1.日時:平成17年11月2日(水) 13:30〜16:00
2.場所:経済産業省別館10階1028会議室
3.出席者:今井座長、伊藤委員、久保田委員、桑委員、齋藤委員、
芝田委員、杉山委員、瀬田委員、中野委員、畠山委員、
本多委員、松本委員(四角目代理)、三浦委員、
望月委員、山領委員
4.議題:
○ 標準ユーザー
・日産自動車株式会社計測技術部計量計測グループ主担
望月 知弘委員
・(株)三菱化学ビーシーエル品質保証部 木村 一夫副参事
・横浜市水道局浄水部 畑澤 智 部次長兼水質課長
・東京都健康安全研究センター 矢口 久美子水質研究科長
議題2 その他
5.議事内容
○吉田知的基盤課長 時間になりましたので、第5回計量制度検討小委員会の第3ワーキンググループを開催させていただきたいと存じます。
それでは、以降の議事進行は今井座長によろしくお願いいたします。
○今井座長 さて、前回4回目までは標準をつくる立場、認定をする立場、あるいは現場で標準物質を含めて、標準を作って値付けをして供給していただく立場でお話をしていただきました。これまでの4回を通じて幾つかの論点が明確になってきたのではないかと思います。
簡単にまとめさせていただきますと、色々な計量標準が一般に活用されてくる中で、オールジャパンとして整合性のとれた計量標準を整備していくことが必要ではないかというお声が上がったかと思います。そのためには必ずしもまだ十分に整備されていないところをどのようにして対外的にコンセンサスを得ていくか、そのための基準をどのように定めていったらいいかというようなことがまず第1に挙げられたかと思います。
2番目といたしましては、このような標準をつくるためには信頼性が大事でございます。そのときに信頼性の基礎となるいわば物差しというべき計量標準、それとそれを支える測定方法とか分析方法、あるいは国際的なルールとしてのJISやISOガイドなどをきちっと整備していかなければいけないのではないか。どちらかというと周辺の技術、まさにこれが知的基盤技術になるのだと思います。
3番目といたしましては、1番と2番で挙げられたことをさらにしっかりと対外的に説明責任をもって整備していくためには、ルールとコンセンサスの中で計量、計測を行うということ、そしてその測定結果の信頼性を高めていくことにより、国民の安全、安心を担保できるのではないか、それがすなわち国際的な産業競争力にもつながるのではないか、そんなまとめ方が今までのところ暫定的にできるのではないかと思います。
そして、本日でございますが、今申し上げましたようなニーズは急速に広がってきており、なるべく早く整備していかなければいけないという立場にございます。その中で製造現場における品質管理は十分今までなされてきたと思いますけれども、大気環境中の環境汚染とか水道水中の有害物質、そういうものに対する信頼性がきちっと議論されてきたかどうか、整備されてきたかどうかということが若干気になるところでございます。
本日は、このようなお立場から4名の方々にお越しいただいて、それぞれのお立場で現状をご説明いただくと同時に、何が必要か、あるいは何をこれから期待するかというようなことをご説明いただければと思っております。
なお、このワーキンググループでの審議の内容は公開を原則とするということになっておりますので、後ほど議事録等でご確認いただきたいと思います。
それでは、本議題に入ります前に、第4回の議事録と本日第5回の議事録は、次回の第6回でご確認いただければと思います。お願いいたします。
それでは、議題1に入りますが、計量標準のユーザーからみた今後の標準供給、国際整合性、国内のトレーサビリティ体制の確立というようなことに関しましてご意見を伺うということでございます。
きょうは4人の方々でございますけれども、お一方のご説明を20分程度、それぞれ10分程度の質疑応答の時間を設けたいと思います。
それでは、最初のご説明ということで、本ワーキンググループの委員でもいらっしゃいます日産自動車株式会社計測技術部計量計測グループ主担の望月知弘様からご説明をお願いいたします。
日産自動車株式会社計測技術部計量計測グループ主担
望月 知弘委員
○望月委員 日産自動車の望月でございます。よろしくお願いいたします。
私の場合、製造業ということですので、かなり現場に近い話もあると思います。まず私どもは企業の中で計測器の管理をどのようにやっているか、トレーサビリティの確保としてどういうことをやっているか、問題点、あるいは私どものおつき合いのある企業さんからの声も含めて簡単にまとめさせていただきました。
まず、日産自動車としての計測管理の体制なのですが、ものづくりの企業の場合は、通常品質保証部という部署があり、計測管理というのは品質保証の一分野としてやっている。その辺の考え方は変わらないのですが、私ども計測技術部というのは開発部門の中にあります。研究所や設計、実験と同じところ、そこにある計測技術部が生産工場あるいは色々な品質保証、サービスの拠点、海外の生産工場、開発拠点を含めて計測管理という意味で一元的に管理を統括しているというところが他社さんとは違う構造になっております。
計測技術部の中には、私が担当します計測管理の分野、それと新しい計測技術、色々な検査や開発のために実験をしたいというときにまだ市販のものがない、あるいは世の中にそういう技術がないというものを大学あるいは研究所さんと共同で開発していくという2つの機能がございます。
その中で計測器の管理という分野、日産自動車としての国内の計測器の校正の拠点でございます。主に関東地区と九州工場ということで、NTCと書いてあるのが厚木にある設計開発の拠点で、テクニカルセンターというところになります。私ども計測技術部の校正室というのは各工場地区にございまして、トータルで100
名の体制ということになります。かなり大きな企業の規模の中でも、人員の体制としては恐らく大きなものかなと思います。
この中で表の上にありますNTC(テクニカルセンター)と川越地区、これが日産の計測管理、校正の中で日産としての標準ラボという位置づけになっております。各工場にある校正室というのは、主にローカルの工場で使う計測器の校正を行う。その各工場の校正室で使う標準器(校正の設備)をNTCと川越地区の日産としての標準器を使って校正するというヒエラルキーになっております。
「日産社内トレーサビリティ体系」、これは一般的なものですが、社内として日産社内標準器、これは日産社内のプライマリーの標準器という指定をしているものが93点ございます。その下に二次標準器、それは各事業所に配付をされている。それを使って生産工場、開発の拠点の計測器を校正しています。
計測機器の約95%を社内で校正をしています。ですから、標準器の校正以外の分野ではほとんど校正事業所さんの手をかりていないということで、校正事業を産業として育てる上では余りお役に立ててないかもしれません。
日産の社内の標準器というのは、当然国内では日本としての国家標準につながる。自動車の場合、扱う分野が非常に広いものですから、国内で標準につながらないものは諸外国の国家標準につなげるという形になっております。約10年前ぐらいまではNISTなりPTBなりにつながるというものが3分の1ぐらいあったのですが、日本の方の標準、あるいは供給の整備がかなり進んできましたので、諸外国につなげざるを得ないというものは非常に少なくはなってきております。ただ、まだ一部残っております。
私ども自身校正しておりますので、計測器のユーザーであると同時に校正事業者でもあります。社内の日産としてのプライマリーの標準器の一部が、ISO17025
の認定事業ということで、JCSSの長さ、JABさんから直流電圧ということで認定をいただいております。これはどちらかというと外向けの商売と申しますよりも、関連メーカーも含めて社内に良質・高精度な計測標準を供給する、もう1つは社内の校正技術者の育成ということが大きな目的になっております。現実の話として、この2つの事業単体では大赤字というところです。
もう1つ、グローバルということで、最近中国、アジア諸国を含めて工場を展開しております。欧米には過去からあるのですが、グローバルで日産としてのトレーサビリティをいかに確保しようかというところが今私どもの部署の最大の課題であります。
現在ごらんいただいている図は「グローバルトレーサビリティ方針」です。私どもは基本的に各国の計測標準にそれぞれの国の工場などがつながっていく、その各国の計測標準同士が相互に同等性が証明されているという前提のもとで、その下にある私どもの各工場で測っているものが同じように測れているという前提に立っております。
それを実際に検証するということで、最近は各国の拠点での検査の精度、これはラウンドロビン試験といいますが、持ち回り試験のような形で検証するということを始めております。精度としてはちゃんとできていても、我々企業としては結果として物がちゃんと同じようにはかれているということを担保しなければいけない。そのために、結果が違えばそこの標準につなげるということが本当にいいことなのかどうかということを見直すというようなこともあります。ものづくりの企業さんの中でグローバルに展開されているところの中には、全部日本で買ってもっていくという形でトレーサビリティを確保するというところもあると聞いております。日産としては各国の標準につなげて国際的に認知された精度のもとでトレーサビリティを確保するという方針で現在進めております。
この1―4というのが、我々が校正の対象としている計測器の数になります。非常に大ざっぱな分け方で「ゲージ」「計測器」「センサ」と書いてあります。管理している対象の点数が約11万点、そのうち年間の校正点数というのは物によっては2年周期、3年周期、あるいは3カ月周期というものもありますので、対象点数の数とは異なっておりますが、7万4,000
点程度を毎年、主に社内で校正をしている。
「ゲージ」と書いてありますのは、色々なものがあるのですが、主にエンジンとかトランスミッションのような機械加工をする工場、そこで機械加工の出来映えを検査するために、軸の径とか穴の大きさを、決まった寸法の道具を使って規定の大きさにあいているかどうかというのを検査します。そういうところで使うものです。
「計測器」と書いてある中には、小さいものは温度計から大きいものは車1台丸ごとはかるような3次元測定器まで含まれています。
「センサ」と書いてあるのは圧力のトランスデューサー、加速度計、そういうたぐいのものです。センサの中でかなり数が多いのは、衝突などの安全実験で使う加速度計です。
それらを社内校正するために保有する標準器ということで、先ほど日産としてのプライマリーは93点と申しました。そのほかセカンダリー、あるいは場合によってはその下ということで、社内標準器としては約500
点がございます。扱う量としては、長さ、電気、加速度、圧力、周波数・時間、力・トルク、気体流量、温度・湿度。このほかに標準器という形ではなくて標準物質、標準ガスのたぐいもございます。
赤字で書いてあるのが、現在日本の標準につながってないものです。「電気量」のところに「電圧比発生器」というのがございます。これはひずみゲージ式と呼んでいる力をはかるロードセルやトルクをはかるトルクトランスデューサーなどの出力を検出するアンプ、「ストレインアンプ」と右側に書いていますが、それを校正するための道具です。これはこの道具がなくてもできるのです。ストレインアンプというのは私どもは何千点という数でもっていますので、効率よくするためにはこの電圧比発生器というのをもって直接それが国家標準につながっている方が、そのたびに色々なものを組み合わせて校正をするよりは便利だということで、これはかなり校正のためにお金がかかっていますが、ドイツの方に送って校正を行っております。
下の方の気体流量も標準は供給されているのですが、自動車で使う特に気体の大流量のところがまだ範囲としてカバーできてない部分がございますので、その部分はアメリカの方に送ってNISTトレーサブルということで校正を行っております。
なぜこんなに社内校正が多いのかという一番大きな理由は、社外に校正に出すと時間がかかります。工場の製造ラインは毎日動いていますので、製造ラインを止めないように校正に出すためには予備品をもたなければいけない。そのコストはばかにならないというのがあります。
それと社外に出したとき時間がかかるというのはもう1つ大きな問題がありまして、製造ラインで今まで使っていた計測器を校正に出して異常がありました、不合格でしたという連絡が1カ月後に来たのでは遅いのです。その間に製品は流れてしまいます。ですから、特に全数検査で使うようなものは現場から引き揚げたらすぐ校正して、工場から流出する前にオーケーかだめだったかというのを判定する必要があるということで、これはこの次に欧米の話が出てきますが、欧米の工場はほとんど社外校正なのですが、こういう全数検査で待ったなしというものはやはり社内でやっております。
2番目に、年間7万4,000
点の校正なのですが、これを全部一括でお願いしますとお願いできる校正事業者さんがないというのがもう1つの問題であります。確かにそれぞれの専門のメーカーさんに分けて出せばできないことはないのですが、そのための事務処理は非常に膨大なものになりますので、多種多量の計測器を一括して受注できる校正業者さんがもしあればそこにお願いするという選択肢は出てくると思います。
3番目に、平均してみればコスト競争力がある。例えば先ほど安全衝突実験に使う加速度計が数千個あると申しました。加速度計の校正を出して1個1万円から2万円とすると、年間数千万円かかるわけです。その加速度計を校正する装置がやはり数千万円です。そうするとその装置を買って社内で校正すれば、労務費も含めて2年ぐらいでペイするという計算になります。これは計測器メーカーさんにお願いすると、計測器メーカーさんの校正の場合は大抵自分たちでつくった製造品の検査と兼ねていて、市場に出したかなりのパーセントのものがまた戻ってくるということを想定していませんので、量的にこなせないというのが現実のところです。
ということで、下に黄色で囲んでいますが、社内校正が多い理由は、質と量と納期を私どもの要求を完全に満足していただける校正事業者さんが今現実にないというのが大きな要因になっています。
欧米拠点なのですが、先ほど申しましたように、ここは社外校正が主になっています。校正業者というのはISO/IEC17025
の認定を受けた業者です。これは日本と現地人の感覚が全然違っていまして、校正業者というのはISO/IEC17025
をもっているところだろう、もっていないところは校正業者とはいえないじゃないかというのが彼らの感覚です。したがって、ほとんどの計測器に認定のロゴがついております。私どもがみて唯一ついてなかったのは大型の3次元測定器で、日本製のものです。日本の代理店の方が現地に行って校正をしているものがついていなかったぐらいです。
日産の拠点の対応ということで、先ほど多種多様のものを大量にこなせる業者が日本にはないと申しましたが、欧米の場合、ほぼ1社に出しております。しかも夏休みと冬休みの間に全計測器を校正するというような形をとっております。
ただ、社内で校正しないと社内に技術が育たないという問題がございます。それは校正をするという技術だけではなくて、例えば校正周期を適切に見直すとか、校正の規格を適切に設定するといったことでございます。
欧米の校正業者、今写真にあるのはUKAS、イギリスの場合です。たくさんあるのですが、品質は日本のJCSSの事業者さんに比べて少し疑問があります。例えばこれは校正ラベル、緑の方です。有効期限が書いてあるのです。有効期限は、ISO/IEC17025
上はお客さんの要求があればつけてもいいのですが、これは必ずつけてくるので困っている。あるいは校正証明書に合否が書いてある場合もあります。合否は校正業者が判断するものではなくて使う側が判断するものだ、だから書いてくれるなというのだけれども書いてくる。そういうのもあって、質という面では多少落ちるかなという気はしております。
日本で特にJCSSの制度とか標準供給というところでそれほど進んでいない理由を私どもの経験から3つの要素に分けて書いてみました。
一番左側の「標準供給の遅れ」というのは、既に認識をされて取り組まれているところであります。国家標準が制定されて3年たつけれども、まだ本当に認定の校正事業者がいないとか、現場の計測器まで認定校正できない。これは基本的な量はできるのだけどというところはあっても、各企業の中で基本的な量を組み合わせて社内でまたやるというのはかなり大変なことなのです。技術的な面、設備的な面、時間的な面、つまり現場で使っているものがそのまま認定のロゴがつくという状態になればかなり改善はされるのではないか。
認定校正そのものの普及ということでは、認定事業を行っている事業者さんが認定事業でどれぐらいビジネスとして採算をとろうと考えられているかというところはちょっと私はわからないのですが、私どもがやっている分には採算が合わないというところはあります。これは逆にお客さんが増えないのでというところもあるかと思います。
なぜお客さんが増えないかというところで、私としては一番気にしているのは「暫定対応の定着」というところでございます。ISO9000とか昔のQS9000とかTS16949
、いろいろな品質マネジメントシステムが普及したときに標準供給の方が追いつかなかったわけです。そのときに審査機関としては、トレーサビリティ対系図をつけてください、別の量で認定を受けていればいいことにしますという暫定対応をして、暫定対応の方が両者にとって楽だったということもあります。これが定着してしまっている。トレーサビリティ体系図というのは、私は海外の拠点工場でみたことがありませんし、トレーサビリティ体系図といってもだれも何かわからない。私どもが認定事業をしていても、審査機関から私どものJCSSの校正証明書にトレーサビリティ体系図がついてないと不適合を食らったという話も、過去にはございます。
一番下に書いたのは、私どもユーザー側の課題も大きいということです。そもそも校正証明書を発行しても隅から隅までごらんになってないです。間違っているところもあるし必要なことが記載されていないこともある。標準のユーザー側が賢くならないと校正業者さんの方の牽制にもならないし成長にもならないと思いますので、私どものところでは外に校正を出したものはすべて校正証明書を丹念にチェックして、不備があれば、それが海外であろうがどこであろうが、ちゃんと修正をしていただくという態度で臨んでおります。
もう1つ下に第三者認証の取得目的があります。ISO9000などをとっている会社さんが集まって話をすると「ISO9000をとって品質が上がりましたか」とよくいわれます。その辺の目的、取引先からとれといわれたとか、そういう動機がある限り、それを有効に使って自分たちの品質とか効率を上げようというところにつながっていかないのではないかと思います。私どももISO9000を各工場、また私の組織自体もとっていますので、本来の目的をちゃんと見据えてやっていく。ユーザー側の啓蒙というのは非常に大きいのかなと思います。
これが最後になります。私ども標準のユーザーが価格・品質・納期で校正業者を選択できる状況にならないと、校正事業がビジネスとして成熟した状態になっていない。私も時々、校正事業のビジネスモデルって何なのだろうと考えます。計測器メーカーの附帯サービスとしてやっているとか専業でやっている、あるいは海外でよくあるのはメンテナンス業者が校正事業をやっている。そういうビジネスとしての成熟が必要かなと思っています。そのためには認定事業の範囲がもっとお客さんのニーズに合わせて拡大ができるということが必要だと思いますし、標準供給のスピードアップが必要です。1つの国家標準を制定するためには非常に長い期間かかるのですが、それを即座に供給をしていただくということが必要なのかと思います。
審査機関の量的能力ということもあると思います。範囲が拡大されるとNITEさんの方がたくさんの申請に対して対処するのが大変になる。そのあたりもNITEさんがかなり裁量をもって動けるような形が必要なのかなとは考えております。
ユーザー側の啓蒙というのは非常に難しいのですが、赤で「法規制..」と書かせていただきました。強制的に法規制をかけるというのは非常に効果があります。ただ、ユーザーの立場としては余りそういった手はいただきたくないと思います。
そのほかには品質マネジメントシステムを有効に活用する。これは、1つは私どもの場合はサプライヤーさん(部品を供給する会社)がたくさんあって、そこにある種の品質マネジメントの要求をしているわけです。それをうまく使ってサプライヤーさんの計測管理、標準に対する啓蒙を行っていくということも現実に今始めております。ただ、どれをするにしても標準供給のスーパーアップというのはすべてのベースになっております。先ほどの暫定対応の定着という状況をまたつくり出さないためにも、そのときに必要な標準がすぐ手に入るということは必要なのかと考えております。
以上、私のプレゼンテーションを終わらせていただきます。
○今井座長 望月委員、どうもありがとうございました。現状のご説明と当面している、まさにこのワーキンググループそのものの課題も含めてご指摘いただいたと思います。
ご質問、ご意見等ございましたら、お願いいたします。
○杉山委員 先ほど、暫定対応の定着ということでISO9000あるいはTS16949
に対応するものはまだ国内には標準供給が足りなかったということなのですが、まだこの暫定対応というのは続いているのでしょうか。
○望月委員 まだ続いております。
○杉山委員 ということは日本国内でJCSSの標準供給というのが欧米と比較してまだまだ不足しているという認識なのでしょうか。
○望月委員 そうですね。私ども自動車の中で法規制がかかっている項目でもまだ標準が供給されていないという状況はありますので、仕事全体という品質マネジメントシステムでとらえる業務全体となると、ほとんどのものが国家標準へのトレーサビリティをメーカーさんが出すトレーサビリティ体系図で説明せざるを得ないという状況であります。
○畠山委員 スライド10ですが、欧米諸国では校正事業者が一括してすべてを取り扱うとのこと。量目にもよると思うのですが、日産さんの場合ですと恐らくほとんどの量目にわたって計測器をもっておられると思います。そうした場合に日本ではなかなか対応できないことがございますが、欧米諸国ではそれだけ規模の大きい校正事業者が存在しているということでしょうか。
○望月委員 そうですね。規模が大きいですし、その業者がすべて100
%のものを自社内でできない場合もございます。そのときは校正事業者のネットワークを通じて仲間といいますか、ほかの量を扱っている業者に出して、少なくとも私どもがお願いした業者さんが窓口になってすべてこなしていくという仕組みができ上がっております。
○畠山委員 それはいわゆる下請、孫請という関係の契約ということでしょうか。
○望月委員 いいえ。ほかの業者に出すにしても、そこはUKASの認定をもっているところですから、むしろ横のつながりという形だと思います。お互いにほかの業者が受けてできないものはその業者にお願いするという横の連携ができているのかなと思います。
○久保田委員 8ページのご説明でドイツのPTB、アメリカのNISTにトレーサビリティをとっているものがあるという話がございますが、こういったものは社内標準器を校正に出す周期の点からみて、海外に出していても生産工程の方への影響がない程度のものなのでしょうか。
○望月委員 そうです。標準器ですので、海外に出しているものは社内のプライマリーの標準器で、それを使って年に1回程度工場の標準器を校正するという形ですから、海外にプライマリーの標準器が2カ月ぐらい出ていても、プライマリーの標準器を使うシーンというのは年に数回ですので、十分それは対応できます。
○久保田委員 ということは、逆に国内での国家標準とか認定事業者とか、そういう日本としての供給体制が早急に整わなくても差し支えない分野と考えてよろしいのですか、それとも必要があるのですか。
○望月委員 供給体制が整わないということは1年の中で1回できる、2回できるという形にならないわけですので、それは国内の供給体制が整わない限り定期的に校正をお願いできるところに、世界中それがどこであれ、出すという形になります。
○久保田委員 国内にあった方がよいのですか。
○望月委員 もちろん海外に出すというのは、送る値段の話もありますし、送ることによって変化するというおそれもあるわけです。ですから、私どもとしては国内でできれば国内の方がいい。海外というのはどうしようもないという場合に限られています。
○山領委員 6ページのチャートでラウンドロビンで能力を確認するというお話があったと思うのですが、ご説明の後の方では欧米はほとんど外に出されているとのこと。このラウンドロビンというのは一体どの範囲でおやりになっているのかを教えていただきたいのですが。
○望月委員 欧米はほとんど外に出しているのですが、製造ラインで全数使うものは、先ほどの社外校正は時間がかかるという点で社内でやっているものがあります。それが主にトルクレンチであるとか機械加工のゲージ。トルクレンチの場合はそれほど高精度というわけではないのですが、機械加工のゲージの場合はマイクロメーターオーダーの精度ですので、特にこの辺が社内の工場が変わることで測定、検査の精度が変わっているかどうかというのを中心に調べております。
○芝田委員 関連で、欧米拠点では社外校正が多いということですが、欧米の自動車メーカーもやはり同様ということでしょうか。その場合はトータルのコストを比較するとそのようにした方が有利なのか教えていただけますか。
○望月委員 ほかの自動車メーカーさんの状況は正確にはわかりませんが、ほぼ同じ状況です。ビッグスリーの関係は多少違うと思いますが、少なくとも日本系の自動車メーカーの場合は大半のものを外に出しております。先ほどありましたように、全数検査に使うものなので、外に出すと戻ってくるのに時間がかかるというものは社内でやるという構造も同じです。コストの点では、欧米の校正事業者の場合、日本の平均と比べてかなり安いです。物によっては日本の相場の半分ぐらいというところもございます。それは量を出しているからということもあると思うのです。ですから、全体のコストとしては欧米で校正の技術者を社内で育てることはありませんで、そのポジションの人を雇ってくるわけですが、そのコストと設備をそろえるコストを比べると、欧米の価格のレベルの場合は外の業者さんに価格を競合させて入札でという形にした方が低コストだという判断をしております。
○芝田委員 今の確認ですが、日本のメーカーということではなくて海外のメーカーさんもということですか。
○望月委員
海外のメーカーも状況は同じですね。先ほどの納期の関係でどうしても社内でしか対応がつかないものは社内でやる。一般的には社内でやるよりも外に出した方が安いというのは共通です。
○桑委員 日産さんに直接関係なくても一般的でよろしいのですけれども、車の場合、リコールというのが生じますよね。今までのリコールの中でトレーサビリティ体系とか校正のシステムの不備が原因と絡んでいるような事例はあったのでしょうか。
○望月委員
非常に難しいのですが、今まで私どもが調べて把握している中ではございません。私ども計測管理を担当している者が一番苦しいのはその部分でして、直接製品の不具合につながっているかというところの証明が難しいです。ただ、奥底にはいろいろな問題が重なってというのはあるだろうと。
○桑委員 先ほどのご説明の中に社内で人を育成するのが大変だというお話がありましたけれども、何か特別なカリキュラムのようなものをおもちになって教育訓練をなさっていらっしゃいますか。
○望月委員
特別なカリキュラムは現時点ではございませんで、日産自動車の社内校正は戦後すぐ、日産がまだ横浜本社工場の時代に測範係ということで立ち上がって、それ以来、連綿と続いているオン・ザ・ジョブ・トレーニングの世界です。ここ1〜2年の間でもうちょっとシステム的に高性能作業者だけではなくてエンジニアも育てようということで、今同業者さんも含めていろいろ情報交換をしているところであります。
(株)三菱化学ビーシーエル品質保証部 木村 一夫副参事
○今井座長 続きまして、2番目は株式会社三菱化学ビーシーエル品質保証部の副参事でいらっしゃいます木村一夫さんからご説明お願いいたします。
○木村副参事 三菱化学ビーシーエルの木村と申します。私たちの会社は臨床検査といいまして、皆さんが病院に行って血液を採取されるとか尿をとられて検査されるとか、そのようなことをやっている会社でございます。品質といいましても工場の関係の品質保証とちょっと違いまして、どちらかというとマネジメントをやっている、そのように理解していただければいいのかなと思います。
臨床検査の分野ですと、ほとんど標準物質はございません。ほとんどメーカーさん止まりというのが現状でございます。これからお話しするのは、そういうことを踏まえて、いかに我々が患者様に対して、あるいは臨床医に対して正確なデータを出すかということで日々どのような形で精度を保っているかというようなことからお話しして、最後に標準物質があることによってどうメリットがあるかについてお話ししたいと思います。
基本的には精度管理手法といいまして、内部精度管理と外部精度評価という2つの方法がございます。内部精度管理につきましては、管理用サンプルを用いる場合と患者サンプルを用いる場合、この2通りあります。
管理用サンプルを使用する場合ですと、通常、我々はXbar-R管理図、Xbar-Rs-R
管理図、双値法、マルチルール、そういうものを主に使っております。
患者用サンプルとしましては基準値平均法、抜き取り検査法といいまして、前回測った検査を再度測って、そのデータに差異がないかどうかというもの、次の正常者平均法、これも先ほどの基準値云々とほぼ同じようでございます。デルタ・チェックに関しましては、患者さんの履歴状況を常にチェックして、そのデータと差異がないか、トータル的にデータの変化がないかどうか、測定系に異常があったかないかについて調べる手法でございます。
主に精度管理図を使っていますのはXbar-R管理図を用いてやっております。Xbar-Rs-R
管理図につきましては、変動が大きいものに関して用いています。マルチルール管理図、これは管理図といいましても実際はマルチルール管理図ということではございませんで、基本的にはルールというような形でございます。マルチルールというのは、基本的に我々の世界では、ウエストガードという人がつくりまして、その標準にのっとってやっております。
次の図は、簡単に有効性をまとめたものでございます。管理試料に一番多く使っているのはXbar-R管理図、患者試料につきましてはヒストグラムとかデルタ・チェック、こういったものを使っております。それぞれの特徴はメモをみていただければおわかりになるのではないかと思います。
マルチルール管理図の特徴としまして、Xbar-R管理図は偏りを目的にしているのですけれども、管理図上のデータをより的確に解釈するために各種のコントロールルールを組み合わせる方法、これは後で簡単にご説明します。そういう方法と管理試料の2濃度(高濃度、低濃度)を1日測りまして最低20日間のデータをとり、その平均値及び標準偏差をとりまして、これらを管理限界。普通は2SDと3SDを用いて、それぞれ管理図をつくっております。
マルチルールの特徴としましては、ロジックをコンピューターに組むことによって分析中に異常がすぐ判定できる、人間系でやるよりは誤った棄却を少なくする、分析の検出力を高める、分析誤差とその要因の鑑別がしやすくなるというような状況となっております。
組み合わせとしては、12sは2SDを超えた場合、13sは3SDを超えた場合、22sは2個または2種類の管理試料が2SDを超えた場合ということで、右側の方にどういった誤差の種類になるか、警告だとかランダム誤差、系統誤差、このようなものがあります。
こういったものを組み合わせて12s
22s、これが一番ポピュラーな組み合わせなのですれども、これでランダム誤差と系統誤差の検出ができるというような形です。
その次が12s 22s 41s
10xbar、そのようなことで系統誤差の検出率が高くなるということで、ランダム誤差と系統誤差の検出ができる。
さらに、このような組み合わせでランダム誤差の検出率が高くなる。ランダム誤差と系統誤差というようなことで行っています。
一番多く組み合わせて使うのは、順番どおり1)、2)、3)、4)、このような状況でございます。これを人間系で判断しますと非常に時間がかかりますので、こういったものはコンピューターのロジックに組んで管理していくというような状況で行っております。
日常の精度管理としまして、普通はコントロール物質(標準物質)を用いて実施するのですが、これはどちらかというと試薬メーカーさんが標準物質を用いて、その試薬の精度を確保するというようなことでやっていまして、我々臨床検査会社としましては、基本的には、我々はコントロールといっているのですけれども、市販のもの、キットについているもの、こういったものを使って日々同じ精度を保っております。
測定の頻度としましては、当然測定開始前に機器の整備を行いましてコントロールを流してその状態をチェックする。
これは一般的に行われているかと思うのですけれども、自動測定器の場合、我々の会社では基本的には200検体を1バッチと呼んでいまして、ここで200本単位でコントロールを入れて、その間のずれがないか、そういったものをみております。
引き続きまして、これは外部精度評価ということです。基本的にはコントロールサーベイとクロスチェックということです。コントロールサーベイの中にも国内サーベイと国外サーベイがあります。日本の場合ですと日本医師会、私たちが所属している日本衛生検査協会、技師さんの集まりであります日本臨床検査技師会、試薬メーカーさんが行っているサーベイ、大きく分けるとこの4つ。あと都道府県の地域によって行われている。大きく分けると5つぐらいです。
国外のサーベイとしまして日本に主に入っているのはCAP(College of American Pathologists)
といいまして米国の組織なのですけれども、そこのサーベイが行われています。この特徴は、CAPのサーベイは年に3回ないし4回、同じ項目のサンプルが送られてきます。国内では年に1回しか来ないわけで、年1回ですと、例えば測定結果が悪くても直すのに1年後になってしまう、これはちょっと問題で、今年の秋口に一本化した外部精度評価を実施するという話があったのですけれども、日本医師会の方の事情で今年は統一した精度管理、国内サーベイがちょっとJSCCはできなかったということです。
クロス・チェックにつきましては、他の施設間と手合わせするというようなことでございます。ただし、これは相手にお願いしてもすんなりいいですよという施設がなかなかございません。今厚労省から衛生検査所に対しては、大学病院とか地域の大手病院にこういったクロス・チェックをしなさいと指導で出ているのですけれども、現実にこれを受けてやっていただける大学病院はありません。そういうことで、こういったことでクロス・チェックをやっていましても、自分たちの仲間うちでどうしてもデータを確認したいという場合のみしか行っていないのが現状でございます。
次に外部精度評価ということで、これは日本医師会のデータの見方なのですけれども、これから説明するデータとほとんど同一の方法でやられていますので、これをみていただければわかるのではないかなと思います。これから説明するのは今までの代表的なものでございます。
これは平成10年度のALT、昔のGPTということです。これも肝機能のデータをみるということです。本当はもう少し古い平成5年のデータを探したのですけれども、今回は平成10年との5年間の差ということでみております。
JSCC標準化対応法は今一番基本となっているのですが、このときで施設が1950
件で、ほとんど中央値に集まっています。ほかのデータですとちょっとばらけているというような感じになっております。
これが平成15年になりますと、JSCC標準化対応法ということで2549件
、これでもほとんど網羅しているような状態になっています。数的にはふえていませんけれども、ドライケムというのが出ています。これは緊急対応で導入している病院が多いために、これだけの数字が出てきているかなと思います。標準化されるとこういうデータが収束してくるというようなことになります。
同じくこれはGOT、平成10年です。ここも同じ数ですけれども、1951件 。平成15年になりますと2547
件ということで、大体標準法に収束されているということでほとんどのデータが中央になってくる。ドライケム、この辺についてはこのようになって、マトリックス効果のためにこの辺のデータの影響が出ているのはないかなというような感じを受けております。
これは日本衛生検査所協会が主宰しているところなのですけれども、平成10年のときでASTで一応4種類挙がっています。検査所の場合は多くの種類の検査法は使用されてなく、結構収束しているので、このような少ないような状況になっています。
ここで4種類なのですけれども、平成15年になるとJSCC対応で1種類しかない。多分ドライケムとかそういうのは一部使っているのですけれども、数字にならないということで省略されているのではないかと思います。
同様にALTなのですけれども、平成10年は4種類の検査法がございまして、データ的にかなりばらつきがございました。
平成15年になりますとこれがほとんど一本化されているということです。一本化されて何でこんなに物によってはCVがプラスマイナス20%のところにいるんですかというようなことがあるのですけれども、これはふだんの精度管理が悪いがためにこのような状況になっているのではないかなと思っております。ちょっと見にくいのですが、これはこのあたりに収束されていまして、この辺はほぼ5〜6%ですか、そのくらいにデータが収束されております。
次は東京都です。これは東京都で44施設だったと思うのですけれども、大体このような状況で、これはJSCC法に補正したらこのように収束している。
実線は精度管理委員の施設の中央値です。ここは確か日大と東京医科歯科大両方でやられたデータを足して行った数字です。点線についてはその5%ということでやっております。5%というのは、この範囲に入っていれば精度管理が十分できて信頼性のあるデータとしていいんじゃないかということで、精度管理委員の方がそのように提供しております。
同様に今度は平成15年のデータをみますと、ちょっとこれはばらけているのですけれども、実際は収束していまして、2番ではその他、3番ではドライケムでやっております。JSCC標準法で補正した場合はこのようなデータになっております。この辺で5%から10%の間にあるようなところは日々の精度管理をもう少し十分にしてくださいとなります。こういう外れているところは、初めからそういうデータを出さないように日々訓練をしてくださいというようなことで勧告されているような施設でございます。
これも同様に今度はALTということで行っています。この辺に一部データの乖離があるのですけれども、JSCC標準法に直すとこのようになる。これは中央値というか、ちょっと上に行っているので、精度管理委員の施設のところが逆にデータ的にちょっと高めだったのではないかというようなことがうかがえます。ちょっとずらすとほとんど入っています。
これは平成15年ということで5年後なのですけれども、一部こういうところがみられるのですけれども、このようにデータが収束している。この辺も先ほどの精度管理委員の先生のところがちょっとデータが高かったのではないかなというようなことになっております。
こういった形で日々我々は外部精度管理とか内部精度管理ということでやっているのですけれども、では実際その元となる標準物質はどうなのですかといいますと、これは実際ほとんどありません。JAB(日本適合性認定協会)でも臨床検査室対応で今年から認定を始めていまして、9月に5施設が、パイロットで認定を受けたということです。そのときの一部の資料なのですけれども、不確かさはこう求める。指定1ということで、全部強制的にこういった不確かさを掲載してくださいということです。基本的にはこれは備考としてJSCC標準化対応法を推奨しますよということ。
これもそうです。これは推奨してない免疫グロブリン関係なのですけれども、ここだけはちょっと除いております。
ということで、不確かさを出してくださいよとJABで要求しているのは現在21個ございます。ほかの項目につきましては、こういう不確かさはあるのですけれども、まだまだ十分にできてないというようなことです。
これが臨床検査のトレーサビリティです。基本的にはSI単位ということでやっているのですけれども、基準法は重量法とか滴定法、クーロメトリーとか同位体というようなことでやっております。
臨床検査の世界でSI単位でやっているのはイギリスとオーストラリアの2カ国しかなくて、日本を初めドイツ、アメリカはまだまだ慣用単位を用いています。現場の方もいきなりSI単位にしても診療上、困ってしまうということで、なかなか移行できていないような状況でございます。
これが、先ほど日産の方が説明しましたように、臨床検査ではこのようにトレーサビリティの連鎖ということで要求をしております。ここ(CGPMによるSI単位の定義)はほとんどありません。どちらかというとメーカーさんの一次標準物質があって、メーカーさんの測定法、あとはいきなり一次からメーカーさんの校正物質ができて、そこから日常測定法でやっているというようなことでございます。理想的にはこういう段階を踏んでいればいいのですけれども、ほとんどありませんので、こういう外部精度評価に参加して日々のデータを確保しているというような形でございます。
これはたまたま電解質におけるトレーサビリティがとれているということで、これだけはSI単位にしている。ただし、ここはアメリカの標準で日本の標準ではありません。HECTEFといいまして、やっと二次標準というようなことで出てきております。
AST、ALT、LDの経時変化。こういう標準物質、標準法、そういったものがなかった場合、92年ですけれども、この辺についてはCV(変動係数)がこのように大きく、93年のLDのときは8.5
%ぐらいの数字だったのですが、だんだん標準法が出てきて、98年になってCRMの採用ということで、ここはLDの変化をみているのですけれども、ほかのAST、ALTのレベルとほぼ同等になってきたというようなことで、この推移がわかるのではないかと思います。
結論としまして、標準物質があることによって信頼性が向上しますよと。標準物質がある検査項目では外部精度評価データが収束します。当然信頼が出てくるということで、検査方法が異なってもほぼ同じような結果が得られます。全国どこでも診断に同一基準でデータが活用できます。そういうことによって医療費の削減ができますよというようなことでございます。
○今井座長 木村様、どうもありがとうございました。
それでは、ただいまのご説明に関連して、本多委員どうぞ。
○本多委員 2つほどお聞きしたいのですが、1つはトレーサビリティ項目というところの表なのですけれども、先ほどの望月さんのお話の中に国内で賄われていないというようなお話がございました。この中で私はNISTとJCSSしかわからないのですが、ほかの認証機関というのは国内・国外でみますとどのくらいの比率になっているのでしょうか。
○木村副参事 比率まではちょっと覚えていないのですけれども、HECTEF(福祉医療技術振興会)がほとんど標準物質を作っておりまして、これはJCCLSとタイアップしてやっております。
○本多委員 もう1つは、SIが使われていないというかなり衝撃的なお話を伺ったのですが、慣用の単位というのはどんな単位を使われているのですか。
○木村副参事 先ほど説明しましたようにIU/Lとか、mol/Lとか、mg/dlとか、昔化学の世界で使っていたような単位表現を使われております。
○今井座長 今の単位ですけれども、SIに換算はできるのですか。
○木村副参事 そうですね。できますけれども、現場としてはやろうとしてないというのが現状でございます。
○中野委員 25ページ以下の「トレーサビリティの項目の例」に書かれているものなのですが、ここに掲げられているものは少なくとも標準物質はあるので、国内の病院においては同じ値が今現在確保されていると思ってよろしいのでしょうか。
○木村副参事 残念ながらまだそこまではいってないかなと思います。まだ全員が同じ標準法を使っているわけではありません。でも今後は、グラフをみていただけたようにだんだん収束していくのではないかと思っています。なぜかといいますと、厚労省の方で保険点数云々という絡みで検査法が認められていますので、コストの問題とかありますから、だんだんそういう標準の方に移行していくと。
○中野委員 先ほどのお話でJABが新たにこの分野の認定を始めたということがありましたが、少なくともJABの姿勢としては、ここのリストにあるようなところにとトレーサブルがないものについては認定はおろさないというような方針で臨んでいるということでしょうか。
○木村副参事 そうですね。
○今井座長 先ほど来標準物質がきちっと認証されたものがないとおっしゃった。ただ、ご説明の中でたくさんの物質に対してきちっとした管理図法を採用していらっしゃると思いますので、管理の手法あるいは分析の方法については、例えばJISなどで相当整備されていると考えてよろしいですか。
○木村副参事 それはそうです。逆にない分だけそういうことでカバーしていかないとデータの保証がとれないということでやっております。
○今井座長 それに関してはIFCCの方法とかJSCCの方法で統一しようとしているわけですね。問題は標準物質をきちっと認知してほしいということですね。
○木村副参事 そうですね。直接検査所が使うということではなくて、基本的には試薬メーカーさんがそういった試料を使ってそれにトレーサブルな試薬を供給していただければ、我々臨床検査室はそれなりのデータがとれる。標準物質は非常に高いもので、我々の会社も一時やったのですけれども、そんなに使わなくてもすぐ100万円、200
万円かかってしまうので、そのようなロットをたくさんつくっている試薬メーカーさんがやっているそうです。ごくたまに我々も標準物質を使って、メーカーさんの試薬が正しいかどうか検証していかなくてはいけない。なぜかといいますと、試薬メーカーさんが試薬製造を誤ってお客さんに迷惑をかけるようなデータを出すということがあるんですね。そういったものを深く注意していかないといけない。ただし、メーカーさん云々というのは、メーカーさんしかもっていないもの(標準物質)がそういう事故が非常に多いので、この辺はちょっと防ぎようがないかなと。
○今井座長 その点に関しては、短時間で国家標準につながるようなものを作るのは非常に難しいと思いますけれども、ある程度それに準ずるような程度の信頼できる物質はあるのではないかと思うのです。ですから、そういうものを共同実験か何かで値付けをして大体大丈夫そうですね、そういうやり方は可能だとお考えですか。
○木村副参事 そこはJCCLSが3つのグループをつくって、そこで標準物質といったことも活動を始めていると聞いていますので、長い目でみれば出てくるのではないか。ただし、JCCLSのそういう活動を聞いていますと、費用がないということもありまして、かなりの年数がかかるのではないかということは聞いております。
○今井座長 幸いなことに経済産業省を中心に大分予算をつけていただいたようですので、加速されるのではないかと期待しております。
横浜市水道局浄水部 畑澤 智 部次長兼水質課長
○今井座長 3番目になりますけれども、資料3、横浜市水道局部次長兼水質課長の畑澤さんからお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○畑澤部次長兼水質課長(以下、「部次長」と略する) 横浜市水道局の畑澤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
私ども水道事業体は、お客様に水道水を供給し、それが商品という形になっております。横浜水道だけでも1日150
万トンの水を供給しております。それ以外に近隣の水道事業体、神奈川県内では周辺に大きいのが5つございますけれども、こういった事業体と協力して水道水の異常事態での融通といったこともやっておりまして、水道水についての品質管理については非常に気を使っております。
皆様方は、河川や湖沼、海の水質基準とか工場排水の基準というのはBODとかCODという形でご存じなのですが、水道水につきましては皆さんから非常に信頼をいただいておりまして、水道水質基準とか水道水質の管理について細かいことを聞かれる方が余りいらっしゃらない。実は非常に厳しい管理をして製造はしているのですけれども、一体どんな項目について管理しているのかというのは意外と知られておりませんので、先に説明させていただきまして、その後に「標準の供給に関することで期待すること」ということでお話をさせていただきたいと思います。
まず最初の水道水質の管理につきましてですが、これは横浜の例でございますけれども、水質基準、水道法に基づくものが50項目ございます。水質管理目標設定項目が厚生労働省の健康局長の通達で27項目。その下の農薬も同じく101
項目。それから、今後その様子をみていかなければいけないということで40項目リストが挙がっております。さらに原水、これは横浜の場合ですと相模川から水をとっておりますので表流水ということになりますが、その河川の監視ということで10項目。こういった項目をみております。実際にはもう少し独自でやっている項目がございますが、法的にある程度設定されているのはこういった項目でございます。
国内の水道事業体で、例えば数千人規模程度の小さい水道事業体でも水質基準項目の50と水質管理目標設定項目の27は大体やっております。それは正確にいえば基準項目というのがノルマでございますけれども、各県の衛生部局の指導がありますので、通常は27項目までは大体やっている。大きい水道事業体については先々のことを考えて調査をしてくださいということでいろいろなことをやっております。
これらの項目をいかに水質検査するかということで、下から2つ目に書いてございます水質検査計画というのが水道法の施行規則の15条の法定計画になっておりまして、どんな小さい水道事業体でも作ることになっております。これは今年から義務づけられております。これについては、横浜でいえばホームページなどで市民の皆さんにご提供しております。この中には、検査項目だけではなくて頻度とか調査をする地点、あるいは調査を省略する場合はその理由とか、いろいろな情報を記載するということになっております。
最後になりますけれども、精度管理と信頼性保証ということで、水質検査の信頼性をいかに向上させるか、維持するかということについてもこの一環として掲げられております。
水道法上の水質基準というのは第4条にございますが、昭和33年ごろにつくられた法律がこの部分はそのまま生きていると思います。非常に抽象的な書きぶりをしている部分があります。一番上は病原生物、つまりこれは病気です。大腸菌や病原微生物でコレラなどが広がってはいけませんので、そういったもののことをいっております。2番目、3番目等は有毒物質とかそれに準ずるもの。飲用しますので酸味とかアルカリ性のこと、臭味がないということが条件となります。外観はほとんど無色透明と。水道の場合、飲用以外にも洗濯とか入浴などいろいろな用途に使われますので、そういったことを全部含めた形の表現になっております。
実際に項目としては省令に示されておりまして、非常に細かい表なのですが、50項目、こんな感じで設定をされております。細菌類が大腸菌と一般細菌、これ以外、金属とか有機塩素化合物とか多々ございます。
47番目、48番目あたりは味とか臭気、こういったものも評価項目に入っております。横浜ですと、給水栓以外でもいろいろやっているのですが、給水栓を22カ所ぐらい設定しまして、こういったものを定点で常にみているというのが実態でございます。
これが水質管理目標設定項目です。こちらにも非常に細かく27種類の物質が設定されております。先ほどの基準項目と重複しているものがありますが、重複しているものについては、目標値ですので、こちらの項目の方が厳しい値が設定されております。見ていておわかりになると思うのですが、先ほどのものに比べると数値的には厳しいものがあるのと、種類としては金属類があったり有機塩素があったり、消毒副生成物、有機系の化合物、いろいろなものがございます。
15番目に農薬というのがございますが、こちらは指標値で1という表記になっております。この後ご説明しますけれども、101
種類この中に入っております。農薬につきましては国民の皆さんが非常に敏感になっておりますので、多くの農薬を検査しております。評価の仕方は、目標値がございますが、実際に測定された値をこの目標値で割って、それを101
個分全部足し込んだ値が1を超えないというような指標で表記しております。現実にそれぞれの農薬について基準値を設けてやってもいいのですが、基準値に達するものはほとんどありません。したがいまして、農薬については総和方式という形で網をかけようという考え方でやっております。
ただし、これは横浜でいえば相模川、東京都でいえば利根川とか、流域によって使われる農薬はそれぞれ違いがございます。そこで、その事業体で、私どもですと周辺の4つ、合わせて5つの事業体で農薬の使用量、毒性、水溶性、分解性、こういったものを加味してプライオリティーリストをつくって、この中でほとんど影響のないものが20個ぐらいございました。そういったものを除去しまして、それで検査を共同でやっております。県内に大きい事業体が5つございますので、そこで共同でやってデータを5倍密度を高くできるという努力をしております。
残りの101
個がこういう形で非常に多いというのがごらんいただけると思います。また、濃度も1けたから小数点以下4けた目ぐらいのところから数字が出るものまで色々あるということになります。
こちらが要検討項目といいまして、近い将来、水道水質基準の中に組み込むことが必要かどうかを判断しなければいけないという、ややグレーがかったものについてリストが挙がっておるものです。こういうものについて、常日ごろから大きい水道事業体では検査をしてデータを蓄積し、その結果を踏まえて厚生労働省の検討会で検討していきたいということで名前が挙がっているのが40種類ほどございます。そういうことですので、もちろん目標値もないものもございますし、環境ホルモン物質、あるいはダイオキシン類もここに入っております。
最後になりますけれども、こちらが河川です。私どもは相模川の表流水をとっております。河川の場合はこういった項目について原水の水質を把握してくださいということで、10種類ですが、今までやってきた項目プラスこういうことで確認試験をやってくださいという通知がありまして、こういったデータをとりまして、浄水処理の工程管理に活用しているわけでございます。
こういった多くの項目が私ども水道事業体の検査項目になっておりまして、私のところで恐らく年間で3万検体近くの検査をやっていると思います。2万は楽に超えておりますので、3万検体近くやっていると思います。
今度は精度管理の関係でございますが、私どもは水質検査です。厚生労働省で平成15年4月に水質基準の見直しの答申がございました。このときに信頼性保証体制、つまりGLPの導入をしていくべきだというのが答申の中に入っております。例示としてはISO9001とかISO/IEC17025
ということで、対象は指定検査機関(水道法の20条機関)と水道事業者を対象にとるべきであるというような答申がございました。また、10月には、課長通知でございますけれども、そういう体制を構築することを推奨するような通達が出ております。日本水道協会、これは水道事業者の団体ですけれども、こちらの方でも今年の9月ごろから水道水質検査の優良試験所(水道GLP)を立ち上げて、これから審査に入るのですけれども、こういうもので水質検査の信頼性保証体制を確立、そして普及していきたいということで水道事業者全体でこういう取り組みをしているところです。
私どもはお客さんサービス、あるいはお客さんに信頼性、安全性をアピールしたいということで、既に前年度ISO/IEC17025
(試験所認定)を取得いたしました。いずれにしても信頼性保証を確立していくのが水道事業体の大きいところでは求められていくだろうと。また、小さいところではISO/IEC17025
などを取得しているような民間の分析機関に委託をするという形になっていくのだろうと思います。
以上が私どもの水道の大ざっぱなお話でございます。水道水の分析方法の特徴は、今こちらにお示ししたような内容のものがございます。先ほど言いましたように3万検体近くやっているというようなことで、検査項目、試料数が非常に多い。また、品質管理も強化しなければなりません。したがいまして、分析法は一斉分析法を活用しております。例として、重金属関係であれば鉄だとか銅だとか鉛が一回で分析できるような手法をとる。そうやって効率化していきませんと、とてもそれだけの数、検査はやれません。同様に消毒副生成物といわれるトリクロロエタンなどがございますが、一緒に分析できればということで、そういう手法を割合積極的に水道法での公定法でも取り入れております。農薬についても然りでございまして、全部の種類を一回ではできませんけれども、グループに分けて一斉分析をかけていくというやり方をとっております。
さらに、極低濃度の分析も行っております。ジェオスミン、2-メチルイソボルネオール、余りなじみのない名前ですが、カビのにおいを発する物質でございます。植物性のプランクトンが発する物質ですが、これについてはナノグラムレベルまでの測定も行います。したがいまして、単位としてはミリグラムからナノグラムまで、106 ぐらいのレンジで色々なものを扱っているところでございます。
使っている機械も、一斉分析法でございますので、ここに掲げたようなICP―MSとかLC/MS、こういったものが多用されております。いずれについてもこれは検量線法でやりますので標準物質というのは非常に重要でございまして、それの供給あるいはそれの存在自体がこれらの測定の精度管理に大きく影響を及ぼします。それ以外の方法でここに書いたような重量法、トレーサビリティ上これが一番安心ですけれども、こういったものも使っております。
ちなみに、私の試験室で標準として使っているものの状況でございます。微生物関係はいたし方ありませんが、JCSS、NIST、あとは自分でつくるものもあればメーカー標準。残念ながら、これをみていただくとわかるのですが、メーカーさんだけの標準液が半分ぐらいございます。JCSSは金属関係で割合多く供給されております。しかしながら、アメリカの標準物質NISTに依存しなければいけない部分もあるという状況でございます。
特にナノグラムオーダーの検査をやっております41番、42番は市販のもので対応せざるを得ない状況でございます。これは有機化合物でして、ガスマスで分析いたしますので、スタンダードがあると助かるものなのです期待したいところです。
また、管理目標設定項目につきましてもちなみに出したものです。こんな状況でございまして、市販品が非常に多い。JCSSから供給していただいていますのは金属関係とpHでございます。
我々の水道関係ではウランの分析が結構求められるのです。ところが、標準は国内では供給されておりませんし、実は供給されているものが一部あるのですが、核燃料との関係で分離ができないようにほかの物質と混合されております。混合されますと一斉分析にかけられません。そのような分析上非常に不都合な状況が生じておりまして、こういった問題点もございます。
そういったことで、標準物質の確保が私どもの水道水の水質検査あるいは水質管理上の大きな要素になります。
その大きな1つ目が業務の効率化でございます。先ほどいいましたように検査数が非常に多くございます。品質管理を進めていく中では非常に重要な要素です。例えばお飲みになる水道水がカビのにおいが少しでもするとクレームの電話がたくさん入ります。そういったことがないように濃度を把握して活性炭処理を行う必要がございます。私どもの浄水場は4つあるのですが、昨年度ですと活性炭だけで億単位の金を使っております。そのくらいやって異臭とか味、においを除去してお客さんに供給しているということでございます。そうなりますと自分たちで標準を希釈してつくっていくよりはメーカーの標準にどうしても依存していくという傾向がございます。
2つ目に、先ほど申し上げましたように一斉分析法をやっている都合上、混合標準の方が非常に都合がいい。できましたらこういったものの供給が期待されるわけでございます。
さらに、農薬につきまして、先ほど101
もありますというお話をさせていただきました。これの標準を一つ一つ私どもでつくっていては大変手間がかかります。メーカーに頼みまして混合標準液を特注でつくっていただいております。もちろんメーカー止まりのものです。この結果がより広く、つまり隣の水道事業体も同じ水源ですのでデータが違ってはいけないということで、同じ水源を使っている水道事業体5団体で手を合わせて今合同でメーカーに発注して、それをスタンダードに使っているというような状況になっております。こういったことでできるだけ手間を省いてデータを得るというところに力を入れたいものですから、こういう方向に動いております。
2つ目の大きな話題に信頼性の確保でございます。私どもはISO/IEC17025
の試験所認定を取得しておりますので、精度管理の仕方がそれなりに身についてきております。そのためにはJCSSとかNISTなどの標準物質の確保が非常に重要だということがわかっております。ただ、私どもの神奈川県内の周辺の4つの水道事業体は今後水道GLPを取得すると聞いておりますので、こういったものの必要性が理解されますと認証標準物質のニーズはそれなりに出てくると思っております。
先ほどお示しした表にございますように、認証標準物質が入手できない場合、やむを得ず私どもは化学物質評価研究機構からjcss品、要するに製薬メーカーさんに卸すものを入手してスタンダードに使って、メーカーから買ったものの値付けはこれを使ってやっているというのが実態でございます。
ここに書きませんでしたけれども、これ以外に日本分析化学会で供給しております認証標準物質で河川水というのがございます。こちらの製造についても私どもは協力して、標準物質が市販で手に入るようになりますとお互いの分析値の精度管理がより均一化するだろうということで協力をさせていただいているところです。
以上のことから、私ども水道事業体としてお願いしたいことが幾つかございます。少なくともお客様が直接口にする水道水、商品でございます。水質基準とか水質管理目標設定項目、こういった項目については認証標準物質を出していただきたい。
もう1つは、一斉分析にそれが対応しているということでございます。
既にNISTなども使っておりますけれども、とりあえず暫定的に準ずる取り扱いもご検討いただけたらと考えております。
もう1点、試験方法の規格化。例えば農薬につきましても農林水産省の方法、環境省の方法、厚生労働省の方法というような形で少しずつ違っている。それ以外、例えば工場排水試験方法のようなJISのようなものもありまして、いろいろな方法が存在しています。
私どももISOをとりまして、ここに書きましたように海外技術協力を積極的に打っております。ベトナム、カンボジア、中央アジア、中国、多数の国に職員を派遣し、また向こうから試料が送られてきます。例えばベトナムのある町では「水道水の安全性について安全宣言をしたい。ついてはいろいろな試料を送るので分析してほしい」というような話がございます。それは今のところはペンディングにしております。本来であれば分析方法や標準がオーソライズされていれば、私どもがこういった証明を発行して「水道水は大丈夫ですよ」というようなことがいえるようになるということで技術協力も一層進むのですけれども、分析法あるいはスタンダードなどの問題がまだございまして、そう簡単に安請け合いができないので、とりあえずペンディングしております。解決しますと本来の技術協力がより一層実になると思っております。
以上でございます。
○今井座長 畑澤様、どうもありがとうございました。
最後の方で現状に対する要望事項ということで2枚出されましたけれども、その中の2つばかり私が関係しているところで申し上げますと、知的基盤整備特別委員会の要請によりまして標準物質供給に関するワーキンググループが先ごろ報告書をまとめてパブリックコメントも終わり、年内には印刷物として発行できると思います。その中では、今日ご指摘いただきました混合標準液が使用できるようにというようなこと、認定事業者さんが存在しない場合のjcssの供給をCERIさんが行う、それについては実施してはどうかと書いておりますので、それが実現されることを望んでいるところでございます。
○伊藤委員 大変な数の分析をしているということでございますけれども、標準液の中で自社調製をしている標準液もあるということですが、そういう場合に人材の育成というのはどのような形でやっていらっしゃるのでしょうか。
○畑澤部次長 実はISO/IEC17025
を取得するときに社内研修制度と技量の認定といいますか、そういう制度をしいております。その中でランクづけをして、うちの場合ですと職員の技能を4ランクぐらいに分けておりまして、標準の調製というのは最初の勉強のところということで位置づけております。
○桑委員 各地方自治体内あるいは地方自治体間での技術的な評価みたいなものは具体的には日本ではどのくらいまで行われているのでしょうか。
○畑澤部次長 水道事業体につきましては、厚生労働省が主催して精度管理をやっております。それから、小さい水道事業体もございますので、県レベルで共通試料を配付して濃度を分析する、それでZ値を出すようなものもやっております。したがいまして、水道事業体と水道法で定めます20条機関という民間の検査機関があるのですが、これについては比較的よく行われていると思います。ただ、その結果については、正直言いまして非常に多くの検体数をやって検査の技量がある団体と、小さい事業体で検査数が非常に少なく、職員の数が少ないというのがございまして、Z値の幅もかなりあるというのが実態です。
私どもはISOをとるということ以前から、いろいろな学会が主催します精度管理に積極的に出ておりますけれども、多くの水道事業体は厚生労働省が主催する精度管理と県の衛生部局が主催する精度管理に参加しているのではないかと思います。
○桑委員 法律的に規制がされていて、所轄省庁によって測定方法が多少異なるというお話が先ほどありましたけれども、その測定方法が異なることによって、同じ分析をしてもある規制値を満たしたり満たさなかったりということは実際は起こっているのでしょうか。
○畑澤部次長 余りないと思うのですが、例えば環境省は河川の検査を環境省の方法で、私どもは水道の公定法で定める方法でやっているわけです。したがいまして、方法が違いますから、出てきたデータが必ず一致するとは言い切れない部分があります。手法の相違というのは前提ですので、そういうのをある程度統一しておくというのが省庁間であっても重要なことではないかと私は思います。
○桑委員 そのときに方法を統一するということ以外に、例えば校正するための標準をそろえることによって多少それはなくなるというようなことの要望はないのでしょうか。
○畑澤部次長 そういうのもあると思います。手法を補正するような仕組みということで十分考えられると思います。
○本多委員 先ほど規格化したものを足して1以下ならというお話がございましたけれども、個々の測定値には不確かさといいますか誤差といいますか、そのようなものはついていない状態で出てきた値を生で1度だけやられていると解釈してよろしいのでしょうか。
○畑澤部次長 この場合は、指標値にすぎませんので、何回か測定はしますけれども、測定値の平均値を目標値で割る。それを101
、あるいは私どもですと八十幾つですが、それを合算するだけでございます。これについてはあくまで農薬の水源汚染の状況を把握する指標値という位置づけでございますので、その数値が例えば1を超える状況がある場合には水道事業体として水源域の自治体や農薬を使っているのは農協関係に対して、対策を講じてもらうということになろうと思います。そういう値の変動を常にみていく、監視していく、それによって水源域での農薬の使用の実態をしっかり把握して、水道事業体としてもいろいろな対策を考えなさいというような位置づけだろうと私は認識しております。
○久保田委員 混合標準液については、従来なかったものですからメーカーさんにお願いしてつくってもらうとか自己調製されたのだと思います。その場合はトレーサビリティが国家標準に達していないというケースがほとんどだと思うのですが、ISO/IEC17025においては基本的にトレーサビリティが要求条件になっていますね。ですから審査員が来られたときに、トレーサビリティのとれていない認証標準物質と呼べないものを使わざるを得ないものについては何かコメント等があったのでしょうか。
○畑澤部次長 手法自体が一斉分析法でとっているのです。スタンダードのつくり方もそこで規定しております。ですから、もとの標準品は単品です。それを私どもの方で混合させてつくっています。元々は認証標準物質は高濃度ですので、希釈しなければ標準液になりません。当然化学反応が起きるとか起きないとかということは事前にチェックはいたします。安定性なども全部チェックした上で混合標準にしているというのが実態です。
○久保田委員 ということは単成分系の標準液を使って、それがトレーサビリティのとれているものを使っていればつながっていると考えるということでしょうか。
○畑澤部次長 はい。
○久保田委員 もう一点は、ISO/IEC17025
を取得しておられるという話がありましたけれども、一方で指定検査機関は水道GLPをとっているケースがあるというお話でした。こら両方の認定をとっている機関というのはあるのですか。
○畑澤部次長 民間の20条機関の中でISO/IEC17025
を取得している機関もございます。水道事業体で現在までにISOをとったのは4団体と認識しています。民間の20条機関でISO/IEC17025を取得しているのは、1団体か2団体ぐらいだと思います。
○久保田委員 そういう機関では2つのスタンダードを受けるということに対しての負担とか、そういう問題はないのでしょうか。
○畑澤部次長 民間団体ですので推測になりますが、恐らく厚生労働省で精度管理について推奨したわけです。それをある意味では、お客様をとるためのツールとして使っていると思います。それによって、自分のところで検査機関をもてない中小の水道事業体は、そういう20条機関に委託したならば水質検査結果は安心できるだろうと期待をすると思います。ですから、ある意味で競争力になるということで20条機関は積極的にとっているのと考えます。
○今井座長 今のお話とも関連するかもしれませんが、水道水という大事なものに対して実際に管轄する省庁は複数あるわけですね。地方自治体としても都道府県あるいは特定市で連携があると思うのですけれども、そういう自治体レベルでの共同実験とか、こういうものを共通に使いましょうという連携はあるのでしょうか。
○畑澤部次長 実は先ほど農薬のところでプライオリティーリストをつくったと申し上げました。横浜の水道と川崎、横須賀、神奈川県水道局、私どもが出資している神奈川県内広域水道企業団、5つの大きい団体がございます。この団体で協力して相模川の水質監視の業務提携、標準物質、分析法の検討、さらには生物関係の検査のトレーサビリティの検討をやっております。今後は水源を共有している部分での業務では広域化の話が広がっていくと思います。
東京都健康安全研究センター 矢口 久美子 水質研究科長
○今井座長 最後になりますけれども、東京都健康安全研究センター水質研究科の科長さんでいらっしゃいます矢口久美子さんからプレゼンテーションをお願いします。
○矢口科長 東京都健康安全研究センター水質研究科の矢口でございます。よろしくお願いいたします。
私どもは地方衛生研究所とくくられる地方自治体の衛生関係の研究所に属しておりまして、きょうは「地方衛生研究所から見た今後の標準供給、国際整合性及び国内トレーサビリティ制度に期待すること」ということで述べさせていただきたいと思います。
きょうのお話は、地方衛生研究所というのはどういうものなのかを最初に説明いたしまして、次に衛生研究所において求められる検査の信頼性について、またトレーサビリティ制度に期待することについて述べさせていただきたいと思います。
まず、地方衛生研究所なのですが、厚生省からの通達で昭和23年に「地方衛生研究所に関する設置要綱」が出まして、これによりまして各都道府県と政令指定都市などに設置されております。平成17年10月現在で都道府県に設置されております機関が47機関、政令市、普通の一般の市に設置されております機関が29機関ございます。
主な業務といたしましては、所属の自治体住民の健康を守るために、水、食品、住環境、医薬品などの安全性に関する試験や調査研究を行っております。
地方衛生研究所の役割をもう少し詳しく述べさせていただきますと、これは平成9年に設置要綱が改正されまして、それの概要を述べたものですが、地域保健対策を効果的に推進し、公衆衛生の向上及び増進を図るために、関係の行政部局、保健所などとの連携をとりながら、主にここに述べました4つの業務を行うことになっております。その4つの業務のうちの1つが調査研究でございます。これは食品とか医薬品、水、空気などの衛生学的な調査研究、感染症などに関する調査研究等を行っております。
次に試験検査がございます。これは行政に必要な調査のための検査で、ほとんどの地方衛生研究所で行っております。また、一般の依頼検査などをやっている研究所もございます。
もう1つ、試験検査につきましては、レファレンスセンターとしての役割が求められております。新しい問題となる化学物質が出たときに、国立衛生研究機関やほかの衛生研究所などと連携いたしまして、試験検査に必要な標準品や細菌標準株を確保して、保健所などへ提供するという役割も担っております。
また、先ほど臨床検査、水道機関の方からお話がありましたように、民間の検査機関の精度管理を実施するという業務もございます。
3番目といたしまして研修指導がございます。これは主に自治体内のほかの検査機関、保健所や市町村の衛生関係の職員などを対象に行っております。
4番目に公衆衛生情報などの収集、解析、提供ということで、主に感染症に関する地方自治体の情報などを収集いたしまして、週報や月報により公開しております。
それでは、私ども東京都健康安全研究センターの業務について述べさせていただきます。私どもでは、今述べました地方衛生研究所の要綱に述べられましたような業務を担う研究部門と、食品や薬事関係の監視、指導業務を行っている監視部門と2つございます。主に分析等を担当しておりますのはこちらの研究部門の方です。
研究部門につきましては、1つが微生物の分野について行っておりまして、例えば食中毒が発生したときの原因微生物、これは細菌、ウイルス、両方について行っております。あるいは寄生虫やカビなどが影響することもありますでしょうし、そのような研究室もございます。そのような原因微生物、原因食品の調査などを行っております。
また、都内を流通する食品の通常の抜き取り検査、あるいはインフルエンザ、SARSが問題になっておりますけれども、そのような呼吸器官系の感染症、そのほかの感染症の検査や調査研究等も行っております。
食品分野におきましては、これは主に都内に流通する食品の衛生化学的、栄養学的な試験検査、調査研究等を実施しております。
もう1つ、医薬品分野を担っている研究室もございます。これは主に医療監視の職員が収去してきます医療用、一般の医薬品、病院製剤、生薬・生薬製剤、化粧品や衛生材料などに含まれる有害物質の試験や品質試験、調査研究等を実施しております。また、最近は脱法ドラッグ関係が問題になっておりますけれども、東京都では取り締まる脱法ドラッグの指定などをしておりまして、そのための検査などもこちらで担っております。
また、環境保健分野におきましては、大気、室内環境、飲料水、生活用水などに含まれる有害物質の試験検査や調査研究などを行っております。
もう1つ、精度管理室がございまして、先ほどGLPの話がありましたが、ここは食品検査におけるGLPの信頼性を保証するための監視業務を行っています。これは内部監視機関でございます。また、都内の民間臨床検査機関を対象とした精度管理、調査、監視業務等を行っております。先ほど発表になりました東京都の臨床関係の検査の精度管理の結果は、ここの精度管理室でまとめております。
それでは、具体的にどういうもの試験を行っているかといいますと、特に標準物質に関係するような化学分析業務を行っているのが水質分析。これは今横浜市さんの方でお話がございましたように水道水の検査、あるいはプール水とか下水、排水等の水質分析を行っております。
食品分析につきましては、食品中の添加物や農薬類、動物に用いられております抗生物質など動物用医薬品の分析、添加物製剤の品質試験、あるいは容器包装等の品質試験を行っております。
医薬品分析につきましては、先ほど述べましたように、いろいろな医薬品につきまして薬事衛生に関する分析を行っております。そのほか家庭用品などの分析としまして、医薬部外品や化粧品、あるいは洗浄剤等に含まれる化学物質の試験等も行っております。
環境分析といたしまして、室内環境汚染物質等の分析を行っております。
私は、こういう地方衛生研究所の水質研究科というところにおります。水質研究科では、先ほどお話しになりましたような水道水の水質試験、事業所排水の水質検査、検査につきましてはこのようなものを行っております。
水道水の方は主に行政的な調査をする目的でサンプリングをした検体について検査を行っております。それから事業所排水の水質検査。下水道法により排除基準が決まっている40項目について検査しております。
こういう検査業務のほかに分析の業務といたしましては、各種の試験法の開発や改良が1つの大きな仕事になっております。基準値が設定されております水道水や排水等の分析法につきましても、いろいろ検査をしておりますと不都合が出てくることがございます。そのようなものの分析法の改良等を行うというのが1つの仕事でありますし、あるいは新しい、まだ基準が決まっていないような化合物で問題になってくるような化合物が多々あります。そのような化合物についての試験法を開発したりするのも仕事の一つです。
そのようにして改良あるいは開発した試験法を用いまして、環境試料や飲料水中の基準になってないような有害化学物質のモニタリングも先行的に行っております。これも当科での水質分析の業務の一つでございます。
水質試験の代表的な分析操作。これも先ほど横浜市の方が説明されたものと重複してしまいますけれども、ほとんどは機器による分析でございます。金属類、無機イオン、有機化学物質、農薬類等たくさんの項目がありますけれども、現在はほとんど機器分析で行っております。蒸発残留物などに関しては重量分析が取り入れられておりますし、過マンガン酸カリウム消費量などにつきましては滴定法、臭気や味につきましては官能検査など機器分析ではない方法が若干取り入れられております。
水質試験の機器分析の操作についてですが、本当にこれは大ざっぱに示したものです。水試料の場合には、先ほども説明がありましたように非常に低濃度のものを分析する必要がありますので、濃縮操作が不可欠でございます。濃縮操作をして、化合物によっては誘導体化したりいろいろ操作がありますが、目的の化合物を測るのに適した分析機器を使って測定するという方法であります。
これも先ほど説明がありましたように、この機器分析の場合には既知濃度の標準液との比較により濃度を求めます。ということで標準液の濃度、トレーサビリティ、その辺が分析の結果に対して非常に重要な意味合いをもつようになってきます。
次に衛生研究所において求められる検査の信頼性についてお話ししたいと思います。
衛生化学分野の試験において、これは日本の場合ですが、分析値の信頼性が法律的に求められてきております。まず1997年に食品中の化学物質の検査にGLPが導入されました。食品の場合には、化学物質のほかに細菌検査等も含まれております。
このGLPが導入された背景といたしましては、食品の流通が全国規模になったため食品の質の影響が広域化しており、また分析も全国いろいろな機関で実施するようになったことから検査精度の統一性を図るため、GLPが求められるようになってきております。それから輸入食品の増加、これによりまして検査精度の国際的な統一性の要求がさらに高まってきていると思います。最近は検査内容に関する情報の開示請求や検査結果の支障の増加が出てきているということで、やはり信頼性が求められてきております。
また、2003年には、先ほどもお話がありましたように、水道水の水質基準試験にGLPが導入されてきております。
GLPとは「Good Laboratory
Practice」を略したもので、食品の方では「適正検査管理基準」と訳されておりますが、検査データの信頼性を確保するためのシステムでございます。
この試験結果を第三者に保証するために行われ、またGLPは法律によって定められております。実施は義務ということになっております。
当センターがGLPのために実施していることは主に食品の分析に関係することですが、まず検査が適正な方法で行われ、実施過程、データを記録に残すということが非常に重要な作業になっておりまして、これはISO/IEC17025
と同じようなことだと思うのですが、標準作業書の作成、管理、記録。検査試料の管理について、検査方法について、あるいは分析機器の保守管理について、標準試薬、試薬等の管理について、そのほか分析結果に関するいろいろな異議や苦情があった場合の対処についてなど、色々なものについてのSOPの作成と実施、管理、それらの記録を残すことが求められています。
それから、分析者の手技が良好であることを定期的な精度管理により確認すること、これが非常に重要になっております。その手法といたしましては、先ほどの臨床検査の方で説明がありましたことと全く同じで、内部精度管理や外部精度管理によってこれを確認することになっております。
そして、このようなことが適正に行われていることを確認する部門を検査部門とは独立して同じ機関内に設置するということで、信頼性保証部門の設置が求められております。食品についてはこのような制度をとって、当所でも検査を行っております。
このようなGLPの取り組みは、一般的に信頼される分析値を得るために私ども検査をする者は、GLPの体制がとられていようとなかろうと心がけなければならないことだと思います。その中で、1つは信頼できる分析方法の採用、試験者の技術の確保が非常に重要になってくると思います。
また、使用する試薬の信頼性の確保、これも非常に重要になっておりまして、機器分析がほとんどの項目について用いられていることから、トレーサビリティのある標準液の使用、これが非常に重要だと思います。
これはトレーサビリティの確保ほどのものを要求しているわけではないのですが、例えば一般の試薬につきましても純度が明確であること、これが私どもの求めることでございます。
それから純度とかグレードの標準化。これは各試薬メーカーの方でいろいろなグレードの試薬を出していらっしゃいますけれども、恐らくその製薬会社独自の管理の方法でなされていると思うのです。例えば有機溶媒にしても、ヘキサン1000とかヘキサン300
というものが出ていますが、いろいろなメーカーで出ているものは若干違いがあるときがございます。そのようなものの標準化を望みます。メーカー間の差がないことが分析に携わる者としてはお願いしたいことでございます。
もう1つは装置・器具の信頼性が確保されていること、機器につきましてもトレーサビリティが確保されていること、装置のバリデーションがきちんと行われていること、これが重要になってくると思います。
また、内部及び外部精度管理が重要であると思います。内部精度管理を行う場合に標準試料、ここでいう標準試料はいわゆる試薬としての標準試料ではありませんで、例えば河川水の重金属の標準試料など認定のものが出されておりますけれども、そういう標準試料の種類がふえるということは、私どもが自分たちの分析手技を確認する上で非常に重宝で便利なものでございます。そういう標準試料の充実をぜひお願いしたいと思っております。
「化学物質における標準試薬類の役割」について。これは今まで話したことと重複いたしますけれども、私が今述べました標準液は分析対象とする化学物質の定量、同定に用います。それから、標準物質はいわゆる内部精度管理などに用いられるような対象物質の値が認定されている実試料、例えば河川水などを指しておりますが分析が正しく行われているかということを、こういう標準物質を用いて確認でき、非常に有用であるため、充実していただきたいものです。
それから、私どもの仕事といたしまして開発とか分析法を改良することがございますが、そういうものの評価に用いるためにもこの標準物質の充実をお願いしたいところでございます。
これは先ほどの横浜市の方もお話しなさいましたように、検査に用いる標準液についてですが、公定法では標準溶液は分析者が試薬から調製するように書いてありますが、現状は市販の標準溶液がある場合にはほとんどがそれを使用しております。これは分析時間の短縮のため、それから標準液を標準試薬からつくるときにその分析者間のばらつきを除くために、市販の標準液がある場合にはほとんどそれを用いております。
我々の仕事の中でさまざまな試薬を使っているのですけれども、「市販の試薬に望むこと」ということで、標準液に関しましては濃度の信頼性の保証された標準物質や規定液の供給、もう1つは非常に無粋な話なのですが、信頼性の保証された標準液が余りにも高額過ぎますと取り入れることが難しくなってきますので、その辺もぜひ考慮していただければと思います。
試薬類につきましては、表示純度の信頼性の確保ということで、例えば基準が決まっていないような化合物の分析法等をつくりますときには、一般の試薬から標準液を調製して作ります。そのときに一般の試薬で純度何%とか書いてあるものを基準にして私どもは作りますので、その辺の信頼性の確保もしていただければ非常にありがたいと思います。
それから、試薬類の純度やグレードのメーカー間の統一をお願いできたらと思います。
標準物質、これは河川水などの試料の方ですが、今重金属については日本分析化学会などで出しているのがありまして、それを私どももよく内部の精度管理などに用いておりますが、そういうものがもっとほかの化合物についてもできることをお願いしたいと思います。これは正確な分析ができているかの確認とか開発・改良した分析の評価に使用いたします。
○今井座長 矢口様、どうもありがとうございました。
ご質問、ご意見等ございましたら、どうぞお願いいたします。
○芝田委員 標準物質を充実してほしいというご要望が出ているのですが、例えば認証機関がどういった標準物質からまず整備していくか。全部を一度にはできないと思うのですけれども、それをまずどういったものから優先して整えていくべきかというときに、どういった点を考慮してそれを選ぶべきかということについてユーザーの立場からありますか。
○矢口科長 いろいろな分析の種類がありますけれども、自分たちの使用するものから充実してほしいということはあります。重金属の方につきましてはかなり色々できていると思います。これが例えば農薬や水道水の場合、消毒副生成物などの有機物を混合したような水の試料など、そういうものをつくって認証したものを出していただければ検査の精度管理に非常に役立つと思います。
○芝田委員 例えばいろいろあるのですけれども、要するにその物質の中で直接国民の命にかかわるものとそうでないものでは、例えば命にかかわるものを最初に準備しておくべきだとか、そういった観点の質問なのです。
○矢口科長 そうですね。命にかかわるものも重要だと思いますし、もう1つの考え方は、例えば日本において水道水とか水環境の中でたくさん検出される化合物、それも必要だと思います。
○中野委員
先ほど来のお話で市販の標準溶液というのが非常に重要な位置づけをもっているというのがわかったのですが、ある1つの物質について市販の標準溶液が例えばA、B、C、Dと4つあったときにどれを選択するかというような指針がおありならばちょっと教えていただきたいというのが1点目です。
2点目は、この分野においては国際整合性ももちろん必要だとは思うのですけれども、それよりも国内的に値を統一することの方が重要であるというような認識でよろしいかどうか。その2点お伺いします。
○矢口科長 まず最初の方なのですけれども、私どもが使うときに、例えば幾つかのメーカーの標準液を調べて、似たような値をとるところのメーカーをそれ以後ずっと使うというような方法も使っております。二点目につきましては、特に水道水関係につきましては、国内で統一することがまず第一番だと思います。水道水は余り国際的に分析値の信頼性について問題になることはないと思います。
ただ、食品の分析につきましては、今輸入食品が多いので、地方衛生研究所で分析する結果につきましても、やはり輸入品の場合にはクレームがつくこともございますので、食品の分析に関係するものについては国際間の整合性が必要だと思います。
○山領委員 市販の標準液や試薬に対して信頼性を望むとおっしゃっているのですけれども、この信頼性というのに対して、現状でもある程度信頼がおけるけれども、それを裏づける保証が欲しいのか、それとももうちょっと精度を上げたものが欲しいのか、どちらなのでしょうか。
○矢口科長 信頼性の裏づけについては、いわゆる標準液など標準に使うものをまずは最優先していただきたいと思います。また、一般の試薬などにつきましてはメーカー間の信頼性の置き方を統一する、標準化する、まずはそれをお願いしたいと思います。
○山領委員 使われる側からみて、現在どの程度ばらついているとか、そんな感触をおもちでしょうか。
○矢口科長 普通の分析をしているときには余り思わないのですけれども、例えば非常に低濃度の分析をする場合には、例えば有機溶媒で抽出するとき、単純な有機溶媒は品質を維持するために添加物が若干加えられていると聞きますけれども、そのようなものの影響がメーカーによって違う場合がございます。それは私たちにはわかりませんので、はっきりとわかるようにしていただくか、あるいは統一する、そういうことを望みます。
例えば有機溶媒なんかにつきましても、ほとんどの分析機関はそういう理由で最初に検討に使った有機溶媒をずっと使う傾向にあると思います。
○今井座長 予定の時間になりましたので、ここで終わりにさせていただきたいと思いますが、きょうはそれぞれのお立場から現状のご説明、課題の的確なご指摘等をいただきました4人の皆様に厚く御礼を申し上げます。
前回もお願いしたのですけれども、それぞれの組織の中でなさっていらっしゃることが横並びでどうなっているかということを確認させていただきたいと思いますので、簡単な質問を出させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは2番目の議題、その他、今後の進め方等について、事務局からご説明いただきます。
○吉田知的基盤課長 資料5に従い、説明。
○今井座長 それでは、本日の第5回目の第3ワーキンググループの会合を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
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