の松本委員、日本試薬協会規格委員会の委員でいらっしゃいます三浦委員、そして、社団法人日本分析機器工業会環境技術委員会委員長でいらっしゃいます齋藤委員に、現状の御紹介あるいは、この委員会への御要望等を御説明いただくことになっております。
なお、このワーキンググループは審議会の傘下にありますので、審議会の公開にかかわる閣議決定が平成7年になされているそうでございまして、それの関係で、さらに平成11年に審議会等の整理合理化に関する基本計画の中で、こういう場で審議する内容、議論した内容を原則公開ということにしているというルールがございますので、それを運用して、原則公開にさせていただきたいと思います。
なお、きょうも、これから審議していただきますけれども、議事にかかわることは全員、委員の皆さまの御了解をいただいた上で公開というプロセスを踏んでいきたいと思います。
配付資料確認
○今井座長 まず、資料の確認をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○吉田知的基盤課長 事務局から資料の確認をさせていただきます。
○今井座長 皆様、資料はよろしいでしょうか。
それでは、議事に入らせていただきます。
計量制度検討小委員会第3WG第1回会合議事録について
○今井座長 今申し上げましたように、議題1は前回議事録の確認でございます。非常に大部に、30ページ近い議事録をほとんど漏らさず書いていただいているのではないかと思いますけれども、委員の皆様には事前にお目通しいただきまして、御意見をいただいていると思います。その後、あるいは、きょうお気づきの点がございましたら、御指摘いただきたいと思います。――特にございませんでしょうか。
それでは、以前にも見ていただいておりますので、きょうの資料1は議事録の案となっておりますけれども、案を取らせていただいて、先ほど申し上げましたように、この議事録につきましては経済産業省のホームページ上で公開させていただくことになりますので、よろしいでしょうか。――それでは、前回議事録承認ということにさせていただきます。
どうもありがとうございました。
関係者ヒアリング
○今井座長 続きまして、議事2に入らせていただきます。
先ほど事務局から御紹介いただきましたように、パワーポイントによる資料を既に用意していただいておりますけれども、4件のプレゼンテーションを順次していただきたいと思います。非常に詳しく書いていただいていると思いますけれども、何分にも限られた時間でございますので、それぞれ御説明いただく委員の方々は、説明時間20分、質疑応答5分ということにさせていただきたいと思います。中身は非常に豊富なので、20分ということは非常に難しいかもしれませんけれども、極力20分以内におさめるようにしていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
第1回の会合のときには、全体的に社会的な要請として計量標準に対する明確さ、あるいは透明性というものが求められ、さらに従来の物理や化学標準だけではなくて、臨床検査ですとかバイオ、食品等にわたる広い範囲への計量標準、あるいは標準物質のニーズというのが高まっているということでございますけれども、きょうもその一端を御紹介いただけるのではないかと思っています。
きょうは4件、御用意いただいたわけですけれども、強いて分けるとすれば、国家計量標準を担う役割を分担していただいております日本電気計器検定所と指定校正機関としての財団法人化学物質評価研究機構、そして、業界という意味では試薬関係あるいは分析機器関係から御紹介いただくことになると思います。
日本電気計器検定所(JEMIC)
○今井座長 まず前半の二つという意味では、国家標準あるいは、それに準ずるところで校正をしていただいているという意味で、最初に日本電気計器検定所という立場で畠山委員から御紹介いただきたいと思います。
畠山委員、どうぞよろしくお願いいたします。
○畠山委員 ただいま御紹介にあずかりました日本電気計器検定所の標準部を担当しております畠山と申します。よろしくお願いいたします。
本日は、現状におけるJEMICの校正業務の実施概要と社会的要請、並びにJEMICから見た今後の標準供給、国際整合性及び国内トレーサビリティ体制のあり方ということでお話しさせていただき、最後の方に、この場をおかりしまして、JEMICから電気エネルギーに関する国家標準の維持継続というお願いを若干させていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
まず、本論に入ります前に、なぜ計量法の135条に、経済産業大臣とともに私ども日本電気計器検定所が併記されているかということについて御説明させていただきたいと思います。
ここにございます図は電気の標準供給の歴史でございます。赤字で書いてございますけれども、昭和40年、日本電気計器検定所が発足いたしました。そのとき、国の機関でございました電気試験所の業務を私ども日本電気計器検定所が引き継いだわけでございます。具体的には、電気計器の基準器の検査、型式承認、検定業務、それとともに電気エネルギーに関する国家計量標準を継続いたしました。
それと、現在の校正業務でございます依頼試験もあわせて引き継ぎまして、現在まで独立採算で運営してまいりました。産総研さんとは、ともに事実上の国家標準を維持供給してきた経緯から、平成5年、計量法の改正により国家計量標準の供給につきまして、計量法135条に国と同等として位置づけられてまいりました。
それでは、本論に入らせていただきます。最初に、国家計量標準供給方式でございます。この図に示しますとおり、日本は諸外国と異なり、産総研さんを中心に、私ども日電検等複数の機関が国家標準を供給して、さらに、それを拡大する中間拡大機関が存在し、計量標準供給量を補うとともに、計量標準供給の範囲を拡大しております。
アメリカ、ドイツなどは国家計量標準研究所が直接産業界に計量標準を供給していると聞いております。また、産総研さんと、例えばNISTを比較してみますと、マンパワーだけでも1対10という関係も聞いております。つまり、国家計量標準を維持供給する資源と環境が全く異なっていると思っております。したがいまして、日本の場合、産総研さんを中心に複数の国家計量標準を維持供給する機関、それと中間拡大機関がどうしても必要になるのではないかと思っております。
ここで、日本電気計器検定所の計量標準供給機関としての役割についてお話しいたします。一つは、先ほどもお話しましたけれども、電気エネルギーに関する国家計量標準を維持供給しております。二つ目に電気、温度、光の国家標準を非常に精度よく拡大する大きな役割がございます。例えば国家計量標準が1という電気量が仮にあったとします。その一つだけでは、産業界の要求にはなかなかこたえられませんので、それを100万分の1から100万倍といった範囲に拡張いたしまして、産業界に供給しております。国家計量標準の精度がよければいいほど、高い拡大技術能力と充実した設備が必要となります。その拡大機関としての重要な役割を私ども日本電気計器検定所は持っております。
また、日電検の標準供給業務というのは3種類ございます。一つは計量法135条の特定標準器、これは国の標準器でございますけれども、これを用いた校正がございます。私ども、これを特定校正と呼んでおります。二つ目に、その特定標準器に連鎖した計量器を用いた校正がございます。JCSS校正あるいは認定校正と呼んでおります。三つ目に、計量法によらない校正がございます。これは特定標準器に、トレーサブルではございますが、JCSSの範囲外のため、JEMICのロゴつきという校正証明書を発行しております。
このスライドは私ども日本電気計器検定所のトレーサビリティ体系を示しております。一番上の方にございます電力・電力量及び計器用変成器の標準、つまり電気エネルギーの特定標準器と特定副標準器は私どもが所有しておりますが、そのほかの電気、温度、光についての標準は産総研さんから供給を受けました特定副標準器をもって、三つの供給体系を持っております。
一つは、真ん中のJCSS校正でございます。もう一つは一番左端ですね。お手元の資料はJCSSと書いてございませんか。ミスティークでございまして、JEMICロゴつきの校正でございます。修正のほど、よろしくお願いしておきます。もう一つは特定計量器の標準器となる基準器への供給。この3本の供給体系がございます。ここでは主に標準供給の最上位のレベルでございます特定校正についてお話しいたしたいと思っております。
日電検の特定校正は電気、温度、光の三つの分野にわたっております。電気量では電気抵抗、交流・直流の電圧、交流・直流の電流、交流電力・電力量標準、それの特定校正ですね。温度の分野ですと、接触式でございます白金抵抗温度計とその定点実現装置、非接触式の放射温度計とその定点実現装置。光の標準、これは電球あるいは蛍光灯といった光の光度、光束、照度。これらが私たちの特定校正のテリトリーでございます。
この表は特定校正を希望される私どものお客様の数と、平成16年度の特定校正の実績を示しております。特定校正を希望されるお客様の数は現在、34社ございます。ほとんど増減はございません。この数字をごらんになって御理解いただけると思うのですが、ほとんどが計測器メーカーでございます。あるいは大手メーカーであったりしておりますが、校正事業者は非常にわずかな数でございます。国の標準に直結する校正データを使用することによって、自社製品の性能を高めるといったねらいがあるのではないかと思っておりますが、ほとんどがメーカーさんでございます。
校正個数につきましては校正周期の関係で1年置きに増減を繰り返しておりますが、個数の変更はほとんどございません。平成16年度は年間214個、一見数は少ないように見えますが、非常に高精度な測定を要求されるため、ほとんどの校正品が4日から5日、約1週間ですかね。物によっては10日以上かかる校正品がございます。
計量制度は、貨幣制度とともに産業、経済活動の社会基盤とよく言われておりますけれども、はかることの重要性、必要性は広く理解されていると思っております。このはかる行為の基準、つまり、物差しがいかに正確なものかを証明する行為を校正と称しております。
日本電気計器検定所は電気、温度、光の校正を行っておりますが、ユーザーは大きく分けると2種類あるのではないかと思っております。一つは、ものづくりのために正確な値が必要なお客様。例えば製造業様。その中でも計測器メーカーは非常に正確な値を要求してまいります。校正事業者もそうでございます。もう一つは、製品の適合性の評価のために、その基準が必要なお客様。例えばISO9000、基準、強制法などがございます。前者は正確な値を望んでおりますが、後者はできるだけ安い費用で証明書を必要とするという状況でございます。
このように校正に対する社会的要請をまとめてみますと、一つに測定の量と質、測定の範囲が挙げられます。わかりやすくお話ししますと、供給量の数とその品質、供給量の範囲といった言い方の方がわかりやすいかもしれません。二つ目に、その正確な値の信頼性。これは安心と安全につながります。三つ目に、お客様が希望される不確かさのレベル。不確かさと申しますのは正確さというふうに御理解いただければと思いますけれども、それが選択できること。四つ目に、技術能力と設備の充実が要求されているのではないかと思っております。五つ目に、これはすべてのお客様に共通することですが、納期、コスト、顧客サービス、利便性等が挙げられております。六つ目に、計測器を扱う人の育成ですね。計測論、計測技術、品質管理などの研修、セミナーの要請がございます。七つ目に、トレーサビリティを確保する、維持するためのJCSS制度の啓発・普及活動、こういった要求がございます。八つ目に、計測情報の提供。最後に、継続・安定して供給できる経営資源。こういったものが求められているのではなかろうかと思っております。
次のテーマに進ませていただきます。JEMICから見た今後の標準供給、国際整合性及び国内トレーサビリティ体制のあり方についてお話しさせていただきます。
国家標準の維持につきましては、現在もそうでございますけれども、基本的に産総研さんを中心に国家計量標準の開発、維持能力を持っている複数の機関で維持することが必要だと思っております。
二つ目に、これらの機関は国家計量標準を維持するために必要な資源、これは人、物、資金を指しておりますが、これと技術能力を持ち産業界と密接に関係ある機関、あるいは産業界によく精通した機関、これは学会、工業会も含んでおりますが、これらの機関に事実上の国家計量標準を委任することがベターではないかと考えております。これは、適切な標準が供給でき、トータルコストが安く、責任が明確になるメリットがあるのではないかと考えております。
三つ目でございます。日本は地震が非常に多ございますけれども、地震、火災あるいは不測の事態に対応するための危機管理が必要ではないか。例えば能力ある機関を指定するといったことを検討する必要があるのではないかと思っております。
今後の国際整合性についてでございます。国家計量標準あるいは事実上の国家計量標準を維持する機関が国際ルールにのっとり、国際整合性を図ることが肝要かと思っております。具体的には、CIPM−MRA登録、あるいは国際比較、APMPへの加盟、そういったルールに従う必要があると思っております。また、MRA対応、非対応の認定事業者の区別は、国際的にはなかなか説明がつきづらいのではないかと思っておりますので、検討が必要ではないかと思っております。
この図は計量標準供給制度を単に絵としてあらわしただけで、従来の体系図と全く変わっておりません。つまり、国家計量標準レベルは産総研さんを軸に国家計量標準の維持可能な機関が集合して、日本の国家計量標準を維持していくことが最良ではないかと思っております。
今後の計量標準供給のあり方でございますが、計量標準体制につきましては、従来の体制で特に問題がないと思っております。しかしながら、一つは計量標準の質と量を落とさぬ体制づくりが必要ではないかと思います。採算性を追求する余り、ニーズの少ない量の廃止あるいはコスト競争に伴う質の低下、こういったものに注意をする必要があるのではないかと思っております。
二つ目に、量と質を確保し、納期、コスト、効率性、利便性と顧客サービスを向上させるための国家標準の維持供給を含む中間拡大機関がどうしても必要だと思っております。
三つ目に、計量標準供給制度を維持するための大きなファクターでございますが、やはり市場の確保が必要だと思います。
四つ目に、JCSS普及・啓発の促進でございます。これは市場の確保、成長に大きく影響を与えます。また、計量に携わる人材の育成も必要ではないかと思っております。
最後に、これは根本的な、かなり困難なことでございますけれども、計量・計測の重要性を広く知らしめるためには、学校教育といったところに取り込む必要があるのではないかと考えております。
以上、今回のテーマに対するお話をさせていただきましたが、ここでJEMICが標準を供給しております基準器検査制度につきまして、少し触れさせていただきたいと思います。この件は第1ワーキンググループで検討されるということになっておりますが、トレーサビリティの確保を考えた場合、このワーキンググループにも関係があるものと思っております。
まず、基準器検査は正確な特定計量器の供給及び正確な検定検査の基礎となる極めて重要な制度だと私は思っております。基準器検査には「構造検査」及び「器差検査」がございますが、器差検査につきましては既にJCSS校正証明書は活用できる制度になっております。構造検査は基準器の検査周期の間、使用に耐えることを検査し、検査周期の間、基準器が適正に使用できることを保証しております。JCSSのトレーサビリティ体系の一本化はよく理解できるところでございますが、校正はあくまでも任意の世界であり、校正周期あるいは標準器の選択につきましては自由でございます。したがって、現行の基準器検査制度の考え方を尊重する何らかの規制が必要ではないかと考えております。
続きまして、これも手前みそで大変恐縮でございますけれども、この場をおかりしまして日本電気計器検定所から電気エネルギーの国家計量標準の維持供給に関するお願いということで少し時間をいただきたいと思います。
皆様、御存じのとおり、電気エネルギーはすべての産業の経済活動の基盤でございます。近年、環境保全が国際的な課題になっておりますが、エネルギーに関する関心が非常に高くなっております。産業界では電気エネルギーのより正確な計量が求められております。また、電力自由化市場では電気エネルギーのより正確かつ適正な計量が必要になってきております。産業界を初め、すべての国民が享受している電気エネルギーの取引は年間14兆円にも達します。このように電気エネルギーの計量標準はすそ野に莫大な取引が存在しております。
日本電気計器検定所は、現在所有しております電力・電力量の国家標準の後継器として、最新のデジタル技術を駆使した新たな計量標準を開発・実用化いたしました。この標準器はカナダ国立研究所で評価を行い、昨年の国際精密電磁気会議、俗にCPEMと称しておりますが、ここで発表いたしております。私どもは、この標準器の性能及び測定の不確かさにつきましては世界のトップレベルであると自負しております。
また、日本電気計器検定所は電気エネルギーの国家標準を維持できるマンパワーと設備能力、長年、蓄積してきた膨大な技術とノウハウ、さらに継続かつ安定供給の財源、電気エネルギーの産業界の知見と情報、こういったすべての資源を備えております。
日本電気計器検定所は、電気エネルギーの国家標準の維持・供給も含め、電気エネルギーの計量に関するすべての業務を一体化して独立採算で運営できる独立した検査機関でございます。このことは計量行政から見たトータルコストを最小にすることができると確信しております。これからも、産総研さんとともに、電気、温度、光の計量標準供給機関として計量行政を通して社会に貢献してまいりたいと思っております。
少し時間を超過いたしましたけれども、御清聴ありがとうございました。
○今井座長 畠山委員、どうもありがとうございました。
ただいま御紹介いただきましたように、JCSSの制度が発足した当時から、電気、光、温度の分野で役割分担をしていただきまして、国家標準の供給に随分貢献してきていただいているわけです。それから、最後の方でも御紹介がありましたように、標準器そのものの開発ということでも研究面でも、すぐれた実績を残していらっしゃいます。
ただいまの畠山委員の御説明に関しまして何か御意見、御質問等ございましたら、どうぞお願いいたします。
私の方から幾つか御提案というか、問題提起していただいた点、順次申し上げるわけではありませんけれども、非常に重要な課題、複数機関で国家標準を維持すること、MRA対応とそうでないものとの区別、さらには基準器がJCSSとどういうふうにつながっているかというのは日本独自の問題でもありますし、この委員会の親委員会とでも申します計量制度検討小委員会の場でも御意見が出たと思っております。
それから、人材育成ということに関しては、学校教育あるいは一般社会の教育に関しておろそかにしてはいけない、むしろ、もっと積極的にそういう啓発をしていくべきではないかという意見も出ていたと思いますので、非常に重要ではありますけれども、難しいとおっしゃいましたけれども、ここでも考えていかなければいけないのではないかと思っております。
それでは、委員の方々から御意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。
芝田委員、どうぞ。
○芝田委員 質問を2点ばかりしたいと思います。
まずスライド8のユーザーの説明をされたのですけれども、二つ目の適合性の評価で、できるだけ安い費用で証明書を望むユーザーというのは、例えばどういったところなのでしょうか。素人なのでイメージがわきにくいので、どういった事業者、どういったところが求めるのかというのを教えてください。
それから、スライド11で、今後の国家標準の維持で御提案があったのですけれども、NMIJからの委任の話ですが、これは今後、ふえそうな業務ということだけじゃなくて、現行のNMIJがやっている機能というか、任務も一部民間に移管した方がよいという御提案でしょうか。
その2点についてお願いします。
○今井座長 畠山委員、お願いいたします。
○畠山委員 お答えいたします。
まず製品の適合性評価と、ここで私どもに校正を依頼されるお客様は、どちらかというと、証明書ですね。どうしてもトレーサビリティ証明書が必要だということです。
比較論でございますけれども、ものづくりのユーザーさんは非常に正確な値がほしいところと、片や規格に適合すればいいというところがございます。ものづくりのお客様は、どちらかというと、信頼性の方を、正確な値の方をお取りになるわけですが、適合性評価の方はできるだけ安い方がいいという要請はございます。
それと、二つ目の質問でございますけれども、現在、NMIJさんが持っておられるものを民間にという考えはございません。要するに、トータルで日本の国家計量標準を維持していけばいいのではないかという提案でございます。
○芝田委員 一つ目の質問は具体的にどういった事業者がという。一つ目は、例えば測定器メーカーということだったんですけど。
二つ目は、業務移管を求めているわけではないという意味ですか。
○畠山委員 まず一つ目でございますけれども、例えば社内で社内規格がございます、あるいはISO9000で規格化されている、その基準に適合すればいいという言い方はおかしいのでしょうけれども、そういう意味の要請がございます。具体的に企業名は差し控えさせていただきたいのですけれども、そういうところがございます。
もう一つは何でございましたか。
○芝田委員 二つ目は、国家計量標準を委任するということは、具体的によくわからないのですけども。今やっているNMIJの仕事の移管を求めているわけではないとすれば、今後ふえそうな仕事の一部をほかのところにも振り分けろという意味ですか。
○畠山委員 まだ、NMIJさんは2010年の目標に計量標準をどんどんふやしておられるわけですが、場合によっては、例えば私どもでもできるものがございますし、工業界あるいは学界といったところでも国家標準を維持できるようなところがあるのではないかと思っております。したがいまして、NMIJに集中させるということでなく、そういった可能なところに分散させることが一つは方法ではないかというふうに、そういう意見でございます。
○今井座長 芝田委員、よろしいでしょうか。今の経緯については、私の方から説明させていただきたいと思います。
10年以上も前にJCSSの制度がスタートした時期には、JCSSそのものができる前は依頼試験で国の研究所、当時は国でございましたけれども、その研究所が校正をしていた。国の制度として計量標準を供給する、あるいはトレーサビリティのための校正をするというルールはございませんでした。あくまでも依頼試験であったわけです。
そういう状況で計量法が改正されて標準を供給しましょうというときに、とても国の機関だけでは賄い切れない。その当時は研究主体でありましたし、スタッフもそんなに多くなかったわけです。そういう観点からして、指定校正機関という制度をつくりまして、JEMICさんですとか、CERIさんにお願いして、ある部分の標準の供給、これは特定副標準器と申しまして国家標準と同等という考えがあったわけです。当時は分担をしていただいたという経緯がございます。
その後、計量標準の重要性を認識していただいて、国として随分支援をしていただいて、知的基盤整備事業等から支援をいただいて、国がかなりの部分を賄おうということになってきたわけです。
それにあわせてというよりも、むしろ世界の動きとしてグローバルMRA、現在ではCIPM−MRAという、メートル条約のもとでのトレーサビリティ制度の普及ということが非常に活発になって、むしろそういうことが援護射撃といいますか、逆の力になったのかもしれませんけれども、そういう中で国家標準をきちっとしていきましょうという動きの中で、ある意味ではJCSSがスタートした時点では、国だけではとてもできなかったというので、指定校正機関制度というのをつくって分担をしていただいたわけです。その後、国としてきちっと全体的な計量標準の普及について責任を持てという風潮が国際的にも国内的にも高まってきたという経緯がございます。
もう一つ、大きな動きとしては、国の機関が、あるいは国に類する機関がきちっと標準を直すということは必須になってきておりますけれども、その中で、国が必ずしも全部できない場合があるであろう、技術的にも国に匹敵する機関がある場合には、サブコントラクティングという考え方ですけれども、協力して標準を供給していきましょう、そういう考えが出てきているところです。
特に標準物質の世界では、冒頭に申し上げましたけれども、対象とする範囲が広がってきましたので、国研だけで国の、あるいは、現在ではナショナルメトロジーインスティテュート(NMI:National
Metrology
Institute)という言い方のときに、プリンシパル(principal)あるいはリーディング(leading)という言い方をしておりますけれども、その主となるNMIが責任を持ってサブコントラクティングを結べば、そこと一緒になってやっていけばいいのではないかと、そういう考え方が主体となっております。
ですから、世界的な考え方では頭が二つというのではなくて、あくまでも国が責任を持つ機関が一つあって、そこが技術的にも、あるいはマネジメントについても信頼できるところを一緒にやってくださいねということで、サブコントラクティング、協力関係を結んで、ある意味では対等の立場で標準を出していく。ある意味の分担制度ですね、そういう考え方が広まってきているのではないかと思います。
今のような状況を簡単に説明しましたので、おわかりいただけたかどうかわかりませんけども、そういう背景があるということをお含みおきいただいて、今の畠山委員のプレゼンテーションに関して議論をしていただければと思います。
中野委員、どうぞ。
○中野委員 今の議論の続きですけれども、スライド11をもうちょっと整理させていただきたいのですが、ここでは国家計量標準のことが書いてあって、その量のトレーサビリティの最上位の標準がまず書かれているということで、次に、そのような最上位の標準について、その量についての国家計量標準を供給する機関、それは1機関であって、それが複数機関あるわけではない。以上のように理解しました。
さらに、その上で計量標準の範囲が広がりつつあり、その意味では、産総研で標準供給ができないものもあるので、そういう量については産総研を補完するという意味で複数の機関があってもいいのではないかという提案でしょうか。
さらに言えば、補完する形が、先ほど委員長から御説明があったように、時代とともに、どの部分をNMIが担当し、どの部分は民間が担当するというのは、形は変わっていくので、その補完する量のところの関係は変わるかもしれないと、そんなイメージで書かれていると、そういうことですかね。
次に、今度は私のイメージですけれども、そういうことがあるとすると、全体の日本のトレーサビリティ体系を一体どの機関に任せるとか、どの量はNMIJではなくてほかの機関に任せるべきだという、全体をコーディネートするような機関というのは、必要ではないですかね。それはいかがでしょう。
○畠山委員 非常に難しい質問でございます。コーディネートする機関は行政と、ここで言いますと、産総研さんですね。ここがお持ちになるのではないかと思っております。
○今井座長 今の御指摘、国として、あくまでも経済産業省が責任をお持ちになるわけですけれども、その中でNMIJにどういうふうに委任するか、あるいは責任を持たせるか、あるいは権限を委譲するか、いろんな役割があると思いますけれども、きちっとしたその辺の環境を整えるべきじゃないかというのが計量制度検討小委員会全体の中での考えでもあると思いますけれども、このワーキングがかかわりますので、その辺もまた議論していただきます。
きょうのところは、決して全部、最後までこうだという結論が出るわけじゃないと思いますし、むしろ時間をかけて議論をしていただきたいと思いますけれども、ある意味では問題提起だと思います。
ただ、せっかくの機会ですので、御意見をいただいて、これに続くプレゼンテーションをしていただいて、さらには次回以降のプレゼンテーションにもかかわると思いますので、また戻って最終的な議論をする機会があるかと思いますが、きょうのところ、議論できるところはしておきたいと思いますので、ほかにいかがでしょうか。
畠山委員に確認させていただきたいと思いますけれども、複数という意味は、中野委員が御指摘されたように、プリンシパルがあって、そこでは必ずしもできない、しかしながら別のところに技術があるという場合に、補完するという立場でよろしいですね。
ほかにいかがでしょうか。
瀬田委員、どうぞ。
○瀬田委員 私も複数機関でという考え方は大いに賛成でして、現実の問題としても、現に複数でないとカバーし切れないという現状が起きていて、実態として、それを担っていただいている機関というのは幾つかあるというふうに認識しています。
そういう中で、逆に、その複数というのはどういうふうに選ばれて、どういうルールのもとに、どういう資格を持って国の頂点と言えるんだという部分のルールが逆にきれいになっていないというのが問題点と思いますので、今度の計量法改正の中で、その点はぜひクリアにしてほしいなということは考えております。
以上です。
○今井座長 御意見ありがとうございました。
今の考え方は、物理標準に限らず、むしろ標準物質の世界ではかなりそういうことが出てくると思いますので、どうやって担保するか、どうやって保証するかという決めの場が必要だと思うんですね。それは貴重な御意見だと思います。
ほかにいかがでしょうか。
ほかに御意見もおありかと思いますけれども、時間の都合上、また御議論いただく機会があると思いますので、とりあえず畠山委員のプレゼンテーションに対する質疑応答はこれで終わりにします。
畠山委員、どうもありがとうございました。
財団法人化学物質評価研究機構(CERI)
○今井座長 続きまして、二つ目になりますけれども、同じような立場で指定校正機関として活動を続けていただいております財団法人化学物質評価研究機構の東京事業所化学標準部長の松本委員から、プレゼンテーションをお願いいたします。20分、よろしくお願いいたします。
○松本委員 ただいま御紹介いただきました化学物質評価研究機構の松本と申します。よろしくお願いいたします。
私どもは指定校正機関として標準物質の校正を行っておりますが、本日は、私どもの校正業務の概要と、その標準物質を取り巻く最近の動向について少々お話しさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
これは、皆様、既に承知のことと思いますが、全体像を見ていただくために書いてまいりました。この計量法のJCSS制度と申しますのは、平成5年の計量法の改正により創設された制度でございます。その仕組みは先ほどの畠山委員のプレゼンにもございましたけれども、経済産業大臣、日本電気計器検定所または指定校正機関、我々の立場ですけれども、そういったところが特定標準器、私どもは標準物質ですから、特定標準物質と申しておりますけれども、特定標準物質を私どもは製造し、維持・管理しております。
その次に、製品評価技術基盤機構によって、以前は認定された事業者ということでしたが、7月1日から登録制度になりまして、登録された事業者が持つ特定二次標準器、標準物質の場合は特定二次標準物質を校正し、標準物質の場合は値づけをします。登録事業者は、その特定二次標準器あるいは特定二次標準物質を用いて実用標準器を校正する。こういう流れで、このシステムは運営されております。
実際にどの機関がどういったものを、特定をもって校正をやっているかと申しますと、産総研、これは先ほどのページにありました経済産業大臣ですね、実質の産総研さん。それと日電検さん。それと、指定校正機関としてJQAさんと私どもとNICTさん、(独)情報通信研究機構、国と日電検と指定校正機関が三つ、この五つで今、日本の計量標準を分担して持っているということで、先ほどのお話とかなり近い話になります。
それで、私どもは黄色で示したCERIと申しますが、標準ガス31種類、pH標準液6種類、無機標準液35種類、有機標準液41種類、これだけの特定標準液をもちまして、登録事業者、標準ガスが4事業者、標準液が8事業者、これらに対して校正業務を行っております。その際、校正証明書には、ここに示しましたように、小文字のjcss、認定事業者は大文字のJCSSのマークの証明書を出しております。
先ほどの物質は合計で113ございます。113のうち、こちらのブルーの部分が標準ガスですね。黄色い部分がpH標準液。それと肌色のような、ちょっと薄目のところが無機標準液。残りが有機標準液です。これだけの113の物質を私どもで、質量比法といいますか、つくり方にはいろいろございますけれども、国際的に認められた質量比法という重さをはかり取って調製するというやり方を採用しております。
これは標準ガスの例ですけれども、特定標準ガスを作る場合、こういった大型の精密天びんを用いまして、一本一本つくっております。その作り方と申しますのは、真空にした容器に成分ガスを詰めて重さをはかる。次に、それを薄める。一般的には窒素とか空気なんですけれども、そういったもので薄めた後に、もう一度重さをはかる。その重さから体積に換算いたしまして濃度を割り出すということで、ほかの標準を用いないで濃度が決定できるというか、思った濃度に作れるというやり方です。これは国際的なプライマリーメソッド(Primary
Method)と言われて、ほとんどの国で採用されております。
次は特定標準物質の保有状況を申しますけれども、左側の数字、こちらは特定標準物質の種類、先ほど来申し上げていますけれども、113。それに対して、特定標準ガスなり特定標準液の数が右の方です。比べますと、3倍以上になりますね、4倍近くなりますけれども、421本、我々は持っております。
と申しますのは、標準ガスなどは指定の範囲といいますか、業務の範囲がこういうふうに濃度の範囲でとらえています。単一の濃度で指定をされておりませんで、範囲で指定されておりますから、この間に校正依頼がどこに来るかわからない。ということで、例えば一酸化炭素特定標準ガスであれば、この範囲で特定標準ガスというのは46本持っております。
実際、この46本をどう使うかということになりますと、こういうふうに特定標準ガスが、ある特定二次、認定事業者の方から依頼を受けた場合、特定で、これは検量線というもので、ある装置にある濃度のガスを入れるとある指示値を出しますから、緑の線ですね、これで検量線をかいておいて、一次式を求めておきます。依頼が来たものを装置へ入れて、指示値から濃度を読み取るというやり方で値づけをしております。そういう意味で、一本来ても、その上下、かなりの数の測定が必要だということになります。これはたまたま一次ですけれども、ものによっては二次曲線をかいたりしますので、その際はさらに特定標準ガスという本数はふえてきます。
そういった校正をしておりまして、これは2004年度の実績ですが、私どもで小文字のjcss校正を行ったものが標準ガスで881件、標準液で319件ございます。それを用いた認定事業者が実用校正するということで、標準ガスが2万6700本余りですね。標準液が25万6000本。25万6000本のうち17万7000本がpHの標準液ですけれども、都合30万件近いものがJCSSのロゴマークがついて市場へ出ているということになります。
これらの標準物質が分析機器の校正、環境計測などの分野で多くは使用されておりまして、データの信頼性確保といったものにつながり、国民の安全、経済の発展に我々は貢献しているのではないかというふうに考えております。
一方、供給の現状となりますと多少異なってまいりまして、JCSSの標準物質の供給においては、認定事業者の採算性とか、認定を取った後の採算性ですね、そういったことが主な理由だと思いますが、事業者としての担い手がなくて市場に出ていないものがあるということがございました。それに対応するために、一昨年、昨年ですね、知的基盤整備特別委員会に標準物質の供給体制のあり方に関するワーキンググループをつくりまして議論してまいりました。
その結果、こういう新しいスキームが提案されまして現在、これに向けて我々は準備をしているところです。従来、この基準物質はNMIJ、基準物質と申しますのは純物質です。これは一部、私どもに供給されております。それから、私どもは特定を作って、こちらの校正だけですね、校正をして流していました。
認定事業者がいないものに対しては、オレンジのラインでは世の中に出ないということで、直接赤のラインで供給をしようと。こういった道もあるということで、これが承認されたと申しますか、ゴーサインが出ましたので、今我々は準備をしております。今まで校正だけでしたが、特定二次を認定事業者に直接供給するということも不確かさを小さくするという意味で認められております。
現実を申し上げますと、認定事業者がいて世の中へ出回っているのは40物質です。残りの73は、今後は右の赤のラインでしばらく流していくということになっております。しかしながら、右のラインで供給しているものについても、いずれ登録事業者が出てくる。そういった場合には、速やかに登録事業者のルートから市場へ流していただくというふうに考えております。
我々自ら供給するということになりますと、ある程度の要件がございます。皆様、御存じのように、ISO/IEC17025、これは国際的な適合性評価制度に基づく組織の運営ということです。これはもともと指定校正機関の指定の基準でありますから、これは既にクリアをしている。もう一つ、標準物質生産者の能力に関する一般要求事項というISOのガイド34というのがございます。これも取得すべきではないかということで、製品評価技術基盤機構からASNITE−NMIということで認定を取得しております。標準ガスは数年前、取りましたけれども、標準液は先日、認定が承認されたという連絡を受けておりますので、両方の分野で認定を取れたということだと思います。
それともう一つ、直接供給するには毒物劇物製造業の登録が必要であります。特に四塩化炭素を含む有機標準液に限られておりますけれども、この登録も既に済ませております。
一応、標準液ですけれども、こういった形で供給できるのではないかと思っておりまして、準備を進めております。
それと、国際整合性への対応ということです。これは先ほどのプレゼンでもございましたように、グローバルMRAの実現のための条件というか、相互承認を満足するための条件として、国家標準の同等性と品質システムの構築、トレーサビリティ体系の構築ですね、こういったことが挙げられるのではないかと思います。
それぞれについて私どもは、先ほども話がありましたが、NMIJを補完する機関として指定されておりまして、CIPM(国際度量衡委員会)のCCQM(物質量諮問委員会)、国際基幹比較(Key
Comparison)へ参加しております。それと、品質システムについては、先ほど申しましたように、ISO/IEC17025とISOガイド34の認定を受けております。その際、海外のNMIメンバーのレビュアーによる詳細な技術評価も受けております。
それと、トレーサビリティ体系。これは既にJCSSとしてトレーサビリティが確保されておりますので、国際整合性という意味では十分満足しているのではないかと思います。
さらに、ことしはAPMP(アジア太平洋計量計画)へ加盟いたしまして、より国際整合性に対応した活動ができているのではないかと思っております。
それから、社会的要請ということで出てきたお話ですけれども、自動車排気ガス測定用の標準ガス。日本の車をアメリカへ輸出する際には、排ガスの測定に用いるガスがフェデラルレジスターで決められております。それが何かと申しますと、NISTの標準ガス、あるいはそれにトレーサブルな標準ガス、または同等な標準ガスということで一つあります。もう一つはEPAの長官が認めた標準ガスということが言われております。NISTにトレーサブルあるいは同等というのは、世界でオランダのNMIが唯一、同等として認められております。
そういうことで、日本の標準ガスはどうだというと、日本の登録事業者はNISTからSRMを購入して、それと特定二次標準ガスと比較して、ある一定の不確かさの範囲内で一致していますということを証明しながら使っているわけですね。そういうことで、自動車ガスメーカー認定事業者等の中からは、JCSSの標準ガスをEPAの長官が認める標準ガスとするような要望があるというお話です。
もう一つは、金属混合標準液。最近、GCとかHPLC、ICP−AES、ICP−MSなど、一斉分析が可能な機器が非常に普及しております。これは多成分を一度にはかれるわけですから、それに対応する標準も多成分を混合したものが要求されるということになります。GCとかHPLCなどの測定で用いる有機混合標準液については、先ほど113物質の中にかなり混合標準液を既に特定として指定していただいておりますので、これは供給のルートが確保されている。もう一つは、金属混合標準液ですね。これを早急に計量法のJCSS制度で供給してほしいという要望がございます。
我々もそういう要望にこたえるために、いろいろ準備はしておるところでございますが、今後とも社会的な要望の高い標準物質を開発、供給、これはNMIJと共同で進めることになると思いますが、そういったものを供給していく予定でございます。
以上でございます。
○今井座長 松本委員、どうもありがとうございました。
現在の課題も含めてCERIさんのCalibration Serviceに対する取り組みを御説明いただいたわけでございます。
御説明の中にもありましたように、標準物質の分野では、電気や物理の分野に比べて、JCSSのスタート時点ではさらに国家標準といいますか、国家計量機関が必ずしも十分な体制でなかったために、当初から国際比較等にも御参画いただいて、いろんなことが出てきて恐縮ですけれども、NMIとして、同等という意味でdesignatedという、日本語に訳すといろんな意味、指定校正機関とどう違うのかというのもありますので、あえてdesignatedという言葉を使わせていただきますけれども、これはきちっとメートル条約の中でのグローバルMRAの中にDesignated
InstituteということでCERIさんが登録されておりますし、国際比較に関連する技術能力を示すCMC登録もなさっていらっしゃるわけです。
委員の方々から御質問あるいは御意見等をいただきたいと思います。お願いいたします。
杉山委員、どうぞお願いいたします。
○杉山委員 日本品質保証機構の杉山です。
先ほど御説明ありました、認定事業者が存在しないケースの場合には、スモールjcssで供給されるということなのですけれども、標準ガスの場合、物理標準と違って不確かさの小さな標準物質の要求が強いんじゃないかなと思いますけれども、その場合に、スモールjcssの標準供給の方がユーザーにとっても非常に有益かなと思いますが、その辺はどうでしょうか。
○今井座長 松本委員、お願いいたします。
○松本委員 今、お話したのがそのつもりでございます。要するに、特定二次相当のものをユーザーへ直接渡すと、今の場合は、現状では、私ども認定事業者、ユーザーというふうに、ここで校正が2回入りますね。認定事業者に我々が校正をするものと同じものをユーザーへ直接渡す。そうすると、不確かさが小さくなる。だから、スモールjcssの証明書をつける予定にしています。そういう意味で、認定事業者がいなくても、不確かさの小さなものが手に入る。
○杉山委員 先ほどの説明で、認定事業者ができた場合には、スモールjcssは供給されないというお話ですか。
○松本委員 基本的にはそういう方針でございます。
ただ、一度こちらで不確かさの小さいものを入手できたルートが過去にあって、認定事業者を通すと、そこで不確かさはちょっと大きくなりますね。それを並列でいくかどうかという議論があるのですが、とりあえずは、特別なことがない限り、認定事業者を通して入手していただく。特別、不確かさの小ささが必要であれば、認定事業者の了解を得ながら、こちらで流すということを考えております。
だから、本来、全部がいけばいいんですけれども、一度直接行ったものに対して、悪い方というか、不確かさが大きい方だけでやるということはちょっと難しいかなという気もしています。
○今井座長 標準物質の場合には、物理や電気と違って、標準物質そのものを、ある意味では大量につくれるわけですね。値づけできたものを直接流すことが可能だという特殊事情によると思います。
ほかにいかがでしょうか。
瀬田委員、どうぞ。
○瀬田委員 現在、この2件のところから外れるのですが、たまたまその中に、来週、私が言いたいことが2カ所出てきましたので、しめたということで便乗して説明させていただきたいんです。
一つは、今のCERI様の話の中にありましたガイド34。10ページ目ほどのところにあるんですけれども、ISO/IEC17025以外にISOのガイド34の認定を受けたという話がございます。これはASNITEという形でやっているのですが、現在、計量法の中でのJCSSの認定ですと、そこに用いる国際規格としてISO/IEC17025のみということになっております。
ところが、現実には標準物質という化学分野になりますと、ガイド34でないと、例えばロット生産したものの均一性ですとか、その有効期限ですとか、保証し得ないという面がございます。17025ですと、校正したそのものに対する能力の保証ですので。
そういう意味で、そういった世間のニーズといいますか、分野によって、その辺の適用規格の範囲という点の柔軟性なり拡張性なりも法改正の中でお願いしたいことの意見で、現在、例えば先日、ILACで認定機関の総会の中で確認した事項ですけれども、医療関係の認証機関ですと、さらに15195という新規格を医療関係の認証機能を持つ試験所に要求するということも決っておりまして、そういった分野的な拡張というのが一つは必要ではないかということがございます。
もう一点は、先ほどのJEMICの畠山委員の解説の中にあった話で、認定機関の認定の中にMRA対応できる事業者と、そうでない業者が別にあると。現在、確かに、我々はそういう区分けをして認定しておりますが、それができてしまった一つの大きな理由は、適用する規格の中に、認定される側じゃなくて、認定する側の規格、我々が従わなければならない規格ですけれども、その中から必然的に我々が試験所にお願いしなければならない規格という規定がございます。その部分が欠けているために、JCSSの一部の認定されている事業者さんが国際相互承認の対象外となっております。これをカバーするためには、我々の側の規格から派生する要求事項も計量法の中の要求事項として読み込んでいただきたいというのがございます。
細かい説明をするとややこしくなるんですけれども、基本的には、更新性というのが前回の改正で導入されまして、4年に1度、免許更新といいますか、JCSSの認定を受けている方は我々の審査をパスしなければならないわけですけれども、これがISO/IEC
17011の規格の中で最長2年ごとに見に行けということが我々に対して課せられているんですね。
逆に言いますと、試験所から見ると、最長2年に1度は見られなければならないという条件になって、法で要求するものが一部カバーできなくなっている面があるわけです。こういう点の国際規格との整合性について、基本的な規格であるISO/IEC
17025以外のものも、ある程度拡張的に見られるような、分野の面と国際相互承認という観点と、それをお願いしたいということです。
○今井座長 御意見、どうもありがとうございました。今のはいずれも大事なことですので、また別の機会に議論させていただきたいと思います。
17025ができた当初は、ほかの分野のことを考えていなかったんだと思うんです。標準物質あるいは認証検査関係、その中で、これもごく最近ですけれども、メートル条約の中での地域の計量機関と国際度量衡局がつくっておりますJCRBという合同委員会があるんですけれども、その中でルールブックとして17025だけではなくて、標準物質の分野ではISOのガイド34を同等とみなしましょうという文言が書き加えられましたので、日本の計量法の中でも、そういうことをきちっと取り入れていくべきではないかと思いますし、既にNMIJの標準物質の作成に関しては、むしろガイド34の方を主体的に見ているんじゃないかと思います。
そもそもガイド34自体、これも私がちょっとかかわっていたので少し細かいことになりますけれども、もともとは普通の指針で、Should文で書かれていたんですけれども、スタンドアローン、ひとり立ちできるような規格であるべきだということで、Shall文に書き直されましたので、ある意味では、ISO/IEC
17025がなくても標準物質の世界ではISOガイド34で十分賄い切れるだろうという視点でつくられたと思います。したがいまして、17025を取っただけではだめだということもありますので、そういう標準物質の世界に通用する審査の仕方があると思います。
それから、今、瀬田委員からもお話がありましたように、医療検査、臨床検査の分野では、同じように必須要件を書かれた文書としてISO15195ですとか15189ですか、そういうものが出ておりますので、そういうものも日本のルールの中で取り入れていくべきではないかと思います。
ほかに御意見、ございますでしょうか。
伊藤委員、どうぞ。
○伊藤委員 教えていただきたいのですけれども、今のJCSSの標準物質供給スキームのところですね、ここでスモールjcssの方がつくったということでございますけれども、将来はこれの供給する傾向の方が多くなるんでしょうか。
どういうことかといいますと、標準物質の供給ということは、業界あるいはニーズが多いからそれをつくっていくというコンテがあると思うんでございますけれども、要するに、標準物質をつくっても認定事業者がなかなか名乗りを上げないというために、一つの補完としてこういうものをつくったと思っているわけですけれども、これから産業がどんどん発達してくると、予期もしないような物質が供給として必要になってくるわけですね。
その場合に、技術的に非常に難しいからスモールjcssの制度を立ち上げたのか、そうではなくて、認定事業者として、これをペイできないんだというような形で、こういう補完スキームをつくったのか、そこら辺、ちょっと教えていただきたいのですけど。
○今井座長 松本委員、お願いします。
○松本委員 認定事業者が出ないとおっしゃるのは、おっしゃるとおり、物の数が出ないとか、それが大きな要因だと思うんですね。
しかしながら、ゼロではない。それを必要とする人がいるということなので、我々は特定というものを常に持っているわけですから、認定事業者がいないから、ここは要らないかというと、そうではなくて持っているわけですね。それを我々としては有効に活用したいということと、数は少ないけれども、必要とする人がいる。それに対してJCSSの制度として対応しなければいけないということで、こういうルートができたと思うんですね。
何でそんなものがJCSSの指定になったかという話ですね、最終的には。我々もいろいろ調査しながらやっておりますけれども、市場がどうかまでは私どもでは不明な部分が多少あります。そういうことで、認定事業者として担ってもらえないというものが多く出てきたということだと思います。
もう一つは、我々は従来、単成分のものを主にやってきました。それが認定事業者の方が受けられない、実際には、先ほど申しました混合のものが主流になっている。それに我々の方がちょっとおくれたかなということで、混合の有機も出ましたので、そういったものに対しては、認定事業者の方は、これから認定を取ると、取りたいというふうにおっしゃっています。
だから、要望にあったものをこれから我々は広く知っていくつもりでおりますし、実際に、そこに書いておりますように、社会的要望の高いものを選んで供給していきたいと思います。
○今井座長 伊藤委員、よろしいですか。
○伊藤委員 次のページですね、新たに供給可能となった標準物質というのは、スモールの方でできた供給体制と考えてよろしいわけですか。
○松本委員 黄色で書いてあるところが、ひょっとして、お客さんがいれば、右の方で供給が可能ですよということです。
○伊藤委員 先ほど言いましたように、細かいことなんですけれども、VOCなんかは混合という意味で難しいんだと、まだその設備が十分認定事業者ができていないから、とりあえず、お国というか、CERIさんの方で供給しましょうねというような、そういう発想のもとにできたシステムというふうに理解してよろしいですか。
○今井座長 両面あるんじゃないでしょうか。もうからないというのと技術がないというのと、両方あると思います。当面は指定校正機関として流していただく体制をつくってくださいということだと思うんですね。
よろしいですか。
○伊藤委員 結構です。
○今井座長 どうぞ。河村委員、お願いいたします。
○河村委員 主婦連合会の河村です。
JEMICさんのところにもさかのぼって、今のCERIさんのところにも関係して、基本的なところを質問させていただきたいんですけれども。
JEMICさんのスライド11に関係していたと思うんですけれども、複数の機関で維持するということに関してだったと思いますけれども、行政とNMIJがコーディネートするのがいいのではないかとか、コーディネートするシステムをきちんとつくった方がいいのではないかというお話があったときに、それを伺って、今はどうなっているのだろうと、そのときは思ったのですが、ほかの委員の方が、そこがあいまいになっているところが問題であるという問題提起をいただいて、それを聞いて、現状、どういうふうに具体的にあいまいで、どういうことが問題になっているのかということが核心なのかなと思いましたので、教えていただけますでしょうか。
○今井座長 鋭い御指摘で、まさにグレーゾーンのところがあります。それは技術の面と行政の面、それから国際的な面があると思うんですね。一言で答えられるかどうかわかりませんけれども、私が答える立場にはないので、混乱するといけないと思いますし、むしろこのワーキングの提案として、こういうふうにしていくべきじゃないかという結論が出てきてほしいんですけどね。そういうところが国際的にも必ずしも明確でない部分があると思うんですね。
この前も計画の中に含めていただいた海外調査ということで、他の国では行政面あるいは技術面との権限委譲ですとか、責任の分担をどうしているか、法律上あるいは法律等いかなくても、約束事でどうなっているかということを明確にしておくべきではないか、そういうことが今まで必ずしも十分議論されてこなかった、そういう状況じゃないかと思います。
これは事務局でどなたか、とりあえずはお答えいただけますでしょうか。それとも、NMIJの立場でわかる範囲で答えていただくか。
それでは、中野さん、お願いいたします。
○中野委員 あいまいだというのが一体、何についてあいまいだったかというそもそもの議論があるんですが、我々が今、このシステムを運用していて改善が必要かなと思うのは、我々が供給できないときに、どの領域の部分を他の機関に任せて、どの分野の、どの量を国家標準とすることが適切なのかというニーズのところの調査、それをどうやって吸い上げていくのか、一体その声をだれが世の中で代弁をしているのかというところの考え方は整理をしていく必要があるかなと思います。
今のところの我々は、社会のニーズがあって、それが供給できる機関があるのであれば積極的にNMIJを補完する機関を考えていきますという立場を取っているのですが、そこの入り口のところの整理は必要かなと思います。
次に、それが決まったときには、先ほどコーディネートという話をしたんですけれども、そのコーディネートの具体的な意味合いは、その機関がこの分野のこの量については責任を持っていただきますということをクリアにしていく。それは多分、どこかのコーディネート、NMIJかもしれませんけれども、そういうコーディネートの機関が責任を持って、しかも国際的なところに、この分野については、NMIJではなくて、A機関がこの範囲においては国家標準を供給していきますということを世界に伝えていく、国際機関に伝えていくという責任を負うのではなかろうかなと思っているところです。
○今井座長 河村委員,よろしいでしょうか。非常に的確な御指摘ですので、そういう御意見をこれからも継続して出していただきたいと思います。
それから、一つはっきりしていることは、先ほどちょっと出てきましたけれども、メートル条約の中で標準研究所、NMIがdesignated
NMIも含めて技術能力を登録しているCMC(Calibration and Measurement
Capability)というのはきちっとしたデータがありますので、それは一つのあかしだと思うんですね。登録についてはメートル条約に加盟している、あるいはアソシエート(associate
to the CGPM)として登録している国の標準機関が現実には行政府の了承のもとに登録しますよというふうにして、国を代表して、そこに証拠が残っている。そういうのが私が今思いつく唯一の現実的な証拠だと思うんです。あとは取り決めあるいは話し合いの中で出てきていると思います。
ぜひ継続して審議して議論していただきたいと思います。ありがとうございました。
社団法人日本試薬協会
○今井座長 きょうのプレゼンテーション、3番目に移りたいと思います。業界から2件、プレゼンテーションしていただきますけれども、最初に三浦委員、この委員会の委員でもいらっしゃいますけれども、社団法人日本試薬協会規格委員会の委員でもいらっしゃいます。三浦委員、よろしくお願いいたします。
○三浦委員 試薬協会の三浦でございます。座ってお話しさせていただきます。
これまで、第1回のNITEさんのお話、あるいはきょうのJEMICさん、CERIさんのお話で、国家計量標準の標準物質ということでお話があったと思うんですけれども、私どもは試薬メーカーあるいはそれを取り扱う業界の協会ということですので、どちらかというと、より使用者側に近い声をどういうふうに取り入れて、今回のお話につなげていこうかということで考えてまいりましたので、その線でお話をさせていただきたいと思います。
タイトルをいただいている中で、試薬と計量法、トレーサビリティという、このトレーサビリティ自身も皆さんかなり認知度が高くなりまして、一般的な理解度は高くなったので、この三つをキーワードにしてつなげていくという組み立てにしてあります。実際は、河村委員からも話がありましたように、使用する側が、どのような考えで標準物質を用い、出てきた値に対してどのような価値をもつのか関して、協会の試薬を製造販売している中からいろいろな要望が出てまいります。そのような要望を一部述べさせていただきたいと思いますので、そういう観点で聞いていただければいいかなと思います。
例を挙げると、ダイオキシンの最近の問題、様々な輸入野菜に対する農薬の問題、PCBの問題、あるいは健康食品等々で有効成分が本当に表示量入っているのかとか、いろんな問題があります。量的に少ないものを実際には、キログラムとかメートルという概念ではなくて、次に齋藤委員からもお話があると思いますけれども、高感度な分析機器を使って確立された分析方法で技術者が試薬を使って値を出す。出た値がどれだけ信頼性に足るかということに関して、試薬を供給するメーカーとしても考えてはいますけれども、試薬の位置付けとはどのようなものかという話になるので、簡単にこの辺をまとめてきましたので、そこからお話をさせていただきたいと思います。
試薬というのは、ものの定量や合成、あるいは物理的特性の測定、そういったものに使われる化学物質ということで、一般に流通しているものは少量でミリグラムからせいぜい数百グラムで、多品種でございます。数十万ぐらいは世の中に多分流通しているだろうと考えられます。純度的には、試験研究という場合において使われますので、それに応じた高純度なものが要求されております。
以上一般的な概念ですけれども、用途ということから考えると、一般用に用いられる試薬というものと、特定用途、これは後で説明しますけれども、特別な用途で使うものと、標準物質、標準液という、この三つのジャンルに大別されるかなと考えております。
今言いましたように、用途という概念からいきますと、一般の試薬というのは、最もわかりやすいのがJISに試薬というジャンルがありまして、それはK8000に規格がございますが、そこには約500弱ぐらいの品目が載っております。それ以外、特定用途という試薬がありまして、これは今はやりの環境の分析用あるいは食品の分析用等々、各種の分析に使われる、それを保証したもの。あるいは、バイオテクノロジーと書いてありますけれども、いろいろな生化学関係、あるいはそれに近いバイオ関係で用いられる素材ということで、その用途に応じて品質を保証するというような考え方の特定用途試薬というのがございます。
それ以外に、今回の第3ワーキングで特に議論の一つになっているわけですけれども、試薬の中に標準物質、標準液というものがございまして、それは濃度の決定あるいは検量線の作成、機器の校正ということで、分析値あるいは測定値を出すための基準というふうに考えていただければいいかなと思います。
純物質としての供給以外に、調製液という形で供給されているものもございまして、それらは、これまでの概念でいきますと、JISあるいはその他の方法でもそうなんですが、分析者が自分で調製するように文章には大体書いてあります。ただ、省力化ということもありまして、できたら調製してあるものを購入したいという要望が多くなりまして、市販品という形での供給が現在ではかなり多いというふうに認識していただければ結構かと思います。
それら試薬を供給するに当たって、メーカーあるいはその取り扱い業者が集まって日本試薬協会が設立されているわけですけれども、試薬協会の、主な活動としてISOとJISを整合していこうというのが活動の主なひとつ。さらに、実際には試薬を含めた化学物質に関してのいろいろ法改正の動き等々をホームページなどで一般の方に紹介してという活動も行っております。現在、協会加盟者数は127社にのぼりますが、実際には、この半分ぐらいが試薬を製造しており、そのほか、それらを販売するディーラー、あるいは輸入試薬を取り扱う業者という構成になっております。
JISの原案作成というのは、ISOとの整合性がメインになるので、毎年これぐらいの数ずつ、37、40というふうに世界的な整合性を取ろうということで、ISOとJISとの整合性を取るというふうな動きで活動しております。このJISの中に先ほど言いましたように、8000番代の中でも標準物質という明確な表記があります。その中には滴定用の標準物質あるいは不純物試験の標準液、あるいは分析機器の校正用の検量線作成用の標準物質と、標準見本など、JISの中にも標準物質というのがあるんですが、これらはどのような保証で、どのように供給されているのかということになるんですけれども、もともとの定義が標準物質というのはどのようなものかという話になりますと、ISOのガイド30にこういう定義が出ています。
それ以外で、認証標準というジャンルがありまして、標準物質に認証書を添付したもの、あるいはトレーサビリティが取れているもの、不確かさがきちんと確かめられているものという、その3要件を満たす標準物質が認証標準物質ということで、今、国内で供給されている標準物質というのは、ここに書いてありますように、産総研から供給されているもの、国立環境研、あるいは民間としては鉄鋼連盟から鉄鋼標準とか、いろんなものが供給されております。JCSSというのはこれらとはちょっと違った計量法の中での制度としての標準物質が供給されているということでございます。
ただ、ここからがこちらでPRというか、お願いも含めた話で紹介させていただきたいのですが、冒頭でもありましたけれども、私ども協会の試薬メーカーが標準物質という名称で販売しているものも多々ございます。
標準物質というと、先ほどから話がありますように、計量法でトレーサビリティの体制が取れたJCSSという標準液、金属、イオン、pHが現実問題としては認定事業者として数社の試薬メーカーの方から約60弱ぐらい品目が供給されております。
それ以外に、先ほどNITEからも紹介がありましたが、JISの容量分析用標準物質として8、これ以外に、JISに規定されている滴定用の標準溶液が100から150ぐらいありますが、国内では1000以上の標準物質が現在販売されています。
それはなぜかというと、ダイオキシンを分析したい、PCBを分析したい、あるいは農薬を分析したいが、どうやって分析するのかという話になったとき、標準物質がないと分析できないということで、私どもメーカーが独自で標準物質と称して販売しているものがあり、農薬の標準物質だけで500品目を超えます。
それ以外に、環境分析あるいはVOCという、先ほどちょっとVOC分析のJCSSという話がありましたが、実際には、JCSS以外でも環境分析用で使われるような、インハウスという言い方をしているんですけれども、標準物質が700から800、多分1000を超えるぐらいあるんじゃないかなというふうに考えております。
その他、もちろんアメリカのNIST、同じようにアメリカのUSP、これはアメリカの薬局方なんですけれども、こういった関係の海外の標準物質というのも多数取り扱っております。それらが日本の中で供給されているということで、かなりの数あるいは種類が現在、分析のために日本の中では供給されているということを認識していただきたいと思います。
このような現状に対して、今回の計量法のトレーサビリティの体制、制度の今後にどういうことを期待するかという話になるんですが、もちろんそれには市場がどういうことを要求しているかということを考えてみる必要があります。最近はトレーサビリティがどういうふうに取れているんですかという問い合わせがかなりあります。
これは社会的なニーズとして無視できないことで、今まで、自分で調製していた方が試薬メーカーを信頼していただき、試薬メーカーがつくるものを購入されて、その値を信用して使用されておられましが、それがだんだんトレーサビリティはどうなっているんですかという要求に変わってきています。
そこで、私どもとしてもどうしなくちゃいけないかという話になるんですが、認定事業者としてJCSSに乗っかった品目に関しては、できる限り試薬という業態の中で供給していこうという考えはありますが、そこには採算性ということと、ユーザーさんが本当にほしがっているのということとの整合性を取っていかないとなかなか供給しづらいということが一つあります。
それができなければ、私どもとしてもメーカーの信頼性というのを確保していかないといけないということで、ISO9001品質マネジメントシステムを各社お取りになったり、ISO/IEC17025という試験に対して信頼性を得るための認定を受けたりということで努力はしております。しかしながら、やはりシステムの維持あるいは取得ということになりますと、企業の体力が必要であるということで、足並みをそろえて取るというわけにはなかなかいかないというのが現状でございます。
そこで、試薬メーカーというか、協会各社の御意見をいろいろ聞こうとは思ったんですけれども、なかなか時間がなく、何社か代表して意見を聞かせていただいた際に上がってきたのが、今要望されているトレーサビリティをどのようにしたらとることができるかという問題でございます。先ほどちょっと御紹介しましたように、農薬を含めた各メーカーが保証している標準物質というのが1000ぐらいあると、JCSS制度の中でそれらをすぐにでもやってほしいという気持ちはありますが、不可能だということであれば、ユーザーニーズにマッチした、今ユーザーさんが何をほしがっているのか要望の高いものをタイムリーでスピードアップした形で、できるだけJCSSに追加していただければ、こちらとしても、その市場を考えたときに認定事業者として手を挙げることができるというのが一つでございます。
それと、民間の標準物質をできるだけ公定標準とするような体制、スキームを早目に確立してほしいと考えております。先ほどの松本委員等々の話からもありましたように、JCSSだけではできない、それらを補うには民間の標準物質を何とか活用するという体制は必要だろうと思いますので、そこのところの早期の確立をお願いしたいと考えております。
それ以外に、JCSSは機器の校正等々という概念からいきますと、今JISに載っておりますような滴定用の標準液とかそういったものは、今のJCSSの制度にはなじまないだろうし、運用的にもなかなか難しいだろうというものに関して、トレーサビリティを確保できるようにしていただけるとこちらとしても安心して製造でき、使う側としても安心して使えるということなので、JCSS制度の中では運用困難なものを何とか吸い上げていただくような体制をつくっていただきたい。
それと最後に、これはメーカーからの要望なのですが、今はJISあるいは日本薬局方、あるいは水道法などで、分析方法が極端な場合に、それぞれが異なっております。使う標準物質も、その濃度あるいは調製方法に関してばらばらというのが一部で見うけられます。使う側からすれば、それにあったものがほしいという要望が当然出ますので、それらにあわせて、各試薬メーカーは標準液を調製しているのが現状です。
ですから、統一して、これが絶対ですよと言われるようなものをつくっていただき、それを試験方法としても統一していただくということは、こちらとしてはぜひお願いしたいと思っています。
もう一つ、POPsと書いてありますけれども、これは製造禁止あるいは輸入禁止、例えばPCBとかダイオキシンを含めての話なのですが、それらが国内でかなりの分析機関で残留分析されております。その分析をするときに、標準物質をどうやって手に入れるのという話になると、輸入に頼らざるを得ません。残念ながら注文してから物が入ってくるまで最低でも数週間から1カ月、長いときには数カ月かかるというのが現状です。製造できない、あるいは禁止になっています有害と言われるものに関して分析されるという場合が多々ありますので、そういったものの供給体制に関して法の中で手順を踏むということになると、分析される方も、供給する側も非常に手続、手間というのがかかって、分析者の方、ユーザーさんに対して御迷惑をかけるということもありますので、その辺を何か融通きくような体制をつくっていただきたいと考えております。以上で今後の計量法に対しての取り組みへの期待ということで、今回の報告を終わらせていただきます。
どうもありがとうございました。
○今井座長 三浦委員、どうもありがとうございました。
幾つか御指摘いただきました点、特にトレーサビリティの確保ですとか、分析方法の統一性ですとか、あるいは法律上の中での整合性の確保、いろいろな省庁にまたがることもあると思います。
社団法人日本分析機器工業会
○今井座長 時間の都合がございますし、内容的にかなり同一の議論ができるかと思いますので、恐れ入りますが、社団法人日本分析機器工業会環境技術委員会の委員長でもいらっしゃいますけれども、齋藤委員にプレゼンテーションをしていただいた上で、両方を含めてディスカッションに入りたいと思います。三浦委員、よろしいでしょうか。
それでは、齋藤委員、よろしくお願いいたします。
○齋藤委員 日本分析機器工業会の環境技術委員会の委員長をしております齋藤です。よろしくお願いします。
与えられたタイトルは分析機器メーカーから見た制度管理の重要性、今後の標準供給、国際整合性及び国内トレーサビリティ体制に期待することということで、これに関して簡単に説明させていただきます。
まず分析機器です。分析機器は、御承知のように、いろいろな分野で使用されているわけです。例えば研究開発。それから、品質管理あるいは品質保証――これは原料の純度ですとか中間体製品――、こういったものの製品検査。それから、環境計測、大気、水質、土壌、こういったものはいろいろ基準がありまして規制されておりますが、そういったものを測定する。それから、食品関係では残留農薬とか抗菌剤、食品添加物、いろいろなものが分析されているわけです。
実際にはどういった機器が用いられているかといいますと、ここによく使用されている機器を挙げておりますが、例えばガスクロマトグラフ。これは分離分析装置ですが、カラムと呼ばれるものを通して、そこで成分を分離して検出するというものです。
ガスクロマトグラフ質量分析装置、GC/MS。これはガスクロマトグラフから溶出した成分を、さらに質量分析にかけて質量スペクトルを取って定性を確実にしていく。ちなみに、このGC/MSというのは、ダイオキシン、これは高分解のGC/MSで測定するように規定されております。
それから、液体クロマトグラフ、LC。ガスクロの場合はガス化するもの、気化するものが対象になりますが、それ以外の液化合物を主に分析する装置です。同じように、MSを接続したもの。
それから、光を使った分析装置としては原子吸光分析装置。重金属等の原子を分析する。
それから、光の吸収を利用したものとして、各有機化合物等も含めて分析する装置。
それから、赤外分光。
それと、高周波プラズマ発光分析装置、ICP。これは発光を利用したもので、原子吸光ですと単元素ですが、多元素同時分析が可能になります。それから、MSを接続したもの。
それと水中の有機化合物を燃焼してCO2に変えてトータルの有機物を測定するTOC。
それから、X線を照射して出てくる蛍光X線を使って測定する蛍光X線分析装置、EDX。
こういったものが使われております。
そういった機器はどういった測定対象に使われているかといいますと、御承知のように、いろいろな規制がございます。例えば水道水。これは水道法によって水質基準が決められております。それから、環境水、排水、こういったものに含まれております、先ほどから出ておりますVOC、これは揮発性有機化合物の略ですが、そういった成分。それから、農薬、金属、こういったものを測定する装置としては、公定法として、ここに挙げますGC/MS、ICP−MS、LC、AA、UV、ICP、TOC、こういった機器を使うように指定されております。
同様に、土壌に含有する有機物質としてはICP、GC。シックハウス等の室内空気中の有害物質の分析にはGC/MS、LC、こういったものを使うようになっています。
それから、輸入野菜等に含まれます残留農薬といった分析にはGC、LC、GD/MS、UV。それと、工業製品に含有する有害物質、これは公定法にまだなっておりませんが、今、規格化されている最中ですが、この有害物質としては、ここに挙げた成分をICP、ICP−MS、GD/MS、EDX、AA、FT−IR、こういった機械を使うようになっております。
それでは、分析機器による計測というのは、皆さん御承知のように、何が、どんな物質がどれだけ入っているか、要は定性、定量分析を行うわけです。実際に分析機器による分析手順を見てみますと、例えば野菜に残留される農薬を分析しようとした場合は、そのままでは分析装置にかけられませんので、通常、試料を取って、それを一定の大きさに切って均一化して、そこに含まれる有害物質を抽出するために溶媒を加えて抽出して、それから、妨害成分を除くための精製操作をして、濃度が薄いものであれば濃縮をして、それで装置にかける。こういったプロセスを通常経て、分析で得られた信号から計量値を確定することになります。
実際にどのようにやっているかというのを簡単にガスクロマトグラフを使った場合の例で御紹介します。ガスクロマトグラフは、国内では年3000台ぐらいの需要があって、各分野に汎用的に使われている装置ですが、ここにありますように、これがガスクロマトグラフ本体ですが、試料導入部、カラムと呼ばれるここの部分で物を分離するわけですが、それから検出器。このカラムは、実際には最低は内径2mm、長さ30mといった細いキャピラリーの内壁にメチルシリコンとかポリエチレングリコールといったポリマーが薄くコーティングされていまして、そのポリマーと成分との相互作用によって溶出スピードが変わることを利用して物を分離していきます。
実際にはヘリウムとか窒素の不活性ガスをカラムに一定流量、要求しまして、溶液の場合であればマイクロシリンジを通して試料気化室に導入して、気化した成分をカラムの中へ導入して、それで分析する。
実際の装置はここにありますように、これが実際の装置ですが、この中にカラム槽、一定温度の中にカラムが入っておりまして、これが試料導入部でオートサンプラーが入っていて、これが制御部で、これがパソコンで、ここで実際、データ処理を行います。
実際に得られるデータはどういうものかといいますと、これが一例ですが、ここにあるような農薬を混合した成分のガスクロマトグラフで得られたデータですが、これが例えば1番diazinonですが、diazinonであるというのはどうやって見るか。それから、この農薬からどれくらいの濃度に含まれているかというものは、試料導入からピークと呼んでいますが、この頂上までの時間、保持時間、リテンションタイムと呼んでいますが、その一致によって定性をして、面積を使って定量を行います。
実際の実施による定性は、今申し上げましたように、得られたこういうデータ、クロマトグラムと呼んでいますが、このピーク、これが何の成分であるかというのは、標準試料を用意して、例えばdiazinonの一定濃度のものを用意して、これと同じ条件で分析します。そうすると、ピークが一つ得られる。それと、注入した時間からピークの頂上までが一致すれば、その成分だというような形で、同様に、このピークに対して見込まれる標準試料を用意して定性を行う。これがガスクロマトグラフの定性の仕方ですが、実際には、ここの位置に一致する成分は幾つもありますので、MSを使って、実際には、さらに同定を確定するという作業は行います。
実際のところの定量分析はどういうふうにやっているかといいますと、いろいろな手法がありますが、一番単純なケースとして、絶対検量線を使った方法を説明いたします。
まず、測定しようとする標準液、標準試料を用意します。この場合ですと、100ppmの濃度、0.01%ですね。その成分の濃度のものを一定条件で分析します。そうすると、こういうピークが得られて、その面積をカウントしますと、1000カウント。横軸にピーク面積。縦軸に、その成分の濃度を取る。そうすると、この標準試料によって一つの点が得られます。100ppmの成分で得られたピーク面積は1000カウントですから、この点が得られます。同様に、濃度の違うのを何点か得られまして、その点をプロットすることによって、いわゆる検量線が得られます。
そのようにしておいて、同じ条件で試料を分析しますと、このリテンションタイムが一致するところにピークが出てきます。そのピークの面積をカウントして、700カウントであれば、この検量線から、この濃度は70ppmであるという形でわかるわけです。ですから、この標準試料が基準になっているということです。今のように、定性、定量するわけですが、ガスクロにかかわらず、ほかの機器でも同じように標準試料を使って、検量線を使って定量するという形になります。
実際に分析値に影響を及ぼす要因として、どんなものか考えてみますと、分析操作。これはサンプリングとか抽出方法、こういった方法に誤りがあり、違いがあれば影響を受けます。
分析機器、それと標準物質です。分析機器の方は、例えば機器の差、こういったものは、今申し上げましたように、検量線を作成して定量を行いますので、カラムの違いとか機器の感度の違いというのは、標準試料による検量線によって校正される。
それから、分析条件の変動。例えばカラムが劣化してきたり、あるいは水素炎の燃焼条件が多少変わるとなると感度が変わりますから、それが検量線の変動になるということで影響を及ぼしますので、定期的に検量線を再度チェックするという機器の校正が必要になってくる。
それと、標準物質ですが、標準物質がメーカーによる違いですとか、自分で調整した濃度の違いですとか、そういったものによって分析値が影響を受けます。
それで、分析機器の校正ですが、今申し上げましたように、機器のところでは標準物質を使った、定期的に同一条件で機器を補正するといったことが精度管理上、非常に重要になります。ガスクロの場合では、今申し上げましたように、保持時間の補正、これは標準物質を利用してチェックをして、ずれていればそれを補正する。これはカラムの汚れとか劣化によって影響を受けますので。
同様に、検量線の方もカラムの汚れ、それによる成分の吸着、こういったものの影響を受けますので、そういった感度変化を補正するために検量線を再度チェック、引き直す、あるいは補正するといったことが必要になってきます。実際には、メーカーによる機器の違いですとか、機器の差、カラムの違い、こういったものは標準物質、同一のものを使うことによって校正されることになります。
実際に分析機器による分析値の信頼性の確保という観点で考えてみますと、今申し上げましたように、分析機器による測定のところでは、標準物質による校正によってある程度確保できます。
実際の前処理の部分、抽出とか精製は技術能力や操作能力によっても変わってくるわけで、例えば海底質中に何ppmの農薬が含まれている。そういったマトリックス上に規定の一定の値づけされた標準試料、組成標準物質を使うことによって、ここの操作がどの程度のものか、要は分析性、この方法に妥当性があるかどうか、あるいはどの程度の技能でこれが分析されているかということもチェックできる。
実際には、分析方法全体で考えてみますれば、測定手順をきっちり比較することが必要ですし、機器に対しても最低検出量がどのくらい、再現性がどのくらい、そういった比較も必要になってきます。
今申し上げましたように、標準物質の必要性は今さらに言うまでもないのですが、分析機器の校正には、やはり標準物質が必要です。それによって、分析値の信頼性が変わってくるということになります。信頼性を確保するには、トレーサブルな標準物質があった方が好ましいわけで、認証標準物質を使えば、さらにいいということになるわけです。
それから、前処理を含む分析方法、妥当性の確認、あるいは分析技能の確認、そういった目的には、この組成標準物質というものが有効になります。
再度あれですが、分析値の信頼性の確保で、分析操作手順の統一、これが前処理、抽出、こういった操作がきっちりと規格化、統一されていませんと、いわゆる分析値の同等性といいますか、そういったもので差が出てきます。当然、JIS化されているものもありますが、ISOとかIECといった規格もありまして、それに国際的に整合する、要は試験方法の規格、こういったものも非常に重要になってきます。
それから、機器による測定値の信頼性では、先ほど申し上げたように、標準物質による機器の校正。それから、同等性の確保にはトレーサビリティのある標準物質が必要ということです。
最後になりましたが、分析機器による計測・計量ということでは、今申し上げましたように、分析機器による精度管理には標準物質が不可欠である。実際には、分析機器で測定する規制の化学物質、化学標準物質、こういったものは、例えば水道水基準というのは50項目が規定されておりますし、目標管理項目として農薬は101種類挙げられておりますし、有害大気汚染では234、食品衛生法の残留農薬基準では246、これ以外にもいろんな規制がございます。こういった非常に多くの多岐にわたる規制化学物質がありますので、そういったものの化学標準物質の充実、これは供給体制を含めての話ですが、そういったものが望まれます。
それから、先ほどもお話ありましたように、試薬メーカーからだけでなく、いわゆるトレーサビリティのある標準物質の供給体制の充実が望まれますし、測定方法・試験方法の規格といったものの国際整合性、これはRoHS指令に関する有害物質の規制に関して試験方法の規格化が進んでおりますが、これには日本からもICPとEDX、蛍光X線を使った試験方法を提案して、IECの規格化にそれを取り入れるような方向で進んでおりますが、そういったような動きも今後、国際整合性の点では重要になってくるのではないかと思われます。
それと、分析機器の精度。これは当然、我々メーカーとしては努力しなければいけませんが、それと同時に、今申し上げましたようなトレーサブルな標準物質あるいは試験方法の国際整合性、こういったものも同時に必要になっていくというふうに考えられます。
以上です。
○今井座長 齋藤委員、どうもありがとうございました。
分析機器にかかわる具体的な検量線あるいは校正の方法について、どういうものが必要かということで御説明いただきました。先ほどの三浦委員のプレゼンテーションともあわせて御議論いただきたいのですけれども、何分時間が余りございません。
それで、私なりに整理させていただきますと、お二方の御説明の中には、標準物質は多岐にわたって、先端的な技術あるいは我々の安全、安心の面からもきちっとした整備計画が立てられて開発していかなければいけないのではないか、そのための整備計画をきちっとすべきではないかということが一つだったと思います。
それから、いろいろな分野にわたる分析、特に認証標準物質を使った分析あるいは校正ですけれども、その場合には値づけの方法等に関しまして国際的な整合性を保つべきではないかということと、それを国内において上手に取り入れていってルールをつくるとともに、どの分野でも使える明確な責任体制あるいは位置づけというのをきちんとしていかなければいけないんじゃないかという、そういう視点が強調されたように思っております。
そういう意味で、日本全体として、きちっとしたルールづくりと標準物質の整備計画、さらには、それの値に対するトレーサビリティの確保という意味での責任体制というものではないかと思います。
委員の方々から御意見をいただきたいと思います。どうぞお願いいたします。
本多委員、どうぞ。
○本多委員 もともと物理計測の方が主体なものですから、標準物質の関係は余りよく知らないんですが、お二人のお話を伺って大分イメージがつかめました。
先ほどの三浦委員の最後のところで、現行のJCSSでは運用困難な標準物質のトレーサビリティ体制の確保という表現を使われていたんですが、端的に言うと、今井座長がまとめられたようなことを言われていると考えてよろしいんでしょうか。
私のイメージですと、技術が進んでいないだけなので、体制の確保というのはちょっと違うのかなというイメージがあったものですから、「運用困難な」というのはどういうことなのか、もう少し具体的に説明いただけますでしょうか。
○今井座長 三浦委員、お願いいたします。
○三浦委員 今のJCSSは、基本的には計量法の中のトレーサビリティ体制の確立ということで、イメージとしては標準液という調製されたものの濃度保証をするということです。目的が機器の校正という大前提があるんですが、JISの中の先ほど言いました運用困難だというものは、例えば化学的に言うと、0.1モルパーリットル(mol/L)の塩酸のように、ある程度の濃度を規定した酸とかアルカリとかをさします。あるいは純物質として、そういった濃度を決めるための化学物質がNITEの認証標準という形で世の中に出てはおりますけれども、それが今のJCSSの体制の中で、計量法の中で運用できる物質として、法律の中のシステム体系の中に乗っかっていくかというと、機器の校正というのとちょっと意味合いが違いますので、それは別の観点から認証標準なりという形で認めていかないといけないだろうというのが前のワーキングでもございました。そのような方向性がされ、国としての標準ということでは重要な分野であると考えられます。今のところは残念ながら、先ほどちょっと言いましたように、0.1モルパーリットル(mol/L)の塩酸などは、JISに規定されている調製法の中で私ども試薬メーカーがそれ用にということでファクターを決めて独自に販売しているというのが現状です。
そこをトレーサビリティの取れた、どこかにつながるような濃度保証体制という形でできるということがあれば、もうちょっと幅が広がるし、それが全体の信頼性ということにつながっていくのかなというふうな考えで、先ほどの話は述べさせていただきました。
○今井座長 多分、一つの見方として、物理や電気の世界では、いつ、どこで、だれがやってもSIにつながるトレーサビリティが取れるという場合があると思いますけれども、標準物質の世界では、今もプレゼンテーションの中にありましたけれども、方法を統一しないといけないとか、準備の方法をきちっとそろえないといけないとか、そういう割と細かいところがあると思うんですね。
ですから、すぐにSI単位につながるということではなくて、複数の方法で、複数の機関が共通的な共同実験をして、それでほぼ信頼できる値を出して、それを標準値としましょうという見方があると思うんですね。そういう行き方のものもあってもいいんじゃないか。むしろ、そうせざるを得ない分野があるでしょうという見方もあると思います。
○本多委員 お尋ねしたかったのは、技術はあるのにできないでいるのか、技術も含めてできないのか、法律云々で対処できるのは技術のところじゃありませんので、そこの確認をしたかった。
○今井座長 両方あると思います。定義はこうだというので、それでスパッといく世界でないところがあると思います。
中野委員、どうぞ。
○中野委員 同じような趣旨の質問なんですが、お話の中で1000を超える標準物質があるというお話があって、この1000の標準物質を、例えば産総研がやっているように非常に高度な分析方法できっちりSIにトレーサブルにしていくと、年間40やれても25年計画でとても世の中は回っていかないという話があります。
そのときに、後半で、先ほどのお話であるように、いろんなスキームがあって、標準物質を公定標準とする、民間が出しているのを公定標準とするようなスキームが必要ですねという話につながっていくのかなと思うのですが、非常に意味のあるお話だと思います。
メリットはたくさんあると思うんですけれども、一方において、例えばデメリットというのが何か考えられないかなというのが質問です。例えば、とりあえず民間が出しているものを、ある物質について、これが標準だよねと決めた後で、非常に高精度な測定法ではかり直すと値がずれているということが起こった場合に、そのデメリットということは考えられるのかどうか、ちょっとお聞きしたいんです。
○三浦委員 特にデメリットというのかはわかりませんが、それはあると思います。例えばこの食品の中に何がどれだけ入っているか、それも有害物質として分析する場合にはデメリットというのは余り考えられないんですが、それ以外に、例えば業界が独自で、製品試験規格の中に試験方法を設けて、こういう方法で、これを標準にして使いなさいというものがあって、それを例えば試薬メーカーが独自に出していると、それを使わざるを得ない。その標準物質はメーカーが独自の方法で保証した値で販売しておりますので、使われる方はそれを信用して自分らの製品試験に使うことになります。
先ほど言われましたように、何か絶対的な方法でてはかられたときに値が変わったときに、製品としての値が今まではこうだったのに、実は違うんじゃないかという話になったときに、それをどう収拾していくのか。それをデメリットと言うかどうかというのは私は判断できないんですが、そういう場合が出てくる可能性はあると思います。
○今井座長 ほかにいかがでしょうか。
芝田委員。
○芝田委員 三浦さんに御質問で、最後に標準物質の輸入のお話をされていたと思うんですが、例えば海外の標準物質を使う場合に、注文してから入ってくるのに時間がかかるというお話でしたけれども、それ以外に不都合な点というのはあるんでしょうか。例えば保存がきくものなら、あらかじめ大量に注文しておけばいいと思うんですが。
要するに、何でもかんでも標準物質を国内ですべて関係して開発する必要があるのかなと。海外でいいものがあれば、それを利用するということは考えられないかなと素人的な質問なんですが。
○今井座長 ごもっともな御意見だと思います。三浦委員、とりあえずお願いいたします。
○三浦委員 おっしゃるとおり、ごもっともだと思います。
ただ、たくさん出るというのがわかっていれば、それは在庫で対応できるんですが、何がほしいというのは実はわからなくて、その場に応じてという話になりますと、各メーカーのリスクにおいて物を在庫するということは、ある程度の範囲でしかできなくなりますので、そこには注文があったときにメーカーに発注するということになります。それは必要な手続を踏んで購入する、日本に入ってくるということになりますので、そこのところは御理解いただきたいと思います。
○今井座長 御意見ごもっともだと思いますけれども、最近のいろいろな危険物に関しても、分析方法ですとか、それをおろそかにしていたために問題が生じたという、後になってみないとわからないことも出てくるわけで、あらかじめそういうことが予測できれば、ストックとか技術の前倒しの蓄積というのはあると思うんですけれども、広い分野にわたって、どれを優先するか、プライオリティの問題もいろいろあると思うんですね。その辺も国の施策として考えていくべき課題ではないかと思います。
今のお答えでよろしいですか、とりあえず。
○芝田委員 入手の時期の問題が大きいということだと理解しております。
○今井座長 その問題意識のこともあると思います。奉仕ではありませんので、経済性の問題とか政策の問題とか、いろいろ絡んでくると思います。ですから、どう総合的にそういうことを見越していくかということにつながってくるんじゃないかと思います。
最後の御質問にさせていただきます。河村委員、お願いいたします。
○河村委員 また基本的なことを伺わせてください。
1000を超える標準物質というのは、JCSSのシステム以外で1000を超える標準物質が販売されているとおっしゃったんだと思うんですが、ニーズがあるから販売されているんだと思うんですが、一方で、JCSS認定事業者としての供給のところで、採算性というのが課題で上がっていまして、CERIさんのところにも採算等の理由から登録事業者としての担い手がいないというお話があって、私、わからないのは、これはニーズがあるものであれば採算が取れるという意味なのか、それともニーズとはちょっと別に、認定事業者となること自体に特別の事業者に負担を強いる条件みたいなものがあるんでしょうか。
○今井座長 それはいかがですか、お二方の委員の方。
○三浦委員 理由は大きく二つあると思うんですよ。それは、JCSSと同じものを販売していたとしても、本当に極端な話の例でいきますと、JCSSじゃなくて、今メーカーがインハウスで販売しているものは、例えば5000円とか3000円という値段で世の中に供給されている、それがJCSSということで国家計量に、JCSSの制度の中でトレーサビリティが取れたということで、その値段でユーザーさんには供給できない、それは維持ということと関係があるとは思うんですけれども、制度の維持ということで。
それで、逆に言うと、1万5000円とか2万円という話になったときに、ユーザーさんがそこまでの精度を要求するか、あるいはそれだけの高いものとしても購入していただけるかどうかということを考えたときの生産本数あるいは販売本数と価格とのバランスということが一つあると思います。そこまでユーザーさんは要求していない。そこまでも販売できる本数がない。本数的にはあわないだろうと考えられる場合が一つあると思います。それが現実だと思います。
もう一つは、先ほど松本委員がちょっと言いましたけれども、機器が多成分を同時にできるという分析方法にかなりシフトしておりまして、JCSSは基本的には1成分1認証という形になっていますので、一つ一つの成分に関してはさほど需要がない。混合にしたときに初めてユーザーが必要な需要が出てくるとしたときに、JCSSでは10個のものが認定されていても、使うのは、それを全部まぜた1個でいいというときには、その10個のものは市場ニーズがないというふうに、考えざるを得ない。
そのときに、先ほど言いましたように、混合というイメージを出して、混合標準液の供給という制度をつくっていただければ、そこには新たなニーズが発生するかなと考えております。
こちらとしては、その二つで、実際のところ、JCSSにあってもなかなかメーカーが手を挙げられないという場合が出てくるというふうに認識しています。
○今井座長 よろしいですか。
今の説明にもありましたし、松本委員のプレゼンテーションの中にもありましたけれども、標準物質の分野で供給体制はどうあるべきかということは、もうすぐ出ると思いますけれども、知的基盤整備特別委員会の中に標準物質供給のあり方というワーキンググループがつくられまして、その中で、純物質だけではなくて、まぜたものの供給体制も考えるべきではないかということも提言されておりますので、そういう部分で少しずつ解決されていくと思います。
それから、1000とかいう話が出てきましたけれども、次回以降、議論のためには本当に値が出ていないと役に立たない認証標準物質というのと、一般の管理用に使う標準物質と区別して議論しないといけないと思います。そうしますと、階層を使って、本当にトップのところの値づけをしなければいけないものと、管理用にある機関が社内標準として通常管理していれば済むものと両方あると思いますが、その辺も含めて今後、議論したいと思います。
その他
○今井座長 最後の議題に入りますけれども、今後の進め方ということで事務局から御説明をお願いいたします。
○吉田知的基盤課長 資料6でございます。大変お疲れのところ申しわけございませんが、第3回は10月6日でございまして、プレゼンテーションされる方はごらんの方々でございます。
それから、裏のページになりますけれども、第4回は10月26日でございまして、プレゼンテーションされる方はごらんのとおりでございます。
また、5、6、7回は、まだ日程調整中でございますけれども、いずれも11月中に予定をさせていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
閉会
○今井座長 本日は長時間、どうもありがとうございました。次回、またよろしくお願いいたします。
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