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グローバルに事業を展開

(株)エー・アンド・デイ 森島泰信常務取締役に聞く

聞き手は横田俊英論説員

日本計量新報 2013年5月12日 (2963号)4-5面掲載

海外展開を強化

標準などでグローバル化

−−世界的なグローバル化は、ますます進む方向のように思われますが、この状況を貴社はどのように捉えられていますか。

グローバル化は、新興国の台頭などにおける経済の拡大と、国際標準、各国における規制、業界標準といったものに、その大きな影響を感じます。

安全に対する規制が強化

−−計量業界も同様でしょうか。

計量業界も、その大きな流れの例外ではなく、影響を受けております。
 欧米の企業の寡占化も顕著ですね。一方、ISO/MDD/RoHSといった国際的な規格・規制や各国の規制、特に安全に対する規制が強化されています。そうした流れの中で、弊社も積極的に対応してきております。

売上の60%は海外販売

−−そうした環境において、貴社の現状はいかがですか。

弊社の売上げにおける60%は、海外販売です。また、生産も約半分が海外生産を実現してまいりました。

韓国で第2工場建設

−−具体的には、どうのような展開をされていますか。

2011年、韓国における第2工場(注1)を立ち上げました。生産量の増強、精密天びんの生産拡大、韓国における開発推進と商品化力の強化などが狙いです。

中国でのODM生産を強化

−−中国での展開はどのようにお考えですか。

中国工場(注2)は、すでに1500人の陣容で、血圧計、汎用はかりの生産をおこなっています。しかしながら、ここにきて人件費の上昇、元高などもあり、見直しを強いられております。別の国での生産も視野にいれて、検討をしています。
 一方で、中国でのODM(Original Design Manufacturing)生産は強化を図っております。刹那的に決めた購入先ではなく「グローバル・パートナー」という位置づけで、20社程と提携してきています。この狙いは、各国で売れる仕様はそれぞれの国で企画し、開発・生産は中国企業に委託するシステムです。日本で売る仕様は、日本で企画し、それを最適に開発・設計可能なパートナーと連携し、日本で受入れられる品質レベルを保証しています。
 ロシアにおいても、健康機器の一部は中国のパートナーから直接仕入れて、マーケットに供給しております。
 中国では、ここ10数年で、淘汰が進み、より強い企業が生き残っています。

BRICSをすべてカバーする体制に

−−営業面の展開はいかがでしょう。

販売拠点としては、3年前にインドに販売会社を設立しました。3年目で黒字化でき、現在は、20名の人員をかかえ、大きく伸びています。特にジュエリーマーケットは突出しており、商品戦略と販売網の確立が成功要因とみております。
 それ以外では、ブラジルの拠点を作るべくプロジェクトを発足させ、2013年中には、現地法人化を考えています。これで、BRICS5カ国のすべてをカバーする体制が完成することになります。

試験設備に大きく投資

EMC試験設備を建設

−−規制については、いかがでしょうか。

欧州のEMC規制(電磁環境両立性規制)は、2014年における実施が検討されています。その課題をクリアするため、いち早く10V/mに対応する試験設備を準備しました。これには、約1・5億円を超える投資が必要で、決して計量機器だけでは見合う額ではありませんが、現在は稼働率も非常に高く十分採算が合うベースになっています。

−−それにしても、立派な設備ですね。

設備をお見せすると、びっくりされるお客様が多いです。計量器のメーカーでここまで自前の設備を整える例が少ないのかもしれませんね。

JCSSに大きな投資

−−その他の規制、規格についてはいかがでしょうか。

JCSSの関連(注3)では、力計で10MNの試験機に1億円以上、質量の分野でもそれに近い設備投資をしてきており、計量器事業もそうした大きな投資が必要となる事業内容になってきたと考えております。グローバルな事業とは、そういう事業内容という事でもあるのでしょう。

独創的な技術を開発

国際規格に採用

−−何か、トピックスはございますか。

弊社の所有する、「剛体振り子型物性試験技術」が、このたび国際標準規格ISO12013−1、ISO12013−2に採択されました。

すでに製品化

これは、剛体振り子の自由減衰振動を利用して、基材上に塗られた溶液から固体への硬化・乾燥過程を時間の経過とともに追跡することにより、その物性や粘性情報を評価するもので、化粧品や食品から自動車、コンクリートまで、広範囲に使用が可能な技術で、すでに製品としてご愛用いただいています。

一企業が規格化を実現

ISOは、一般に使用されて普及し、それなりに時間を経過した技術・規格が「標準」とされることが原則ですが、RPT−3000W(注4)は他に類似の製品・技術がない独創的なものでありながら、応用の広さ、特性値の有効性が理解された稀有な例といえます。特に、日本の一企業がそれを進めて規格化を実現することは珍しいと思います。

−−ありがとうございました。

【注】
(1)韓国の第2工場
【場所】忠清北道鎮川(Jincheon)
【従業員】約40名
【開発・生産品目】汎用はかり(スケール)、ロードセル、ストレインゲージ
(2)中国工場の概要
【場所】広東省深セン市
【従業員数】約1500名
【生産商品】血圧計、汎用はかり
【生産能力】600万台以上(年間)、歪ゲージ50万枚以上(年間)
(3)JCSS校正関連設備
【登録番号】0107
【名称】(株)エー・アンド・デイ校正室
【所在地】〒364−8585、埼玉県北本市朝日1丁目243番地
【問い合わせ先】校正室=電話048−593−1111、FAX048−593−1119
【登録番号】0099
【名称】リトラ(株)
【所在地】〒350−1205、埼玉県日高市大字原宿7番地5
【問い合わせ先】リトラ(株)=電話042−985−4668、FAX042−985−4519
@JCSS校正=はかり、一軸試験機、力計、分銅等、トルク(リトラ(株))の校正証明書が発行可能
AEMC試験設備=2014年における実施が検討されている欧州のEMC規制(電磁環境両立性規制)をクリアするため、いち早く10V/mに対応する試験設備を準備。
B10MN試験機=特定2次力標準器として国内最大10MN
(4)剛体振り子型物性試験器RPT−3000W
 剛体振り子型物性試験器RPT−3000Wは、物質の硬化・乾燥挙動と物性を高精度に測定できる装置。
 剛体振り子の自由減衰振動への各種材料による影響から、材料の硬化性や材料の物性評価が容易であり、材料の開発・改良、品質管理、生産ライン設計、トラブル対策など、広範囲に活用できる。
 剛体振り子型物性試験技術が、国際標準規格ISO12013−1、ISO12013−2に採択された。



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