1.日時:平成17年10月26日(水) 13:30〜16:00
2.場所:経済産業省別館10階1028会議室
3.出席者:今井座長、伊藤委員、梶原委員、河村委員、久保田委員、
桑委員、齋藤委員、杉山委員、瀬田委員、田畑委員、
中野委員、畠山委員、本多委員、松本委員(四角目代理)、
三浦委員、望月委員、山領委員
4.議題:
議題1 計量制度検討小委員会第3WG第2、3回会合議事録に
ついて
議題2 関係者ヒアリング
○ 研究機関等
・ 独立行政法人国立環境研究所
柴田 康行 化学環境研究領域長
・ 日本臨床検査標準協議会
藤橋 和夫 事務局長
・ 国立医薬品食品衛生研究所
松田 りえ子 食品部第四室長
・ 独立行政法人食品総合研究所
安井 明美 分析科学部長
議題3 その他
5.議事内容
○吉田課長 きょうは御多忙のところ、大変ありがとうございます。
定刻になりましたので、第4回目の第3ワーキンググループを開催させていただきます。
それでは、以降の議事進行は、今井座長にお願いをいたします。
○今井座長 これまで前回、3回までに標準をつくる立場、あるいは認定する立場ということで、いろいろ御紹介いただいたわけでございます。
これまでのところを簡単に整理いたしますと、基本となりますJCSSを一層普及していくためには、3つぐらいの観点で整理できるかなと思っております。
1つはトレーサビリティそのものの原点となる国家計量標準が、社会のニーズに対して適切に整理されているかどうか。そしてまたそれが海外の標準との整合性等が担保できる体制になっているかどうかということ。
それから、2番目には、非常に多くの種類の計量標準を民間の事業者さん、認定事業者さんと呼んでいますけれども、そこで組み立てられるような場合に、その組み立てた、あるいは実際に保証する標準の適合性をどうやって判断してJCSSの仕組みに取り入れていくかという問題点。
それから、3番目には、必ずしも精度の高い要求がない場合でも、実際にそういうところの要求がある場合には、どういう精度管理の方法をとっていくか、それを広めていくかというようなことが問題点として出されたかと思います。
そして4回目の本日でございますけれども、今までも議論されておりますけれども、特に本日は、焦点を環境規制ですとか、食品の安全、あるいは臨床検査分野など最近、急速に広がっております計量標準の分野の御専門の方々からプレゼンテーションをしていただく、4名の方々にお願いしております。特に研究機関あるいは組織から見た場合、今後、どういう新規の分野に標準JISが必要になるか、そして国際整合性、あるいは国内のトレーサビリティ体系をどうやってとっていくかというようなことが中心になるかと思います。
前回同様、この場での審議内容は原則として公開となりますので、その点、御承知おきいただきたいと思います。
計量制度検討小委員会第3ワーキンググループ第2、3回会合議事録について
○今井座長 それでは、議事次第に従いまして議事に入らせていただきます。
最初に、前回もお願い申し上げましたけれども、前々回第2回と前回第3回の議事録の確認をお願いしたいと存じます。
よろしいでしょうか。
それでは、第2回及び第3回の議事録、資料1及び2を承認ということにさせていただきます。
独立行政法人国立環境研究所 柴田 康行 化学環境研究領域長
○今井座長 それでは、議事次第の議題2、関係者ヒアリングということで、4人の方々からプレゼンテーションをお願いしたいと存じます。
まず最初に、独立行政法人国立環境研究所化学環境研究領域の領域長でいらっしゃいます柴田康行様からお願いいたします。
○柴田領域長 御紹介にあずかりました国立環境研究所の柴田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
私どもの研究所の、特に研究活動、それから、少し環境省の支援等もしております関係で、関連するところで計量標準とか、あるいは国際整合性の問題、あるいは標準仕様に対する要望、さらには我々自身の少し活動と関係するところの御紹介という形で今回、話をさせていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
我々がいわゆる環境研究を進める上で、大きく分けますと、いわゆる汚染に関連するという観点からの研究、それから、もう少し地球環境という大きな枠組に関していろんなことを知っていこうという観点からの計測というものがあるかと思います。もちろん後者の方が、ある種人間活動が環境に与える影響というものの視点があるわけですけれども、より深く、例えば環境そのものを知ることで我々がどこまでやってよいのか、あるいはこんなことをすると、こんなことが起こるのではないかということを知っていくという形で、汚染という問題からは多少距離があるような研究というものを私どもの方としては進めております。
そういう形でながめてみますと、いわゆる公害型汚染型の問題というと、やはり発生源の問題があって、発生源から、環境中のどのような媒体を通じながら、どのように動いていって、最終的には人あるいは野生生物にどのような影響を与えるかということを考えつつ分析をしていくという形になりますので、個々の媒体中の存在の濃度を知るというだけではなくて、やはり環境中の動きをそこから読み取っていく、あるいは環境中でどのように変換されていくのかということも見ていく必要があるということになります。
最終的にそういったものから暴露の評価を行い、その一方で毒性の情報を集めながらリスクの評価を行っていって、適切な対応をとっていくという流れになるかと思うのですけれども、そういう中で、我々計測をする者にとっては、最初の出発点としてなるべく正確な数字を出したい。それは別の言い方をすれば、環境という非常に多様な状況の中で実際に物質がどのように存在しているか。なるべく正確に把握するということが大事になりまして、どうしても多数の資料を、しかも非常に多くの分析機関等にまたがって分析をしながらそのデータを集めていって、最終的に環境を見ていこうという話になります。
そこには当然のことながら、お互いの精度管理等に関わる要望というのが非常に大きなものとなるという形になると思います。
一方、地球環境の話になりますと、これはどちらかというと、例えば遠隔計測といったような形になるケースが多くて、化学分析とは少し外れてくるケースもあるかと思うのですけれども、長期的なトレンドを場所を定めて追いかけていくという観点がかなり大きな主体となります。
もちろん一方では、たくさんの面的、時間空間的に多くの点を集めて実態を把握していくという観点もございますので、やはり多数の試料を測定するという観点もあるのですけれども、必ずしも非常にたくさんの機関が行うというよりは、比較的少数精鋭型、集中型の観測になるケースが多いかなと思っております。
主に今日、公害型の話をさせていただきますけれども、最後に、地球環境型の場合にも、当然環境の分析の精度をどのように維持するかというような話もございますので、ごく簡単に研究所の紹介をさせていただければと思います。
今、申し上げたように、一般的な汚染に関連して、我々の普通に扱っている環境分析ですと、どうしても多様な媒体へ適用しなければいけない。多数の試料を測定しなければいけないというような問題が出てまいります。同じ1つの化学物質についても、大気の試料中からの分析もあれは、水、土壌、底質、生物といった具合にたくさんの異なる媒体から精度よく分析をしていくということが求められるという最大の問題がございます。
それから対象物質も非常に多岐にわたっておりまして、それこそBOD、CODの世界から、さまざまな揮発性の物質、あるいは多環芳香族、さらにはダイオキシン類をはじめとするさまざまな有機元素系の加工物といったものがどんどん入ってくる。また一方では重金属もいろいろ入っているという状況であり、対象は問題になれば、またそれに対して新しい分析法をつくって、また環境中の存在を調べていかなければいけないというような状況がございます。
そういった状況の中で、最近の趨勢としては、やはりGC/MSあるいはLC/MS、特に有機物についてはGC/MS、LC/MSを使って必要分析の原理を基本としながら一斉に見ていこうという考え方が今、どんどん主流になってきていて、これは同位体が使えるということと非常に重要なからみがあると考えています。要するに同位体でラベルした物質をサロゲートとして加えて、それでもっていろいろ回収率等の補正をしながら正確
な定量ができるようになってきたというところが大変大きなポイントだと思っていまして、
必要分析を主流とするという考え方は当面もう動かないのかなという感覚で仕事を進めているところでございます。
もう一方で、実際の環境中のそういう物質の濃度というのは当然時間的、空間的に非常に変動が大きいケースがございます。特に大気の場合、あるいは水の場合、なかなかたった1回、1点で取ってそれで全体を見るというのはできないというところがあって、どうしても面的、空間的な広がりが一方でデータとして必要になってくるわけですけれども、なるべくそれを少ないデータでカバーしようとすると、ある種平均化していく、あるいは濃縮していくようなタイプのサンプリングを行って、時間的に平均化されたようなものを見ていきたいという願望が出てまいります。
当然大気の場合でも、例えば24時間ずっとサンプリングを続けて、捕集材に集まったものを最終的に1日の平均値として見ていく。あるいはそれをさらに1週間といった単位でやっていくようなこともあるわけでございますけれども、そういうふうに平均型、蓄積型のサンプリングと組み合わせていくというのが1つの考え方になります。
しかしながら、一方で物質が流れてくることを見たい、物質の環境中の挙動を見たいというふうになると、今度は逆に時間的に非常に短い時間間隔でのデータがほしいということもありまして、先ほどちらっとお見せしました大気中のCO2
濃度の変遷などについては、実はもう1日の中の何時間という単位で変動を追いかける、自動計測装置の方でどんどん追いかけるという時代になってきておりまして、それとともに、大陸から、ある場所から気団が来ると、その中のCO2
濃度が高い、低いという議論をするような状況になってきております。
ちょっとしばらく環境基準に関連して少し測定項目のことを書きました。例えば大気汚染に関するいろんな環境基準に関わる分析法といいますと、もう既に指定された方法があり、こういった場合には、精度管理といいましても、どちらかというと測定装置そのものが市販されているケースが多いので、そういったものの校正をきちんとやる、あるいは装置間の比較をきちんとやっていくというようなところが中心になってくるかと思います。
その一方で、例えばこれは水の場合ですと、いろんな環境基準があって、測定方法が定められておりますけれども、水の場合には、今度は結構JISの基準に準ずるというケースが非常に多くなってきております。これに対しまして、また最近ですと、PRTR法などもできまして、さまざまな物質に対する分析の必要性が出てまいっておりますけれども、これらについては、今のようにじっくりと分析法を定めたものを使って、既に存在しているような分析法を使う、あるいは既に確立された装置を使うといわけになかなかまいりません。そのあたりにつきましては、どんどん分析法をつくりながら実際の環境中の様子を調べていくということを毎年のように続けているわけですけれども、これらについて多分精度管理のところが一番大きい問題になってきているのだろうと思っております。
これはすごく単純なポンチ絵で恐縮ですけれども、環境中から環境試料をまず採取をいたします。その取った試料をまず分析機関まで運搬し、分析までしばらく保管をしていく、そのあと、一定の前処理過程を経て、目的とする物質をきちんと集めた上で妨害成分を除いた上で、最終的に測定を行い、そのデータを報告するという流れになるわけですけれども、当然のことながら、その過程ではさまざまなところでいろんなエラーが入り得るということになります。我々から見たら、実は相変わらず残された最大の問題は、環境からいかに代表性のある試料を取るかというところが相変わらず残っておりまして、これはなかなか精度管理とかマニュアル化というわけにいかないのですけれども、実はここが大変重要な問題であり続けるのだろうと思っております。
それ以後の期間につきましては、実はいろんな形で標準添加をしていく、あるいはいわゆるサロゲートを取る、あるいはブランクを取るというような形でもって、途中の段階での変質とか、追加とかいったものを追いかけることが基本的にはできます。途中でいろんな人的なミスも入り得るので、そのあたりはきちんと見ていく必要があるわけですけれども、いずれにしても、そのあたりは比較的マニュアル化して作業しやすい、また、いろんなサロゲートを使ったりしやすいというふうに思います。
また、標準試料を使うことで一連の流れを確認するということもできると思いますし、また、環境の場合には、あるときの、ある地点での試料、データというのは実はなかなか確認のしようがないわけでありますけれども、例えば生物試料とか土壌試料のようなものであれば、その試料を長期的に低温下で保存することで、あとでさかのぼってもう一度調べることもできるという意味で、試料の長期保存というのも恐らくデータの信頼性の確保の上では非常に重要な役割を果たすのだろうと考えています。ただ、最後は人間がやることですので、何かミスをすれば、すべての作業が無駄になってしまうということもあり得ますので、確認をきちんとやるということは重要であるということになります。
今、環境省の方でやられていますPOPsのモニタリングを例に、どんな精度管理を現在やられているかというのを御紹介を簡単にしたいと思います。
残留性有機汚染物質、いわゆるPOPsと呼ばれている12種類の物質が同定されておりますけれども、これは2001年に締結されましたストックホルム条約に対応しまして、実際に国内でいろいろモニタリングが進められているものであります。その条約の16条に、条約の有効性の評価のために環境監視のデータを使おうというのがございまして、それに対応する形で、日本の場合には、これまで行われていた黒本調査を一部模様変えをしまして、今、POPs条約に対応した調査として、大気、水、底質及び生物試料の中の分析を進めています。また昨年度から人の試料についての分析も始まっています。
POPs条約においては、今、申し上げたように、まず条約の有効性を評価したいということで、現在からスタートして、将来にわたって長期的にトレンドを見ていく必要がございます。そうなると、今までのECDの方法では、実はほとんどの物質は日本においてはNDに近いところになってきてしまっているのですけれども、今後、例えば10年、20年継続するにあたって、最初のNDではどうにもならないだろうということで、平成14年に分析法の改革を行いまして、ダイオキシン等と同様とハイリゾリューションのマスとGCを組み合わせた方法で高感度にさまざまなPOPs化合物を計っていこうという体制に変わりました。現在、そういう体制がとられています。
POPs、ここにあげられた9種類の農薬類のほかに、PCBとダイオキシン、フラン類があるわけですけれども、こうした有機元素法の一斉分析法が今現在使われております。
例えば大気の場合ですと、ダイオキシンの普通のサンプラーですと、石英のフィルタにポリウレタンフォームを組み合わせまして、それぞれ粒子状及びガス状の成分を取る、捕集するという形になりますけれども、一部のPOPs、例えばHCBなどは非常に揮発性が高いためにポリウレタンフォームではつかまらないということで、その後ろに現在は活性炭素繊維のフェルト、ACFをさらにつけるという形になっています。High
volumeサンプラーで1日700L/min で24時間で1000m3を取る。あるいは Middle volume
といい方を日本ではよく通称でしておりますけれども、その7分の1の100L/minのスピードで1週間かけて1000m3を引くという取り方でもって比較的平均的な濃度を出そうという試みが現在されております。
少し様子をごらんいただけますでしょうか。一番目の左側の写真にあります上の白い部分が石英フィルタであります。ここで主に粒子状の物質がトラップされるという形になります。そこを通過したものが、その後ろにあります右側のところにちょっと写真がございますけれども、白い部分がポリウレタンフォームでありまして、そこで多くのガス状成分がトラップされますけれども、一部の揮発性の高いものは、そのパフの間に入っている黒い部分、これが活性炭素繊維のフィルタでありますが、この部分にさらに吸着されて捕集されるという構造になっております。
こうやって捕集したものを実験室に持ち帰って抽出して、Clean-upを行った上でGC/MSで測定をするということになるのですけれども、その過程でいろいろな誤差要因が入ってくる。それを抑えるためにいろいろなことをやっております。例えば最初に捕集材についてはきちんともちろんブランクを確認して、なるべくブランクを下げるというのは当然でありますけれども、いわゆるトラベルブランクというものを用意して、捕集地まで捕集材を持っていって、開けるけれども、捕集はせずにそのまま持ち帰って、そういう運搬、輸送、あるいは保管の過程で余分なブランクが入ってこないかどうか確認するということもやられています。
それから一般的には13Cラベルのサロゲートを加えることで、その後の抽出から Clean-up
の過程で失われてしまうものがないかどうかを確認しつつ、それを補正して最終的な結果の精度を確保するということが一般的にやられています。
また、最後に濃縮して打ち込む過程でも、シリンジスパイクを加えて打ち込み量に関する補正を行うということでデータの信頼性を確保しようというのが一般的な流れになっております。
もう少しそれを詳しく書いたのがこの図ですけれども、例えば最初の捕集材のところにつ
いては、どうしても捕集材の中にコンタミが入るおそれがあるというので、Clean-upをきちんとしながら、捕集の確認をするためにトラベルブランクを用意する。ブランクを確認するということを行っていますし、逆にさっき申し上げたように、物質によっては破過してしまうという問題もあります。それについては、いろんなサロゲートを最初の捕集前に加えて、そのサロゲートの回収率から一応確認をしようという流れになっております。当然実験としては、標準添加をして実際にそれがどこにいくかということを確認するような予備実験も行われていますけれども、実際に環境中といいますと、例えば温度条件1つにしても、北海道から沖縄まで随分温度条件、オフィスの条件も違いますので、どっかの実験室でやった結果で全部を確認するというのはなかなか難しいという問題もあって、現実にはこういうむしろサロゲートを加えていくという方法がいろんなことを確認する意味で重要な方法になっているというところになります。
それ以外にもいろんな Clean-upの過程で Contamination
等が入ってこないかどうかを確認する。あるいは逆になくなってしまうかをどうか確認するために、いろんなことをやりながら、最終的に分析結果の各精度を確保していこうという流れになるかと思います。
計算方法については、基本的には13Cラベルのサロゲートを加えて、それと実際のネイティブの比をとってずっと確認をしていくというやり方がありますので、基本的にはいわ
ゆる同位体比を測定しながら、比率としての測定結果という形で出される形になります。
濃度そのものは、別につくった検量線から標準的に計算をして出していくという形になりますので、直接その途中で今、言ったように途中の回収率の問題ですとか、最後に濃縮してつくられた融液の容量が少しあいまいであるというふうなところについては、全部比でもって補正をしているという形の考え方になっております。
これはよく使われています測定質量数でありますけれども、それから、今申し上げたサロゲートについては、現在、POPsに関しては環境省はこれだけのものを加えて、ほとんどのものについては13Cラベルのサロゲートが現在、市販されておりますので、それを加えて回収率の補正をしていくという形になります。
それからあと分析法としては、いろいろ前処理の条件ですとか、途中のいろんなところの条件を決めて、最終的にGC/MSの条件なども決めて、さらに測定イオンなども、確認イオンと、それから定量イオンと別々に取って、確認をしていきながら定量していくという形でもって測定を行うというのが全体的な流れになっているというところでございます。
基本的にこれだけのことをやって、測定をして、その結果を評価していくわけですけれども、もう1つ大事なことは、当然検出下限のどこまでもてるのかということを考えなければいけない。それは当然、環境中にある物質濃度と対応する形で検出下限を設定する必要があって、それは研究全体の分析法のデザインとからむわけですけれども、検出下限の設定については、これも伝統的な考え方として、測定結果のばらつきをもとに、いわゆるMethod
Detection Limitも計算していく。t分布を仮定しながら計算をしていく。それからそれをもとに、さらにMethod
Quantification
Limitを確定して、それ以下の数字については括弧書きで出していく。MDL以下の数字についてはNDとして出していくというような形での全体のスキームができあがってはおります。
こういう形で、まず取られたサンプルについては、それ以後の処理については相当細かいところまできちんと評価ができるという体制が現在できあがってきているのかなと思っておりますけれども、先ほども申し上げたように、最初に取った試料というのが一般環境中の状況をどこまで代表しているのだろうかというところについては多分永遠の課題として残るのかなという印象を持っております。
そのあたりについて、それから特に最初の抽出部分につきましても、これはなかなか評価が非常に難しいところであります。いわゆる標準添加で、あるいはサロゲートを加えて抽出を行っても、もともとマトリックスの中に入ってなかったもの、あとからつけ加えたものの抽出率が例えば100%だとしても、もともと試料に含まれたものが本当に出ているかどうかということはどうしても評価しきれないところがございますので、そのところについては、多分今後もずっと課題としては残り続けるのかなと思っていまして、このあたりについては特にいわゆる標準試料で保証値がついているものというものが大変重要な役割を持つのだろうと思っています。
ちょっとこんな流れの中で、私どもの研究所の方でもこれまで関連する活動をしておりますので、以下、ちょっと簡単に御紹介させていただきたいと思うのですけれども、国立環境研究所の方では、これまで二十数年にわたりまして、いわゆる精度管理のための幾つかの仕事をしております。もちろん分析法の開発というものもやっておりますし、その開発のサポートもしております。また、いろんな地環研等からの研修を受け入れてトレーニングするようなこともやっていますし、いろんな委員会に関与するということもしているのですが、それに加えまして、ここの2番目にありますように、我々は環境標準試料という呼び方をずっとしておりましたけれども、二十数年にわたって、環境中の代表的と思えるような媒体について、その均質化した試料をつくった上で、その中の特定の元素、あるいは汚染物質について濃度、保証値を測定して頒布するというような作業を行ってまいりました。
結構人気があってなくなってしまったものも多くて、現在、頒布を続けているのが1、3、8、9、10、11、12、13、18、20、27番というふうになっています。ほかのものは実は売り切れてしまって現在なくなってしまっているという状況なんですけれども、最初の10サンプル、1番から10番までにつきましては、実はいろんな試料中の重金属濃度、元素濃度を保証するという形での保証値を出して使っていただくというものでございました。特に自動車の排出粒子ですとか、あるいはお米の中のカドミの問題ですとか、そういった分析のための標準試料もつくっております。また、毛髪中の重金属の測定のための試料などもつくっておりましたけれども、毛髪についてはちょっと売れ行きがよくてなくなってしまい、13番でもう一度頭髪試料をつくり直しておりまして、こちらの方は重金属関係に加えましてメチル水銀の保証値もつけるという形にしております。
11番以降は、実はいわゆる総濃度だけではなくて、特定の化学形態なものについての保証値を出す。あるいは有機汚染物質についての保証値を出すという形で現在続けておりまして、例えば有機スズ関係が11番、12番。13番はメチル水銀、18番は一般的なヒトの尿中に海産生物由来できますいろんな有機ヒ素加工物についての保証値をつけるというものであります。
22番はちょっと特殊でございますけれども、あと27番などで食品に関する保証値の策定作業も、これはほかの研究機関、放射線医学総合研究所との共同研究という形で行われたものでございますけれども、こんなものも作っているというところでございます。
環境研究にとっては非常に大事なものがほかにもございますので、必要に応じて、いろいろなものをこれからも作り続けていきたいと考えているところでございます。
それからもう1つ、環境分析にとっては、あるときに、ある場所で取った試料というもののデータを後で確認するというのは大変難しいわけでありますけれども、そういったモニタリングに使った試料を長期的に保存しておくことができれば、後でまた過去にさかのぼって測定をすることで、1つは昔のデータの確認ができますし、また、あるいは昔、見逃していたもので新たに見つかったものがあれば、それをさかのぼって調べることで、その汚染がいつごろから始まってきたのかということを明らかにすることもできます。
そんなことで、環境試料の保存というものをモニタリングに合わせて進めてきているのですけれども、1979年からマイナス20度の冷凍室を使って保存していたのですけれども、新しく予算が認められて、2004年に環境スペシメンバンク、環境試料のタイムカプセル化事業という形でもって試料の保存の大きな建物をつくることができました。左側の写真がその建物の外観でありまして、主力は右側の写真にあるような液体窒素の保管容器、今、14台ありまして、ことしのうちにあと5台追加の予定ですけれども、これとあとマイナス60度の冷凍室、さらにマイナス80度のフリーザーで試料を保存するという体制が現在できております。
こういった環境試料の保管施設ですけれども、まだ大きな規模のものは世界的にも少なくて、アメリカの場合には、いわゆるNISTがもう80年代の半ばからかなり大がかりな体制で液体窒素の保管タンク使った施設を動かしておりました。NISTの本部の一角に保存施設、スペシメンバンクの施設があったのですけれども、2001年にチャールストンという場所に、もう1つ場所のホリングス海洋研究所という海洋関係の研究機関の1つとして、この試料の保存施設が新たに追加されまして、こちらの方で現在、特に海洋生物に関する試料保存を続けております。
一方ドイツの方も、やはり80年代の半ばから、アメリカと協力研究のような形でずっと環境試料の保存が行われておりまして、ドイツの場合には、人試料はミュンスター大学で、それから環境試料の方は、最初、ユーリッヒ中央研究所の方に保管されておりましたけれども、最近はフラウンホファー研究所というところに一括して移されて、そちらの方で収集保管が継続されております。
国環研の方は、先ほど申し上げたように、79年からマイナス20度の部屋で保存しておりましたけれども、2004年からようやくドイツとかアメリカ並みの施設を持てるようになったという状況でございます。
現在やっておりますのは、日本の沿岸のいろんな場所から、特に沿岸のモニタリングということを中心に置きまして、二枚貝を集めてきてそれを保管する。それから東京湾について特に集中的に観測をしようということで魚類や底質を集めております。また、何カ所かの場所を決めて、大気粉じんとか母乳などの試料も保存しております。
それからタイムカプセル事業の中では、もう1つ、いわゆる環境汚染というのとはちょっと別な視点になりますけれども、絶滅危惧種の細胞や遺伝子を保存しておいて、将来、技術が発達したときに、昔の生物を復活させることができるようにしようというプログラムも動いております。
やっていることを簡単に御説明しますと、例えば二枚貝やエイの場合には、それを現場で最初に凍結いたします。凍結して、そのまま凍結状態で研究所に持ち帰って、二度と解凍しない状態で凍結のまま粉砕をしていって、最終的には数十ミクロン単位の非常に小さい粉に変えて、その凍った均質化した粉をびん詰めにした状態で液体窒素の上部に保管するという流れになります。
なぜこんなことをやっているかというと、液体窒素の保管ができるということで、単に汚染物質を保存するだけではなくて、汚染の暴露によって生体中に引き起こされたさまざまな変化、例えば特定の遺伝子の発現ですとか、あるいはタンパク質の誘導ですとか、そういうものまで基本的に保存ができるという能力を我々が持ったわけでありますけれども、そうしますと、逆にサンプリングのときから、それをちゃんと保管するようなサンプリングとか途中の処理をしなければ、保管しておいても意味がないということになります。従来のように取ったものをとりあえず宅急便で送って、何日かたってから普通に室温で解凍して保存作業をするようなことをしてしまいますと酵素が誘導されていろんなものがみんな壊れてしまいますので、今、言ったように遺伝子の発現まで記憶できるようにということで、現場ですぐに凍結したら二度と解凍しない状態で処置をしていくという流れになっています。
それから、そういったものの均質性を確認するために、粒径分布を出したり、元素分布を調べて均質性を確認しながら保存をします。また、さらに作業の過程で汚染をつけ加えてしまっては何にもなりませんので、使っているものについていろんなものを確認しながら調べていく。さらに最終的には、ときどきこの試料の処理施設の中で超純水を凍らせて、それを粉砕して、それをまた調べながら保存しておくことで、将来、何か新しい汚染物質の問題が生じたときに、それが処理過程でつけ加わったものではないということが確認できるように、そういう試料の保存というものを行っているということでございます。
それから、これは今、言っているのはどちらかというと将来を目指した研究目的という形で進めておりますけれども、もう1つ、私どもの研究所に現在、保管されているものの中に環境省の調査試料がございます。先ほど申し上げた黒本調査というのが1978年から現在に至るまで環境省ずっと続けてきているわけです。特にいろんな日本の沿岸のあちこちで、いろんな生物試料を取ってきて、その中のPCB等を含めて、いろんな化合物の濃度を毎年報告しておりますけれども、その分析のために集めた試料の一部が実はずっと保管されております。78年から92年まで当初、私どもの研究所に保管されておりましたけれど
も、昨年度、環境省との話がまとまりまして、それ以後のものもすべてうちに保管されて、1978年から現在に至るまで環境省の黒本調査に載っている基本的な試料はすべてこちらの方に保管されるという形になりました。
これが今後、いろんなデータの確認とか、新たな汚染物質の対応等に役立ていくのではないかと考えております。
こういった試料の保管につきましては、今現在、国際的にももっとネットワークをつくりながらきちんと仕事をしていこうということの機運が盛り上がっておりまして、今年の11月13日から16日にかけて、先ほど申し上げたアメリカのチャールストンの方で国際シンポジウムが開かれることになっております。ここではお互いのそういう機関の間の連携についてのワークショップなども計画されておりまして、今後、さらにそういう形で連携を深めながら有効活用を図りたいと考えているところであります。
それから最初にちょっと申し上げました地球環境観測に関するところで、もう少し1つだけ事例の紹介をさせていただきます。
私どもの研究所の中に地球環境研究センターというものがございまして、左側の地図にありますけれども、南の波照間という島と、それから北の北海道の落石岬の2カ所にモニタリングステーションを持っております。そちらの方でいろんな大気中の主に温室効果ガスに関連するところで連続観測を行っておりまして、右上の図がCO2
の連続観測のデータ、1994年から現在に至るまでずっと連続観測をしているのですけれども、基本的には非分散型のIRを使いまして測定を行うわけですけれども、当然絶対値のきちんとした確認が必要ですので、標準ガスを設けて、それと比較をしながら分析をしていくということがメーンになります。
その標準のところが非常に重要になりますので、これは最初の出発点からこういう形でやっています。企業とタイアップする形でNIES95 Scaleという名前をつけておりますけれども、320ppmから390ppmまでの範囲のCO2
の標準ガスをまず1次標準としてつくっております。以後はこの1次標準と比較をしながら、基本的には2次標準を研究所に置いて、それに加えまして3次標準をモニタリングステーションに置きながら観測を続けるという形で行っておりますけれども、合わせて1次標準についても、絶対値の確認を行うために、アメリカのNOAAのシステムを使って国際比較を行って比較をするというような形で分析をしております。これは多分基本的には恐らくトレーサビリティとかのものを確保するための基本的な考え方が全部入っているのだと思うのですけれども、こういう形でもって研究レベルでも当然のことながら、これをやっていかなければいけない時代になってきているというところでございます。
ちょっと早口で御紹介をいたしましたけれども、こういった研究を進める過程で、私どもが今後の分析として考えているのは、やはり1つは測定項目が今後もどんどんふえ続けるであろうという問題であります。今も新しい化学物質がどんどん作られております。
そういったものの中には環境監視をしなければいけないものもひっかかってきております。
そういった測定項目の増加に対応する形で、分析表も1つ1つについて、1つ1つ作っていくというのはなかなか大変な話でございますので、より一斉分析というものを考えていかなければいけないのではないだろうという分析法の流れの中で、どうしても最終的には装置の方は高感度化していく、あるいは高分離・高分解能化していくという流れになるのかと思いますけれども、そういうものに対してどのように分析値の精度を管理していくのかというところがやはり大きな問題になっていくのだろうと思います。
先ほど申し上げたように、同位体ラベルの試料を使用するということでかなりの部分は確保できるようになってきていると思うのですけれども、それでも標準物質、標準試料というものが絶対的な精度管理には非常に重要な役割を果たし続けるのだろうと思われます。
それからその一方で、これだけ測定項目が増えてくると、すべてを高分解能で高精度に計るというわけにまいりませんので、より下位のスクリーニング手法というものも必要になってくると考えられます。
現在、環境省の方でも、例えばバイオアッセイの方法を使って簡易分析法をつくれないかという検討が始まっておりますけれども、そういう形でバイオアッセイとかバイオマーカー分析という、これまでの危機分析の流れとはちょっと違うタイプの分析法が今後、環境分析の中に入ってくる可能性が十分あるかなと考えておりまして、こういったものに対してはどのような精度管理をしていくのかというのがまた次の大きな課題になっていくのかと思います。
また、国際協調の面もますますありますし、先ほど申し上げたPOPsモニタリングについても、16条のモニタリングのデータというのは一応比較可能であるデータであることという一文のただし書きが書いてありまして、その比較可能というものをどう担保するのかというところが現在、いろいろ研究者の間で議論されているという状況でございますけれども、分析法については、例えば国際条約になると、一方では先進国も入ってまいりますけれども、もう一方では、例えばGC/ECDしか持たないような途上国も参加しなければいけない。そういういろんなグレードの違う、技術レベルの違うものが一緒に入ってきてどうやってお互いに比較をしていくのかというところについても何らかのシステムをつくっていく必要があるのだろうと考えられます。
本当にそういう意味では、やらなければいけないことがたくさんあるというのが実情だと思うのですけれども、そういう中で、私どもの研究所の方でも、なるべく可能な範囲で精度管理、より正確な数字を出せるような努力というのをしていきたいと考えているところでございます。
○今井座長 それでは、ただいまの御説明に関しまして、御質問あるいは御意見等ございましたら、委員の方々からお願いいたします。
○桑委員 手元の資料の10ページ目の精度管理に関連することですが、例えば各分析をしている国立研究所レベルでの技術評価というようなものもあるのかもしれません。一般に環境計測をしているところの技術評価みたいなものについては、そういうシステムといいますか、評価するようなことというのは、実際は国内あるいは国際間でありますでしょうか。
○柴田領域長 恐らくいろいろレベルが違う話があちこちにあると思うのですが、例えばダイオキシンについては、一応審査基準を設けて、環境省の方で委員会をつくって、審査を行った上で、認定をもらった機関しかデータが基本的に報告できないという形を現在とっております。
それから、ほかの分析についても、いろいろな計量基準がございますので、幾つかのところについては、恐らくそういうものを準用しているケースはあるかなというふうに思うのですけれども。それから、いわゆる精度の確認という意味では、環境省が昔からやっております事業の中には、統一精度管理というのがございまして、これは一応ボランタリーベースではあるのですけれども、環境分析に関わるいろんな機関に声をかけて、毎年、毎年、例えば今年は底質中の重金属を計りなさいとか、幾つかターゲットを決めた上で共通の均質化された試料を皆さんにお配りして、その中の測定値を返してもらう。そういうことをやることで、何か問題がないか、トラブルがないかということを、お互いにそれはどちらかというと自分で確認してもらうというのに近いイメージですけれども、そういう事業としては進められております。
幾つかそういう形でちょっと本当にグレードはいろいろあると思うのですけれども、環境計測の精度管理に資するような事業というのは行われていると思います。
○桑委員 そうしますと、この10ページに例をあげております環境標準試料というのは、例えばこれは分析の前処理を含めて技術評価をするという形で多分使うのでしょうけれども、一般にそういう民間の人たちもこれを使っていると考えてよろしいのでしょうか。
○柴田領域長 今のところはそれを使って出されたデータが正しいかどうかを確認するというのは各機関に任されておりますので、どちらかというと、各機関が自分で自分の分析法なり、やり方が、あるいは全体の流れが正しいかどうかを最後に確認する方法の1つとして使われているという理解で私どもおりますけれども、実際にはかなり民間の機関と、それから地区環研の方々がかなり中心だと思うのですけれども、ユーザーとしては毎年いろんな方に購入していただいているような状況がございます。
○桑委員 そうすると、先ほどお話しいただきました19ページに飛びますが、研究所間での横の連絡、横の比較、国際比較も含めて動いているようですけれども、これを今度は縦の一般の国内なら国内の末端のユーザーまでのラインというのはどんな形でつながっているのでしょうか。
○柴田領域長 多分かっちりした形がないというのが恐らく実情であろうというふうには思います。環境省の伝統的なやり方は、昔は本当に分析法というものを定めて、このとおりやりなさいということだったのですけれども、先ほど申し上げたように、1つは一応ボランタリーベースですけれども、ときどき統一精度管理という形で精度管理の確認作業というのを別に行うということはやっておりました。
それから我々も標準試料を一生懸命つくってサポートするということはやっておりまして、最近では産総研の方でかなり大規模に環境関係の標準試料をつくられはじめていますので、それから日本分析化学会などでも出されているものもございますし、当然ヨーロッパの方ですとか、幾つかの機関が同様の標準試料を既につくっておりますので、そういったものを使っていただくという流れがだんだんできてきているのではないかという気はいたします。ただ、法制上でそれが組み込まれているわけではございません。
○桑委員 あと、これは多分技術的に担当者任せみたいに理解したのですけれども、測定値の正しさを評価するための校正に使うような試料というのは今のところは提供はしてないと考えてよろしいのですね。
○柴田領域長 私どもの方からは提供しておりません。
○今井座長 今、桑委員の御質問とも関連すると思いますけれども、値を出すときに、どういう方法でやったかといういわゆるルール的なことが必要だと思いますけれども、そのときに、JISによる方法が1つかと思いますけれども、もう1つ、先ほど御紹介があったいろいろな国際会議がございますね。そういう中で国際的なルールというか、例えば既に標準物質ですと、ISOからガイドが幾つか出ておりますけれども、そういうような国際的なガイドをなるべく共用しようというような動きは環境分野の中ではあるのでしょうか。
○柴田領域長 恐らくルーチン的にやられているものについてはなるべくそういうものと協調していこう、例えば先ほど申し上げたように、水に関しては既にもうJIS法として使われているものはなるべく使っていこうという流れがあるのだと思いますし、ただ、一方で、いろんな化学的物質に関しては、そういうものができあがっていくのを待っているわけにいかないというところがあって、最低限といいますか、一応精度管理の仕組みに基づいて分析法を組み立てていった上で、先ほどのように、特に最近は非常に企業の動きが早くなっておりますので、13Cラベルのサロゲートというものがかなり早い段階で入手できるようになってきておりますので、そういったものにも多分運用しながら使っていくというのは現実的ではないかと思っています。
そうしますと、逆に言いますと、我々の方からすると、分析法を定めるといっても、マニュアルをつくるというよりは、例えば前処理の過程などは、かなり媒体によっても違いますし、それから、かなり汚れた場所と、比較的きれいな場所でも前処理の必要性が変わってまいりますので、そのあたりは逆に分析者に任せてしまうというところも逆に出てまいります。それを分析者の選択に任せた上で、しかしながら、最終的には分析者がまず確認できて、我々もそのデータをながめることでクオリティーが確認できるような手法を考え、使っていくということに、流れとしては基本的になってきていると思うのですが。
○今井座長 やはり取ったデータが本当に使えるかどうかということが一番大事だと思いますので、ぜひそのような視点で指導力を発揮していただいて、こういうふうなやり方がいいですよというのを勧めていただくとか、あるいはルールがこういうのがありますから使いましょう、あるいはルールがなければ、こういうルールを作っていきましょうということをぜひお勧めいただきたいなと思います。
○梶原委員 7ページのPRTR法対象物質のところでお話がございましたけれども、これに対する対応として、実際に分析法を開発しながら、つくりながら実際対応されているというふうにお聞きしましたけれども、私としては、実際に規制が発生するときには、その分析法なり、標準物質なりというのが基本的にオーソライズされたものが使われるべきであろうと思いますが、その実態で、実際例えばPRTR法が発効されて、規制が発生するまでに、実際に関与されているところで、分析法なりがまだオーソライズされた形でついてきてないというものが一体どのくらいの割合あるのかなというのを知りたいのですけれども。
○柴田領域長 なかなか難しい御質問だと思います。規制が、どちらかというと環境の場合にはまず監視をしましょう、監視をした上で最終的に環境基準のところに入ってきて本当に規制の対象になるものはまず非常に少数なわけでございます。今の段階では、まず環境中にある状況を知るために、本当に何百というものに対して、実際既に環境省は千を超えるものについてこれまで分析をして、環境中の実態を調べてきているという実際の状況があるわけでございますけれども、その過程でつくられている方法は、まずはいろんな文献等を参考にしながら、まずは測れる方法をつくってやってみましょうというところからスタートしている。そういったものについて、おっしゃったような意味での、本当に規制値を定めて規制をしていくという上にあたっては、恐らく見直しが入ってくる必要が当然あると思います。それから、例えば具体的に申し上げますと、PCBの測定法も、POPsモニタリングの方でやっているというのは、逆に言いますと、規制の値をもって規制値以下にしなければいけないというわけではない。逆に環境中の実態をなるべくきちんと把握しておきたい、なるべく低い濃度で把握しておきたいというスタンスでつくられているものでございます。それに対して、もっと水基準の方にはPCBの基準があったりするわけですけれども、それは全く違う、昔から使われている方法がそのまま実は今も使われているので、環境省が使っている分析法というのも、実は同じPCBの測定法でも場合によって違う方法が使われているというところがございます。
ただ、そのあたりについては、いずれにしても精度管理というものは組み込んだ形で、だれが見てもおかしい数字ではないということが確認できるような流れというのは、基本的には完全にそういう流れになってきていると思いますので、スピードは多分差があると思うのです。いまだに分析法開発で苦しんでいる。例えば特化物に指定されているにもかかわらず、今まだ分析法の開発を一生懸命やっていますというものもございますので、そういう意味では、必ずしも本当に分析法の開発が実際の行政のニーズにちゃんと追いついているかといわれるとなかなか大変なところがあるのですけれども、それにしても、少なくとも規制まで至ったものについては、一応そういう確認がされた方法が今、使われているというふうには理解しております。
○梶原委員 それで実際に規制されている物質に対して最終的にオーソライズされた分析法ができあがるまでというのは、遅れるものというのは、どのぐらいの実際の規制が発生されて何年というようなオーダーになるのですかね。
○柴田領域長 そのあたりは把握できておりませんけれども、逆に申しますと、多分GC/MSとLC/MSという非常にいい方法が大体確立はされてきておりますので、今後、例えば新しい規制が発生するとしても、かなり早い時間スケールで追いつくことはできるだろうとは思っています。
ただ、それは分析法が形としてつくられるところはいいのですけれども、現実にそれが例えば環境分析、どんな場所でも必ず使える、どんな時代がきても必ず使えるのかということを確認するためには、恐らくどうしても最初まずこれで確かだろうという方法を作って、実際に環境に適用して、その結果、まだ問題が残っていましたというステップが入る可能性はあって、何年か固まるまでに時間がかかる可能性はあるかもしれないというふうには思います。
○梶原委員 関連でもう1つ。その遅れるというのは、基本的に技術がなかなかできあがらないのか、そういう分析法を整備させるための制度上の問題があるのか、どちらだと思われますか。
○柴田領域長 私の個人的な意見としては、技術的なところである。要するにそれは例えばGC/MSにしても、LC/MSにしても、基本的に対象とする物質がほぼ何十%、70〜80%あり、100%ちゃんと回収できて検出できますという方法はつくれるわけですけれども、実際に環境中には我々が多分まだ知らないいろんなもの、化学物質がたくさんあるわけで、そういう未知のものがその分析法に対して妨害しないかどうかということに関しては、ある程度環境に適応してみないとわからないというところがあります。それは当然場所によって全くそれが違いますので、例えば我々が今、持っていた土壌に対してうまくいったけれども、実際に全国のいろんな場所で計ってみたらうまくいかない試料も出てきたということは、それはしょっちゅう我々も経験をしております。
○久保田委員 今、規制の話が出ましたので、関連して、20ページのところで、精度管理の将来像の中でお話しいただきました規制と精度管理との関係について御質問させていただきます。
環境分析の分野で分析値というのがばらつきを持っているというお話を先ほどされましたけれども、一方、環境基準というのはある一定の濃度で決められていますから、通常それより上の値が出るとNOであって、下であればOKという判定がなされております。ところが、例えば方法検出限界もそうですし、装置の検出限界、あるいは定量限界も、いずれも装置あるいは方法のばらつきを考慮して決めているわけです。実際には環境分析の分野というのは、不確かさの概念がなかなか入りにくい現状にありますが、トレーサビリティとか標準物質の普及に伴って、当然ながら分析値に不確かさが付随しないと意味をなさないという分野なのではと思います。実際のところ、サンプル自体が非常に時間変動や場所によるばらつきも大きいということを考えますと、分析値自体に不確かさをつけることよりも、そういうことによるばらつきが大きいという実情があるのは認められるにしても、やはり計測、分析の分野で、将来的に不確かさを導入する方向に世界的に進んでいる中で、環境分野というのはどのように今後、それをとらえていくのか、あるいは導入していくのか、その辺のお考えを教えていただきたいのです。
○柴田領域長 行政の立場からという話は多分非常に難しい、私自身も関わっておりませんので、恐らくそれは規制値というものを設けるために、幅を持った規制というのがうまく運用できるのかどうかという話になってくるのだと思うのですけれども、当然分析の方からすれば、個々の数字は全部不確かさがくっついているわけでありますし、それは個々の数字の不確かさもありますし、それから母集団からどのくらいのサンプリングの不確かさをもって動いているかということも当然入ってくるわけですが、そういうことについては我々自身、その不確かさをより減らす方向で努力をすると、先ほど申し上げたように、結局研究者としては、測定回数を増やすしかないというところに落ち着いてしまうのですが、分析法そのものは今、申し上げたように、そういう不確かさを持っているという理解はしております。
それから、規制の方も、今、だんだん流れとしては例えば1点の、1回の数字でそれでおしまいということではなくて、例えば年間変動1点ずつ測定をする、それにあたっては当然装置の側も数字を正しく出せるためには、少なくとも10分の1の定量限界を持っていなければいけないとか、そういう形でもってある程度の対応はして、そういう10分の1の定量限界を持った方法で規制値を1年間を通じて超えているのか超えてないかの議論するような形にはなってきているというふうに思います。
そういう意味では、少なくとも1点ぽんと超えたからという話ではだんだんなくなってきているのですけれども、最終的におっしゃるとおりで、逆にいえば規制値というのは毒性の方からきているわけですから、最終的に毒性とか、いろんなファクターから入ってくるわけですから、そういう概念も考えたときに、本当にある1点の数字でもって規制をするという考え方が本当に今後もずっと続くのかといわれますと、別の考え方は当然あるのだろうと思います。
多分、だんだん化学物質の管理の方も、リスク重視になってきていますので、そういうリスクの概念の中にすべてそういうものを取り組んでいった形でもって最終的に包括的にとられるという考え方が今後、だんだん進んでいくのではないかと思うのです。
○今井座長 ありがとうございました。
日本臨床検査標準協議会 藤橋 和夫 事務局長
○今井座長 第2番目のプレゼンテーションは、日本臨床検査標準協議会の事務局長でいらっしゃいます藤橋和夫様からお願いいたします。
○藤橋事務局長 まず最初に、私どもの日本臨床検査標準協議会は、1985年にアメリカに同様な協会、National Committee
for Clinical Laboratory Standards
がございまして、臨床検査に関係する標準を設定しています。ただ、標準というのはかなり広い意味での標準でございまして、当然標準物質もございますけれども、それに関係する測定法であるとか、標準的な例えば今、JCCLSでのベストセラーが標準採血法のガイドラインです。これがかり評判がよくて、いろんな学会の方から注文がございます。このような検査をするためのまさに入り口である血液を採取すると言った標準的な採血法も広い意味での標準とお考えいただきたいと思うのですけれども、こういった標準を目的として設立しました。
私どもの組織は、理事会と総会からなっておりまして、特に理事会のメンバーにつきましては、関係する学会などを含め3つの主な組織からできており、特別会員としては政府や政府系の組織の方から代表の派遣をお願いしております。次に正会員としては、臨床検査に関係する医学界から代表者を送っていただいております。具体的には一定の賛助会費をいただき、その口数に応じて、一定の額以上であれば正会員として理事になっていただく、こういうような組織でございます。
ですから、正会員は、臨床検査に関係する学会、検査をする検査所、検査試薬を販売しているいる協会、こういうところから賛助金をちょうだいしております。それ以外には臨床検査の試薬を発売している機関、企業がございます。こういうようなところが主な会員でございます。
今日のお話は、特に臨床検査の国内および国際的な標準化という観点からお話をさせていただきます。
臨床検査の国際的な標準化の端緒は、ISO/TC212が具体的なはじまりでございまして、これが10年ほど前に設立されました。テクニカル・コミティの212番目でございますから、臨床検査というのはかなり遅くスタートしたことになるかと思います。
主に4つのワーキンググループができまして、ワーキンググループ1は、病院に検査室がございますので、その検査室で検査をするための要求事項がワーキンググループ1でございます。ヨーロッパでは既にISO15189に基づいて管理と技術的能力が審査され存続がとして認められるかどうかが行われるわけです。多分ここら辺の動きは、韓国とか中国もこれに追従するかなと思うのですけれども、日本の場合は、これは1つの参考でございますが、厚生労働省の方で所管しております。
今日のお話のテーマは、このワーキンググループ2でございまして、標準化のシステムでございます。それ以外にワーキンググループ3、これは臨床検査試薬の要求事項、それから最近できたものがワーキンググループ4でございまして、これは抗生物質の試験、効果判定でございます。
今日のテーマはワーキンググループ2でございますが、既にものを測定するということは、
基本的に分野が違っていても、基本的な測定法があるということ、それから、その測定法によって値づけられた標準物質が存在すること。それから、そういうものがあったときに、世界的に測定が正しく行われているかどうか、そういうものを評価する基準測定検査室のネットワークを国際的に作っていこうではないか。この3つが三種の神器というか、必要欠かざるものだと思うのです。
これらの基本的の概念は、トレーサビリティで、ここにございますISO17511と18153が2002年から2003年にかけてISになりました。
したがいまして、この動きに対応いたしまして、標準化に必要な要求事項がISOにできましたものですから、この具体的な要求事項に基づいて、国際的に基準測定法だとか、標準物質をノミネーションしていこう、こういう動きができまして、2002年の6月にパリでJCTLMという総会が開かれました。これは
Joint Committee on Traceability in Laboratory Medicine
の訳でございまして、臨床検査におけるトレーサビリティの合同委員会といったものができました。
要は臨床検査に関係のあるIFCCだとか、WHOであるとか、そういう機関が集まりまして、JCTLMの設立が全員一致で承認されました。したがいまして、臨床検査の国際的なレベルにおける標準化の母体というのは、このJCTLMに集約されます。
これの組織としてはワーキンググループ1が標準物質と、その測定法を国際的に承認して行く。NISTとIRMMの代表者が委員長を担当しています。それからワーキンググループ2はドイツのグループで構成されておりますが、要するに基準測定検査室のネットワークをつくっていこうではないか、こういう考え方でございます。
ここにございますように、ワーキンググループ1は基準測定法と標準物質、ワーキンググループ2は基準測定検査室のネットワーク、こういうものをちゃんと固めて、それを最終的には、検査というのは、臨床検査試薬を使用している測定方法で病院の検体は計られますので、その臨床検査試薬の基準に、ここで決まった値を伝達していこうではないか。こういうことで国際的なレベルでの標準化をしていこうという考え方でございます。
これはISO17511に載っておりますトレーサビリティ連鎖でございます。ただ、臨床検査の場合は、例えばコレステロールであるとか、クレアチンであるとか、尿酸であるとか、ものが完全にデファインされて、そのものが入手できる。そういうものを第一次の基準測定法で計ったら、第一次の標準物質が作製できるわけですけれども、こういう物質の数はかなり限定されておりまして、数としては30くらいで50はないと思うのです。多くの物質というのは、その本体がわかってないとか、ある一部しか解明されてないというようなことがございます。
それからもう1つは、こういう第一次の標準物質を作製しても、実際、臨床検査試薬というものは、もともと血清を計るように設計されておりますので、一次標準物質をそのまま使って、各企業の基準に値を伝達することはできませんので、第二次の標準物質、血清タイプの標準に値を伝達して行くことが必要です。この標準物質をいかに作っていくかということがかなり重要になってまいります。
ワーキンググループ1は13のレビューチームから構成されておりまして、日本での各学会とか、臨床検査試薬協会の代表者を日本のレビューチームとして登録をさせていただいております。ここに筑波大の桑先生がいらっしゃいます。桑先生は血液ガスと電解質のレビュー委員
を担当されております。
私は2002年のJCTLM発足当初から、酵素
、代謝産物と基質および蛋白質を担当しておりましたが、今は前の会社をやめましてJCCLSの方にまいりましたので、別な方に日本のレビューチームを担当していただいております。
日本で承認された標準物質の一覧がここにございまして、特に一番下に酵素がございますが、レビュー時に、向こうの担当の者とディスカッションいたしましたので、私にとってはこの酵素はかなり力が入ったところでございます。電子媒体を使用する方法で国際的にレビューしていく1つのパターンができておりまして、これがその様式です。トレーサビリティ体系であるとか、組成であるとか、どこが標準物質を認証したのか、それから、関係する研究所であるとか、不確かさ等々です。特に大事なのが一番下にございます相互比較に関する情報ということで、対象が生体成分でございますから、具体的にこの生体成分に関しては、例えば今、申し上げました酵素等もそうですけれども、反応性と申しますが、例えばノミネーションする標準物質がございまして、基本的には基本となる方法と、各企業の臨床検査試薬で患者の検体を計りまして、このばらつきの範囲内に標準物質の候補品が入れば、反応性は患者検体と同じであるというようなことが統計的にいえますもので、かなり標準物質としての認証としては有望になってまいります。
ですから、先ほどお話しました一番下の酵素についても、これを供給しているのは日本とIRMMの2カ所でして、IRMMはオリジンが動物ですけれども、日本は遺伝子組換えでつくった人間のヒト由来です。要は標準物質を共通に使用することで、各企業の臨床検査試薬の基準に値が伝達されて標準化ができるのであるかどうか、こういうデータが要求されてまいりました。
1つの例でございますが、標準物質が決まった場合、いかに検査データの施設間のばらつきが小さくなるかの事例でございます。このデータは毎年日本医師会で約3,000施設ぐらいの日本の病院検査室を対象にして、ブラインドのサンプルを計っています。例えばCRM470というのは最近、かなり使われている炎症の検査ですが、今は世界中でCRM470が使われておるのですけれども、それ以前にはWHOもございましたし、
国内標準といって予研でつくった標準もございました。要は標準が混在しておりましたが、国際的にIFCCという学会でCRM470を国際的な標準物質にすることが決定しました。これを共通に使うことで、これがCRPの施設間のばらつきでございますが、値の低い試料ですと20%以上ばらついていたものが、共通の標準物質を採用することで大体5%ぐらいのレベルまで小さくなりました。このように標準を共通にすることでいかに施設間差が小さくなるかという、非常に顕著な例でございます。
当協会も標準物質を作製しそれを国際的に提案して行く活動を行ってなっておりますが、今年度、NEDOで標準物質の策定をもっと加速するという要望を出し、それが認められまして、基本的に産総研が受けていただくことになりました。産総研とJCCLSが共同して、これからNEDOの事業を17年度、できますれば18年、19年と3カ年にわたって受けたいのですけれども、CRP、アルブミン、コルチゾール等の日本初の標準物質ですが、これら1次標準物質は純度であるとか測定を、産総研に実施していただきまして、それ以外の実試料、要は血清タイプの標準物質については、各ワーキンググループで委員長を定めまして具体的にやっていくつもりでございます。
例えばHDL-CやLDL−C等の臨床検査試薬は日本が世界に先がけて開発したものでございまして、多分多くの外資の企業も日本からの試薬をOEMで販売していると思っています。一番下にある調査研究というのは今まで実施したことのない試みですけれども、調査研究より上の項目については、具体的に標準物質をつくる作業でございます。一番下の調査研究というのは、果たして共通の標準を用いることでどこまで臨床検査試薬の測定値差が小さくなるのであろうか。こういう研究を早期に実施し、標準物質の効果を見極める研究です。
ですから、いろんな検査項目がございますけれども、とりあえず国際的に標準物質の存在するものは、それを共通な標準として、これらを販売している企業、10社とか20社ございますので、それぞれに集まって、共通の標準を使うことで、それから希釈誤差があってはいけませんから、どこかの代表な機関がそれを作ることで、それを共通の標準物質にして、ある患者検体を計っていこうではないか。もし共通の標準がない場合は、暫定的にある標準物質を決めて、それを共通に使って、実際、患者検体のばらつきがどれだけ小さくなるか。こういうような研究を早期にやっていこうではないか。
標準を設定することで、各企業で販売している臨床検査試薬による測定値差が小さくなれば、今度は標準をつくることで標準化ができるわけでございます。また、企業の基準でかなり有力なものがあれば、それを格上げして国内の標準物質にしようではないか。要はこういうことで標準化がどこまでできるかということも一緒にやっていこうではないか。一応こういうようなことをここ2、3年の間にやっていきたいと考えております。。
当面の目標は、今、NEDOの研究等を行うことで、JCCLSが主体となりまして、国際的にJCTLMの動きに対応する、またはリードしていこうではないかということと、こういう標準ができましても、厚生労働省が臨床検査試薬に使用できる標準物質として認めてくれませんといけませんので、厚生労働省への働きも当然やっていかなければいけないと考えています。
あとは主要項目でのトレーサビリティの確保、これは当然国際レベルのトレーサビリティの確保を図っていきたいな。
最終的に一番大事なのは、こういう検査データが標準化されることによって、具体的にどんなメリットがあるのだろうか。これは多くの点で考察を要する必要がありますけれど、例えば検査データ、患者さんの診断だとか、治療だとか、または予防については、検査データ以外に、例えば組織であるとか、画像診断とか、いろんな情報が必要ですけれども、特に検査データ、ラボラトリーデータの有効な疾患に関してデータベース化をしていこう。既にこの様なワーキンググループが動いておりまして、現在の動きですと、糖尿病がかなり有力なので、糖尿病について当然標準化ができたということを前提としてデータベースを図っていこうではないか。こういうようなことも1つ考えております。
一番下にございます正常値というのは、今は健康と考えられる母集団を統計的に処理して正常値を決めていますが、健康人といっても個人、個人によってかなり差がございます。ですから今の正常値の決め方ですと、かなり甘くなってしまいますので、こういう標準化がかなり進みますと、個人レベルの正常値がわかります。例えばAの病院へ行って、2カ月後にBの病院へ行った。そういうデータを蓄積することによって病院間で測定値の差がなければ、個人の正常値として、健康なときは一定の幅が出てまいります。そういう方法がとれれば、かなりシャープなマーカーとしてこれが使えるのではないかということで、最終的にはそういう病気の診断とか予防に標準化の成果を役立てていきたいなと思って、委託事業を行っております。
○今井座長 ただいまの御説明に関しまして御質問、御意見等をお願いいたします。
○中野委員 8ページのトレーサビリティの連鎖の絵ですけれども、この絵を拝見すると、一番上のSIの体系からトレーサビリティがとれていて、校正をやっているようにも見えます。この標準物質というのがいわゆる標準物質の中に2つ類型に分けたときに、校正用の目盛りをつけるための標準物質なのか、それとも測定法の手順全体を検証するための標準物質なのか。これは目盛りをつけるための標準物質であるというふうに読んでよろしいのですか。
○藤橋事務局長 目盛りというか、最終的には、一番下からUSERとございますね。これが各企業で販売している臨床検査試薬でございまして、このワーキングスタンダードに一番上位で決めた1次標準物質の値を伝達していく。そういう1つのシェーマと考えております。ただ、その中にはいろんな階層段階がございますので、こういうふうに書いています。
それからもう1つは、これはあくまでも非常に完成されたトレーサビリティでございまして、具体的にISO17511には幾つかのモデルがございます。SIトレーサブルの場合は、こういう形でトレーサビリティ連鎖が作れると思うのですけれども、実際、これに該当するものは数としては30ぐらいと少のうございまして、例えば純品が入手できないから1次標準物質ができないとか、そのようなトレーサビリティ連鎖もございます。ですから、ここでは端的に一番きれいなものをお示ししたということです。
○今井座長 今のことで、Determination と Validation
と分けて書いていらっしゃいますけれども、Determination というのはいわゆる値づけで、 Validation
というのは、方法とか調節なんかも含めた総合的な判断、そういう理解でよろしいでしょうか。
○藤崎事務局長 ありがとうございます。
○今井座長 標準物質の場合には、必ずしもSIの目盛りのようにきちんと値づけができない場合もあると思いますけれども、段階を追って下に、ユーザーに近くなるに従って、総合的な判断、
Validation というような考え方が出てくるのではないかと思います。
○中野委員 JCTLMの活動についてなんですけれども、この中で12ページに、JCTLMで承認された日本のRMというのがあるのですけれども、このJCTLMは世界的にこういう標準物質を登録しようという意図は、先ほどお話にあるように、SI単位にトレーサビリティは30ぐらいしかない。そうするとほかのものは、元をたどるとどこにトレーサブルがあるかよくわからないのだけれども、とりあえずは世の中のニーズがたくさんあるので、一番信頼性のあるものをあげてみようではないか。そう理解してよろしいでしょうか。
○藤橋事務局長 基本的には、SIトレーサブルであれば、これは議論の余地がなくて、どこの国でも問題なく話が進むので、SIトレーサブルのものから今承認されておりまして、今後はどういう形でコンセンサスというようなやり方をとっていくといったことが今、課題になっております。
それからもう1つ、こういう生体物質についてはWHOが前々から供給しておりまして、
WHOの中でもロットが違うとまた伝達性が確保できないとか、そういう問題も実はございまして、これからの問題は、多分WHOの方にも、例えば不確かさは今、WHOの標準にはついてないのです。ただ、WHOは大変権威がありますので、これからやらなければいけないのは、WHOとかなりリンクしながら、もう少しWHOで供給しているタンパク系の標準物質に、いかにトレーサビリティの概念を入れて供給していくかとか、多分そういうような議論がこれから出てくると思います。
だから一番いいのは、JCTLMまで国際的に承認されればそれが一番いいのですけれども、少なくとも国内でかなり標準化ができれば、それはそれでいいかと思うので、項目によってはJCTLMの規格水準に合わないので国内標準で止まるものもあるかもしれません。
○今井座長 私の理解では、JCTLMの役割は、1つは標準の方法として色々な国で自信のあるものをあげてくださいということだと思うのです。それからもう1つは、
それを使って共同実験をして、まさにコンセンサスバリューのような、これでいいですねというお互いに納得し合うというか、そういう役目ではないかと思います。
藤橋さん、どうもありがとうございました。
国立医薬品食品衛生研究所食品部 松田 りえ子 第4室長
○今井座長 3番目は、食品分野における標準に関しまして、国立医薬品食品衛生研究所食品部第4室長でいらっしゃいます松田りえ子様からお願いいたします。
○松田室長 ここには私どもの研究所で行っています食品関係の業務というものをあげさせていただきました。
主としまして、食品部というところでは、食品中の汚染物質ということで、すべての食品中のまず農薬等、意図的に使われている汚染物質、農薬とか、飼料添加物、動物用医薬品です。それから、鉛とかヒ素もあるのですけれども、農薬として使われたものというのと、それから別に有害な金属ということで、鉛、ヒ素、スズなどがあるのですけれども、
これは非意図的にただ入っている、もともと環境からなりで入ってきたようなもの、その他の汚染物質、天然にあるものとか、ダイオキシン、アクリルアミド、それから照射食品、照射食品が汚染物質なのかはよくわかりませんけれども、このようなものに対して分析法を作成するという業務を行っています。
農薬と有害金属に関しましては、厚生労働省の方で規格基準というものが定められておりますので、それに適合しない食品は行政的な措置を伴うという検査になります。
ダイオキシンとかアクリルアミドというのはそういう規格基準はないわけですが、サーベイランスとか、そういうような感じで行っています。
そのほかに遺伝子組換え食品というものが最近、出てきまして、これは同等性が証明されたような遺伝子組換え体に関しては、非意図的に混入しているというか、5%までという混入率、組換え体でないと表示した場合の。それから同等性が証明されていないようなものに対しては混入してはならないというようなことが決められておりますので、それに対する分析法をつくるということがございます。
その次は食物アレルゲンというものがありまして、これは最近になって、2、3年前から行っていることですけれども、すべての加工食品に対して特定原材料と呼ばれます卵、牛乳、小麦、そば、落花生に関しては表示をすることという制度ができまして、その表示の妥当性を見ていくための分析法をつくるという仕事があります。
それから食品部以外の部に食品添加物部というものがございまして、これは食品添加物それ自体の規格基準と、それから食品中の食品添加物の分析法。食品添加物も使用用途が厳しく法律で規制されておりますので、用途外の使用、もしくは使用が許可されていても濃度の違反がありますと、またこれも規制の対象となります。
それから微生物、それから微生物が産生するカビ毒というもの、この辺が国立医薬品食品衛生研究所の食品関係の範囲です。
食品というのはこれだけではございません。例えばBSEも食品の分野ということになっております。
ほかにも栄養成分というものがありまして、これもいろいろな加工食品に栄養成分の表示がされておると思いますけれども、これについても食品の分析ということになっておりますけれども、当所ではこれはやっておりません。
当所で今、何が標準に対して一番大変かというと、何かを分析しましょうというときに、
検量線を引いて、基準とするための普通の純度の高い純物質というものがないということが一番問題になっています。
それはなぜかと申しますと、これは御存じの方もいらっしゃると思いますけれども、来年度より農薬等のポジティブリスト制度というのが実施されます。このポジティブリスト制度の実施の詳細はよろしいのですけれども、それで規制される農薬の種類が700種以上で、分析をしなくてはならないということになる化学種として、代謝物も入れて740程度のものが対象となります。その中には、かつてどこかで使われていた農薬の残留とかいうものもあるので、現在、どこも作っていないとか、その代謝物自体の標準品はないというものがたくさんございます。これをいろいろ試薬屋さんとかにも苦労していただくのですが、最悪の場合、標準品がなくて、農薬製剤しかないので、そこから抽出するというような形をとるのですけれども、そうすると規格も何もなくて、純度が何%やらわからないというような状態で、とりあえず分析法を作るのですけれども、どこにも値が正しいかどうかわからないというような状態が最近は起こっています。
新しい農薬は農水省の方に登録されますときにちゃんと標準品もあるのですけれども、外国の農薬とか、昔から使われていて、今は、それでも途上国などで使っている農薬という場合に、こういうことがよく起こっております。これが今、当面で一番苦労しているところで、国際標準とかいう以前のところで苦労しているところです。
それから、私の部屋であります食物アレルゲンの方では、卵、牛乳、小麦、そば、落花生が、タンパクが食品中に10μg/g以上に存在する場合には表示しなさいということになっているのですけれども、では分析するときに、イライザ法で分析をしておるのですけれども、イライザ法ですから検量線を立てるわけですが、何で検量線を立てるか。普通の卵アレルギーの人のアレルゲンはアルブミンではあるのですが、そうでない人もいらっしゃいますし、では卵のタンパク質とは何か。卵のタンパク質が10μg/g存在するとして、その卵のタンパク質の標準とは何かということが非常にあいまいな状態で、最初に制度の方が始まってしまっております。
卵のタンパク質を測定するキットなどというのは海外にもあります。日本にもございますけれども、その標準品に何がついているか、キットなので全くわからないのです。これに関しては、作ってしまおうということで作っております。これは5品目それぞれについて原料、原料というのは、卵であれば、これは品種で指定しましたので、白色レグホン種が日本で一番多いということで、その卵を凍結乾燥したもの、それを抽出方法も決めまして、ある標準液というものを、このようにして作るという規格をつくりました。規格値としては、抽出したときのタンパク濃度、このタンパク濃度を計るときに、分析用の標準として一応牛血清アルブミンを使っておりますけれども、それに換算したタンパク濃度、それから電気泳動の主要バンドということで規格を設定して、ものも作って、一応国内ではこれを標準として使用してくださいというふうにお願いをしております。ただ、国際的にはほかに標準となるものはちょっと見つからないので比べることもできないし、これでいいのかというのもわからないまま、制度だけがあるので、分析法と標準は後からついてきたという形で、それでも一応これでいろいろなキットで試験をされましても、少なくとも標準品となるところは一定するという形で行おうと思っております。
その他に、先ほど同位体修飾してサロゲートの内部標準というものが使えるようになっていて、アクリルアミドですとか、ダイオキシンとか、そういう非常に低い濃度のものを食品中から抽出するためにリカバリーの補正とか、ばらつきが非常に多いことで、内部標準というのは非常に有効ではあるのですけれども、これに関しても規格値があいまいでして、同位体純度の問題がかなりあります。といいますのは、同位体純度が低いということは、ネイティブなものが入っているということで、それは当然分析値の方に大きく影響していきます。ですから、この辺のところももうちょっと詰めて、同位体純度を決めていって、内標添加量というものをそれに見越して決めていかないと、非常に大量の内標を入れてしまったような場合には、分析値が非常に変わってしまうということが起こり得ると思います。
この同位体をどのぐらい入れるかというのは各分析者で決めていらっしゃるのですけれども、食品の場合、濃度が非常にばらついていますので、非常に低かったり、高かったりするので、そのときに内部標準の入れ方が不適切ですと、非常に変わるということがあり得ます。
これが今、当所で困っているというところなんですけれども、もうちょっと国際的なところでの信頼性確保の枠組みということを少し紹介させていただきます。
食品分析というのは、少なくとも厚生労働省の中では、信頼性確保ということは余り従来考えていなかったという感じであったのですが、それでも世の中の流れということで、平成7年ごろに業務管理要領というものがつくられました。それの改訂バージョンが平成16年3月につくられているのですけれども、これが食品分析、少なくとも製品検査、行政的な措置を伴う製品検査において、こういうふうに業務をやってくださいというものがつくられています。
これは最初に平成7年につくられたときには、ISOのガイド25に準拠しておりまして、改訂版はISO/IEC17025に準拠してつくられております。
そのほかに国際的にはCodexという食品の規格の委員会がありまして、そこにはガイドラインの27というものがあって、これも食品の分析のあり方というものを信頼性確保の方から決めております。
例えばこれはCodexのガイドラインの1個で、この間、コメント募集が来たのですけれども、これは輸入国と輸出国があって、それの分析結果が合わなかったときに、その論争を決定するためのガイドラインというものがつくられているのですけれども、それの前提として、その2つのラボはガイドライン27というものに対して適合していますということが必要であるということで、日本のように非常にたくさんものを輸入する国といたしましては、こういうことを無視しているというわけにはいかないということで、食品分析の信頼性を確保しましょうという制度ができております。
これはガイド27の方に書いてあります要求事項なんですけれども、まずISO/IEC17025に適合していなくてはいけません。それから、妥当性が確認された方法を用います。それから、技能試験に参加しましょう、内部精度管理を実施しましょうというようなことが書いてあって、あと不確かさを付与しましょうと書いてあるのです。
日本の方でこれをどのようにやっているかといいますと、まずISO/IEC17025に適合するというのは、それを準用した業務管理要領に適合するところが厚生労働大臣に登録する機関というふうになるので、一応適合しているに近いという感じになります。
技能試験と内部精度管理については、そこに明記されておりまして、適切な技能試験に参加することと、それから、内部精度管理を実施することということがそれも明記されています。
妥当性が確認された方法を用いるというところに関しましては、該当する法令にある方法と書いてあって、告示法とか、通知法とかいわれるものを使ってくださいと書いてあるので、そうすると、そのような方法というものにすべて妥当性が確認されていなくてはならないわけで、私どもは古い方法なんかは徐々に見直してバリデーションを実施している最中でございます。
最後の最後のところに不確かさを付与するというのもちょっとだけ書いてあるのですが、
付与するのですけれども、これは行政がつくったものなんですけれども、付与して、そのときに基準値と重なったりしたらどうするのかということの判断に関しては、まだ何も示されていないので、付与してからどうするのかなというのは、よく聞かれる質問なんですが、国際的にはだんだんこれについてもルールが決まってきておりますので、そうなりました場合は、それに従っていくのかと思いますけれども、すごく大きい不確かさがついていたらどうするのかとか、食品分析においてどうやって不確かさを付与するかとか、そういうことは何もまだ解決しないままISO/IEC17025に適合するためにそういう条文が入っているという状態になっております。
ここでやっと標準試料の話になるのですけれども、試験法の妥当性を確認するバリデーションにおいて、室間精度というのは共通の試料でありさえすれば出ると思うのですが、真度であるとか、不確かさを求める際には、何らかの認証値がついている認証標準物質が必要です。せめて認証されてなくても、何か値がついている標準試料というのが必要なんですけれども、現状ではどちらも食品関連のものとしては非常に数が少なくなっております。
それでなぜ少ないかというようなことは、食品試料の特性ということから、1つはまず先ほど私どもの業務を申し上げましたとおり、非常に
Analyte
がたくさんあって、金属というエレメントであるものもありますし、それでも水銀だけではだめで、メチル水銀とか、ヒ素だったら、有機ヒ素と無機ヒ素を分けなくちゃいけないとか、そのような色々な要求が出てきています。それから、たくさんの有機低分子化合物がありまして、この中には例えば異性体をどこまで入れるかとか、そういうことがいろいろあって一様ではないということ。大きくなっていきますと、先ほど申しましたアレルゲンのようなタンパク質、それから遺伝子組換え食品ですと遺伝子。
この辺までは一応名前をつくこともできるのですが、栄養成分となりますと、例えば脂肪というものがありまして、脂肪とは何かというと、これは分析法で決められるようなもので、ヘキサンエーテルで何分間抽出したら出てきたものが脂肪なんですけれども、そのようなものの標準試料、私のやっている脂肪の定量法は正しいかということをバリデートするための標準試料というものが必要。
このようにたくさんの Analyte
について、たくさん食品のための試料が必要ということがあります。この中の多くのものは非常に不安定ということもあります。ではそれをクリアできたとして、今度はマトリックスの方の多様性がありまして、普通に考えると野菜、肉という単純な植物性の食品、動物性の食品がある。それから、それらを調理加工したり、まぜたりした加工食品がありますけれども、そのほかにどの食品についても非常に不均一であるということがあります。
農薬の標準品というものを考えてみますと、ほとんど大抵のものは皮の方にあるわけです。それを一生懸命抽出してやっているわけですけれども、例えば非常に均一な標準物質を作ろうと思う場合、フリーズドライするとか、均一化するということがありますけれども、実際に私たちが分析しようとするときは、そういう状況のものではなくて、やはり生鮮の食料品なんです。水があり、細胞壁もあり、そういうものとフリーズドライしたようなものとはまたおのずと違ってくるということがありまして、ぴったり目的に合った標準試料というのはなかなか存在しないという問題があります。それでもないから仕方がないといっても仕方がないので、例えば技能試験の試料の残りとか、私もダイオキシンの技能試験のために、仕方がない、さっきと言っていることが矛盾していますけれども、魚のフリーズドライをつくって試料としたりしておりますけれども、均一化していくということは非常にどんどん食品から離れていくという矛盾した面を持っております。
ということで、なるべく食品ライクで、安定性があって、均一でというような標準試料ができると、国際的にバリデーション等していくことが容易になるかなと思っております。
○今井座長 ただいまの御説明に関しまして御質問、御意見等をお願いいたします。
○久保田委員 最後の方で、マトリックス標準物質のお話になってきましたけれども、最初の方はかなり標準品のお話をされておられて、両方の種類の標準物質について、どちらもないから困っているというお話ですね。緊急度とか、あるいは例えばこれについては国際的にほかのものを仮に購入できるとか、あるいは国内でこれは比較的早急に開発体制が整いそうであるとか、そういういろいろな観点から見たときに、標準品と、それから、マトリックス標準物質、いわゆる標準試料と書いておられますけれども、これら2種類の標準物質を比較して問題点の解決の難しさという点ではどちらの方が大変とお考えでしょうか。
○松田室長 有機低分子化合物におきましては、合成して頑張れば必ずやキャリブレーションのための標準品は作れると思います。ただ、何だかわからないというものに関しては非常に難しく、タンパク質とか、これは本当にコンセンサスでいくしかないのか。諸外国では落花生のアレルゲンが非常に重要視されていまして、落花生のキットはものすごく出ているのですけれども、落花生のタンパクというのはこれだというようなものをどこかが作ってくだされば、私はすぐそれに従おうと思うのですが、そういうところがなくて、2つのキットで値が違ったときに、何で違うのか、抗体が違うから違うのか、それともついている標準液が違うから違うのかということがまだ全然明らかにならない。キャリブレータとしてはそこが一番大変かなと思います。あとは何とか作れば作れる。何かがわかっていれば作れると思います。
マトリックスに関しては、今、申し上げましたように、技能試験の配付物でさえ、これは食品ではないと怒られるぐらいなんで非常に難しいかなと思っております。
○中野委員 3ページ目の中に700種類と書かれてあるところなんですけれども、この700種類については、国際整合化をすぐに必要だということではなくて、とりあえず国内で統一的な値が出ればいいというイメージでとらえてもよろしいのでしょうか。
○松田室長 そうですね。分析法の正当性ということではなくて、少なくともキャリブレータとして、この純度の化合物を使ったということがわかるくらいにはならないと困るねということですね。輸出入で基準ができると、違反というものが出てくる可能性があって、そのときにキャリブレーションの標準品があいまいでつけた値というのは全然話にならないので、そこら辺が一番緊急で、とにかく99%なり98%であるというような物質ができてこないことには、分析方法として組み立たないというところがあります。
○中野委員 その98%が何らかの意味で、例えばSI体系にトレーサブルでなければいけないとか、そういうことなのですか。
○松田室長 例えば80%のものがあったとして、あとの20%が何だからわからないというのが、あと80%が必ず80であるという保証があればもしかしたら80でもいいかもしれませんけれども、80以上などと書かれるとちょっと話にならないと思います。それは結果が解釈ができないということだと思います。
○今井座長 どうもありがとうございました。
独立行政法人食品総合研究所 安井 明美 分析科学部長
○今井座長 次に最後になりますけれども、独立行政法人食品総合研究所分析科学部長の安井明美様からお願いいたします。
○安井部長 国際分析における国際整合性の確保の社会的情勢ということで、まず今、松田先生の方からお話がありました分析値の信頼性の確保というところで、Codex、国際食品規格委員会でガイドラインというのがあります。
それからCIPM、国際度量衡委員会の物質量諮問委員会の中で、食品分析における同等性とトレーサビリティということで、おととしの11月にキックオフのミーティングが始まって、Codexの方と整合性をとりながら仕事を進めていくということで活動がされております。
それから、日本分析化学会の方で Proficiency Testing
、技能試験というのを昨年から初めまして、昨年が第1回目、今年第2回目で、松田先生はそれの方の委員長をやられておられます。
試験所認定、ISO/IEC17025で食品関係でどのくらい受けているかというのですけれども、これは今年の前半に数えたもので、今は20ぐらいになっていると推定しております。
それから、分析値ということで、食品成分表という活動が行われておりまして、今、主管は文部科学省の資源室ですけれども、そこで今年の1月に五訂増補版というのが出まして、それから脂肪酸成分表編が出ております。
Codexの組織は、1963年にFAOとWHOで設立されたのですけれども、この中で食品規格であるとかガイドライン、関連文書を作成しております。
ここで作られら規格という自体が強制力を持っているわけではありませんで、これを受けて、これに参加しているそれぞれの国が自前で、自国で規制や法律をつくって、それを行うというような形で動いております。
このCACの中にいろいろな一般部会、それから専門部会があるのですけれども、その中で標準関係の仕事というのが、このCodex
Committee on Methods of Analysis and Sa-mpling
、CCMASと言っていますけれども、ここで盛んに行われております。
この中では、規格に適合する検査のための分析法であるとかサンプリング法を選択するのに必要な基準、クライテリアを決定すること、それから、ほかの個別の食品部会や一般部会から出てきた分析方法、サンプリング方法を検討して承認する、エンドースといっていますけれども、それをすることが1つあります。それからサンプリングプランを作る。
分析所・試験所の精度管理システムや能力評価のための手法やガイドラインを決定することというのを任務にしておるのですけれども、このうちの特に最後の品質管理システムや能力評価ということが10年ちょっと前から付託事項に入ってきまして、これについての論議が非常に大きくなっております。先ほどちょっとお話があった規格値と不確かをどういうふうに扱うかというのもここで論議されているところです。
現在、分析値の信頼性を客観的に保証するシステムや手法の導入が当然というところが食品の世界でも国際的に、こういう状況の中ですべてが動いてきております。
先ほど松田先生からありましたガイドライン27、1997にできたものにこの4項目がありまして、これはCodex自体が輸出入、トレードの関係の仕事が主にありますから、輸出入の規制に関わる試験室の条件ということで、この4つが載っているのですけれども、私は、これがすべての食品分析を行う、データを出してそれを外部に対して説明するようなところはすべてこれが今後、要求されるようになるだろうと思っています。ISO/IEC17025の要求事項を満たしていること、決してここはISO/IEC17025で認定を取っていることというふうにはいっておりませんけれども、例えばEUなんかですと、同じような書き方をしているのですけれども、実質はアクリディテーション、認定を取っていることということで実際に動いております。
2番が適切な Proficiency testing
、技能試験に参加していること。それから妥当性が確認された方法を用いていること。それから内部品質管理、内部精度管理ですね、これを行っていることという4条件が載っています。
農水省で今年の6月に「サーベイランス・モニタリングの計画・実施及び結果の評価・公表に関するガイドライン」というのを出しておりまして、そのうちの評価、公表に関する部分について、前倒しで、既にホームページでこういう項目を載せています。この項目は、その中の得られた数値、情報を確認、評価する項目として以下の11項目があげられているということで、特に農水省から色々なところに分析を委託した場合に、出てきたデータについてはこれでチェックしますよということであります。この中に妥当性の確認であるとか、定量限界、検出限界の話、検量線、使用する標準試薬の適切さであるとか、標準添加回収率、不確かさ等々についての項目があげられております。
分析法の妥当性確認というのは、サーベイランスをするのか、モニタリングをするか、あるいはコンプライアンスに適用するのかということで、それぞれ分析法を選ぶときに、何を目的で使うのか、意図する特定の用途に対して要求事項が満たされていることということで確認をしていきます。
この中でゴールデンスタンダードといわれている一番強力な妥当性確認の方法が試験室間での共同試験です。Aという試験室とBという試験室がやったときに、同じような結果が出るか出ないかというところで、それが大きく違うような方法というのは認められないというのがベースにあります。
これを中心にちょっとお話をいたしますけれども、そのほかにも幾つかの方法で妥当性確認する方法はございます。
特に室内での繰り返し精度だけではなくて、室間での再現精度を明らかにするということで、これについては国際的なプロトコルが決まっておりまして、均質性が担保された試験試料群を複数の分析試験所に配付して、決められた分析手順書に従って分析して報告するということで、有効な試験所数、はずれ値とかそういったものがあった試験所ははずした残りの解析に用いる有効な試験所数は定量分析では8カ所、それから、試料数は最低5種類、特別の場合にちょっと例外がありますけれども、それでその方法を分析してくださいということになっています。
それから定性分析については、ハーモナイズされたプロトコルはないのですけれども、AOACインターナショナルという組織が出しているプロトコルでは10カ所ということが決まっております。
これはこういった形で Pure & Appl. Chem.の中にレポートとして書かれておりまして、
Codexのガイド28だったと思いますけれども、28の中にもこれを参照することというような形で方法が決められております。ですからCodexに方法を提示する場合には、これに従って方法の確認をするということで、農林水産消費技術センター等が規格を提案するときに、分析法を提案するときは、これに従ってやっております。
これはCodexとちょっと離れてISOの方の話ですけれども、GMOの定量法です。遺伝子組換え体の定量法の室間共同試験の結果を一部だけ持ってきたものですけれども、これは一番上に濃度が書いてあります。0.10から5種類の10%の濃度までの遺伝子、GMOのものを混入させた標準試料というか、ブラインド試料をつくりまして、それを13の試験所に配って解析した結果です。室間の
Repeatability
、再現性が11から16ということで、20%未満ということで非常に方法としてすぐれた方法だと評価されています。
ついこの間、これを含めた8つの方法がISOのFDIS21570で投票にかけられまして賛成多数で承認されました。10月3日で承認されております。日本で提案した方法というのは、実はプラスミドの中に組み換えた遺伝子を組み込んだものを標準分子として測定する方法ですけれども、これがISOの標準法として認められたということになっております。
そのためには、先ほど言ったような室間の共同試験をやって、妥当性を確認しなくてはいけないということでやっております。
これは食品分析をやっている方はおなじみで、これは化学分析に限った解析なのですが、AOACインターナショナルという組織がもう120年になりますけれども、数多くの室間共同試験というのを多くやっておりまして、それを解析した結果から導き出した式で、分析法であるとか、食品のマトリックスによらず、濃度だけで室間の再現性が規定されるという非常に有用な式なんですけれども、こういった式が示されています。濃度が2けた下がる、100分の1になるとRSDR、室間の相対標準偏差は2倍になるという式です。ただし、これの修正式がありまして、濃度の高い部分と低い部分、低い部分というのは120ppb以下ですけれども、これは22%に固定する。それから13.8%以上の高濃度の場合についてはここに示すような式にするという修正式が出ておりまして、いろいろな場面、場面で、先ほどのオリジナルの式が使われていたり、これが使われていたりしております。両方ともいろんな場面で現実に使われている式でございます。
これをどういうふうに使うかというのは、HORRATという指標がありまして、先ほどの Horwitz
の式によって出た室間共同試験の予測値、それと実際に我々がやった試験値の比を見て、それが2以内ならば、方法として室間共同試験が、良好ということで判断するというようなことが行われています。Codexの中でもこういった形で、方法の承認するときに、こういったHORRATという値も使っております。
今はゴールデンスタンダードといわれます多数の試験室が参加しての共同試験のお話をしましたけれども、Codexの Procedural
Manual
というのがありまして、その最新版には、これまでの論議をされて導入されたのですけれども、そういった室間共同試験で妥当性が確認された方法がいつでも使えるとは限らないわけで、そういった場合に、単一の試験所で妥当性を確認する。そのための基準というのが導入されました。 General
Criteria for the Selection of Single-Laboratory Validated Methods
Analysis
という表題で導入されています。これにつきましても国際的にハーモナイズされたプロトコルがありまして、「それに従ってやってください。」それから、「使用するところは17025、あるいはGLPのフラクティスの原則に従った品質システムでやってください」という形になっています。
こういった分析法の性能特性実験の要求事項ということがこういった形で表されていまして、AOACインターナショナルのジャーナルなどには、このところ、シングルラボラトリーでバリデートされた方法についてのレポートが幾つか目立つようになってきております。
それとはまた別に、AOACインターナショナルで、こういったe−CAMというシステムを今、運用を始めようとしております。これは既存の方法をバリデーションのレベルに応じて分類して、必要に応じて分析法を取り出そうとするものです。バリデーションのレベルとしては2、3、4、5とありまして、2番目が先ほどの8カ所以上という多数の研究所が参加するもの、その次が複数のラボラトリーでやるもの、それから、その次はシングルラボでバリデーションされたもの。それから、文献等に記載されていてバリデーションの状態は不明、あるいはされていないのですけれども、かわるものがない等で有用性があると判断されたものという、こういったものを整理してデータベースにして、それが皆さんで使える形にしつつあります。
それから、それとは別に、国家等が規制のために使用している方法は、バリデーションのレベルにかかわらず別のグループということで位置づけられております。
方法によってはバリデーションをされてない方法がある。そういうことは松田先生がおっしゃられたように、古いものは今、バリデーションして見直しをしていくというような状況がここの部分でもあるわけです。
内部品質管理をするときに、我々、標準物質があるときは、それを使って測定をしますし、それがない場合は標準添加回収試験をやるとか、繰り返し測定をするということで、真度と精度の管理を一定の分析回数、あるいは期間ごとにやっております。このときに認証標準物質があればそれにこしたことはないのですけれども、なかなかあったものがないというのが現状です。特に無機成分についての標準物質は昔からかなりありまして、いろいろ利用できるのですけれども有機化合物については少ない。ただし、ここで私がお話している標準物質というのはピュアなものではなくて、マトリックスの組成標準物質のお話に限定しております。
日本で使われているのはどうなのかというのは、先ほど柴田先生の方からありました国立環境研究所が二十何年前から認証標準物質ということで、こういったものを出しており
ます。そのうちの一部が食品ということで使えるということで、今、使えるのがクロレラ、
ホンダワラ、玄米、魚肉粉末、玄米粉末は、玄米の中のカドミウムの濃度が低いもの、中くらいのもの、高濃度と、3種類セットでそろっていて、非常によく使わせていただいているものでございます。
それから、下に放射線医学総合研究所と国立環境研が共同でつくったもの、これがナンバー27だそうです。これらは茶葉を除いて今、手に入ると思います。国立環境研のホームページからごらんになることができると思います。
今、私たちのところで、先ほどGMOの標準法をつくったという話をしましたけれども、
それを実際に動かしていく上でどうしても標準物質が必要であり、ブラインドに共通試料としてつくったものを認証標準物質にしていくということです。今、ISOガイド34に基づいた品質システムを構築中でして、もう間もなくこの品質システムの運用の開始の宣言をしたいと考えております。
今は内部精度管理の話をさせていただいたのですけれども、外部精度管理という Prof-iciency Testing
への参加ということが色々なところで要求はされておりまして、これもISOのガイド43−1でありまして、多くの方法というのは、試験所間比較として行われます。均質性が担保された試料が配られまして、それを各自の試験所が自前の方法で分析して値を報告する。そしてそれについての評価が事務局の方から送られてくるという形になっております。
私たちが参加しているのがCSLというイギリスのセントラル・サイエンス・ラボラトリーというエージェンシーですけれども、そこがやっているものに2002年から参加しております。年間150〜160のラウンドが用意されておりまして、統計的に処理された値がZスコアという、付与された値からの隔たりをあらわすZスコアというのがありまして、標準偏差と考えていただければよろしいと思うのですけれども、それが2以内であれば分析結果は満足、2から3なら疑わしい、3以上であれば不満足ということで、2を超えたら何かしら原因が考えられるので、もう1回自分の方法をチェックしなさいということで利用しています。
食総研では、これまでこういったもので、CSLは4つのスキームを持っていまして、FAPASという化学分析、FEPASという微生物検査、GeMMAという遺伝子組換え体、それからLEAPという水分析のプログラムを持っております。我々のところはFAPASとGeMMAの2つに参加しておりまして、これは1回やっていい成績だったからそれ以後やらないということではなくて、毎年定期的にやっていただいて、自分たちの技量を確かめるということで、食品分析の分析所の品質保証をフォローする1つの大きな方法でございます。
国内では食品薬品安全センターという厚労省の所管している財団ですけれども、保健所ですとか衛生試験所、それから公的機関等、厚生労働省の登録検査機関、これのGLPの外部精度管理の受け皿ということで実施しております。ただ、これは毎年4月か5月に一斉に締め切ってしまうために、年度途中から参加希望でも出せないということですけれども、一般の試験所も4月とか年度はじめは募集がありますので参加することができます。
ただ、件数はこういったふうに、今年でいいますと理化学検査が6件、微生物検査が5件というふうに限られておりますけれども、先ほどの厚労省のGLP関係のところはこれを受けなければいけないということのようです。ですから、1ラウンド500から600の参加所数になると聞いております。
こういったものを我々もつくっていくというか、くみ上げていく必要があるというところで、食品総合というプロジェクトの中で、赤カビ病の病原菌が産生するカビ毒のデオキシニバレノールとニバレノールというのがあるのですけれども、デオキシニバレノールに
ついては外国のものが使えるのですが、ニバレノールについては外国のものがありません。
国内ではデオキシニバレノールとニバレノールも問題になることが多いので、それについての Proficiency Testing
を立ち上げようということで、15年度から毎年2回、2ラウンドずつ実施しております。引き続きこれはやっていく予定にしております。
分析化学会が昨年から始めたのがこれでして、ISOのガイド43−1に基づく技能試験ということでやっております。一般成分とミネラルについてですけれども、昨年が全脂粉乳、今年は魚肉のソーセージということで、今、募集中だと思います。
試験所認定の話がありますけれども、ISO/IEC17025ということで、ベースはISO9000−1ですけれども、そこに一定の基準で、特定の分野の試験を行う能力のあることということで、実際に審査員が来て能力チェックをして認定するということです。
ここの2番目にありますように技術的能力についての要求事項ということでやっております。この中にSI単位へのトレーサビリティであるとか、試験方法のバリデーション、技能試験への参加等々、不確かさの推定、こういった要求事項が入ってきております。国内では、残留農薬についての分析法で認定を取っているところが多いようです。食品の分野は大変遅れていたのですけれども、今、全体で20ぐらいのところが認定を受けております。JABさんと、それからJCLAさんの2つが認定を行っております。化学物質に関しては、国内ではNITEさんも認定をしております。
これが最後になりますけれども、標準物質にしても、先ほどお話した Proficiency Te-sting
にしても、ものによっては外国にあるのですけれども、日本で使えないものがあるのです。それは法律の植物防疫であるとか、検疫法の関係で、そのとき入れたいと思ってもストップされるものがあります。食品というのは食生活と密接になっていて、日本で特有のマトリックスのものというのが当然出てくるわけで、そういったものについては外国にお願いするということができないので、国内で作成して供給していかなくてはいけないだろうと考えておりまして、認証標準物質にしても、
Proficiency Testing
にしても、自前の供給体制というのを作っていくのが必要だろうと思っています。それぞれ得意なところでそういうのをやっていただければいいなと考えております。
それから、1つのところで分析法をつくって、できましたということではなくて、分析法の室間再現性評価のための共同試験スキームの一般化ということで、農水省の予算で、我々のところで立案するプロジェクトがあるのですけれども、その中でできるだけ共同試験を行って、妥当性を確認するような方向で課題をつくるようなことで今やっております。
○今井座長 ただいまの御説明に関しまして御質問、御意見等をお願いいたします。
○河村委員 私の理解が正しいのかどうかを教えていただきたいということなんですが、この第3ワーキング第1回で、標準物質のいろんな分野が整備されているというグラフの中で、食品の分野がものすごく低かったというふうに覚えているのですけれども、そのときの計画が、仮に食品のところのグラフがもっと大きかったとしたら、例えば松田先生がおっしゃっていたような問題点やお悩みが少なかったという理解でよろしいのでしょうか。
○今井座長 私の理解では、御指摘いただいた大分前の説明の内容は、産総研を中心とした知的基盤の中での標準物質の整備計画の話ではなかったかと思います。
そのときには、経済産業省の中では、食品のところは余り考慮に入れてなかったというのが現状だと思います。それで将来的にはどうかというと、産総研でとても賄いきれないので、既にある分野、あるいは御専門のところから出していただいたものを国として認知するような形をとる可能性があるという、そういう説明ではなかったかと思うのです。
ですから、グラフの上では、知的基盤の整備計画の中では足りなかった。将来的には、JCSSの流れとは別に、認証標準物質的な制度を取り入れれば、オールジャパンとして、今日お話しいただいたような内容を計画の中で取り入れていけばだんだん増えていくのだと思うのです。そこは説明をされた中野さん、そういう理解でよろしいですか。
○中野委員 色々な機関が色々な標準物質を出していらっしゃいますので、今回のこの計量法の改正を契機といたしまして、それを一体として国の標準として位置づけるようなフレームを作っていければいいのではないかなと思っております。
○今井座長 この委員会の中で、こういうところを取り入れてもっと整備を加速させるべきだという御意見をいただければ、そういうふうな提言ができるかと思います。
○田畑委員 私ども日本環境測定分析協会は、計量証明企業者の集まりでございますので、
精度管理ということにたえず気を使っているところでございます。
それで今、お話しいただいた安井先生の中で28ページにございますけれども、汚染金属ということで、これは食肉缶詰の中の鉛、水銀とかその6項目を分析するということでございましょうか。そしてその6項目を分析して、このCSLの技能試験に参加するのはどれぐらいの費用がかかるのでしょうか。
○安井部長 これはマトリックスが例えば粉乳中の、この6つ一緒に全部入っていたかどうかちょっと記憶にないのですけれども、例えば粉乳中の鉛、総水銀、カドミ、総ヒ素、アルミ、スズについてデータを出してくださいという形です。今ですと、CSLについては日本に代理店がありまして、そこで2万5,000円ぐらいです。
○田畑委員 6項目、サンプルは粉乳というサンプル1つで6項目のデータを出してということですか。
○安井部長 はい。6項目出さなくても1項目でもかまいません。これは食総研が参加したものだけですので、このほかにも汚染金属については、マトリックスがもう幾つかラウンドがあったと思います。
○中野委員 34ページにISO/IEC17025の条件が書いてあって、この食品の分野でISO/IEC17025の要求事項の運用の実態というのをちょっとお伺いしたいのですけれども、34ページにある要求事項の下から5番目に測定器の校正とSI単位へのトレーサビリティの現示とあるのですけれども、各機関が出している色々な標準物質を、先ほど松田先生のお話にもあったように、700も農薬の標準が必要という話になると、SI単位へのトレーサビリティの現示というのはなかなか難しい部分もあるとは思うのですが、そのような現実の環境のなかで、ISO/IEC17025の要求事項を満足することについて、どのような運用になっているのでしょうか。
○安井部長 運用の中身については把握しておりませんけれども、1つはトレーサビリティを考えるときに、組成標準物質のデータは、どうですかということはやられていると聞いております。ピュア物質のところは、申しわけないのですけれども、把握しておりません。
○今井座長 今の関係で、ISO/IECの17025は、2005年版が発効になっておりまして、対応するJISの翻訳作業も終えていますので、早ければ今年中にJIS Q17025:2005として出るかもしれません。
○久保田委員 食品の技能試験について2点ほどお尋ねしたいのですが、1点は、27ページにもございますけれども、CSLの場合には付与値をどうやってつけているかということが1点です。といいますのは、国内の場合、環境分野の例えばダイオキシンとか、そういうものでは、付与値を付けづらくてやむを得ず中央値を使っているという現状があるものですから、食品の分野では、CSLも含め、あるいは国内の食総研でやろうとしておられる技能試験において付与値をどういうふうに考えておられるかということ。
それから2点目は、この技能試験を受ける国内の食品分析機関、一般の民間機関を含めて、現時点での技能レベルというのは、国際的に見てどのぐらいと考えてよろしいのか、その2点をお尋ねしたいと思います。
○安井部長 まず最初の付与値ですけれども、これは中央値を使っています。ロバスト平均ということでロバスト中央値を使っております。
それからCSLの場合は、もう1つ付け加えると、Zスコアを計算するときの標準偏差ですけれども、これは Horwitz の式、あるいは
Horwitz
の修正式、あるいは今までの技能試験のデータを使ってやっておりまして、そのとき参加した試験所のデータによる標準偏差は使っておりません。ですから、場合によっては全部がZスコア2の中におさまるということもあり得ますけれども、それはないようです。
それから、レベルとしては、国内で行った、例えば食総研と食品薬品安全センターで行いましたカビ毒のものですけれども、はずれたところが数カ所ということで、それは結構いい値が出ております。これは日本だけではないのですけれども、カビ毒で世界各国の昔の
Proficiency Testing
に参加したものと、最近のもののZスコア2以内の傾向を見ますと、昔は方法がいろいろあったというところもあるのですけれども、今、液クロ法がほとんどになってきていますけれども、2以内に入る確率というのはかなり改善されてきてよくなってきているという状況はあります。
○久保田委員 今御質問させていただいた前段の方で、中央値を使うということは、全員がずれれば、皆が結構Zスコアはよくなるわけですね、真値から離れている可能性があるということを考えますと、できれば真値の代わりとしての付与値がつけらればいい、あるいは認証標準物質の開発段階で付与値をつけておいて、その認証標準物質が使えればいいということがあるわけですけれども、国内で、食総研も含めて、幾つかの機関が代表して認証値的なもの、付与値を先につけるということは不可能なのですか。
○安井部長 可能だと思いますけれども、結局技能試験をやるのと、今のお話になると認証標準物質のレベルに入ってくるわけですね。それとお金のかかり方ですね。そこまでやるのがもちろんいいのですけれども、コスト的には大変なので、技能試験での中央値をもって、終わったものはテストサンプルとして市販するというような形を考えていますので、認証までいかないのですけれども、RMという標準物質という形でできると思っています。
ただ、現実にCSLでやっているものが、中央値と実際に能力のあるというか、信頼の
あるレファレンスラボみたいなところでやった値がかなりずれたという事例がありまして、
その辺は問題になっていて、ディスカッション中だと聞いております。
○河村委員 松田先生のおっしゃった問題点のようなものが私なりにとても印象に残っておりまして、こんなあいまいなことや、こんな問題点があるままに食品の分析がされているということが私の頭から離れなくなってしまいまして、ですから、表示された結果になったときには、私たち消費者がマーケットでこういう成分が入っているとか読むときには、その文字があるかないか、1か0かということになっていまして、でもそれを信じることになるわけですけれども、そのもとをただしていくと、分析表があってもその値が正しいか確かめられないとおっしゃるようなことで続けられているというのは、何を信頼していいのかわからなくなりますので、表示されたものから、私たちなりでのトレーサビリティですね、表示されたものが正しいかどうかという、おおもとに分析されている分析方法が正しいのかどうか、分析された値が正しいのかどうかがちゃんと確立されているという安心感をぜひ得たいと思いますので、そのためにどういう整備をしたらいいのか、どういうルールを決め直したらいいのかということをぜひ考えていただきたいと思います。
○今井座長 御指摘ごもっともだと思います。今日、お話しいただいたのは、環境から食品とわたって、非常によくできているところもたくさんありますが、そうでないところもまだまだあるということで問題提起になっているのだと思います。
そこでさきほどお話が出ましたけれども、JCSSの中では、かなり物理系を中心に、標準物質の中でも、SI、国際体系トレーサブルなものを中心に今までは考えてきたわけですけれども、それだけはなくて、我々の身近に近いものは、必ずしもそういう国際体系につながらない部分もあるので、共同実験、あるいは国際的な方法、それから、権威のあるところで1カ所でこうだときちっと決めていただく。どれをとって、どうやるかというようなことについて、その裏付けが、機関とか、そういう信用性のある標準物質が開発できればという前提ですけれども、そういう中では必ずしもJCSSだけではなくて、国として認知する仮の名前でいわせていただければ、認証標準、あるいは認証標準物質というような、国としてのそういうオーソライズができれば、だんだん安心度が高まっていくのではないかと思っています。
そのようななことで、今までは物理、電気、化学分析、ピュアな科学に近かったと思うのですけれども、プレゼンテーションしていただいた4先生のところで、例えば今もお話に出ました国際的なルール、あるいはガイドをどの程度流用しているのかとか、共同実験がどのくらい進んでいるのかとか、あるいは日本の国内でどういう形で認証していらっしゃるのかとか、それから各組織の中で将来的にどういう標準物質の開発計画がおありなのか、それがきちっとしたレールの上に乗って進められているのかどうか。将来的にこういうことをやらなければいけないのではないかという課題もいろいろあると思うのです。
それぞれの分野に共通的にわたる簡単な質問ですけれども、後ほどさせていただければなと思っているのですが、いかがでしょうか。よろしくお願いいたします。
その他
○今井座長 今後の進め方等を含めて事務局から御説明いただきます。
○吉田課長 資料7に従い、説明。
○今井座長 これをもちまして第3ワーキンググループ第4回目の会合を終了いたします。
どうもありがとうございました。
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