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世界をリードする製品で躍進はかる

鎌長製衡(株)鎌田長明社長に聞く

聞き手は高松宏之編集部長

vol.3

日本計量新報 2014年8月3日 (3020号)2面掲載

きちんとした計量システムが重要(2)

政府機関は取締に徹するのがよい

私は、計量計測のテクニカルな面はある程度メーカーに委せて、行政機関は取締に徹するような計量システムが適切ではないかと考えます。
 メーカーにとっても世界的な戦略を考えると、きちんとした試験設備を備えるということがますます重要になってきています。ですから、技術面に関しては、ある程度メーカーに責任を持たせても大丈夫だと思います。
 行政機関は、そこにお金をかけるよりも、日本で適正な計量が実施されることに力を注ぐべきだと考えます。
 日常の検査は計量士が実施して、行政機関は違反をしっかり取り締まるというような役割分担が必要であると思います。

全国で統一された計量制度が必要

地方分権というのは自治に関する重要な制度であると思いますが、計量に関する限り、全国で統一した基準の下に実施されなければ、さまざまな不具合が生じると思います。それは計量制度が自治事務化されて以来、多くの場面で現れています。計量制度は全国的に統一されていることに意味があると思います。
 しかも、各自治体の財政難のなかで、計量行政に使われる予算は毎年削減されており、執行される内容に地方ごとの格差もでています。
 各種の申請などや計量に関して判断が求められる際に、地方公共団体ごとに微妙に判断が異なることがあり、メーカーとしても困ることがあります。行政側も情報を共有して調整をはかっていると思いますが、これでは困るわけです。非効率でもありますしね。計量に関しては、国がしっかり統一的に監督することが重要だと思います。
 私は今後、業界としても声を上げていく必要があると思っています。
 これからアジア市場が重要だという話をしましたが、そのアジア圏から見て日本の計量システムは信頼できるという環境になっていかないと、日本の計量計測機器の製造メーカーの信用にも関わります。

人材が確保できるか心配

計量士が高齢化しています。人材の面でも、10年、20年後はどうなってしまうのかと心配です。たとえば、年金を受給している計量士が計量管理をやるとしますね。そうすると、年金受給分はカットされて、実際は安い費用で計量管理を受託するということにもなってきます。こうなってくると、計量士を仕事にしようという人がいなくなってしまいます。またメンテナンス費用が安く抑えられれば地場の計量機器企業も経営が圧迫されます。

計量制度はインフラ

こういう状態になってくると、結局は計量というものの権威が落ちてきます。かつては、社会的に計量というものは大切なものであるという意識があり、国もそういう政策を採っていました。現在は、計量というものがずいぶん軽くなっている気がします。
 過度な取締は必要ありませんが、計量制度はインフラですから、このシステムが揺らいでは、産業にとっても、消費者にとっても将来が心配です。貿易にとっても、日本の計量機器や日本での計量結果が外国で信用されなくなると国が成り立っていきません。

相手を信用して取引できることの大切さ

中国ではトラックスケールの台数が日本の100倍あるといいます。国土が広く人口も多いということもあるわけですが、お互いに相手の計量が信用できないので、商品を売る側も、買う側もそれぞれがトラックスケールを設置しているという事情もあります。またトラックスケールの寿命が日本より短くて頻繁に買い換えるということもあります。これは社会コストが高いということにもなりますから、お互いを信用して取引ができるということがいかに大事であるかの証左がここにあります。
 JCSS(計量法校正事業者登録制度)なども、これで儲かっているところはほとんどありませんね。ドイツのDKDシステムは儲かるといいます。何が違うのでしょうか。よりいっそうの研究をお願いしたいと思います。

自動はかりの信頼性確保

自動はかりも問題があります。ドイツでは多くの自動はかりは検定の対象です。しかし、日本では検定の対象にはなっていません。ではどこで信頼を担保するかということでのルール化が必要です。たとえばJIS規格やJCSSなどを活用して、自動はかりでの計量の信頼性確保ができないかなど、さまざまな方法を研究する必要があります。日本のものづくりを支えるという面では、しっかりした計量システムの構築の重要性を改めて強調したいと思います。

−−ありがとうございました。

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