日本計量新報 2013年1月1日 (2947号)第2部4-5面掲載
実体的な世界経済全体は悪くない
−−グローバルに事業展開されている貴社としての世界経済の現況認識についてお聞かせください。
先進国の停滞と新興国の台頭
全体として、ドイツ、フランス、イギリスなどの欧米の先進国は、少子高齢化が進み日本市場と同じように停滞しているような状況だと認識しています。ロシアや中近東、アジアなどの市場は活気があるという印象です。これらの新興国に引っ張られて実体的な世界経済全体としては世間が喧伝するほどは悪くないと思います。
新興国の一部には政治的なリスクがないわけではありませんが、政治とは別に経済自体は活況を呈しているとの印象です。また、アメリカ市場も手堅く推移しています。アメリカにはグローバルカンパニーが数多くあり、当社の顧客である大手食品・菓子メーカーなどは、世界の人口増加に対応して東南アジア諸国への投資を高めています。
アジア市場も伸びている
アメリカをはじめとした各国のグローバルカンパニーが東南アジア諸国を中心に投資を強化していることもあって、アジア市場は中国、インド、ベトナムなどいずれも伸びています。中国市場の政情リスクについては、内陸部では影響があるようですが、当社の工場がある上海ではお陰様でそれほど大きな影響を受けておらず、影響は軽微であるといえます。海外進出には当然リターンとリスクの両面があり、今回のようなことが起きるとリスクが強調されます。しかし、膨大な規模の中国市場、上海の生産拠点が引き続き重要なことに変わりはありません。また、当社の場合は受注製品が多いですから、どこかに生産を集約して標準化によってマスメリットを出すというよりも、市場ごとに細かく生産拠点を持って、現地の要求に応えていくということになります。ですから、現在のところ生産拠点の移転などは検討しておりません。また、インドに関しては、この1年ぐらいはノックダウン生産を実施しており、現在は一部部品の現地内製化を進めています。
−−世界経済の状況を踏まえたうえで、日本の経済情勢と今後の動きをどのようにご覧になっていますか。
日本の経済状況は厳しい
日本の経済状況はなかなか厳しいですね。当社のお客様には食品関連企業様が多いのですが、人口が減少に転じている影響もあり厳しい状況にあるといえます。
金融緩和策などの施策に関しても、もともとゼロ金利に近いわけですから、どれほどの効果があるのか疑問です。また、増税や電気料金の値上げなど、消費関連ではアゲインストの風が吹いています。ただ、駆け込み需要といいますか、消費税の値上げ前に設備投資を計画している企業も多いので、2013年度は売上に関してはある程度追い風にはなると予測しています。
しかし、導入後の反動が怖いですね。自動車販売に関してもエコカー補助金が終了したら、売上が落ちましたしね。やはりメーカーとしては、一気に売上が上がったり、また反落するようなことはあまり好ましくありません。地味に見えても緩やかに上昇していく方がよいと思っているところです。
−−貴社はグローバルに事業展開されていますが、日本企業がこの厳しい世界市場で事業展開していくために必要な条件についてお聞かせください。
世界に通じる製品力とサービス力
世界市場に進出するための最低条件として私がまず考えているのは、世界に通じる製品力とサービス力を有しているということです。この二点に関しては、中小企業も含めてきめ細かな品質重視の製品を製造していますし、日本企業は十分に条件をクリアしており、世界市場で通用するものだと思っています。サービスについても心のこもった非常に行き届いた内容を提供しています。
一歩を踏み出す勇気が必要
世界市場に進出する場合、当然リスクを伴いますが、必要なのは「一歩を踏み出す勇気」です。特に昨年、中国、韓国については政治問題をめぐって両国と日本との関係がぎくしゃくしてトラブルが生じました。リスクがあることも念頭に置いたうえで対応策を事前に検討して進出する勇気が必要です。
ヨーロッパでは他国への進出に関して、特別の勇気はあまり必要ではありません。隣接する他国とは地続きであり、もともと自国のマーケットだけでは市場規模が不十分なため、ヨーロッパ全体を自らの企業活動範囲として考えることは当然なのですね。日本はこれまでは国内のマーケットだけを相手にしていても企業活動が成り立っていました。他国と国境を接していない島国ですので、ヨーロッパの会社などと比べれば、進出に関するハードルは物理的にも心理的にも日本企業のほうが高いといえます。
ですから、なお一層「とにかく出てみよう」という気持ちを持つこと、そして、ダメだったらまた戻ってくればいいというくらいの気持ちで、まず一歩を踏み出すことが大事だと思います。
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