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「変革対応」で、世界一の企業めざす


石田隆英氏

(株)イシダ 社長

vol.2

日本計量新報 2012年1月1日 (2899号)2部4-5面掲載

「三方良し」の理念継承ー変革対応で、世の適社にー


石田隆英 −−イシダの企業活動のあり方などをお聞かせ下さい。
 イシダは、企業理念を重要視しています。企業理念として「三方良し」、目指すべき姿としての「世の適社・適者」です。

全員が共有する価値観が必要


イシダには1300名を超える社員、グループ全体では約2800名の社員がいます。社員が増え、外国人の社員もいますと、それぞれがさまざまな価値観を持っています。そのなかで、社員の力を合わせ、それを会社全体で大きな力にしていくためには、どうしても全員が共有する価値観が必要になってきます。
 「異体同心」のごとく、身体は異なっていても皆が心を合わせ一体となり共通の目標に向かいベストを尽くせるようにしていなかくてはいけません。

三方良し


企業は社会の公器としての一面があります。企業は利益を上げるために活動するのは当然だとしても、取引先様および周りの方々にご迷惑をお掛けするようでは企業のあり方としては良くありません。
 「三方良し」とは「自分良し、相手良し、第三者良し」ということで、社員と会社が一体となって成長・発展し、お客様に満足をもたらし信頼され、豊かな社会づくりに貢献する企業を目指します。

世の適社・適者に


もう1つの共有する価値観は「世の適社・適者」です。基本は、どのように世の中が変わっても、それに対応して、お客さまや、社会の人々の役に立つことができ、喜んでもらえる会社が生き残っていけます。そういう会社になるという理念が「三方良し」に基づいた「世の適社・適者」です。
 最近読んだ書籍『MITチームの調査研究によるグローバル企業の成功戦略』によると、導き出された結論は「(世界で成功した500社の研究を通じて)どの会社にも、またどの時代にも通用できるような方程式はない」、「大事なことは、世の中の変化に的確に対応していくことである」、ということでした。


変革対応で適社に

その意味で「世の適社・適者」ということは、変革対応、つまり世の中に適応して変わり続けることが会社が生き残っていく要因であるということです。
 「三方良し」の経営理念は当社が脈々と受け継いできた哲学であり、今後も揺らぐことなく継承していきます。そして「世の適社・適者」となるためには、変革対応が必要です。「三方良し」の理念以外は全部変えていくくらいの気持ちで臨むつもりです。

変革対応の5つのポイント

イシダは、変革対応を俊敏に進めることに力を入れており、変革対応しやすい組織・社員のあり方を考えています。このために、次の5つの原則を掲げています。  1つ目は「不均衡の創造」です。望ましい環境は最適環境の一歩手前にあります。組織は完璧な状態になってしまうとぬるま湯体質やマンネリを生み、対応力も脆弱化してそれ以上の成長は見込めません。ですから、あえて組織のバランスを崩して緊張感を保つことが求められます。人の異動であったり、組織として新しい仕事への取り組みなどです。
 2つ目は「自律性の確保」です。大きな組織でトップが一人では機敏に的確に判断を下すことは困難です。小さな組織に可能な限り権限を委譲し、それぞれの組織が自律性を持ち、小さな変化や物事の兆しにきめ細やかに対応できること大切です。その対極は官僚型の組織です。
会社には小さな変化に機敏に対応できる自律型の組織が必要であり、各部門が自律して判断をし、迅速に動く組織であることが重要です。
 3つ目は「異端・偶然との共存」です。イノベーションや新しいことの始まりは、異端や偶然に触れ合ったときに生まれるとされます。同じような考え方や均一化された状況では生まれませんので、新しい人材や情報などと共存していくことが大切です。
 4つ目は「知識の淘汰と蓄積」です。組織は進化していくことが大事です。そのためには失敗を教訓として、学習する組織を作ることが必要です。PDCA(「計画」「実施」「評価」「改善」)サイクルを回し、失敗や経験から得たものを知識として蓄えて、 淘汰や進化させることが重要です。
 5つ目は「統合的価値の共有」です。目標やビジョンを共有することが重要です。我々が何のために活動していて、どこに向かっているかを示さなくてはいけません。共通の価値観を持った上で、大きな世界戦略のビジョンの元で個々の案件があると位置づけ、ビジョンを意識しながら取り組むことが必要です。
 昨日の成功方程式が、今日はすでに通用しないことは、現実の企業の動きが教えてくれています。柔軟な変革対応が本当に求められているのです。イシダは、変革対応に真剣に取り組んでいます。

二宮尊徳の精神で変化対応に備える

 

先がなかなか見通せない時代とはいえ、先のことを悲観し、いたずらに動揺していては何もできません。著名な農政家である二宮尊徳が詠んだ歌のごとく、「この秋は雨か嵐か知らねども、今日の務めに田草とるなり」の気持ちで臨むことです。一つ一つ自分自身が今なすべき課題を解決していくしかないことを肝に銘じる、ということです。 今年は、変革対応をこの精神でやっていくことを社員にも伝え、全社員が一丸となって進んでいきたいと思っています。

グローバルカンパニーとして勝負する


−−力を入れている分野は何ですか。


自動化・効率化事業を進める


2つの分野が伸びています。1つ目は、「自動化、効率化」を進める事業です。これまで労働力が豊富といわれてきた中国でも、一人っ子政策などで高学歴化が進んでおり、厳しい労働環境での働き手も減ってきています。
 そこで、より少ない人員で運営できるよう、「自動化、効率化」を進めて、生産性を向上させることへのニーズが高まっています。中国の例をあげましたが、今後、全世界的に、効率化、生産性の向上は、一層求められていきます。イシダがお役立ちできる分野なので力を注いでいます。

食の安心・安全に注力


 

2つ目は、「食の安心・安全」分野です。全世界的に「食の安心・安全」がテーマになっており、関心、需要は世界中で高まっています。食品に混入した異物を検出できるX線異物検出装置の製品群も今後積極的に展開していきます。
−−変革対応をしていくための人材の育成などはいかがでしょうか。


外国人社員の採用進める


 

グローバル化や変革への対応として、国内での海外社員の採用を進めています。2010年は、マリ(アフリカ)、バングラディシュ、ミャンマー、モンゴル、オーストラリア、などの出身者を採用しました。ソフトウェアの開発者としてインド人も採用しています。製造だけでなく、開発も海外で進めていかなくてはなりません。外国人社員の採用は、「異端・偶然との共存」など、先ほどお話しした変革対応5原則に沿ったものです。

計量・包装の分野で  世界一の企業に

当社は、計量・包装の分野で世界一の企業になることをめざしています。世界市場に対して、日本のイシダではなく、グローバルカンパニーのイシダとして、勝負していかなくてはなりません。

世界一になるには、グローバルチームで

「グローバルチーム」を編成し、世界一を目指していきます。サッカーに例えますと、もしクラブチームで 2010年優勝の「インテル」と前回W杯優勝の「スペイン代表」とが対戦したなら、クラブチームが勝るのではないでしょうか。これからは、日本代表選手を集めた「ナショナルチーム」ではなく、世界の国からベストの選手を集めた「クラブチーム」を意図して築いていくつもりです。

地球規模で会社を運営する

材料を世界中の安く調達できるところから調達し、製品を求められるところに供給していくためには、購買、生産、販売だけの最適化ではなく、人事機能や情報システム機能なども含めて最適化していく必要があります。
 地球レベルで1つの会社を築き、最適化運営する姿をこれから目指していきます。
−−ありがとうございました。


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