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 計量行政審議会計量制度検討小委員会第3WG(平成17年度第6回会合)議事録



1.日時:平成17年11月15日(火) 13:30〜16:00

2.場所:経済産業省別館9階944会議室

3.出席者:今井座長、伊藤委員、梶原委員、河村委員、齋藤委員、
       芝田委員、杉山委員、田畑委員、中野委員、畠山委員、
       本多委員、松本委員、三浦委員、望月委員、山領委員

4.議題:
  議題1 計量制度検討小委員会第3WG第4,5回会合議事録
       について
  議題2 関係者ヒアリング
   ○ 環境計量証明事業関係者
     ・ (社)日本環境測定分析協会
      田畑 日出男 顧問(名誉会長)
     ・ 東京都環境科学研究所 佐々木 裕子 分析研究部長
     ・ (株)住化分析センター 
      高橋  稔 事業企画室技術担当部長
     ・ 神奈川県環境農政部 鳥井 重雄 環境農政課主幹 
  議題3 その他

5.議事内容

○吉田課長 委員の方、おそろいでございますので、第6回の第3ワーキンググループを開催させていただきます。それでは、以降の議事進行は今井座長にお願いいたします。
○今井座長 今日で第6回目になります。お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。
 前回は計量標準そのものを実際にお使いになるユーザーの立場からプレゼンテーションをしていただいております。
 前回も含めて今まで論点として上がってきたものを整理いたしますと、海外の事業者に校正を依頼せざるを得ない場合があり、その場合にユーザーとしてコスト高になるので、国内で校正事業が開始できないかという御要望があったかと思います。それから、このワーキンググループではかなり標準物質関連のお話をしていただいておりますけれども、その中で我々の生活の中で安全に関わる、特に水道水を考えてみますと、試験方法の標準化、規格化の推進をもっと早めてほしいというような御要望があったかと思います。さらに試験方法が異なる場合でも標準物質が統一されていればそれで同等性が証明できるのではないか。その場合に基準を国が明確化していく必要があるのではないか。最後にはユーザーのニーズに応えられるように状況を把握して整備を迅速に行うということが必要ではないか。そのようにまとめられるかと思います。
 今日も前回までと同様にプレゼンテーションしていただくわけですけれども、特に環境分野にかかわる濃度、騒音、振動、あるいは環境計量証明事業、それからダイオキシンに代表されるような微量濃度分析に関するいわゆるMLAPに関するお話、さらには工場の排煙、騒音、振動、水道水、あるいは食品に含まれている有害物質といったものの安全がどういうふうに担保されているか、そのようななことを主題として4人の方々にプレゼンテーションしていただく予定にしております。
 このワーキンググループでの議論の中身については原則公開でございますので、御承知おきいただきたいと思います。

計量制度検討小委員会第3WG第4,5回会合議事録について

○今井座長 それでは、議事に移らせていただきたいと思います。
 資料1として第4回目の議事録が提出されております。ところが、プレゼンテーションしていただきました方の確認がとれていないところがございます。最終的に第4回の議事録の最終確認は座長一任ということにさせていただきたいと思いますがよろしいでしょうか。
 はい、ありがとうございます。それでは、私の方で確認させていただいて、ホームページに載せるようにいたします。ありがとうございました。
 それから、前回の第5回の議事録につきましては、次回御確認ということにさせていただきます。御承知おきいただきたいと思います。

(社)日本環境測定分析協会 田畑 日出男 顧問(名誉会長)

○今井座長 それでは、議題2に移りたいと思います。
 最初に申し上げましたけれども、環境証明事業に関する現状、実情、あるいは社会的な要請、今後のあり方、期待することをテーマといたしまして4人の方々から順次御説明いただきたいと思います。今日はかなり共通部分があるかと思いますので、最後総括的な質疑応答ができればと思っております。
 それでは、最初に、この第3WGの委員でもいらっしゃいます社団法人日本環境測定分析協会顧問、名誉会長の田畑日出男様から御説明いただきたいと思います。
○田畑委員 私ども日本環境測定分析協会は環境計量証明事業に関する企業の集まりでございまして、現状と今後のあり方、期待することなどについてお話しさせていただきたいと思います。目次に従い、協会の概要とその活動の実態、課題への対応、今後の取り組み、行政・関係機関へ期待することというような構成になっております。
 協会の概要でございますが、設立は昭和48年11月に設立いたしまして、翌年の49年4月1日に通産省、環境庁から社団法人として認可されております。
 現在は、正会員574。これは環境測定分析事業所でございます。個人が若干含まれております。それから、賛助会員が405名、名誉会員が9名ということになっております。
 目的でございますが、環境測定分析に関する技術の向上、それから環境測定分析証明事業の効率化、事業者、環境計量士の資質の向上、そして最後に、環境測定分析の社会的信頼性の向上と環境保全への寄与ということになっております。
 経緯でございますが、平成11年頃になりまして非常に信頼性の確保ということが言われるようになってまいりました。私ども協会といたしましては、データの信頼性の確保に取り組もうということで、平成11年に技能試験を開始いたしました。同時に、国際化の時代になってまいりまして、国際協力が必要だという観点から、UILI、ACILに加盟いたしました。そして、活動の拠点を整備しなければいけないということで、JEMCAビルを竣工したわけでございます。そして、14年に計量法の改正、MLAPが導入された。その導入によって事業内容も大分変わってまいりましたので、定款の変更をさせていただき、昨年30周年を迎えたわけでございます。会員数も設立当初の187事業所から現在574事業所に増加しております。これは国内の環境計量証明登録事業所数1722ということを考えますと、協会に3分の1加盟しているということになります。
 それから、協会の活動につきましては、予算といたしまして年間2億9000万円ぐらいで運営しておりまして、会費が34%、出版関係、技能試験とで35%ということになっております。支出の方を見ますと、一般管理費が41%で、技能試験、出版関係で33%を支出しているということになります。
 組織につきましては、支部が7支部、常設の委員会を10委員会、それから特別委員会、その他で5つの委員会で全国的に活動しております。
 活動につきましては、お手元のパンフレット、業務案内を後ほど見ていただきたいと思います。
 それから、会員の実態について申し上げますと、日環協の会員だけではなく、我々の業界で平成15年度に実態調査としてアンケートをとった資料では、大体1億円以下の資本金の事業所が65%で、半分以上が1億円以下の資本金になります。また、売り上げについて申し上げますと、約7割が2億円以下の売り上げでございます。
 それから、分野別に登録事業者数を挙げておりますけれども、濃度が一番多くて、その次が音圧、その次が振動となっております。
 技術系の従業者数は、1事業所にどれぐらいの技術者がいるかということですが、平均すると17人ということで、かなり小規模になってまいります。それから、どういう方が従業員になっているかといいますと、大卒が57%、短大・高専が15%という比率になっております。
 事業者の業務内容につきましては、緑の平成15年度特定サービス産業実態調査として経済産業省調査統計部が行ったものに日環協の会員を赤で示しております。ダイオキシンなどにつきましては、全国の事業所のほとんどが日環協の会員ということが言えるかと思います。
 事業の市場規模でございますけれども、大体年間2000億円で、環境測定分野は65%ということになります。これは日環協のとったデータと経済産業省でとられたデータとほぼ一致しております。
 協会の課題と対応でございますが、最近の傾向を申しますと3つございまして、社会的責務の増大ということで、CSR、コンプライアンスを第一に要求されており、このことに対応するために企業行動規範を作成して、経営者セミナーなどにおいて周知徹底しております。
 2つ目は、信頼性の確保でございますが、これは後ほど詳しく説明させていただきたいと思います。
 3つ目は、技術の維持・向上ということで、ISO/IECガイド43−1に基づく技能試験を実施しております。このことについても後ほどお話しさせていただきます。
 そのほかにSELFということで、分析値の自己管理をしております。
 先ほどの1番目の環境測定分析業界における企業行動規範でございますけれども、お手元の資料が日本環境測定分析協会が各会員に出している企業行動規範でございます。大きな項目として11挙げております。
 資格取得状況ということで、ISO9000、ISO14000、ISO/IEC17025、MLAP、それから環境省ダイオキシン受注資格、土壌汚染対策法指定調査機関がこのような状況になっております。
 技能試験でございますが、これは日本分析化学協会と共催しており、先ほど申し上げました平成11年から29回行っておりまして、縦軸が参加会員数でございます。これは日環協の会員だけということではございません。水質に対する技能試験を多くしております。
 技能試験の概要でございますけれども、金属類が一番多く、無機物、VOC、農薬類、その他になっております。金属類が延べ38項目で最も多く、次いで無機物の18項目ということになっております。
 今後の取り組みでございますが、1つは品質確保のさらなる充実をしていきたいということで、測定分析の役割として、国民生活の安全・安心の確保。私ども環境測定分析協会では、さらに分析項目といたしまして、廃棄物、食品、飲料品、製品というところに延ばしていきたいと思っております。 
また、品質確保、精度向上の問題といたしましては、設備・人材の確保、最新技術の導入を図っていきたい。
 それから、2つ目のワン・ストップ・テスティングと3つ目の技術能力の維持・向上でございますが、次の資料でお話ししたいと思います。
 今2つの国際機関へ参加しておりまして、国際協力においてはILAC、CASCOにも意見の提出をしております。その2つの機関の1つがUILIで、国際民間分析試験所連合で、もう1つはACIL、米国の民間分析試験所協会に加盟しております。
 これらの協会を通じてワン・ストップ・テスティングの確立に向けて今動き出しており、国際的な測定値の比較の必要性が出てまいりました。来年度からRoHS指令が実施されるわけでございまして、この規制に対する対応を図ると同時に、日環協の技能試験が国際機関にも注目されておりまして、これを国際的に活用してはどうかということで、国際的に技能試験を行うことになりました。今サンプルの手配中でございまして、11月に参加事業所を募集して、2月までに測定を行っていただき、4月のマドリードの会議でこれを評価するという予定にしております。これは世界各国を含めて200社程度参加していただくことになっております。
 次に、環境測定分析士の制度でございますが、先ほど申し上げました技術者の技術の維持・向上のため、協会としましては技能を評価する仕組みをつくるということにしております。分析士は3級、2級、1級ということになりまして、3級は基礎的知識については1年以上の経験、2級は専門的知識及び技能について、3年以上の経験、1級は高度専門知識、技術能力を持っている者で、経験が5年以上ということを今予定しております。そして、平成18年度のできるだけ早い時期から第1回目の試験を実施したいと思っております。
 6番として行政・関係機関へ期待することで、合理的かつ効率的な環境計量のあり方を私どもが期待していることでございますが、これにつきましては5つ挙げております。1つは、国と自治体の計量法に対する見解を統一していただきたいということでございます。計量法の実施については自治体が行っているわけでございますが、各県ごとに対象物質の問題だとか、見解の違いがございますので、これを統一していただきたいと思います。特に例としては、産業廃棄物などについてユーザーの方から計量証明が欲しいという要望もございますので、これの対応をお願いしたい。
 2番目は、相互認証でございますが、ダイオキシンの例ではISO/IEC17025、MLAP、それから環境省精度管理指針という制度がございますけれども、これも相互認証していただきたい。
 3番目は、新たな分析技術である最近の簡易といいますか、迅速検査方法への対応で、こういう生物検定法に対する計量証明の将来をどうするのかということでございます。
 4番目として、環境計量士の資質及び技能向上に対応することで、登録更新制度を新設し、再教育を講習によって行うということはいかがかと思っております。日環協は環境計量士の再教育プログラムを行っております。
 5番目として、標準物質の整備と供給の迅速化で、最近金属などはたくさんの項目を一緒に測定するわけで、一斉分析に有用な混合標準物質も認証の対象にしていただいてはどうかと思っております。
 最後になりますが、要望でございます。
 これもMLAPを対象としておりますけれども、審査の見解の統一ということで、審査をする機関によって見解が違いますし、審査をする人によっても見解が違いますので、研修をしっかりしていただきたいということと、また、異議がある場合の申し立てへの対応を考えていただきたいということでございます。
 2番目は、MLAP認定の要求事項とISO/IEC17025の整合化で、複数規格を整合化していただきたいということでございます。先ほども相互認証ということを申し上げましたけれども、我々中小企業、小規模事業者が多い団体でございますので事業者の負担を軽減していただきたい。
 3番目は、POPsなど新たな極微量物質、汚染物質への対応で、新たな汚染物質の測定方法等の研究開発を推進していただきたいということでございます。これは公定法がないので、公定法を新しい物質については早急に研究開発をしていただきたいということでございます。また来年RoHS指令が実施されますけれども、今検討中でございますが、カドミウム以外は公定法がないというのが現状でございます。
 4番目は、国際的視野に立った技術協力体制の構築で、これは特に発展途上国などへの環境測定技術の支援をしていただいて、発展途上国のデータの信頼性というものを国際協力によって成し遂げていただきたい。日環協におきましても、台湾などへ協力をしております。
 5番目は、類似分野でございますが、食品中の農薬であるとか、飲料水の有害物質、あるいは製品中の有害物質の測定の信頼性の確保ということも計量法の中で考えていただくということが無理であっても、省庁を統一して、統一見解を示していただきたいというふうに思っております。
 6番目は、環境計量証明事業の登録要件の見直しということでございますが、これは施設運用が正しく行われているのかどうかということ。それから、登録の要件でございます機器も現在では古くなってしまって、必要ないものもあるようでございますので、この辺の設備機器の見直し等をお願いしたいということでございます。
 以上でございます。どうも御清聴ありがとうございました。
○今井座長 田畑委員、どうもありがとうございました。
 現状の分析と要望等も整理していただいてわかりやすくお話しいただいたと思います。
 この中で、特に標準物質に関する混合標準物質を対象にしてはどうかということ、それから審査に当たる審査員の見解の相違ということについてはそれぞれ報告書が出ております。1つは知的基盤整備特別委員会の中の我が国における標準物質の供給のあり方というところで、混合標準物質に対しても配慮すべきだということが書いてありますし、審査に関しましては、適合性評価制度のあり方で、既に実際に動いていると思いますけれども、具体的には来年度から国内の認定機関の横断的な連絡協議会のようなものをつくって、特に技能試験の的確化、あるいは分担して日本全体として広くカバーしていきましょうということと、審査員のレベルをきちっと合わせるということで相互の連絡を密にしましょう、あるいは共同の研修を実施しましょうということが書かれておりますので、徐々に進んでいくと思いますけれども、いただいた御意見はごもっともですので、このワーキンググループの御意見の重みづけになるかと思います。
○江口知的基盤課課長補佐 事務局から失礼させていただきます。
 2点御意見をいただきたいと思うのですけれども、1点目は、環境計量証明制度、これは都道府県の登録となっておりますけれども、有効期限というのはございません。これについて有効期限を設けるべきではないかという声も聞こえのでございますけれども、この点についてどのようにお考えになっていらっしゃるかという点。
 それから、同じく環境計量証明制度の中で登録の基準、要件としてISO/IEC17025を導入すべきではないかということもよく仄聞するのでございますけれども、この点についてどのようにお考えになっていらっしゃるのか、以上2点についてお話しいただければと思います。
○田畑委員 最初の点でございますけれども、MLAPは3年1回立入検査があるわけですけれど、環境計量証明事業においても私どもは一定の更新のための検査であるとか、登録要件を満たしているとか、あるいは立入検査をするというふうに精度管理が保てるのかどうかやっていただいた方がいいと思っております。特に環境計量士について言えば、環境計量士も1回取ってしまえばいいわけですけれども、これについても計量証明事業と同じように更新制度を導入していただいくことによって一層の精度管理が図れるのではないというふうに思っております。
 それから、2つ目のISO/IEC17025の件につきましては、MLAP制度と非常に関係するところですけれども、先ほども申し上げましたように、相互認証していただくことによって、我々事業者の負担を少なくしていただきたい。ほとんどのところがオーバーラップしていますので、そのようにしていただくと大変ありがたいと思っております。私どもが期待しているところの1つでございます。
○江口知的基盤課課長補佐 今のISO/IEC17025の件なのですけれども、MLAPの基準を統一するというお話でございましたけれども、一般の環境計量証明事業の登録要件としてISO/IEC17025というのはどのようにお考えになりますでしょうか。
○田畑委員 このISO/IEC17025は対象物質ごとにかなり分かれておりまして、我々協会会員が、測定分析事業者といった方がいいかもしれませんが、事業者がこのISO/IEC17025を取るのには項目ごとに大変厳しいものがあるわけでございます。そのため、何かこういうものにかわる、我々測定分析業界が積極的に取れるようなシステムを考えていただけたら大変ありがたいと思っております。
○江口知的基盤課課長補佐 ありがとうございました。
○今井座長 ただいまのISO/IEC17025に関しては、親委員会ともいうべき計量制度検討小委員会の中でも出た御意見かと思います。簡単に言ってしまいますと要求事項がISO/IEC17025そのものでは厳しいので、もう少し簡略版のISO/IEC17025のようなものができないかというような御意見かと思います。
○本多委員 今の環境計量士の資質及び技術向上という更新制度の関連なのですけれども、技術士などですと技術士会と学協会が協力して、CPDプログラムやポイント制度とか、日々自己研さんするシステムをつくろうとしていると思うのですが、こちらの環境計量士の場合はそういうことではなくて、何年かごとの更新という制度で質の確保をしようということでしょうか。
○田畑委員 今申し上げたように、何らかの方法で考えていきたいということでございまして、そういう立入検査、登録要件を満たしているかどうかということで更新する方法もあると思いますけれども、逆にそういう事業所に対する講習というようなことでステップアップしていただくということもあるのではないか思っております。
○今井座長 計量士という意味では環境計量士のほかに一般計量士がございますけれども、一般計量士も特に更新という意味では教育制度が今はないと思いますけれども、同じような見方ができるのかなと思います。
○田畑委員 先ほど申し上げましたように、計量証明事業者ということになりますと、環境計量士とリンクしているものですから、環境計量士の方にも更新制度、あるいは講習制度を導入していただきたいというふうに思っております。一般計量士についてはよくわかりません。
○伊藤委員 受託事業をやっていらっしゃるわけですけれども、こういう場合、不確かさという考え方を導入していかなければいけないということで、1点当たりの価格というのは大体決まっているわけでございますので、その辺についてはどう考えていらっしゃいますか。不確かさというのはこれからますますもって導入していかなければいけないというように考えていらっしゃいますでしょうか。
○田畑委員 この問題は大変難しいのですけれども、標準物質の問題であるとか、物質に対するトレーサビリティの問題と一緒になって考えていかなければいけないのではないかと思うのですね。
 それからもう1点、我々は供給された測定機器を使っているのですけれども、機器の構造についてはほとんど無知なのですね。ですから、日環協でも機器についての機器研修というようなものをやって、できるだけ機器についての知識を持っていただこうとしておりまして、それと一体になってやっていかなければいけないのではないかと思っているのです。
○伊藤委員 化学の方では今おっしゃいました機器という面では高感度分析というので、機器の感度すれすれのところでもって分析しなければいけないという、そういう条件になる場合が多々あると思うのですね。その場合不確かさという考え方が本当にそこに導入できるかというのはずっと疑問を持っているのですけれども、これは私の意見として、そう思っている次第です。
○今井座長 ただいまの御質問ごもっともだと思いますし、お答えもごもっともだと思いますけれども、不確かさのことについてはいろんな見方があるのだと思うのですね。しかしながら、トレーサビリティという言葉につながるためにはやはり信頼性を担保する上での不確かさというのは必ず書いておきましょうというのは最近の風潮で、用語の改正も今進められており、国際計量基本用語集というのがございますけれども、その中でもトレーサビリティに絡む内容については不確かさを明記しましょうということが入ってくると思います。
 ただし、その中で厳密に、トップの標準から現場の標準に至るまでの経緯をすべて網羅しなければいけないかというと、必ずしもそうではありませんで、自分のところで使う状態より1つ上で確保されていれば、それを引用してもいいという概念が通じると思うのですね。ですから、現場の不確かさといいますか、信頼性を表明する上で現場の方々がトップのところまでさかのぼる必要はなくて、1段上のところまである程度の数値的な根拠があれば、それを使っていいという概念だと思うのです。
 ですから、必要に応じて不確かさを表明すればいいのであって、厳密にやらなければいけないという、ある意味の誤解があるのではないかと思います。
 それから、ちょっと専門的になって恐縮ですけれども、実は不確かさに関連する考え方というのは分野によって大分違うのですけれども、大もとになります不確かさに関する文書、GUM(Guide to the Expression of Uncertainty in Measurement)という、いわば指針文書があり、10年以上前に発行されて、現在ではそれに対する解釈文書(補完文書)をつくろうとしていますけれども、本体は変えないということでございますので、大筋の考え方は変わらないと思うのです。
 ところが、今御指摘のように化学分析やバイオ関係になりますと、なかなか物理的な考え方が導入し切れないといいますか、当てはまらないのではないかという概念がございます。
 それで、ただいま伊藤委員からも出ましたけれども、機器に関してはある程度ブラックボックス化してしまって、そこのところはわからなくてもいいのだと。だから実際に、測った結果が再現性をとらえられればいいのではないかという考え方の、規格ではありませんが、テクニカルスペシフィケーションという形でISOの中に出そうとしています。いろいろ問題はあるのですけれども、食品関係とか、あるいは飼料では、細かいところまでとてもさかのぼれないから、実際に反復実験あるいは再現実験をして、そこから再現性(reproducibility)という、複数回測ってみて、その差が余りなければ、それで不確かさを表明してもいいのではないかという考え方も決してそれは間違っているとは言えないと思うのですね。何らかの形でそういう再現性を証明する根拠があればいいのではないかと思うのです。
 そういう意味で、考え方の統一ということをまた広めていかなければいけないと思っております。ですから、分野ごとにそのプロセスをお互いが了解すれば納得していけるのではないかと思っております。
 ですから、何が何でも不確かさというのは非常に難しいんだとか、あるいはとことんまでトップの標準までさかのぼらなければいけないのだということでは必ずしもない。もちろんそういうところも必要ではありますけれども、それこそまさにこのワーキンググループの課題であります国家標準、あるいは校正事業者さんが出す標準がしっかりしていれば、あとはそれを使って現場の再現性を表明すればいいのだという、そういうふうな割り切り方もできると思いますので、考え方の統一が必要ではないかと思います。
○田畑委員 日環協の事務局から来ております副会長、今の件についてどうでしょうか。
 私たち分析だけに限って言えば、技能試験では不確かさというのはやはりスコアで評価しているのではないでしょうか。
○伊藤社団法人日本環境測定分析協会副会長 かわってちょっとお答えさせていただきたいのですけれど、不確かさについては確かに化学分析からいいますと必要なものだと思うのですが、1つは環境測定の方から申しますと、とった試料についていかに精密に測ったとしても、それはサンプリングの状態とか、測定地点の選定とか、そちらの要素の方が最終的な結果に与える影響というのは大きいと思うのです。それで、とったポリ瓶の中の値の真値を追求するのは少し無意味な感じもしております。ですので、そこの環境をどう評価していくかということは、サンプリングポイントの選定とサンプリング時期の問題、サンプリング時間の問題、その点をもっと踏まえた形で検討していただいた方が環境を評価する上では重要性が高いと思っております。
 それと現状では行政関係が環境に対する基準値を作成して行政指導を行っておりますが、その場合に分析値として、例えばここの水の亜鉛が25.0でしたという答えに対して、プラス・マイナス幾つですと答えたときに、指導がかなりしづらくなるという話も聞いております。
○今井座長 御説明ありがとうございました。
 不確かさの問題は、まさに真値が求められないので、ばらつきとしてどの程度あるかということを確保しましょうという、担保しましょう、推定しましょう、評価しましょうということで不確かさの概念が出てきたわけですので、真値を求めるということは決して必要なくて、このあたりにあるだろうということがわかればいいのです。ただし、今御説明にありましたように、調節の問題ですとか、サンプリングの問題とかいろいろありますけれど、そういうところでどのくらいの不確かさかあるかということを見積もって、それで全体的に合成するというのが不確かさの評価の考え方ですので、その辺はどこの分野であっても、化学であろうと、生物であろうと、物理であろうと、同じだと思いますけれども、不確かさに影響を与える要素をどういうふうにとらえているかということが一番大事だと思うのです。それぞれの要素の中でばらつきがどのくらいあって、総合的に合成すると最大限ここにおさまりますということが明確にフォローできればどういうプロセスであってもいいと思うのですけれども、結果的には同じような概念になってくると思います。
 ですから、担当される当事者同士がちゃんと説明ができて、納得できるような状況を説明するのが不確かさの評価ではないかと思っています。

東京都環境科学研究所 佐々木 裕子 分析研究部長

○今井座長 2番目は、東京都環境科学研究所分析研究部長でいらっしゃいます佐々木裕子様からお願いいたします。
○佐々木分析研究部長 ただいま御紹介いただきました東京都の環境科学研究所の佐々木裕子です。環境測定における計量証明事業のあり方等という課題をいただいたのですけれども、私ども自身も分析している立場と両面からお話しさせていただこうと思います。
 初めに簡単に私たちが何をしているかということですが、主に3つの仕事をしております。
 まず、規制・監視ということで、法的に決められたような水から廃棄物までさまざまな項目の分析を行っております。
 また、必ずしも法には規制されていないようなPOPsですとか、ダイオキシン等の物質の分析法、環境実態、挙動、排出源との関係などを水、土壌、大気、さまざまな媒体について行っております。
 こうした経験を踏まえまして、私どもでは行政部門の委託分析の精度管理というのを大きな仕事にしております。この精度管理につきましては、いろんな要因――組織体制、設備、人材の問題、システム、また今お話に出ていたような標準品ですとか多くの課題がございます。
 このうちの組織体制ということになりますと、例えばここには私どもの組織体制を掲げさせていただいておりますが、ダイオキシン分析を平成10年に始めようということで新たに分析研究部が発足いたしました。その際に当時の所長が極微量分析を始めるに当たってはきちんとした精度確保をしていく。そういったシステムを入れるようにという指示がございました。その年にいきなりはできませんで、実際にダイオキシン分析を平成11年に始めて、そのときにSOP等々を整備していき、具体的に完全なシステムとしてダイオキシンに関し精度管理システムを始めたのが平成12年、ほかの項目を年次ごとにそれぞれ入れていったという実情がございます。
 そういう経験を踏まえますと、前の演者のお話にもありましたように、分析機関それぞれ精度の重要性というのは十分認識しているとは思いますが、やはり人手も予算もかかります。そういう点からはMLAP等の制度がしっかりできていれば、必ずどこの施設も分析機関は必要性を個人ではなくて、組織全体として認識するという意味では必要だろうというふうに考えております。
 その中で実際にコストや人手がかかるという部分ですが、これは私どものダイオキシン施設の例でございます。MLAP等の精度管理システムがない時点でダイオキシンなどを行政部門が委託をするときにどういう形で業者さんの選定をしていたかといいますと、実はこのように低濃度前処理室、高濃度前処理室というような別な前処理室を少なくとも持っていることなどを要件にさせていただいておりました。こういった施設をつくるには、かなりの予算がかかりますので、そういった精度を大事にする組織であればそれなりに分析精度もきちんと考えていただけるだろうということでMLAP等がないころに要件にいたしましておりました。
 ただ、前処理室が整備されておりましても、それぞれ別の部屋で前処理をするのですが、最後のガスマスで分析するために窒素パージして、試料をつくるところが実は1カ所であって、そこでコンタミをしてしまった例ですとか、それぞれの前処理室はあるけれども、洗い物をする人は1カ所だったので、そこでクロスコンタミをしてしまったというような例もあって、施設は非常に大切ですけれども、やはりそれを使いこなす人というのもまた非常に重要になってまいります。
 人材育成ということで、前演者がお話しになったように、分析機関での内部的な教育訓練というのは重要ですけれども、協会における共通した教育訓練ですとか、学会ですとか、いろんな場で人材を育成していくということも非常に重要であろうと考えております。
 育成というだけではなく、職場としては得られたものを維持・継承していく。実は私どもは自治体として異動もあるものですから、この維持・継承に非常に苦労しております。分析機関だけではなく、周辺のところから支援していくということが非常に重要です。それを自己満足に終わらせないためにも、いろいろな精度管理を入れていく。特にダイオキシンなどを始めたときには、メーリングリストを使って困ったときの情報交換ができるようにということも行われました。
 また、私どもでは、pH、BOD、SSのような項目の委託も一部いたしておりますけれども、ダイオキシンのような極微量分析だけが重要ではなくて、通常に簡単だと言われるようなものを行う担当者の気持ちを大切にして、そういう方たちも含めてモチベーションを上げていかないと、環境分析そのものの精度はきちっと上がっていかないだろうと思われます。そういう面では先ほどの演者のお話では1級、2級、3級といろいろあるようでありますが、そういった資格制度などを持って一定のモチベーションを上げていくというのは非常に重要だろうと思っております。
 ここにお示しした写真ですが、私ども行政部門が委託をする時に委託要件に書いてある中身も十分委託者は理解していなければいけない関係上、毎年、微量分析の講習会というのを私どもで開いております。都の環境局とか、23区や市の担当職員に来ていただいて、こういうところが重要なのですと現場で御説明する、というようなことを私どもではやっております。
 また、実際に運用していくときの管理システム、トレーサビリティ等を求められるわけですから、きちんと記録をとるとか、いろんな管理をしっかりすることは非常に大切だろうと思っております。
 ただ、私どもが精度管理システムを入れたときには、それ以前に様々な安全管理規定がございました。それら規定とこの分析精度の関係のいろいろな手順書等々は共通化して、できるだけ効率的、効果的にするようにしてまいりました。しかし、実はその後にISO14000をとって、必ずしもその辺の整合性がとれてないというようなことが出てまいりまして、今年直そうとしているのですが、非常に時間も人手もかかります。管理システムというのは非常に重要ではありますけれども、求める側もできるだけ効率性、効果的にしていくという、そういう視点も必要だろうというふうに自分たちがやっている立場からも感じているところでございます。
 こういった内部的な努力だけではなく、前のヒアリング等々で十分お話があったかと思いますが、私ども分析している立場から標準品や標準ガスの整備というのは非常に重要で、特に測定対象というのが今どんどん増加している状況にございます。
 例えばここにお示ししたのは来年の4月から始まりますVOC規制ですけれども、VOC規制は実際はトータルのVOCで規制されますが、実は個別成分で有害性ですとか、光化学オキシダントの生成能ですとか、そういったものが変わってまいります。そこで、私たちは的確な対応のためにVOCの個別成分を昨年まで80成分測るようにしてまいりました。ただし、PRTR法などの規制対象項目からそうでない物質に、具体的に言いますと、例えばトルエンなどのような物質からイソプロピルアルコールのようなものにかなり変わってきておりまして、今年からは含酸素系の化合物も含めまして102成分を測ろうと今検討しているところでございます。そういうことをやっていきますと、ガスそのものは作っていただいたりはしているのですけれども、トレーサビリティを進めていただきたいと強く感じているところでございます。
 また、環境標準試料、これも精度管理上も重要です。新たな項目が出てきたときの測定法の検討ですとか非常に有用で、整備も求められると考えております。
 ここにお示ししましたのは環境標準試料と言えるほど立派なものではないのですけれども、私どもが今年度行っております土壌の簡易迅速測定技術、これを公定法の補完法として、一部東京都の条例上で使っていこうということで、実用段階にあります迅速法を公募しております。測定技術を評価するために汚染サイトから土壌をいただきまして、0.1oアンダーの土壌をつくって、評価をし、こういった測定技術を活用し、できるだけ早く安いコストで汚染土壌の修復などの対策が進められるようにと行っているわけです。いろいろな形で使えるこのような環境標準試料の整備も求められるところでございます。
 また、分析法に関しましても、測定対象が増えてきているということで様々な分析法が提案されていますが、分析法の妥当性ということではいろいろ課題もあるかと思います。ここにはMLAPがちょうど始まったときに問題になりました例をちょっと書かせていただいたのですけれども、最初JISには器具がガラス製クロマトグラフ管と書いてありました。私どももテフロンコックを使っておりましたので、MLAPが取れませんが、国も各自治体もガラス製を使っているところというのは聞いたことがございません。MLAPを取るために各分析機関が大慌てでガラス製を求めて、品物がなくなったといううわさも聞いております。その後、一応の解決策は出されたわけですけれども、先ほどお話ししたメーリングリストなどでもこれについて様々に議論されました。2005年のJISの改訂でガラス製クロマトグラフ管又はこれと同等の材質ということになりましたので、私どもが仮に申請してももしかしたら通るかもしれないという状況になったわけです。
 ただ、器具、装置、その部分だけではなくて、例えば抽出法なども従来ソックスレー抽出となっていたものが、今度はそれと同等なものも認められてきました。同等が認められてくるのであれば、なおさら行っていく人間の資質というのか、判断力といいますか、スキルも持っていなければいけないですが、きちんと実証し、同等だと判断して、それを使っていくという教育訓練、人の育成というのは非常に重要だろうと思っております。
 また、分析法の整備はほかにも例えば対象媒体が変わると分析法の妥当性も必ずしも妥当ではなくなるという例をお示ししようと思うのですが、そういった問題ですとか、さらに新たな機器の進歩等をJISがすぐに取り入れたりということが難しいのですが、そういうこともどんどん進めていただきたいと思っています。
 ここにお示ししたのは、昔から行われているベンツピレンを始めとする多環芳香族炭化水素の例です。環境大気につきましては環境省が平成11年に有害大気汚染物質マニュアルを作りまして、私どもが分析しましても、十分測定はできております。ただ、東京都としては自動車排出ガス対策を強く行っているわけですが、自動車排出ガスの試料を同じ方法でやりますと、抽出効率が低下いたします。自動車排出ガスに含まれている炭素成分が抽出を妨害いたしまして、4環程度はまだいいのですが、環数の多くなったようなものになりますと、明確に抽出効率が低下いたします。そのために私どもでは、1社しかない特許のものを推薦はしたくないのですが、このような手法で溶媒を工夫すればきちんと抽出できることを見出しました。サロゲート物質が十分整備されてきたことも、最適化を図ることができた理由にもなります。
 ただ、私どもがシャーシダイナモで昔から取っていた試料が精度が悪くて、十分比較ができないという非常に残念なことがわかったのですけれども、対象媒体によって分析法はいろいろ違います。ですから、水道水に十分使えるものが排水では難しく、まして廃棄物にはとても使えないですとか、いろんな課題があります。分析法についても整備していくことは多々あるというふうに考えております。
 これは具体的に私どもが行政部門に協力してどういうことをやっているかをまとめたものですけれども、先ほど写真でお示ししたように、局ですとか、区市の委託者の精度研修、来年はVOC版もやってほしいということを言われております。
 また、委託するときの委託仕様書をつくる上で分析部分については協力、助言をする。分析受託機関については、例えばMLAPのような資格があるところを入札の資格にしたらどうでしょうとか、さまざまな助言をするのを仕事としております。
 実際に入札が終わり、分析の機関からSOPが出てまいりますと、採取法ですとか測定法を確認し、場合によってはこの方法では目標定量下限値が担保できないので、こういうふうに直してもらったらいかがでしょうというようなお話をさせていただくこともございます。
 また、実際に採取をする時、それから測定をする時、立ち合い、立ち入りを行っております。実際に採取は測定分析と同じくらい重要な部分ですので、ここがいいかげんになりますと結果の信頼性も何もございませんので、このときは必ず立ち合いを行う。立ち合わせていただくと、こちらが勉強になるようなことは多々ございますけれども、中にはそういうことをすると汚染しますから、こんなことやめてくださいというようなときも時々はございます。
 また、測定分析の立ち入り、クロスチェック、報告書が出てきたときに結果を見せていただいて、再分析、再計算のお願いをするときがございます。
 実は先週もMLAPをとられた事業所ですけれど、回収率、精製が不十分で、汚染地域の重要なデータのため、再々分析の結果が出てきたのですけれども、ちょっとまだ精度的にはとても信頼性あるデータということが言えないので、再々々をするよりは、別なところにお願いするとか、一応考えなくてはいけないのではないかと調整をしているところでございます。
 精度管理というのは、信頼性あるデータをとることで行政施策ですとか、さまざまな対策の判断の基盤になるわけです。私どもが今年度やっている土壌なども非常に都内の汚染土壌の判明率は高いものですから、できるだけ安くすることによってその修復を進めていきたい。ただそのときにはやはり信頼性あるデータが何よりも求められる。そのために分析受託機関としては組織として共通認識で精度管理の重要性をわかっていていただき、適切な対応をしていただかなければならないのですが、同時に私どももそうですし、試薬メーカーから、機器メーカーから、さまざまな機関で精度管理を目的とする基盤整備を進めていく。それから、ここのところは前演者と同じ意見なのですけれども、やはり信頼性あるデータを出す。精度管理という同じ目的であれば、できるだけ無駄を排して、システムそのものは簡素化して、必要最低限にしていく必要があるでしょうし、複数のものが同じ目的で並行してあるということは改善していく必要があるのではないかと思います。
 また、精度管理がきちんと行われているかというようなそれの適正評価ができるための人材というものも育成していくことが非常に大切なのではないかと思っております。
○今井座長 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの佐々木様の御説明に関して御質問、御意見等ございましたらお願いいたします。
○中野委員 7ページの絵なのですけれども、多分多種多様な分析をやっていらっしゃると思うのですが、一般的にトレーサビリティを確保するために国外の標準物質みたいなものを使っている例というのはどのくらい割合であるかというのを教えていただきたいのです。
○佐々木分析研究部長 標準ガスについては当初海外のものを使っておりました。最近は国内で作っていただいたので実施しているのですけれども、本当は私どもで今まで使っていた海外物ですとか、様々なものを並行して試験をして、最低限自分たちでもきちんとその辺のものの精度はあるのだということをしたい気持ちは山々なんですが、金額も張る、時間もかかるということで、むしろここにお願いとして書いています。当初かなり海外のものを使っておりました。
○今井座長 今の点ですけれども、海外のものでも十分、信頼性が確保された表示の仕方をしているものがあるというふうにお考えですか。
○佐々木分析研究部長 それら辺が私どもの限界でそれを正しいと思わざるを得ないので、そこの部分は多分民間の分析機関でも同じだと思うのですね。何か違う会社に代える場合には前のものと調べるくらいはできますけれども、それ以上、本当にそれが正しい、認証に耐え得るものかどうかまでは、こういった環境分析をそれぞれやっている人間たちにそこまではできないと思われます。
○河村委員 11ページの信頼性あるデータのところなのですが、行政部門というのは東京都ですから、東京都内なのでしょうか。
○佐々木分析研究部長 東京都の環境局ですとか、区市にも環境課ですとか、そういうところがございます。そういうところの相談ですとか、いろいろ受けて仕事をしております。
○河村委員 そこが分析機関に委託する場合に、必ずこの研究所がかかわるのでしょうか。
○佐々木分析研究部長 区市の場合には必ずかかわるわけではなくて、相談を受ければ御協力するというようなことになっています。
○河村委員 相談があればですか。
○佐々木分析研究部長 はい。環境局の場合には特に極微量分析については大体相談を受ける、というよりはうちを通るという形になっております。
○河村委員 私が聞きたかったことは、どれくらい分析を委託するようなことがある中のどれくらいの割合を信頼性あるデータをとるためにいろんなチェックをしたり、確認をしたりすると信頼性が高まっていいなと思ったのですが、どれくらいの割合のものにこの研究所が介入といいますか、かかわるのかなと思ったのです。
○佐々木分析研究部長 逆に言いますと、うちは12名の非常に小さな部でございまして、やっていることは、最初にお見せしたように、かなり幅広いものですから、ほとんどの部分がうちの局がやる仕事は委託分析をしております。逆にそれを5%から10%うちがクロスチェックをしたりとか、一緒に立ち入りをしたりとか、そういう形で委託をするけれども、それの精度を確保していく。そういう形になってございます。
○河村委員 要請がきたものだけをされているので、区や市が行うものに関してはわからないということですね。
○佐々木分析研究部長 はい。あとは、毎年こういった研修を開きますので、御案内をさせていただいて、かなり好評で、抽選になったりしております。
○梶原委員 8ページの関連でございますけれども、御説明の中で標準物質、環境標準試料の関連の中で、特に標準物質の整備が今後求められるといったお話がございましたけれども、整備が求められる視点というのはどういうことかなと。具体的にお教えいただきたいと思うのですが、例えば何か規制等が発生して、ニーズが発生して、環境分析なら分析をやるときに適切な標準物質がないのかとか、少し具体的に何を行政に対して整備を求められるのかなということをお聞きしたいのです。
○佐々木分析研究部長 私どもは、水、土壌、大気、底質などを行っていて、特に土壌ですとか、底質のように夾雑物が多いものに関しましては、本当にそれでいいのか。分析法も新たなものをどんどん作っていくけれども、フッ素、ホウ素など昔から測られていたような物質の測定法が、土壌であるにもかかわらず、溶出試験法などは水のものが持ってこられているわけです。それの妥当性を調べてみますと、まだまだ公定法と言いながらも問題があるのではないかなというふうに感じている部分がございます。それが本当に大丈夫かということは、マトリックスの多い環境標準試料や何かでしっかりと出していく検討がないと、標準品だけで分析法を検討するのでは環境分析は十分ではないと思いますので、その辺で環境標準試料というのは非常に重要です。
 それと、最初にお話ししたように、技術の維持・継承について、異動などで苦労しているのですけれども、人がかわったときにも必ず研修して、こういうもので同じように認証値が出るとか、そういったようなことをやり続けるためにもいろんな物質について環境標準試料が整備されていることが求められると思っております。
○梶原委員 今御提案されたような分析方法も含めて標準物質等の整備をすべきであるというニーズはどこにぶつけて、どういうふうに改善されていくのでしょうか。今そういう制度が日本にあるのか、今必ずしも適切なものがないのであれば、どういうことを御希望されるかというのをお聞きしたいのですが。
○佐々木分析研究部長 このときにも多環芳香族炭化水素のお話をさせていただきましたが、経済産業省からいただいた資料の中でもここ数年内にはこういった多環芳香族炭化水素用の環境標準試料を整備するというような内容が含まれていたと思われます。その辺も発がん物質として重要ですので、ぜひ。
 今現在日本では、例えば産総研ですとか、国立環境研ですとか、あとは分析学会ですとか、そういったところが個別に認証値をつけたものを出していらっしゃると思います。
 実際に私どももそのまねごとをしただけでも非常につくるのは大変だということは承知していますが、一方では、できると分析法の妥当性その他いろんなことに使える。標準だけでは評価しづらい部分がかなり役立つものになるだろうと思っております。
○芝田委員 先ほどの河村委員の質問とも関連があるのですが、11ページのところで、こういうふうに厳しいクロスチェックをしているというのをお伺いして非常に感銘を受けたのですけれども、実際に5%ぐらいを抜き取りされて、どれぐらい問題があるものが見つかるか。先ほどMLAPを取りながら問題があるものがあったということですが、それを伺いたいのと、もう1つは、東京都さんだからできるのでしょうけれども、ほかの自治体で果たしてそこまでやれる能力があるのかと思いまして、つまりほかの自治体から発表されるデータは東京都ほど信頼が高くないのかなと、素人考え的に考えてしまったところもあるのですが、自治体がそういうチェックをするということは果たして効率的なシステムなのかなというふうなのを考えまして、例えば第三者機関なり、別のところがこういったチェックを肩がわりできるものなのかというところの意見もお伺いしたいと思います。
○佐々木分析研究部長 うちの方で、環境局で委託するものは実にさまざまですので、そういったものをすべて小まめに第三者でクロスチェックをしっかりしてくださる機関があるのであれば、それは非常に効率的ですから、ありがたいとは思うのですけれども、なかなか一足飛びにそこまでは今現在の状況は距離があるだろうと思っておりまして、うちの分析研究部というのが平成10年に作られたときにはそういった役割も非常に重要なだろうということで始めています。
 全国の自治体は全国環境研協議会というのをつくっておりまして、私もその精度管理委員になっております。そういったところで外部精度管理への参加、さまざまな情報交換をやって、自治体も今予算も人も非常に厳しい中で必ずしも十分にやっておりますと胸が張れませんけれども、どこの自治体もそういう姿勢でやっている状況にございます。
 最初の御質問のクロスチェック等をやってどうなのかということですが、正直MLAP、環境省受注資格は最低限であって、そこから気を抜いたら即データはだめだと正直思っております。取っていても問題は必ず毎年どこかはあります。
 毎年再分析していただいたり、再計算していただいたり、何でここまでというくらいいろいろお話ししないと、検量線は間違っていましたと、MLAPを取られた機関でもそういうレベルのところも正直あると思っています。最初の教育訓練でいろんな教育の場が必要だと申し上げたのは、やはり分析機関の中に非常に優れた方もいて、その分析機関の中で十分な教育ができるところももちろんおありでしょうが、実はそのトップの方などとお話ししても、ちょっと首をかしげてしまって、やはりいろんな外部精度管理に参加していただくとか、協会のセミナ―に出ていただくとかしないと、これでは非常に不安だというようなこともあったり、MLAPなどを取っている機関ですが、東京都としては入札資格をとめているところもございます。
○本多委員 最終的な報告書でそれが確認できるのか、あるいはお話で立ち合いをされるというふうにおっしゃいましたけれども、現場に行ってみてそれがわかるのか、どちらの方がウエートとしては高いでしょうか。
○佐々木分析研究部長 両方でございます。現場に行かなければわからない部分もございます。非常に素晴らしい施設で、感動して、うらやましいと思いつつ立ち入りをしながら、最後にある土壌を風乾する施設を見て、これはクロスコンタミしますのでやめてくださいとお願いしなければいけなかった事例があったりですとか、本当に前処理施設などはしっかり分けているのですが、試料保管庫が不十分であったりとか、立ち入りして初めて、結果を見たのではわからない部分もございますし、結果の報告を受けますと、回収率はいいとなっていても、これはおかしいなと思って、より細かい元データをいただくと、明らかにこの部分はおかしいということで、結局やり直しをお願いするというようなこともございます。それがある程度お願いできるというのは私どもが分析して、中身がわかるからだと思っていまして、先ほど座長の方からいろいろと評価ためのシステムはきちんとなさっていらっしゃるというようなお話はございましたけれども、そういうことの整合性と同時に、そういうことができる人材をできるだけ多く育成していくというのは非常に必要だろうと思っております。
○今井座長 冒頭でも御説明いただきましたけれども、人材教育というのは非常に大事で、その中にモチベーションという言葉を使われて、そういうことは大事だと思いますけれども、御自身の研究所の中で主体となるのはオン・ザ・ジョブ・トレーニングなのですか。それとも何かマニュアル的なものをおつくりなのでしょうか。
○佐々木分析研究部長 一応作っております。これも自慢できる理由ではなく、先ほどからお話ししているように、異動が非常に多いものですから、精度管理システムであると同時に、一方では過去の野帳から何からみんな統一した形で残っているものですから、それを教育に使っていく。それが中心ですが、それ以外にも環境省がやっております研修所が所沢にございますので、そこにも順次職員を派遣する。それから、できるだけ学会ですとか、いろんなところに参加させて、自分たちだけで満足しないようにというような形で進めております。

(株)住化分析センター 高橋  稔 事業企画室技術担当部長

○今井座長 3番目は、株式会社住化分析センターの事業企画室技術担当部長さんでいらっしゃいます高橋稔様からお願いいたします。
○高橋事業企画室技術担当部長 本日は、環境計量証明事業の現状と問題点という内容につきまして、民間の分析機関としての現場の生の声といいますか、そういう考え方等を含めて御説明したいと思います。
 最初に、私どもの会社の概要を申し上げますけれども、1972年に親会社の環境分析部門を独立して設立した会社でございます。もう既に30年以上たっていますので、仕事の内容もだんだん増えてまいりまして、今現在では従業員が1180人という、かなり大所帯な会社になっております。
 事業の内容といたしましては、環境測定以外に医薬品とかバイオの関係、それからエレクトロニクスの関係、化学製品、工業製品、原材料の分析、その他、危険性評価や食品等、いろいろな総合的な分析ができる会社でございます。
 他社に先駆けまして我々の会社といたしましては、例えばISOの9000でありますとか、ISO/IEC17025を導入してまいりました。
 環境計量証明事業者としての社会的責務というのは当然あるわけでございまして、私どもは常に従業員に対して信頼性の高いデータと情報をお客様に提供するという前提で活動しているわけでございますけれども、会社の品質に関する方針の中にもうたってありまして、例えば最高の分析技術を通じて人類と社会に貢献します。それから、お客様の信頼と満足を得る品質を提供します。等々、そういうことを品質方針の中に掲げておりますし、この計量証明事業の規定の中にも社会的責務を自覚して適正な計量証明を行うことを規定しています。こういうことを掲げて社会的責務を果たすということにしております。
 それで、環境計量証明事業の現状ということで2、3申し上げたいと思うのですけれども、現在の環境計量制度におきましては、3つに分けて考えています。人とハードとシステムというものについて見てみますと、環境計量士につきましては、環境計量士自身の能力、あるいは責任といいますか、良心、そういうものに依存しているということだと思います。1度資格を取りますと、一生使える資格になっているというのが現状でございます。
 それから、設備でございますけれども、必要最小限の設備を整えておきますと、この事業はできるということだと思います。
 一方、システムについてでございますけれども、残念ながら今の制度の中には精度管理、品質管理、そういうようなシステムがないのではないということでございます。
 人と設備とシステムについては重要な要素ですが、必ずしも十分ではないというふうに思われます。
 それから、そのシステムを補うために、各企業におきましては公的な認証・認定を取っているわけでございますけれども、ここに掲げました数値は研究産業協会さんの方でとられたアンケートの結果でございますけれども、例えばISO9000シリーズについてはほぼ半分の会社が取得している。検討中のものが30%ありますので、80%ぐらいの会社がISO9000についてはそれなりの意味があると考えているのだと思います。
 それから、ISO/IEC17025については、取得が12%という数字になっていますが、これはまだまだこれから増えてくるということではないかと思います。
 それから、企業にとっては非常に重要な要素でございますけれども、環境分析の料金というのを見てみますと、このグラフを見ていただくと年々下がっているのが分かります。。代表的なものとして水質の一般項目としてダイオキシンがございますけれども、99年には単価が28万円ほどであったものがだんだん下がってまいりまして、2003年には17万円ほどに下がってきた。今年あたりを見てみますと、またさらに下がっておりまして、10万円を切るというような案件もたくさんございますし、案件によっては5万円というような料金になっているということがございまして、企業としては非常に大変な対応が迫られているということが言えます。
 それから、現在の制度の中の問題点を掲げたのですけれども、先ほども申し上げましたが、環境計量士はこの制度の中で非常に重要な位置を占めている存在ですけれども、やはり新しい技術の習得等が現在では個人に任されているということでございますけれども、先ほどの話の中にもありましたが、やはりレベルアップのための何らかの制度が必要になってきているのではないかと思います。
 それから、設備でございますけれども、分析の高度化とか迅速化のための対応が現在では必ずしも十分でないということが言えるのだと思います。私どもの企業にとりましては、分析の自動化とかシステム化をやりまして、コストダウンをしているわけですが、例えばCODについては実は自動測定装置というのがあるわけでございますけれども、残念ながらそれは計量証明の中には使えない。原因は公定法と部分的に違う手法があるということだと思うのですけれども、データ的にはほとんど問題ないわけですが、こういうものが現状では採用していただけない。
 それから、新しい手法とか装置というのが世の中にたくさん出ているわけですけれども、そういうものの採用がなかなかスムーズにやっていただけなていない。
 それから、最近ダイオキシンの簡易法というのが環境省の告示の中で認められておりますが、こういうものも積極的に認めいただきたいと思います。
 いずれにしましても社会のニーズに必ずしも現在の制度は合致していないというのが私どもの考えでございます。
 それから、システムということで見てみますと、品質システムを改善する機構という視点で、例えば立入調査とか審査というものについて見てみますと、現状の計量証明の中では立入調査というのが行われるわけでございますけれども、実績としては不定期です。数年に1回ぐらいでしょうか。私どもの事業所があります県の実績を見てみますと、6年とか7年に1回程度しかやられていないというのが実情でございます。そして、その調査の内容を見ましても非常に表面的なことしか見ていないということが言えると思います。調査にかけている時間が1時間半程度でございますからとても内容をちゃんと見ることができないだろうと思います。
 それの対比としてはここにISO/IEC17025を書かせていただいたのですけれども、これでは更新が3年に1回あります。それから、維持審査を毎年やる。更に、非常に重要だと思っています内部監査が当然必要とされているわけです。こういうシステムを運用するときには常にPDCAを回して、システムを改善していくということが非常に重要でございますけれども、現在の環境計量証明事業制度の中にはそういうものが全くないというのが実態でございます。
 それから、次にMLAPの件でございますけれども、これは経済産業省の方で平成14年に導入されたシステムでございますが、ダイオキシンに特化した制度でございますので、非常に細かく精度管理等々も含めて規定されていますから、分析をやる者としては非常に適した制度であるということはわかるわけでございますけれども、一方、環境省の精度管理指針というのがございまして、これはお役所からいただく案件についての受注資格審査というものでございますけれども、いずれもダイオキシンに特化したものではございますが、残念ながらこの2つの制度を見てみますと、必ずしも同じでないといいますか、相入れないものがあるということでございます。
 実例を次のページに示ししているのですけれども、組織的なもので、総括責任者というのを置くことが義務付けられておりますが、MLAPでは事業全般に責任を有する人ということでございまして、私どもの場合は事業所長を充てるわけですけれども、環境省の基準ではダイオキシンの測定業務全般についての責任を負い、あるいは文書の作成とか維持・管理を行う人ということで、私どもはダイオキシンの分析部門の長をここに充てております。
 計量管理者については、MLAPでは当然環境計量士ということになるわけでございますが、環境省の基準では技術管理者ということで、ダイオキシンの測定について豊かな知見と優れた能力を有する者となっていますので、私どもでは分析の責任者クラスの者を数名ここに充てております。
 それから、品質管理者についても同様な関係でございまして、MLAPと環境省の基準とで中身はかなり違いますので、ラボとしてはこの2つの制度、システムを作らなければいけないというのが実態でございます。
 それで、MLAPの問題点について、2、3挙げているのですけれども、これは独自の認定システムですから、国際規格には整合していないために、対外的にはほとんど使えないということだと思います。
 それから、次は先ほど申したことでありますけれども、MLAPとか環境省の受注資格審査の2つの制度を個別に管理するということが必要になってまいりますし、私どものようにダイオキシンについてISO/IEC17025の認定を受けている事業者についてはこの3つのシステムを動かさないといけない。同じ仕事をするのにこの3種の対応が必要ということで、非常に不合理な制度だと思っています。
 それから、ダイオキシンについて非常に細かい精度管理が求められていますから、当然分析のコストも上がるわけでございますけれども、現状の市場からしますと、こういうコストを分析料金に反映するというのは非常に困難な状態でございます。
 それから、次に試験所認定についてでございますけれども、これは当然試験所用のシステムでございますから、試験所を動かす、管理する非常にすぐれた制度だと思います。私どもの会社におきましては5年ほど前からこのものを導入して運営しているわけでございますが、データの信頼性向上の面で非常に意味があるという内容でございますし、これは国際規格でございますので、海外のビジネスには非常に有効であるということでございます。私どもの会社は海外の仕事も結構やっていますし、そういう意味ではこれは非常に意味があるということでございますが、残念なことに日本の国内においてはまだまだ認知されていない制度でございまして、国内のビジネスにはほとんど必要ないというのが現状でございます。
 次ですけれども、これは日本の主要な審査機関のデータをピックアップいたしましてまとめたグラフでございますが、総認定数が325ございましたのですけれども、その半分が機械・物性測定の分野でございます。具体的には鉄鋼とか繊維の関係でございます。それに対して環境分析の方はどうかといいますと、17.5%というラボが取得しているデータがあるわけでございますけれども、その中身を見てみますと半分はダイオキシンの認定でございます。その他の項目についても非常に項目数が少なく、数項目ずつ認定を受けているという実態でございます。日本の国内には環境分析をやっていますラボが1500社前後ぐらいあると思いますけれども、そのベースで見ますと、認定されている割合は非常に少ないと言えると思います。
 先ほど海外のビジネスの話をいたしましたが、実は私どもの会社では、シンガポールにラボを持っているのですけれども、シンガポールは日本と全く状況が違いまして、ほとんどのラボがこの試験所認定を取得しています。私どものラボは非常に小規模の10人程度のラボでございますけれども、既に数年前にこの認定を受けております。シンガポールにおいては国から受注します環境分析等についてはこの認定が必須の条件になっています。日本とはかなり違う内容だと思います。合理的な運営がされているということが言えるのではないでしょうか。
 この試験所認定の問題点は何かといいますと、顧客から認定の取得の要請がないということです。お客さん自身もこんな制度があるということを御存じないということもあります。
 それから、経済的なメリットが不明といいますか、ほとんどないというのが実態でございます。それから、この資格を得るための経費と労力が非常にかかり過ぎるというのが問題ではないかと思います。また、認定される項目が非常に細かく分かれておりまして、そういった意味で取得しにくい。これは成分ごとといいますか、項目ごとに認定することになっていますので、このような問題があります。
 したがいまして、全部門といいますか、事業所全体でこの認定を受けるということは現状では不可能というのが実態でございます。
 いろいろ申し上げたのですけれど、今後に期待することを3つほど掲げさせていただいたのですけれども、現在の環境計量証明制度の中にはシステム的な精度管理とか品質管理というような考えが入っていないと思われますので、ぜひこういうものを加味したものに変えていくべきではないかと思います。試験所認定みたいなものを意味しております。
 それから、MLAPに関連いたしまして、これも先ほど申し上げたのですけれども、国際基準への整合化が必要であると私どもは思っております。国際化の時代でございますから、日本独自のシステムではなくて、国際的に通用するものが必要ではないかということでございます。
 もう1つは、私どもラボとしては非常に問題であると考えていますが、こういう制度を決めるときには横断的な物の考え方をしていただきたいということを常々思っているわけでございます。今の制度は縦割り的な制度でありまして、それぞれについて現場のラボとしては対応していかなければいけないということです。非常に不自然な対応をとらないといけないということもありますし、コスト面で見ても無駄が多いということが現状ではないかと思います。
 それから、最後に新しい手法とか、新しい機器がどんどん出てきているわけですけれども、現在の制度の中ではなかなかそれが早期にタイムリーに採用されないというのが実情でございますので、できるだけ早期に採用できるシステムにしていただきたいと思っています。
 いずれにいたしましても国民の健康と安全を守るために、社会のニーズに対応したものにしていただきたいと思っています。
 これは蛇足でございますけれども、私どもの会社の考え方をここに掲げてありますが、システムとしてはISO/IEC17025へ対応して、高い品質レベルのシステムに移行しようということを考えておりますし、国際的に信頼されるラボラトリーを構築していきたい。それから、3つ目に、新しい分析技術、これは環境分析の技術も含めまして、そういうものの開発を積極的にやりまして、世の中に提案していきたいと思っています。
○今井座長 具体的な問題点と課題を御指摘いただいたわけですけれども、先ほどのお話の中にもありましたけれども、最後のところで社会的なニーズに対応した新しい手法や機器の早期採用というようなこと、それから新しい分析技術の開発及び提案ということがございますけれども、具体的な規格の中でいち早くそういう新しい方法を採用していくべきだということも含めてでしょうか。
○高橋事業企画室技術担当部長 はい。
○今井座長 それから、新しい分析技術の開発及び提案ということを御社ではなさっていらっしゃるようですけれども、それは例えばJIS等の、あるいはISO等の委員として参画なされる場合もございますか。
○高橋事業企画室技術担当部長 今のところはございませんけれども、実は私どもの会社では技術センターという部門を持っていまして、その中で新しい分析方法の開発とか、あるいは官庁等からの要請もございまして、御協力するというような内容になっております。
○今井座長 ぜひいろんな機会を利用して、そういう声を通していただければと思います。
○江口知的基盤課課長補佐 先ほどMLAP、環境省、それから試験所認定、この3つそれぞれに個別対応が必要だというお話をいただきました。それから、MLAPについては国際基準への整合化が必要だというのも最後に締めくくりとしてお話しいただきましたし、また、その前にはISO/IEC17025というのは国内ビジネスとしてはメリットがないのだけれどもというお話をされました。この3点を結びつけるとMLAPに国際基準、つまりISO/IEC17025の導入、完全整合化というのはどういう意味があるのでしょうか。
○高橋事業企画室技術担当部長 現状のMLAPにつきまして見てみますと、ISO/IEC17025の考え方は多分かなり入っていると思いますけれど、これはダイオキシンに特化して、非常に詳細に、具体的なことが書かれていますので、全体的にはちょっと違っています。やはりこれからは国際的な世界でございますので、日本だけの基準ではなくて、海外にも通じるようなものを作っていくべきではないかなということを私どもの会社としては常に思っております。海外のビジネスも結構やっていますので、MLAPを海外へ持っていっても全く通じません。そのような状態でございますので、日本国内で使っている制度も海外でも使えるようなものにしていただくと我々としてはビジネスがやりやすいということでございます。今の制度ですと、無駄が多いといいますか、現場サイドで見ますと、どうしてこんな対応をしなければいけないのだろうという声が非常に強いです。
○今井座長 ただいまの御意見ごもっともだと思いますし、全体的な小委員会の中でも、あるいは計量行政審議会の中でも意見が出ておりますけれども、オールジャパンとして、特に環境証明ですとか、標準物質にかかわるところはとても経済産業省だけでは分担し切れませんので、他省庁にかかわるところも横断的にまさにやってくべきではないかという意見が出ておりますし、私もそうだと思います。
 10ページのところでMLAPと環境省の受注資格審査の比較をなさっておりますけれども、環境省の場合にはこの中身は国際的な対応も考慮されているのでしょうか。
○高橋事業企画室技術担当部長 環境省の基準は必ずしもISO/IEC17025に準じた内容ではないと思います。要求事項が結構少ないと思います。MLAPの方はそれなりに要求事項が記述されていると私は思っております。
○今井座長 全体的に必要事項をお互いにピックアップしていいところを取り入れればいいのだと思いますけれど、やはり今後の課題として御意見は十分承っておきたいと思います。
○河村委員 11ページのところで、「分析コストと受託料金の格差」と書いてありまして、非常にひっかかったのですが、どういうふうに質問すればいいのかわからなくて、「適正な精度管理にかかる工数、コストを分析料金に反映することは困難」。非常に印象的で、これはどうやって現状解決なさっているかというと、私は素人考えで2つあって、適正な精度管理をしないか、赤字を覚悟で管理するかという、本当に素人ですから、シンプルな2つしか思い浮かばなかったのですが、どうやって解決なさるのでしょうか。
○高橋事業企画室技術担当部長 ちゃんとした精度管理をやらないという意味ではございません。実はこの環境分析の業界というのは業績的に非常に厳しい業界だと思います。私どもの会社におきましてもこの分野ではほとんど利益が出ないのです。赤字の年度も当然ございます。それをどういうふうに吸収しているかといいますと、私どもはほかの分野の仕事も当然やっていますので、その中で吸収しているというのが実態でございますし、他社さんにおきましても環境分析だけではなくて、ほかの事業もやっているところはかなりたくさんあると思います。そういう意味で現状では料金になかなか反映しにくいのですけれども、ほかの部門で何とかそれを吸収しているというのが実態だと思います。料金はどんどん下がっていますが、これはいろんな原因がありますけれども、競合他社が非常に多いということ、それから入札制度の影響もあるのではないかと思います。そういった意味でやはり精度管理等々を含めた適正な料金というものを認めていただけるようなものにしていかないといけないのではないかと思います。
 私どもの会社で受注する場合に、例えばダイオキシンなどについてはこれ以下の価格のものは受注できないというのを決めてあります。そういうことで対応しているというのが実態でございます。いずれにしてもかなり業界としては苦しい対応を迫られているのが実態でございます。

神奈川県環境農政部 鳥井 重雄 環境農政課主幹

○今井座長 本日の最後になりますけれども、4番目のプレゼンテーションをお願いしたいと存じます。神奈川県環境農政部の環境農政課の主幹でいらっしゃいます鳥井重雄様にお願いいたします。
○鳥井環境農政課主幹 今日は、私の方からは地方自治体という発注者の立場から環境計量証明事業の現状とか、実際に発注した後、どのような状況になっているかというようなことをお話しさせていただきたいと思っております。
 現在神奈川県の方でも環境計量証明事業、それから特定計量証明事業等多々発注してございますが、3ページ目以降、これは16年度の状況でございますが、参考に資料をつけさせていただきました。16年度は3ページにわたって記載してございますが、全部で21件、金額にしてトータルしますと約1億2000万円ちょっとの金額になります。このような事業を委託事業として業者の方に発注をさせていただいている。発注の方法は当然自治体が発注する契約でございますので、競争入札というような方法をとっているのがほとんどでございます。
 契約の内容別に申し上げさせていただきますと、まず水質測定調査の関係の業務でございますが、このような業務を発注する場合、これは入札の方法といたしましては、後で御説明させていただきますダイオキシン類の調査の関係の業務と共通でございますが、神奈川県の方に入札の参加資格を申請して、資格を得ている業者の方々から入札参加をしていただくための選定会議という会議を経て、それぞれの入札の案件について業者を決めさせていただきます。
 その際にどういう項目、要件で業者の方を決めさせていただいているかということですが、簡単に言いますと、まず発注する業務、仕様に基づいた業務が分析可能であるか、実際にできる。それも外注等でなく、自社の施設、あるいは自社の中ですべて仕様どおりの業務ができるということをまず条件にしております。そのような条件をクリアする業者の方も多々ございますので、そのような場合には神奈川県が発注する案件でございますので、神奈川県内に本社があるとか、あるいは支社と支店がある。そういうような条件を加えまして最終的に業者を決定させていただいております。
 その次でございますけれども、先ほどから精度管理の話が出ております。私どもも当然業務を発注する際には委託の仕様書というもので仕様をきちんと示しているわけでございますけれども、その中で入札を経て、落札をして契約していただく業者の方から委託実施計画書というものをいただいております。その中で精度管理につきまして具体的に精度管理についてどのように取り組むかというようなことを記載したものを提出していただいております。
 2番目に書いてございます実際委託の仕様書どおりの業務をやっていただく中で、受託者の方の過失ですとか、精度管理上の不備によりまして異常な測定結果が得られた場合につきましては、これは受託者の責任で再度サンプリングをして測定をやっていただくというような取り決めになっております。
 それから、神奈川県の大気水質課というセクションがございますけれども、ここが行う年1回の精度管理調査に参加していただくということを委託契約の説明会をする際にお話をさせていただいて、それになるべく参加していただくというような状況でございます。その精度管理調査に参加された中で、一定の濃度に調整された試料を分析していただくわけですけれども、結果の報告値が一定の範囲内におさまっていない場合、これにつきましてはどうしておさまらなかったのか、そのあたりの原因の追及等も含めて県の方から指導させていただいている場合もございます。
 それから、1点先ほど言い忘れたのですけれども、神奈川県で年間21件ほど環境計量証明事業を発注していると申しましたけれども、今神奈川県の方で非常に困っている部分をお話しさせていただきますと、環境計量証明事業者の方も年々増えていらっしゃいます。当然神奈川県の競争入札の参加資格を取得される業者の方も増えてきておりまして、それらの業者の方々がどういうような分析項目に対して分析が可能なのかどうか、その辺の情報が非常に少ないということがございまして、これは毎年年度当初の時期になろうかと思いますけれども、神奈川県で独自に対象業者さんに対しましてアンケート調査を実施させていただいております。アンケート項目も多岐にわたり、大変な調査でございまして、これに関する担当セクションの事務量が非常に膨大なものになっております。アンケート調査ですので、回収した上で、それを集計したり、分析したりという作業も入ってまいりますので、これは担当セクションの方からももう少しこれは何とか効率よくできないかというような話を聞いております。
 次の2ページ目の方に移らせていただきたいと思うのですが、こちらはダイオキシン類の調査関係の業務委託に関しての記載になっております。ダイオキシン類調査の関係の委託発注状況につきましても先ほどの3ページに記載させていただいてございますが、これは当然計量法に基づきまして特定計量証明事業者を対象に、先ほど御説明させていただいたのと同じように競争入札参加資格者の中からそれぞれ発注案件ごとに入札参加者を決めて入札を実施させていただいております。こちらにつきましても精度管理ということが非常に重要になってまいりますので、先ほどと同じように契約者につきましては精度管理に関する関係書類を提出して頂いたり、報告をして頂かなければならないという状況になっております。
 それから、委託業務を実際に行う場合、県が当然検査をするわけですけれども、例えば検体の採取ですとか、分析現場への立ち合い、必要な資料の提供とか説明等、当然契約者としては協力を行っていただかなければならないというようなことになっております。
 それから、これも先ほどと同じですが、異常値が認められた場合につきましては、経過、原因、これらを検討して神奈川県の方に速やかにその報告をしていただく。受託者の過失ですとか、精度管理上の不備によって異常値が生じたというふうに判断された場合にはこれは当然再測定、サンプリングから再度やっていただくということになっております。
 次に、精度管理等の不適事項が判明した場合ということでございますけれども、ここを御説明する前に、私の方から2、3、具体的にどういうものがあったのかということでお話をさせていただきたいと思います。
 まずこれは公共用水域の水質測定調査業務で最近あった事例でございますけれども、環境基準項目でございますシアンにつきまして、試料を採取後、直ちに分析する場合を除いて、採取後に試料に前処理として検体の固定を行わなければならないという仕様が当然入っているのですが、実際試料の採取のときに担当者が立ち会ったところ、それを全くやっていなかった。これは仕様でそういうふうに決まっているじゃないかというような話をしたところ、固定を行うための試料を既に現場に持ってきていないということが判明しましたので、これは明らかに再度やり直しというような例がございました。これは再度採水をして、分析をしろというだけではなくて、再発を防止するためにどういうふうに分析チェック体制を見直すのか、あるいは必要な機材等のチェックをちゃんとチェックシートなりに明記するような指示をしたというふうになっております。
 もう1つは、これは水質のダイオキシン類の調査でございますけれども、これはまず結果として契約書の中に記載される報告書の提出が遅れた。これはどういうことかといいますと、サンプリングする試料採取部署とそれを分析する分析部署との間での受け渡しの連携が不十分だったということで、採取した試料が約5週間ほど放置されてしまったというような事例でございます。結果として当然分析がおくれまして、報告書の作成、提出が遅れ、結果的には明らかに契約に違反している事例だということで、これは社内体制上の問題が改善されるまで、神奈川県としては競争入札には参加させることができないということで、指名選定から除外しております。
 もう1点ほど同じく不適正な事例ということでお話しさせていただきますと、大気のダイオキシンの調査の業務であったことでございますけれども、これはやはりサンプリングの際、サンプリングスパイクの添加方法が作業者によって異なっていたために、採取における精度管理ができていなかったということでございます。作業者が違うとやり方が違うというような事例で、これは業者の方で作っている作業手順書の見直し、作業者への指導の徹底ということで、これは試料を再採取して、事業を進めたということでございますが、再発を防止するということで業者の方から文書が提出されて、その中身につきましては神奈川県としても十分検証した結果、これでいいだろうというふうに確認をしたのですが、これは同じ年度内の話なのですけれども、神奈川県でこういう不適正事例を起こしてから、同じ年度内で神奈川県内の市の発注、全く同じ業務なのですが、ここでも同じ問題を再度やってしまったということがございまして、これも当面の間、社内の体制等の見直しが完全にできたというふうに神奈川県の方が認めるまで、入札には参加させないという対応をとらせていただいております。
 今3つほどそういう不適正事例を御紹介させていただきましたけれども、公共団体として環境計量証明事業を発注して、最終的に報告をいただくというまで当然一番重要なのはやはり精度管理ではないかと考えております。
 それから、それを含めまして、現在発注者の立場から少し申し上げさせていただきたいと思いますけれども、発注者として業務を発注する場合に、環境計量証明事業者の情報が非常に不足しているというのが現状でございます。ですから、このような証明事業者の情報、これを共有できるようなシステムができますと、これは神奈川県だけではなく、当然他の都道府県、あるいは同じように環境計量証明事業を発注している市町村等もあろうかと思いますので、そういうところが非常に助かるのかなということでございます。
 それと先ほど御紹介させていただきました不適正事例を起こしたような業者の情報、そういうのもできれば共有できるようなものがあると、発注者として発注する際に、ここの会社はごく最近こういうようなことをやってしまっている。では、今回計量証明事業を発注する際に入札に参加してもらうのはちょっとまずいなというような判断ができるのではないかと考えております。
 逆に今言ったような不適正事例を起こしたような業者の情報というのがある程度公表されるような形になれば、業者として非常につらいことになるかもしれませんけれども、それがかえって一種ペナルティにつながって、逆にそういうことを起こさないということで、業者の例えば能力、資質の向上につながっていくのではないか、そういうことを促進する力になるのではないかというふうなことも発注者としては考えているところでございます。
 今私が申し上げさせていただきましたことが2ページ目の(2)(3)あたりに記載させていただいていると思いますが、これは今すぐできるかどうかというのはまた別の問題だとは思うのですが、今後環境計量証明事業を発展させていく、あるいはよりよくしていくという中では御検討いただければありがたいと考えております。
○今井座長 具体的な事例も含めて御説明いただきましたけれど、ただいまの御紹介に関して御意見、御質問等お願いいたします。
○山領委員 異常値が認められた場合ということでいろいろと考えておられるようなのですが、お話の中で、東京都さんみたいにクロスチェックをしているとか、そういうお話がなかったのですが、異常値をどうやって発見するかということをお聞きしたいのですが。
○鳥井環境農政課主幹 例えば同じ地点、毎年定期的に測定しているようなものにつきましては過去のデータも当然ございますので、それらとの比較ですとか、明らかに値が変化した場合、その辺はいろんな角度から総合的に判断はしているというふうに、実際はその判断に私はかかわっていないのですけれども、そのように聞いております。
○今井座長 判断基準になるデータベース的なものをお持ちだという理解でよろしいですか。
○鳥井環境農政課主幹 はい、そのとおりです。
○中野委員 鳥井さんのお話も、佐々木さんのお話も産総研にいる私のような人間が聞きますと、あたかもISO/IEC17025のシステムを自分で作って、それを自分で運営し、なおかつ技能試験までかけて、不適合があればそれを指摘して運営をしていらっしゃるように見えて、類似なシステムで私が知っているのは米軍がそうでして、米国などはトレーサビリティシステムがあるのですけれども、発注元に対しては信用せずに、彼らは自分でオーディッティングをしにいくと言っているのですね。一方、高橋さんから先ほどお話があったように、シンガポールではみんなISO/IEC17025をとっている。多分ISO/IEC17025を取っていればある程度信用されているという社会ができ上がっていると思うのです。質問は、自らがISO/IEC17025を運営しているようなシステムを今後も続けていく意図がおありなのか、それとも第三者認定みたいなものを利用していかれるという趣旨があるのか教えていただきたいのです。
○佐々木分析研究部長 正直何もやりたくはないのです。人数も少なく、うちの部の仕事を御説明したうちの1つで、重要だとは思っているのですが、本来それが十分に機能していれば、何らこの部分をやりたいと感じてはおりません。
 ただ、では、今のMLAPがあれば、ISO/IEC17025があれば何の心配もないかというと、非常に残念ながら、現実にはさまざまな例がございます。
 そうは言いつつも一方では、御質問があったように、こんな安いお金でこんなこと頼んでいいのかとも実は感じております。昔の談合や何かで致し方なくて、それをどうにかするシステムというのは私自身も思いつかないのですけれども、分析会社の方々にはこんな安いお金で落とさないでくれと。1度精度管理システムが入ったときに、今が値段を上げるチャンスですよと。事実、若干そのとき上がったところもあるのですが、中には安いところで落とされると、どうしてもそちらにいってしまう。
 今は私どもが自前分析をするよりも委託の方が――自前分析というのはイニシャルコストとか人件費を抜いたという意味なのですけれど、それよりも安く落とされている。そうすると、言い方は悪いですけれど、しっかりと持っておられるころでも、どこでもその基準に合うようにやっていらっしゃるかどうか、目を光らせないと、残念ながら悲しい結果もあるかなという気持ちでございます。
○田畑委員 先ほど説明をとばしましたが、私どものアンケートにおきましても分析料金の低価格化への検討に対する要望が41%になっております。
○本多委員 少しナイーブなことをお聞きしたかったのですが、要は特定計量証明というシステムがきっちり機能していないということが根幹かなということ疑問がありまして、その制度がちゃんとして、ちゃんとした技術を持っている人をちゃんと認定するようになったらもっとお金を払っていただけるのですかということをお聞きしたかったのですが、根はもっと深いということがわかりましたので、そういう方向で議論していただければと思います。
○今井座長 御意見は承っておきますので、そういう問題意識が非常に大事だと思います。
○吉田課長 基本的には、昔は国でいい機関をちゃんと選んで、少数の素晴らしい機関が完璧にやる。そして、自治体は安心して受注をする、発注をするというのが昔のスタイルで、今は絶対値の基準、例えばMLAPの基準ですとか、ISO/IEC17025とか、絶対値の基準を満たせばどんな企業でも参入できて、そして自由競争するという方向に政府は規制改革のかじを切っております。そこで、現場としては、発注者としては自己責任で業者を見なければいけないというコストがまたかかっている。社会全体の中ではどちらが安いのかということについて、いろんな議論があるか思いますけれども、国全体としては規制改革の方向にかじを切っていると。そういうふうに私は理解をしております。
○本多委員 そういう意味では、PDCAサイクルが回る形にシステムを作らないと駄目じゃないかと思います。これは私の意見です。
○河村委員 今日ヒアリングを聞かせていただいて、聞いた中で一番、人とか人材、その人の質ということに対して物すごく多くの言葉が割かれていたが印象的でして、どなたかの発表の中に責任のことを良心というふうに言いかえられた方がいて、技術ではなくて、どうしたらはかれるのか、よくわらないところなんだと思うのですね。私も正式の資料ではなく、関係者の方からいただいた中で、こういう環境の分野の計量には非常に捏造ですとか、いいかげんなデータが多い。しかもそれを発注する側にも意識に問題があるというふうに指摘した文章を読ませていただいたことがあるんです。そうなってくると、お金を非常に安く請け負うのであれば、いいものを出すというモチベーション自体が設立するような気がいたしませんし、全く解決策はわからないのですが、1つだけ思うことは、第三者がその結果を検証するということ以外にないような気が私はするのですね。利害関係のない第三者がですね。例えば、どうやって検証するかの1つを過去のデータに照らしてというふうにおっしゃったときに、そのことに関して何か言うつもりはないのですが、例えば素人考えで、過去のデータと違うから間違っていると言われるそのデータが今回は正しい可能性があった場合には、だれかが検査して、それは間違っているという間違いと、今までの流れと違うから間違っているというのとは随分違うことだと思って、今までの流れに沿ったデータを出せば通るというふうにも考えることができるわけですね。そうすると通りやすいデータをつくるということもあり得る。私は読んだ文章からもそういう印象を受けたものですから、利害のかからない第三者が検証するということにはコストはかかると思いますけれども、そうすることによって発注する側の期待とか満足とかと関係なく、ニュートラルに、本当に化学的に分析した結果と業者の結果が比較されれば、それが明らかに間違っていたときに、何回でもやり直しさせられるとか、そういうシステムがあればどんどん安く請け負っていいかげんなものを出すことは損をするということになっていけばいいのではないかと、思いました。
○今井座長 貴重な御指摘だと思います。
 大分前から始まったいわゆるグローバルMRAという中でも一時期は自己宣言でもいいのだというのが随分幅をきかせていたように思いますけれども、最近は余り聞かれなくなった。それから、国立標準研の中ですけれども、非常に大きな組織、具体的にはアメリカやドイツですが、当初は絶対自己宣言で、ほかから査察に入る必要はないのだと言っていましたけれども、結果的には両方とも入れた事実がございます。もちろん自己宣言でできるところはそれでちゃんとエビデンスをもって、事実関係をもって証明すればそれでいいと思いますけれども、最近の傾向としては第三者証明というのが当たり前になってきているように思っています。これは私の感想です。
 今日いろいろ実情を御紹介いただいたわけですけれども、現実は現実としてとらえて、それをどうしていくかというのは非常に大きな課題だと思いますし、当事者がそれを解決していかないといけないと思っています。
 ただいまの河村委員からの御指摘もございましたように、今日出た問題というのは大きく分けてルールの問題と技術にかかわる人の問題ではないかと思います。
 ルールについてはオーバーラップしないようにということは以前の御説明の中にもありましたし、それをどういうふうに解決していくかということが大きな課題として挙げられていると思います。
 それから、技術にかかわる人の問題というのは実際に分析をする人の問題もありますし、審査、あるいは証明をする人の問題についても、これも一定のカリキュラムをもってきちっと教育していかないといけない。そういうことが大事ではないかと、私は今感じたところです。その意味では、客観的に審査員に1度登録したらそれでいいのかということも含めてブラッシュアップみたいなことを含めてウォッチしていく必要があるのではないかと思っております。
 大分いろんな御意見をいただきました。それから、御説明をいただきましたけれども、いずれまた全体の中で反映させていきたいと思います。
 前回と前々回の説明者の方にお伺いしたのですけれども、例えば標準物質に関してどんな標準物質を使っているか、規格としてどんな規格、あるいはISO/IEC17025をどういうふうに扱っているか、改善すべき点はどんなところかと、質問票をつくりまして、横並びを拝見させていただきたいので御質問させていただくと思いますので、よろしく御協力をお願いいたします。
○今井座長 今後の進め方ということに関して事務局の方から御説明いただきたいと思います。
○吉田課長 資料7に従い、説明。
○今井座長 次回は、いよいよ本WGのまとめの方向、それから海外がどうなっているかということの調査報告をしていただくことになっております。本日はどうもありがとうございました。

 
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